ミニレビュー

PS VR+THETA Sで360度写真・動画を試す。星撮りで“自分だけのプラネタリウム”

 PlayStation VR(PS VR)を発売日に購入して早2カ月がたった。VRゲームを遊ぶための周辺機器ではあるが、筆者はどちらかというと、以前持っていたソニーのヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T2」から進化したシアターライクな映像体験ができる「シネマティックモード」に惹かれて購入した。最近はそれだけでは飽き足らなくなり、リコーの360度カメラ「THETA S」で星空を撮って“自分だけのプラネタリウム”が作れないか、この一月ほど試行錯誤している。

Playstation VRとTHETA S

星の光跡を撮ってPS VRで見たい!

 やりたいことはシンプルだ。長時間かけて撮った夜空の写真を合成し、星の光跡を映像として保存。それをPS4の「メディアプレーヤー」で再生し、PS VRでVRモードを使って見たい。ミュージックビデオやアニメーションなどでときどき見かける、頭上を巡る星々の動きをVRモードで再現できたら面白い。

星の光跡のイメージ。ちなみにこれは2014年、小惑星探査機「はやぶさ2」の種子島からの打ち上げを前に、すぐお隣の屋久島で撮影したもの。綺麗に撮れたので気に入っている

 しかし、いざやってみると案外簡単ではなかった。まず360度写真・動画を正しく再生するところでつまづいた。

 PS VRの発売に合わせてPS4のメディアプレーヤーがVer.2.50になり、360度カメラで撮影した写真・動画の再生に対応。しかし、THETA Sで撮った写真や動画をVRモードで再生すると、頭の真上の方向、つまり天頂の情報がうまく読み込まれないためか、見ている向きが360度映像の足元になってしまった。動画に関しては、THETA Sについている2枚のレンズ間の映像の繋ぎ目がうまくステッチングされておらず、しかも横倒しの状態で表示されてしまった。

VRモードで写真を見ると、真っ先に足元が映されてしまった

 12月に入って、メディアプレーヤーが「動作の安定性を改善」したというVer.2.51に更新されたことに気づき、これでUSBメモリやTHETA Sに入っている写真・動画を正しい向きで再生できるようになった。このアップデートの前は、THETA Sで撮った360度写真のEXIF情報を保持したまま写真編集したり、360度動画に対応した動画編集ソフトの使い方を学びながら試行錯誤していたが、そんな手間無しに撮ったものをそのまま見られるようになったのはありがたい。

PS4のメディアプレーヤーの12月16日時点の最新版はVer.2.51

THETA Sで全天周星空写真を撮って見た

 まずはPS VRで見るための星空写真を撮りに、近所の公園に出かけた。撮影時の設定はマニュアルモードで露出15秒、F2.0、ISO 320にしている。

 THETA Sを使った360度星空写真の撮影で工夫したポイントは、映像の繋ぎ目で星像が汚くならないよう、THETAの向きを水平にしてステッチング箇所が地平線にくるようにした点だ。

 今回は三脚とカメラ用の縦位置プレートを組み合わせ、プレート先端にはエツミの小型ボールヘッド(ミニ自由雲台)をねじ込んでTHETA Sを水平に固定した。このボールヘッドで角度の微調整が行なえ、さらにTHETA S下部のUSBポートとHDMIポートが塞がらずに使えるようになる。冬は内蔵バッテリの消耗が早いので、USB給電できるモバイルバッテリは必須だ。

THETA Sでの星空撮りに使った機材

 撮れた360度写真をPS VRで見てみると、都心近郊(千葉・市川)でも案外明るい星がしっかり映っており、PS VRで見た時の星々の広がりも現実のそれに近いと感じる。まさに自分だけのプラネタリウムが出来上がった。

オリオン座とおおぐま座、こいぬ座が写っている。明るい星3つを繋ぐと「冬の大三角」になる。なお、記事用写真はPS VRで見た感じと近くなるよう、若干補正した
さらに南方の頭上を見上げると、明るい星が6つ見える。左上からぎょしゃ座のカペラ、おうし座のアルデバラン、オリオン座のリゲル、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、ふたご座のポルックス。これを繋いで「冬のダイヤモンド」ができあがる

