ミニレビュー

オーテク、本格サウンド“Sound Reality”初のBTイヤフォンを聴く。6,000円から

 オーディオテクニカから、6月23日にBluetoothイヤフォン3機種が発売される。注目は、実売が6,000円~15,000円程度と、比較的購入しやすい価格帯である事。そして同社“Sound Realityシリーズ”初のBluetoothイヤフォンである事だ。型番は「ATH-CKR75BT」、「ATH-CKR55BT」、そして「ATH-CKR35BT」だ。

ATH-CKR75BT

 Sound Realityは、“原音再生”、“高解像度”、“高レスポンス”をコンセプトとしたシリーズだ。上位機種では、2基のダイナミック型ドライバを対向配置した「ATH-CKR100」(約4万円)や、「ATH-CKR90」(約2万円)など、オーディオファン向けの比較的高価な製品がラインナップされており、“高級シリーズ”という印象を持つ人も多いだろう。

 しかし、今回聴いてみるBluetoothイヤフォンの実売は、11.8mm径ドライバ搭載「ATH-CKR75BT」が15,000円前後、10.7mm径の「ATH-CKR55BT」が10,000円前後、9.8mm径「ATH-CKR35BT」が6,000円前後と、そこまで高価ではない。Sound Realityの魅力を、より気軽に楽しめる新製品と言える。

ATH-CKR55BT

3機種に共通する特徴

 いずれもBluetooth 4.1準拠で、スマートフォンなどとワイヤレス接続して音楽再生やハンズフリー通話が可能だ。

 昨今ではイヤフォンの左右を完全分離したタイプが登場しているが、CKR75BT/CKR55BT/CKR35BTはオーソドックスなネックバンドタイプだ。左右を繋ぐケーブルにリモコンマイクを備えるほか、首の後ろに来るバッテリケースには、襟元に固定するためのクリップも装備している。

左がバッテリ兼クリップ部分、右がリモコンマイク
首の後の襟元に留められるクリップも装備

 連続使用時間は3機種とも共通で、音楽再生が約7時間、待受けが約200時間。充電時間は約3時間。耳元で操作や通話ができるリモコンも備えている。オーソドックスだが、再生時間や装着安定性などを重視した仕様とも言える。

充電はUSB経由で行なう

音質面の特徴

 位置付けとしては「ATH-CKR70/CKR50/CKR30」の“Bluetoothバージョン”に近いが、いずれのモデルも、新開発のドライバを搭載。また、それにマッチするアンプを搭載する事で、奥行きの表現や解像感などを高めているのが特徴だ。Bluetoothイヤフォンでは、イヤフォン部分の仕様ばかり気にしがちだが、アンプの良し悪しも音には大きく影響する。

 3機種の違いはユニットのサイズやコーデック、そしてハウジングの素材にある。上位モデルのCKR75BTは、11.8mm径のダイナミック型ドライバを搭載。ハウジングはアルミニウムで、不要共振を抑えている。コーデックはSBC/aptX/AACをサポート。

ATH-CKR75BT(左からグラファイトブラック、シャンパンゴールド、ガンメタリック、ブリリアントレッド)

 CKR55BTは、10.7mm径ドライバを搭載。ハウジングは樹脂製だが、内部に制振性を高めるための真鍮スタビライザーを搭載。コーデックはSBC/aptX/AACだ。

ATH-CKR55BT(左からスティールブラック、ディープブルー、シャンパンゴールド、メタリックレッド)

 CKR35BTは、9.8mm径ドライバで、ハウジングのサイズは3機種の中で最も小さい。こちらも樹脂製ハウジングに真鍮スタビライザーを搭載。コーデックはSBC/AACで、aptXには対応していない。

ATH-CKR35BT(左上からブラック、ブルー、ゴールド、ピンク、レッド、シルバー)

