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パナソニック、上期は2,004億円の営業利益。テレビは4K好調で黒字回復

 パナソニックは29日、2015年度上期(2015年4月~9月)の連結業績を発表した。売上高は前年同期比1.0%増の3兆7,604億円、営業利益は同13.3%増の2,004億円、税引前利益は同34.6%増の1,641億円、当期純利益は同37.6%増の1,113億円となった。

2015年度上期の連結決算概要

テレビは5億円の黒字に回復。液晶事業は非テレビへのシフトを加速

代表取締役専務の河井英明氏

 河井英明代表取締役専務は、「ソリューション事業や白物家電事業が伸張。パナホームによる住宅関連事業も堅調であるほか、為替効果も増収につながっている。全社的な事業構造改革の効果、合理化の取り組み効果もある。収益性の低い事業が少なくなり、テレビ事業も増益。だが、テレビ事業が全社の収益改善を牽引するまでには至っていない」と総括。「事業撤退や縮小の影響も収益の改善につながっている。価格低下を上回る材料の合理化も増益へ貢献している。高付加価値製品へのシフトも大きなプラス効果になっている」とした。

 津賀一宏社長は、「いまは、為替による増益効果があるが、今後は、むしろ新興国の通貨安により、マイナス方向に働くことが考えられる。だが、為替影響を抜きとする“実質反転”の手触り感が、下期には出てくるだろう。限界利益率の改善により、利益の確保が可能であるほか、固定費の削減ではなく、販売増に向けた取り組みに成果が出てきた。年間8兆円の売上高達成に対するハードルが高まっているのは事実だが、売り上げがいかなくても、営業利益を出せる体質になっている」とした。

津賀一宏 代表取締役社長

 津賀社長は、「今年から投資を復活させている。3,000億円を超える設備投資を行っており、そのうちの55%が国内に対する投資。ここ数年では、最大規模の投資を国内に行なっている。また、非連続の成長に向けた手の打ち方も水面下で積極化させており、当初計画よりも前倒し、あるいは増額してやっていくつもりだ」とした。

 地域別売上高は、円ベース換算では、国内が前年同期比2%減の1兆7,089億円。海外では、米州が11%増の6,213億円、欧州が1%増の3,475億円、中国が前年並みの5,354億円、アジアが3%増の5,473億円。海外全体では4%増の2兆515億円となった。

 「日本では、家電商品が好調だったが、ソーラーの減販影響もあり減収。米州は、販売を絞り込んでいる薄型テレビを除けば実質増収。欧州は家庭用エアコン、薄型テレビ、産業向け機器が堅調で増収。アジアは白物家電は堅調だったが、薄型テレビやデバイスが前年を下回った。中国は家庭用エアコン、薄型テレビ、産業向け機器が減収要因になった」(河井代表取締役専務)という。

売上/営業利益の概要
要因別 営業利益分析
地域別売上高
事業別売上・営業利益分析
営業外損益等

 セグメント別では、アプライアンスの売上高が前年同期比2%減の1兆1,719億円、営業利益は9%増の435億円となった。

セグメント別実績

 「収益改善に向けたテレビ事業の絞り込みや中国市況の悪化の影響を受けているが、日本およびアジアで、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電が引き続き堅調に推移。インバウンド需要により、炊飯器や美容関連製品の伸張により、セグメント全体では増収となった」とした。

 テレビ事業に関しては、第2四半期売上高が15%減の872億円、営業利益は前年同期の22億円の赤字から5億円の黒字に転換した。

 「米国や中国での販売絞り込みの影響があるが、注力地域の欧州および日本では増収。特に、日本においては4Kによる高付加価値製品が好調に推移している。材料合理化や事業構造改革による固定費削減により、黒字転換しており、年間黒字化に向けて着実に進捗している」と語った。

テレビを含むアプライアンスの実績
テレビ事業など個別の実績

 白物家電は、国内では前年同期比6%増、海外は10%以上の成長を遂げていることに触れながら、「これまでの商品展開は、コンサバティブなところもあったが、目新しい製品を相次ぎ投入し、海外でも製品ラインアップの強化に取り組んできた。アプライアンス社のなかに、テレビやホームエンタテインメント事業を組み入れて一体化し、開発、製造と、マーケティングの組織を一体化した。これまで分かれていたことで発生していた問題をひとつひとつ潰してくことで、いい方向にいっているのではないだろうか」(津賀社長)とした。

 家電市場の再編については、「再編によって、我々の家電の販売を大きくしていくといったようなことは考えていない。具体的なものはなにもない」とした。

 また、液晶事業の考え方についても改めて言及した。

 津賀社長は、「液晶事業は4四半期連続で黒字化している」と前置きし、「これには円安効果や、テレビ用パネルにおいて価格競争力がついてきたことが影響している。だが、これは一時的なものだと判断しており、つなぎで利益を取れればいい。最終的には、非テレビ領域へのシフトを一層進めていく。医療用や車載用がその代表的なものである。将来性や長期的な安定性を第一義に考えている。それを実行するために、液晶パネル分野における他社との事業再編などは考えていない。また、我々が再編を主導する立場にもない」とした。

通期見通しは据え置き。「収益体質は確実に改善」

 AVCネットワークスの売上高は、前年同期比7%増の5,708億円、営業利益は710%増の319億円。エコソリューションズは、売上高が2%減の7,723億円、営業利益が27%減の304億円。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、売上高が前年並の1兆3,866億円、営業利益は5%増の611億円となった。

AVCネットワークス
オートモーティブ&インダストリアルシステムズ
インフォテインメントシステムなどの個別事業実績

 河井代表取締役専務は、「AVCネットワークスは、モビリティは国内向け決済システムが好調。映像・イメージング事業は、高機能プロジェクターや国内セキュリティシステムが堅調に推移した。また、エコソリューションズでは、エナジーシステム事業部のソーラー事業が消費者マインドの冷え込みにより減販。当社が得意とする発電規模が大きな物件も減少したことが影響した。だが、配線器具や海外向け監視システムが好調。ソーラー事業を除くと増収増益。収益性は確保している」と述べたほか、「オートモーティブ&インダストリアルシステムズでは、車載カメラなどが増収の要因。だが、オートモーティブ事業において、将来に向けた研究開発費の増加が減益に影響にした」と語った。

エコソリューションズ
個別事業の実績
大規模6事業部実績

 なお、2015年度の通期業績見通しは据え置き、売上高が前年比3.7%増の8兆円、営業利益は12.6%増の4,300億円、税引前利益は64.4%増の3,000億円、当期純利益は0.3%増の1,800億円。営業利益率は5.4%を目指す。

 「事業売却の影響を全体でカバーしようとしているが、市況の悪化もあり、厳しいと認識している。しかし、これまでの事業構造改革の取り組みにより、収益体質は確実に改善している。売り上げが厳しいなかでも、営業利益は年間見通しの達成を狙っていく」(河井代表取締役専務)とした。

(大河原 克行)