ミニレビュー

玩具のVRゴーグルで宇宙探検。タカラトミー「JOY! VR 宇宙の旅人」で遊んだ

 “VR元年"の2016年、ブームの波はついに玩具にも及んだ。タカラトミーが発売した「JOY! VR 宇宙の旅人」は、手持ちのスマートフォンを入れるVRゴーグルと専用アプリ、そしてコントローラーの組み合わせでVR空間の中を自在に移動でき、手軽に宇宙探検の気分を味わえる。Amazon.co.jpでは8,600円程度(12月7日時点)で販売されている。

JOY!VR 宇宙の旅人

 専用アプリを入れたスマートフォンをゴーグルにセットして楽しむ点は、GearVRやハコスコなどと同じ。それらと異なるのは、スマホVRゴーグルとBluetooth接続のコントローラーがセットされており、購入してすぐにインタラクティブなVR体験ができることだ。ただ周囲を眺めるだけでなく、VR空間の中を自由に移動でき、自分からアクションを起こす仕掛けも用意されているところが面白い。

アプリ「JOY!VR 宇宙の旅人」の画面。木星に飛んで映画「2001年宇宙の旅」のワンシーンっぽくした。BGMはもちろん「美しく青きドナウ」だ

 製品と同名のiOS/Androidアプリを用意。音声ナビゲーションとともに太陽系の惑星を巡る「クルーズモード」や、月・火星の地表を乗り物で走れる「惑星探査モード」、「宇宙遊泳モード」、「プラネタリウムモード」の4種類を用意している。

 対応OSはiOS 8.0以降とAndroid 4.4以上。対応機種はiPhone 7/7 PlusやXperia X Performance、Galaxy S6 edgeなどで、詳細はタカラトミーの製品サイトで案内している。

行きたい惑星を選んでワープしたり、宇宙遊泳気分が味わえる
火星の地表をバギーで走って探索するモードも用意

VR初心者に優しい作り

 コントローラーは手のひらに乗る小型サイズで、Wii用コントローラ「ヌンチャク」を思わせるデザイン。上面には十字キーとLボタン、Rボタン。握ったときに人差し指と中指が当たる場所に、メイントリガーボタンとサブトリガーボタンがあり、メニュー選択時は「決定」と「戻る」の役割を持つ。VR体験中は、メイントリガーボタンを押しっぱなしにすると空間内を前進する。

付属のコントローラー

 単4形電池で動作。Wiiリモコンのように腕を振り回す操作はしないが、付属のストラップで手首に巻き付けておくとうっかり落とさずに済む。

十字キーとLボタン、Rボタン。L/Rボタンの間が電源スイッチ。LEDはなく、見た目では電源Fの状態はわからない
サブトリガーボタン(上)とメイントリガーボタン(下)

 今回は手持ちのiPhone SEとXperia Z3 Compactを使ってみた。コントローラーとスマートフォンの接続はアプリの画面表示に従ってスマホの前に置くだけで行なえ、Bluetoothの設定画面を呼び出す必要はない。操作できるアプリは専用アプリ「JOY!VR 宇宙の旅人」のみとなる。VRゴーグル単体では、App StoreやGoogle Playで配信されている他のVRコンテンツやYouTubeなどの360度映像も視聴可能だが、コントローラでそれらの操作はできない。

アプリを立ち上げると毎回、遊ぶ前の手順が表示される
Bluetooth設定画面に「JOY VR」と表示されていた

 VRゴーグル側は、顔の前にスマホをセットできるスペースを設けており、スマホの画面サイズに合わせた付属のアジャスターシートを画面側に挟み込んで外光の影響をカットする。

スマホをセットしたところ
2種類のアジャスターシート

 ゴーグルには左右レンズの幅やピントの調整機構を備え、玩具ながら細かく作り込まれている印象だ。頭に固定するためのベルトが用意され、ベルクロで固定する。レンズ拭きなども付属し、初めてVRゴーグルで遊ぶ人に優しい作りといえるだろう。

