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360度映像のライブ配信など、ピクセラがVR/IoT/翻訳事業への取り組み紹介

 ピクセラは24日、同社が今後力を入れていくIoT事業、翻訳事業、AR/VR事業に関しての技術や新製品などの説明会を開催。IoT機器の開発を容易にするキットや、ホームセキュリティやHEMSと連携できるZ-Waveゲートウェイやセンサーの新製品も紹介した。

360度パノラマ動画をスマートフォンで手軽にVR再生できるアプリ「パノミル」デモ

AR/VR事業

 既報の通り同社は、4K/60fpsで動画撮影できるパノラマVRカメラ「Sphericam 2」の開発設計を手掛ける米Sphericamと業務提携し、旅行先の風景やマンションの室内レイアウトなどをパノラマVR映像で体験できる商用サービスを提供予定。コンシューマ向けには昨年12月に、360度パノラマ動画をスマートフォンで手軽にVR再生できるアプリ「パノミル」を提供するなど、AR/VR事業に注力している。

 その新たな展開として、パノラマVR映像を手軽にライブ配信できるカメラを開発しているという。

パノラマVR映像を手軽にライブ配信できるカメラ

 Qualcommのプロセッサ「APQ8084」を搭載した360度撮影可能なカメラに、LTE回線の通信機能を搭載。パソコンを使わずに、360度撮影した映像を、LTE回線を通じて配信サーバーへ送信。そのサーバーに、PCやスマホ/タブレットでアクセスする事で、離れた場所の360度映像がライブで楽しめるようになるという。

大阪にあるピクセラ本社オフィスの360度映像を、東京の説明会場で表示

 室内の状況を遠隔地から確認するといった使い方に加え、例えばライブ会場に設置して、複数人でライブの模様を楽しんだり、スポーツ会場に設置して、接続したユーザーがそれぞれ見たい方向の映像を楽しむといった利用も可能という。

ライブやスポーツなどでの活用を想定

テレビの字幕を翻訳できるSTB/タブレット

 海外から日本を訪問する外国人が増加している事を受け、翻訳事業にも注力。

 小型STBを用いて、日本の地上デジタル放送を受信。その番組に含まれる日本語の字幕情報を翻訳サーバーに送信し、翻訳結果をテレビ画面と共に表示するシステムを開発している。

テレビの日本語字幕を英語に翻訳するSTB

 これにより、日本のテレビ番組を英語や中国語、韓国語の字幕付きで表示可能。翻訳速度はほぼリアルタイムで、映像に対しての遅延も少ないという。翻訳サーバーでは機械学習により、継続的な翻訳精度の向上も図っており、将来的には外国人が宿泊するホテルや、空港の待合室などへの導入を検討しているという。

 また、STBタイプだけでなく、字幕の翻訳結果を表示するタブレットも開発している。

 さらに、外国人と日本人のコミュニケーションを支援する翻訳タブレットも開発中。インバウンド旅行者を迎える店舗などでの利用を想定したもので、タブレットに向かって話す事で、日本語と、英語/中国語/韓国語の相互翻訳が可能。対面式のUIで、外国人と日本人が向い合って使いやすいデザインになっているという。

外国人と日本人のコミュニケーションを支援する翻訳タブレット

IoT事業

 家庭内のIoTの核となる、IoTゲートウェイ「PIX-GW100Z」を3月末から直販サイトにて試験販売を開始。4月から一般販売を開始する。

 スマートハウス市場で世界的に普及しているIoT無線規格「Z-Wave」に対応しているのが特徴で、既に市場に存在している様々なZ-Waveセンサーと連携できる。ドアや窓の開閉検知、人感検知などのホームセキュリティや電力管理のHEMS、家電コントロールなど、様々なスマートハウス機能を一般家庭で手軽に導入できるという。

 ピクセラでも、Z-Waveセンサーのラインナップとして、人感/温度/湿度/照度/UV/振動を検知するマルチセンサー(ZW100)や、ドアや窓などの開閉を検知する開閉センサー(ZD2112JP-5)を用意する。

左がIoTゲートウェイ「PIX-GW100Z」、右がマルチセンサー「ZW100」

 さらに、専用アプリを使って、iPhone/iPadやAndroid端末からセンサー状態の確認やコントロールが可能。例えば、アプリからPIX-GW100Zを介して、IoT対応のドアの鍵を解錠したり、対応するLEDライトの色味を変更するといった事が可能。