 なお、イヤフォン部分としての再生帯域はCKR75BTが5Hz~40kHz、CKR55BT5Hz~35kHz、CKR35BTは5Hz~24kHzまで対応しているとのことだが、Bluetoothの伝送帯域は20Hz~20kHzであるため、ユニットに入力されるのはその帯域のみとなる。欲を言えばLDACやaptX HDにも対応して欲しいところだ。

音を聴いてみる

 SBC、aptX、aptX HDに対応したハイレゾプレーヤー「AK380」とペアリングして試聴した。価格の安い順に、まずはCKR35BTだ。

CKR35BT

 一聴して感じるのは、低域の迫力だ。9.8mm径ユニット搭載で、なおかつハウジングがとても小さく、光沢のある表面がエレガントなので「大人しい音かな?」と思いながら再生すると、真逆の音で面白い。 「藤田恵美/Best of My Love」のアコースティック・ベースの低域が、モリモリで押し寄せてくる。ただ、中広域の明瞭さは維持されているので、モコモコした音ではない。低音がパワフルかつ、クッキリサウンドという印象だ。

 一昔前は、Bluetoothの音というと“圧縮で低域が痩せた、奥行きのない、スカスカした音”というイメージが一般的だが、CKR35BTのパワフルでエネルギッシュなサウンドは、そのイメージと真逆だ。エレガントな見た目で、ロックやテクノ、ポップスなどを、ベースラインの気持ちよさ重視で楽しみたいというニーズにマッチしそうだ。

CKR55BT

 その上位モデルとなるCKR55BTと、CKR75BTの音の違いが面白い。

 まずCKR55BTだが、CKR35BTと比べるとニュートラルでモニターライクなサウンドだ。低域が過度に主張する事は無く、全帯域がまんべんなく聴き取れる。空間表現も広く、見通し良好。女性ヴォーカルの声の響きが、奥まで広がる様子がよくわかる。高音部分の音の響きも自然で、ギターの木の響きと、ヴォーカルの質感、金管楽器の鋭さといった音色の違いがよくわかる。これはなかなかポテンシャルの高い音だ。

CKR75BT

 CKR75BTに交換すると、ニュートラルでモニターライクなバランスは55BTとよく似ている。違いは、ユニットの口径が大きくなった事で、低音の沈み込みがより深く、55BTで「グォン」と響くベースの音が、75BTではさらに一段下から「ズズン」と響いてくる違いがある。

 また、高域の違いもわかりやすい。75BTはアルミ筐体なので、高音に金属質な、綺羅びやかというか、硬い響きがかすかに乗る。これが清涼感や、音の輪郭のシャープさなどをアップさせていると感じる。ただ、人によってはこのアルミの響きが少し気になるかもしれない。

 55BTの筐体は樹脂製で、注意深く聴くと、このイヤフォンにも樹脂のくぐもったような響きが乗っているのがわかる。要するに、どちらのモデルもハウジングの素材がそのまま音にも出ているのだが、その“味わいがより強く出ている”のはアルミの方だ。個人的には55BTの方が自然なサウンドに聴こえる。このあたりは好みの違いだろう。

“Sound Reality”シリーズらしいBluetoothイヤフォン

 iPhoneからアナログのイヤフォン出力が省かれた事で、Bluetoothイヤフォンの注目は高まっている。左右完全分離型も話題ではあるが、ケーブルから開放される気持ち良さの代わりに、落下による紛失や、バッテリ時間などがネックと感じる人も多いだろう。

 今回の3機種は、オーソドックスなネックバンド型ながら、音の良さと完成度の高さが好印象だ。

 低価格なBluetoothイヤフォン/ヘッドフォンでは、低音が過度にパワフルなモデルも見受けられる。今回聴いた中で、CKR35BTは低音寄りの傾向にあるが、かといって“やり過ぎ”と言うほど強くない。また、CKR75BT、CKR55BTはニュートラルな方向で、“Sound Realityシリーズ”らしさがBluetoothでも感じられる。特に、実売1万円の「CKR55BT」は、店頭などで体験すると、コストパフォーマンスの高さがわかるだろう。

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山崎健太郎