 よく見ると空の階調性やノイズの多さが気になるので、ISO感度はもう少し落としたほうが良かったかもしれない。撮って出しのJPEGファイルだが、手を加えて仕上げればさらにクオリティを上げられるだろう。今後はもっと暗く星撮りに適した場所に行って、THETA Sに実装された星の光跡を360度合成撮影する機能も試してみようと思う。

THETA Sで撮影した2016年11月7日の星空

 余談だが、自分で撮りに行かなくても、PS VRで手軽に星やオーロラが楽しめるVRコンテンツがPlayStationStoreで発売されている。ドーム映像制作や機器提供で知られるオリハルコンテクノロジーズが提供している「NORTHERN LIGHTS -極北の夜空に輝く光の物語-」(800円)や「コズミックフロント☆NEXT VR 南米星空編」(1,200円)だ。いずれもクオリティは高い。

PS4にTHETA S/SCを直接繋いでVR視聴

 THETA Sの360度写真・動画をPS VRで見るには、従来はパソコンを介してUSBメモリなどに手動でコピーし、PS4のUSBポートに挿して読み込む必要があった。しかし、現在はTHETA S/SCのファームウェアアップデートにより、本体を直接PS4に挿して映像・写真をダイレクトに読み込めるようになった。具体的な接続方法は以下の通り。

  • PlayStation 4(PS4)とPS VRを接続し使用できる状態で、ホーム画面の「メディアプレーヤー」アイコンを選択する
  • 電源をOFFにしたカメラ本体の無線ボタンを押しながら、PS4にUSBケーブルで接続する(無線ボタンはカメラ本体のLEDが点滅するまで押し続ける)
  • リスト上に「Ricoh Company, Ltd. RICOH THETA S」が表示されるので選択する
  • 静止画/動画ファイルのリスト画面のオプションメニューで「VRモード」「オン」を選択する
  • 見たいファイルを選択する
電源をOFFにしたカメラ本体の無線ボタンを押しながら、PS4にUSBケーブルで接続する
リスト上に「Ricoh Company, Ltd. RICOH THETA S」が表示される
リスト画面のオプションメニューで「VRモード」「オン」を選択する

 「撮影した映像をパソコンに取り出し、編集してUSBメモリに移し、PS VRで見る」というステップが「撮ってPS4に挿して、PS VRで見る」に短縮されたので、PS VRとTHETA S/SCを両方手に入れたらぜひ、自分だけの360度写真・動画を撮ってVRモードでの視聴を試してみて欲しい。「自分がそこにいた空間」がそのまま目の前に再現されるのは、スマホの画面や小さなVRゴーグルで見るよりも、もっと新鮮な驚きが味わえるだろう。

東京・日本橋室町の「福徳の森」で開催中の、流星と連動する体験型イルミネーション「NIHONBASHI-願いの森」。さまざまな高さの撮影対象に囲まれるようにして撮ると、360度写真の面白さがよりわかりやすくなる

PS VR+THETAの360度体験を「共有」したい

 PS4のメディアプレーヤーとTHETA Sのアップデートにより、自分で撮影した360度写真・動画をPS VRで楽しむことがグッと身近で気軽なものになった。一方で物足りないと感じるのが、PS VRによる360度体験を「共有」できないことだ。

 というのも、THETA動画の投稿サイト「theta360.com」やYouTubeで公開されている360度映像は、VR視聴ができないのだ。PS4のブラウザやYouTubeアプリからはVRモードは選べず、360度写真や動画は、周辺が湾曲した横長く四角い映像のまま再生される。つまり現時点(12月16日)で、PS VRによる360度写真・動画のVR視聴は、実データを持っている人のみに限られてしまうのだ。たとえば自分が撮った作品や、オススメの360度写真・動画をPS VRを持っている友人に紹介しても、同じVR体験はできない。

 YouTubeやtheta360.comにはすでに多くの360度写真・動画が公開されている。自分の体験を共有する場合も、こうしたサービスを利用すれば多くの人に見てもらえるし、PS VRでVR体験できるようになればその魅力は一層高まるはずだ。さまざまな360度映像をPS VRのVRモードで楽しめるよう、今後のアップデートに期待したい。

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庄司亮一