対応するLEDライトのカラーをスマホから調整

 アプリにはシナリオ作成機能も搭載されており、例えば「鍵が解錠されたら、LEDライトの電源をONにする」といった、連携動作をユーザーが作成する事も可能。

アプリにはシナリオ作成機能も搭載

 さらにピクセラは、AWS(Amazon Web Services) IoTサーバーによるクラウドサービスも提供。外出先のスマホアプリから、3G/LTEを介して、自宅のIoT機器を操作したり、人感センサーで侵入者がいない事を確認するといったサービスも提供可能。他のAWSシステムとの連携も容易に行なえるという。

 サービスは、PIX-GW100ZとZ-Waveセンサーをセットにした月額500円(税込)からの課金サービスとして販売予定。センサーの追加オプション販売も予定している。2年契約が条件で、初期費用は無料。

電動カーテンや電離位ョクメーター、スマートロックなど、様々なIoT機器との連携を想定

IoT開発キットも

 センサーIoTを手軽に開発できるキットも今後提供予定。電池駆動が可能なLTE(Category-1)搭載センサーIoTのプロトタイプを、短期間で開発できるというもので、LTEモジュール内のCPUを使うため、外部CPUが不要。低消費電力、低価格なIoT開発環境を実現できるという。

 各種センサーボード、対応ファームウェアも提供。Raspberry Piに接続するLTEボードにもなるという。

センサーIoTを手軽に開発できるキット

 これにより、例えば農作物の成長や土壌、環境の管理、建築物のモニタリング、トラックやバスなどの商用車運行管理、ホームオートメーションで使えるセンサーを開発。そうしたセンサーからの情報はIoTサーバーに送信され、そのサーバーにスマホなどでアクセスする事で、農地や建築現場などに出かけなくても、状況を随時チェックできる環境を開発できるという。

 さらに、インターネット環境が無い場所でもIoTセンサーを設置できるよう、Category-4通信対応のLTEモジュールを採用し、IoTゲートウェイ機能を組み込んだタイプなども開発しているという。

インターネット環境が無い場所でも設置できるIoTセンサー

 ピクセラでは開発キットだけでなく、AWS IoTサーバーを使った課金スタックや、機器管理データベース、スマホアプリ用SDKなども包括したIoTプラットフォームを提供できるため、スピーディーなサービスインが可能になるとしている。

SIMロックフリーのLTE対応USBドングル

 3月末に発売する「PIX-MT100」は、SIMフリー対応のUSBドングル。ドコモのネットワークを利用した市販のSIMカード(MVNO含む)が利用できる。LTE通信速度はCategory-4 150Mbps。直販価格は14,800円(税込)。

「PIX-MT100」

 パソコンとUSBで接続し、LTEのデータ通信が可能。単体でも動作でき、USB-ACアダプタを使って給電する事で、無線LANアクセスポイントとして動作する。

 この機能を活かし、例えばIPカメラとUSBで接続。USB経由の給電で動作しながら、IPカメラが撮影し、無線LANで送信している映像を「PIX-MT100」がワイヤレスで受信。そのデータをLTEで送信する事で、LAN環境が無い場所にも、IPカメラを設置でき、その映像をインターネット経由でPCやスマホから視聴できるようになる。

 同様に、IoT開発基板と連携させる事で、IoT機器も手軽に開発できるとする。Windows/Mac/Linuxの標準ドライバで動作可能(一部のLinuxはサポートできない可能性がある)。

「欲しいと思った製品を実現できる突破力と技術力がある」

執行役員営業本部の太田剛本部長

 執行役員営業本部の太田剛本部長は、電機メーカーの業績が厳しい現状において「我々が変わっていく必要がある。我々の強みは何かと改めて考えると、ハードからソフト、ドライバ、アプリに至るまで社内で開発でき、マルチOSやマルチデバイスにも対応できる技術力がある。それは面白い事を思いついた時に、それが“できる”という事。ピクセラには、欲しいと思った製品を実現できる突破力と技術力がある」と説明。

 「我々は進化したコンピューティングリソースを使って、コミュニティを作りたい。面白いアイデアはあるのだけれど、費用や技術などの様々な障害があると感じている方々に、プラットフォームを提供し、面白い事、日々の便利、安心の実現に向けたお手伝いができる」という。

執行役員営業企画本部の森佳昭氏

 執行役員営業企画本部の森佳昭氏は、今後の流れについて、「まず商品を世の中に出す事が大切だと考えている。コンシューマ向けに製品を我々が提供し、使っていただき、盛り上げていきたい。その流れの中で、他のメーカーさんが、我々のVRやIoTのプラットフォームに興味を持っていただき、我々が裏方としてそのメーカーさんのサービスを支えるなどの展開も考えられる。皆様と共に面白いものを作っていきたい。一緒に作りましょうというのが我々の戦略。一人でも多くの方に利用して欲しい」と語った。

(山崎健太郎)