ミニレビュー

JBL「REFLECT AWARE」でグアムへ。Lightning直結ノイズキャンセルイヤフォンの実力

JBL「REFLECT AWARE」を航空機内で試した

 ハーマンインターナショナルが7月16日から発売したJBLブランドの新イヤフォン「REFLECT AWARE」。Lightning端子に直で接続できる、iPhone/iPad/iPod専用のイヤフォンという点が特徴だが、進んだノイズキャンセル機能を備えているのも魅力の製品だ。直販価格は24,880円。

 今回はこのREFLECT AWAREを航空機内に持ち込んで、フライト中にノイズキャンセル機能の効果を試してみることにした。長時間、エンジン音などの騒音下におかれる機内で、ノイズキャンセルは有効に機能するのか、また、その状態で音楽の聞き心地はどうなのだろうか。

REFLECT AWAREのパッケージ
イヤーチップとスタビライザーがサイズ違いで3種類ずつ付属。持ち運び用のポーチも

品質の高いケーブル、リモコン付きの防汗仕様スポーツ向けイヤフォン

 REFLECT AWAREは、Lightning端子を備えたiOS搭載のiPhone/iPad/iPodで使用できる、Lightningコネクタを採用した密閉型イヤフォン。JBLブランドのなかではフィットネス・スポーツ向けのイヤフォンに分類され、イヤフォンのボディ部やケーブル部は防汗仕様となっている。

 ボディ部のサイズはやや大きめ。それでも重すぎることはなく、サイズ違いで3種類付属しているイヤーチップのほどよい“コシ”と、耳の凹み部分で固定できるスタビライザーによって、ランニング程度の振動ではびくともしないホールド力を発揮する。

イヤフォンのボディ部
イヤーチップとスタビライザーを外したところ

 1.2mあるケーブル部は硬めの樹脂素材が用いられているが、曲げに対しては柔軟性に富んでおり、“折れ”や“撚り”が発生しにくい。ケーブル表面の滑りも良く、ケーブル同士が触れ合っていても引っかかりにくいため、無造作にバッグなどにしまっておいても絡まりにくいうえに、もし絡まっていたとしても簡単にほどきやすい。多少のタッチノイズはあるものの、表面処理によるものか、突き刺さるようなノイズは発生しない。特にリモコン部から先の部分を触れた時は、ノイズはあまり伝わってこない印象だ。

硬めの樹脂素材で、絡まりにくいケーブル。タッチノイズはあるが、耳に痛いようなものではない

 ケーブル途中にあるリモコンでは、再生・一時停止・ボリューム調整と、通話操作、ノイズキャンセル機能のオン・オフなどを操作できるボタンを備える。通話用のマイクを内蔵しているため、ヘッドセットとしても使用可能だ。衣服などに引っかけるクリップなどは付属していないが、リモコン部は軽量で、スタビライザーでしっかりホールドされることから、そのままぶら下げて使っても気になるようなことはないだろう。

リモコンはマイク内蔵で、ヘッドセットとして使える

 先端のLightning端子部は、当然ながら表裏区別せずにそのままiOS端末に接続できる。通常のイヤフォン端子に別のイヤフォンを接続した場合は、REFLECT AWAREが無効になり、イヤフォン端子に接続したイヤフォンが優先的に使用される形となる。

ケーブル先端のLightning端子

 イヤフォンとしての性能を見ると、周波数特性が10Hz~22kHz、感度が97dB/mW、インピーダンスが16Ω。Lightning接続ということで、音楽再生時はデータがイヤフォンボディまでデジタルで送られることになるが、最大で16bit/48kHzまでの対応で、“ハイレゾ”イヤフォンには当てはまらない。ただし、対応のプレーヤーアプリさえあれば、ハイレゾ音源の再生は問題ない。

ハイブリッド型のノイズキャンセルに対応

 イヤフォンにおけるノイズキャンセル機能は、基本的には周囲のノイズと思われる音をマイクで拾い、その逆位相の音を作り出して出力することで、周囲のノイズと思われる音を打ち消して目立たなくする、という仕組み。

 これには主に2つの方法がある。1つはドライバーユニットの近くにマイクを配置することで、実際に聞こえているのに近いノイズと出力サウンドを元に精度高くノイズ低減を行なう「フィードバック方式」。もう1つは、マイクをイヤフォンの外部などドライバーユニットから離れた場所に配置する、小型化に向いた「フィードフォワード方式」。REFLECT AWAREはこの両方式を取り入れ“いいとこ取り”した「ハイブリッド型」になっているのも大きなポイントだ。