レンズの左右幅を調整できる
レンズを回してピント調整も可能

 なお、VR酔い防止のため、30分毎に休憩を取るよう推奨されている。玩具メーカーらしい配慮だ。

コントローラーで自由に宇宙探検

 準備を済ませたら、目の前に表示されるメニューの中から遊びたいコンテンツをコントローラで選択する。筆者はまず、プラネタリウムモードを選んでみた。

プラネタリウムモードの画面

 このモードでは春夏秋冬の4種類の星空が用意されており、見たい季節を選べる。星座中心の表示なので「満天の星空を満喫」よりは科学館で星のお勉強、といった雰囲気だが、プラネタリウムにいる気分は味わえる。星座の見える日時を細かく変えたり、星が頭上を巡っていくような日周運動機能が無いのが惜しいところだ。これらが備わっているとより楽しめるだろう。

 コントローラーを動かすとマウスカーソルのような小さな同心円が天球上を動き回り、星座を指し示せる。ボタンを押すと星座の詳細な情報を見られるが、そのためには他のモードで宇宙空間のあちこちに点在する「モノリス」を集めて星座情報をコンプリートする必要がある。ミニゲーム風の仕掛けが用意されているのだ。

 首を振らなくても、見たい方向に十字キーを使って映像を左右に回していけるのは便利。ただし上下キーは反応せず、天頂を見るにはやはり首を90度上に向けなければいけない。

閲覧モードを選ぶ画面メニュー。コントローラを接続すると自動で二眼表示に切り替わる
アプリの各モードで、宇宙空間に点在する「モノリス」を集めるとプラネタリウムのデータが充実する仕組みだ

 「クルーズモード」では、地球や土星など太陽系の惑星の近くを宇宙船に乗って飛んでいる感覚で楽しめる。子どものころに科学館で遊んだ「宇宙シミュレータ」と同じような体験が自宅でも手軽に行なえた点は、個人的に感慨深いものがあった。ただ、VRゴーグルに装着した手持ちのスマホはいずれも画面が4インチと小さく、視野が若干窮屈に感じられた。iPhone 6シリーズのように大画面スマホの方が、より広く宇宙を感じられるだろう。

 コントローラーのボタンを押しっぱなしにすると前進して惑星の近くに寄れるが、近づきすぎると画面が赤みを帯びつつ「これ以上近づくと危ない」という警告ボイスが流れる。とはいえゲームオーバーになるわけではなく、惑星から離れれば赤い警告は解除されるが、前進のみで後退はできないのでうまく横に逸れないといけない。「宇宙遊泳モード」も基本的には同じだが、眼前に広がるのが地球のみという違いがある。

クルーズモードの画面。視界の右下にエリアマップがあり、見ている向きに追従する
メニュー画面は視界の左側にポップアップする

 「惑星探査モード」では月や火星に降り立ち、バギーで地表を走り回れる。トリガーボタンで前進、十字キーで左右にハンドルを切れるが、ここでも後退はできない。タイヤが回転しているエフェクトがないのでどちらかと言えば地表すれすれを飛んでいる気分だが、これはこれで面白い。

惑星探査モードで火星を地表探索。上空に雲が出ているのは砂嵐が近いのだろうか
各モードに入る前に、毎回コントローラーの位置調整が行なわれているようだ

 このように、専用コントローラーの役割は「VR空間内の移動」と「メニュー操作」のふたつに大きく分かれる。カーソルが常時表示されるのだが、その役目はプラネタリウムモード以外ではわかりづらい。個人的にはカーソル表示をオフにする選択肢もあったほうが、より没入感が高まる気がする。

 VRゴーグル用のBluetoothリモコンは既にいくつか発売されており、コントローラーと組み合わせる発想自体は新しいものではない。しかし「JOY!VR 宇宙の旅人」はコントローラーがあらかじめ同梱品として含まれ、後から買い足す必要がない。コンテンツはコントローラ利用を前提に制作されており、手軽にVR空間内を動き回る楽しさを体験できる。玩具としてみればとても良くできている。

 個人的には、VR初心者でもあまり迷わずに準備してすぐに遊べそうなつくりが好印象だった。数多あるスマホVRゴーグルの中で、初めてVRコンテンツを楽しもうと考えている人に、選択肢のひとつとして筆者はこの製品を推したいと思う。

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JOY!VR 宇宙の旅人

庄司亮一