 REFLECT AWAREでノイズキャンセル機能を利用するには、専用アプリ「My JBL Headphones」が必要。この専用アプリを介してノイズキャンセルのオン・オフの切り替え、イコライザーの調整、「アンビエントアウェア」の調整などを行なえるようになっている。

専用アプリ「My JBL Headphones」
「NOISE CANCEL」をオンにすると、ノイズキャンセル機能が有効に
イコライザー機能もアリ。プリセットから選んだり、周波数帯域ごとに調整してカスタムすることもできる

 アンビエントアウェアは、ノイズを低減しながらも、ノイズとみなされない周囲の声や環境音を聞こえやすくする機能だ。アプリ上、もしくはリモコンのボタン操作でHIGH/MEDIUM/LOWの3段階に調整でき、HIGHはより効果が高く(環境音が目立つ)、LOWは効果が低くなる。オフにすればアンビエントアウェアの効果はなくなり、フルにノイズキャンセル機能を働かせることになる。

一番右のノイズキャンセルオン・オフボタンのダブルプッシュで、アンビエントアウェアをLOW→MEDIUM→HIGHへと順に切り替える

 ちなみに、アプリ上ではイヤフォンのLRチャンネルでアンビエントアウェアの効果を変えることができ、例えば航空機内で通路の左側に座っている時は、キャビンアテンダントの声が聞こえやすくなるよう右側のみHIGHなどに設定しておく、という使い方も考えられる。

声や環境音を目立たせるアンビエントアウェア。HIGH/MEDIUM/LOWの3段階から選択可能
左右のチャンネルでアンビエントアウェアの効きを変えられる

エンジン音のノイズの低音成分が見事にかき消える

 では、実際に航空機内でREFLECT AWAREを使うと、音楽はどのように聞こえ、ノイズキャンセルやアンビエントアウェアの効果はどれくらいあるのだろうか。

 搭乗したのは成田発、グアム行きのボーイング737-800型機。他のカナル型イヤフォンと比較しながら離陸前から目的地での着陸まで、往路の4時間弱で断続的に使用した。事前に静かな部屋で試してみた限りでは、メリハリと量感のある、しかし悪目立ちのしない心地よい低音域から中音域を楽しめ、高音域にかけては元気の良い低中音域に無理に対抗せず、バランス重視で鳴らしている印象。この音質の印象は、ノイズキャンセル機能のオン・オフや航空機内かどうかにかかわらず、終始一貫していたことをあらかじめ付け加えておきたい。

 さて、航空機に搭乗すると離陸前からすでにエンジン音が聞こえており、自分の周囲にゴーッという低音域のノイズが充満しているような状態。ここでREFLECT AWAREを装着すると、イヤーチップがしっかり耳にフィットしているおかげか、ノイズキャンセルがオフでも多少のノイズ低減の効果がある。ノイズ全体の“雑味”が抑えられ、これだけでも音楽に集中しやすいが、ノイズキャンセルをオンにすると、充満していた主に低音域のノイズがすっきりと消えてなくなる。

 つまり、低音成分の多い航空機のエンジン音のノイズの大部分がかき消えるわけだ。ノイズキャンセルをオンにする前に実際には聞こえていたものの、低音成分が多かったおかげで目立たなかった中音域のノイズだけがうっすら聞こえてくる状況。ノイズの低音成分は、遮音性の高いコンプライなどの低反発ウレタン製イヤーチップを使っている場合でもほとんど消しきれない。それがREFLECT AWAREであれば、あっさりと消え去り、まるで航空機内にいるとは思えない静寂さのなかで、再生している音楽に集中できる。

 ノイズキャンセル機能付きのイヤフォンの中には、オンにした際に耳に圧迫感があるものも存在するが、REFLECT AWAREではそういった感覚も一切ない。ナチュラルにノイズが目立たなくなり、違和感なしに装着していられる。今回の成田~グアム間は4時間弱と、国際線としては短めの距離。だが、後半はほとんどREFLECT AWAREを装着したままだったのに、聞き疲れしたり、耳に負担を感じたりすることはなかった。

離陸前からフライト中、そして着陸まで、音量調整なし、手間なしで使い続けられる

 他のノイズキャンセル機能のない通常のイヤフォンと比較したところ、特に低音部の聞こえやすさが格段に違った。航空機内では、通常のイヤフォンでもある程度遮音性のあるイヤーチップを使っていれば、(もちろん音量にもよるが)中高音域は比較的聞こえやすい。

 ところが、例えば「ハイレゾで聴くジャズ・ピアノ」から「ワルツ・フォー・デビイ」(192kHz/24bitz)を再生してみると、再生直後からしばらくは、本来存在するはずの低域の弦楽器の音が外部ノイズのせいで全く聞こえず、左チャンネルはほぼ無音状態。これを聞こえるようにするにはボリュームをかなり上げなければならないが、そうするとすでに聞こえている右チャンネルの中高音で耳を痛めてしまうだろう。

 一方、REFLECT AWAREでノイズキャンセルをオンにすると、ノイズの少ない屋外や部屋の中で聞く時と同じように、くっきりとその低音が聞こえてくる。単に聞こえるというだけでなく、音質を評価できるレベルで耳に届くのだ。

 航空機が離陸すると、エンジン音はさらに高鳴り、騒音は全体的に2、3段アップする。さすがにこの時は、ノイズキャンセルがオンでもノイズの量は増える。しかしそれでも、音量を上げる必要性は感じられないレベルにノイズは抑えられている。離陸前から着陸まで、自分の聞きやすい一定の音量で音楽鑑賞できるのは、大げさかもしれないが、感動的だ。これが通常のイヤフォンであれば、もちろん音量は上げざるを得ず、短時間で聞き疲れしてしまうだろう。

 フライト中は、食事やドリンクサービスなどでキャビンアデンダントとやりとりが発生する。こうした時にも、REFLECT AWAREではノイズキャンセルをいちいちオフにしたり、耳からイヤフォンを外したりせず、そのままいつも通り会話することができた。

 音楽の再生は中断するか、音量を絞った方が良いが、(イヤフォンを付けたまま会話するのがマナーとしてどうか、という議論はあるかもしれないけれど)、キャビンアテンダントや同乗している家族・友人らとちょっとした会話を交わす時に、イヤフォンをわざわざ付け外す手間が必要ないのはありがたい。

長時間の移動を伴う旅行で実力を発揮するイヤフォン

 環境音を聞こえやすくする「アンビエントアウェア」については、航空機内のように終始大きなノイズが発生している場面では、あまり有効な機能とは感じられなかった。アンビエントアウェアの聞こえ方としては、環境音とされる一定範囲の周波数の音のピークに“色づけ”したかのように目立たせるイメージで、その効果は、ノイズの少ない場所で、他の人にしゃべってもらったり、衣類を擦るような音を出してみると分かりやすい。

 これを航空機内でオンにすると、機内に充満しているほとんどのノイズはノイズキャンセリングで消えるものの、その元々のノイズにアンビエントアウェアが“色づけ”してしまい、筒に耳を当てた時のような、「コー」という音が常時聞こえることになる。航空機内ではあまり使い道ははさそうだが、電車のアナウンスを聞くときや、音楽を聞きながら作業時にちょっと会話したいという時には良さそうだ。

ノイズキャンセルをオンのまましばらく使ってみた時のバッテリー状況。プレーヤーアプリが3分の2を、My JBL Headphones(ノイズキャンセル)が3分の1を消費していた

 通常のイヤフォンと比べた時の音楽の聞きやすさ、聞き疲れのなさは、ノイズキャンセル機能を備えたREFLECT AWAREが圧倒的に上回るし、音質面でも低音域のボリューム感にやや振りながらバランス良くまとめた幅広いジャンル向きの音作りで、カジュアルにも、じっくり聞き込むのにも使いやすい。

 1つ注意したいのは、ノイズキャンセルのためにiPhoneなどの端末側からイヤフォンに電力供給しているせいで、バッテリーの減りがわずかに早まること。充電すればいいと思うかもしれないが、Lightning接続なので、充電しながらイヤフォンを使えないことを頭に入れておく必要がある。

 個人的には、そのデメリットを補って余りある性能を備えた製品だと思っている。スポーツ向けイヤフォンということで、トレーニングジムで集中して目の前のメニューに取り組みたいような時にも最適なイヤフォンと言えるし、航空機内で使った後は、旅先で日課のランニングやウォーキングなどの運動をする時にも便利に活用できるだろう。通勤・通学時の電車内でもノイズキャンセルの効果は高いかもしれないが、長時間の移動を伴う旅行でもメリットを最大限に活かせる製品と実感した。

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JBL REFLECT AWARE

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、現在は株式会社ライターズハイにて執筆・編集業を営む。PC、モバイルや、GoPro等のアクションカムをはじめとするAV分野を中心に、エンタープライズ向けサービス・ソリューション、さらには趣味が高じた二輪車関連まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「GoProスタートガイド」(インプレスジャパン)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)など。