ミニレビュー

スマホやアクションカム動画の音にもこだわりたい! FOSTEX「オーディオレトリバー AR101L」

 近頃は仕事で動画撮影する機会が増えてきた。基本的には文章を書くことが仕事なんだけれど、写真撮影は必要だし、文章や写真では伝わりにくい動きの面白い被写体なんかは、動画で見せたい、と思うこともある。そこで気になってくるのは動画の音声。スマートフォンやアクションカムで動画撮影する手軽さ、機動性の高さを活かしながら、高画質な映像に見合った音質にもしたい。そう思って入手したのがフォステクスのマイクロフォンユニット「オーディオレトリバー AR101L」だ。

フォステクスの「オーディオレトリバー AR101L」
iPhoneとの組み合わせ例

 気軽に使えるアクションカムが手元にあるし、スマートフォンのカメラの高性能化や、YouTubeのような動画共有サイトの一般化、読者の方々のネットワーク・ハードウェア環境の向上も、「動画で見せよう」と考える後押しになっている。

 カメラの画質は年々向上しているのに、スマートフォンの場合はほとんどがモノラルマイクで、音質はお世辞にもいいとは言えない。アクションカムも、ソニーのHDR-ASシリーズはステレオマイクでそれなりに評価は高いが、GoProはモノラルマイクで、本体を丸裸にして使わない限り必ずマイク部分がケースにふさがれてしまう。画質は高くても、音質が貧弱というアンバランスな状況になっているわけだ。これから紹介する「AR101L」は、動画の音声も強化するための手段の一つだ。

バッテリーケース付きでプラグインパワー非対応機器にも使える

 AR101Lは、'11年に発売されたAR101の後継機種。AR101との差は、大きな部分ではバッテリーケースが付属したことと、Lightningケーブルを用いるiPhone 5以降と接続しやすくなっていること。製品本体の機能、性能についてはほぼ変わらない。

 製品構成を解説すると、まずAR101Lのメインとなるのがマイクロフォンユニット本体。付属の風防付き小型マイク2個を本体上面にある3.5mmステレオジャックに差し込んで、そこから入力した音声をミックスして本体側面に設けられたステレオアウトから出力できる。また、反対側の側面に用意されているモニター用の音声出力端子も利用可能だ。

AR101Lのマイクユニット本体(付属マイク取り付け済み)
背面側から見たところ
側面にステレオアウト。ここからカメラなどのマイク入力に接続する
反対側の側面にはヘッドフォンなどを接続するモニター音声出力がある

 単4電池を2本格納可能なバッテリーケースは、本体下部にスライドさせる形で固定し一体化して使用できる。バッテリーケースから伸びるミニUSBケーブルと本体を接続すれば、プラグインパワーでマイクが動作しないカメラ機器でも問題なく利用できるようになる。

バッテリーケースには単四電池2本を格納できる
本体とバッテリーケースを合体

 その他には、本体・バッテリーケースをカメラなどのアクセサリーシューと接続するためのジョイント、iPhoneなどを挟んで固定できるホルダーと手持ち用グリップ、本体をiPhone 4S以前と接続可能な30ピンDockケーブル、収納用の巾着袋などが同梱される。AR101Lはあくまでもマイクユニットなので、レコーダーとしての機能はない。レコーダー部分にはiPhoneやカメラなどを用いることになる。

同梱品

 この手の製品と似たアイテムとしては、iPhoneのDock/Lightningコネクタ部分に直接差し込んで使うマイク機器もあるが、それらと比べるとさすがに本体サイズは大きいものの、AR101Lも手のひらに余裕でのるサイズで十分コンパクト。マイクとバッテリーケースを取り付けた状態で、小型モバイルバッテリーのようなサイズ感と考えれば良いだろう。

操作はシンプル。マイクの差し替えにも対応

 本体の操作する部分はわずか1箇所。前面中央にあるダイヤルをプッシュすることで設定モードを切り替え、回転させることでモニター音声のボリューム、入力音声のレベル、2つのマイク入力ごとのバランスなどを調整できる。同じく前面にあるLEDゲージで現在の設定値やレベルをチェック可能だ。

 マイクを差し込む2つの入力端子は3.5mmのステレオミニジャックなので、他の市販マイクを使うのもOK。差し込むだけのシンプルな構造で、マイクの向きを自由に調整しやすいのもメリットだ。通常は左右をやや外側に向けて使うが、後述のiPhoneアプリで設定変更することで、たとえば付属マイク2つを内側に向けてXYマイク風にしてもいいし、単一指向性と双指向性のマイクに差し替えてMS(Mid-Side)マイクとすることもできる。

2つある3.5mmのステレオミニジャックに好きなマイクを差し込める
XYマイク風にするのもアリかも

 ただ、向きを変えやすい反面、付属マイクの場合は固定する仕組みがないので、ちょっと触れただけで簡単に向きが変わってしまうのが気になる。意図せず向きが変わってしまうのを避けたいなら、マイクを固定して使うしかないだろう。それも想定してか、AR101L本体の上面には(底面もだが)カメラのアクセサリーシューと同じサイズの溝が設けられている。大きめのガンマイクをシューアダプターなどと組み合わせて固定する場合でも無理なく装着できそうだ。

即使えるのはiPhoneのみ。他との組み合わせはオプション品が必須

 AR101Lはカメラやスマートフォンと一緒に使うものだが、その主な使用パターンを紹介したい。

 デジカメとともに使用する場合は、本体とバッテリーケースを接続し、ジョイントでカメラのホットシュー部分などに固定したうえで、ステレオアウトからカメラ側のマイク入力に別売ケーブル(フォステクスのオプション品「ET-C0.2」など)で接続する。バッテリーケースの電源を入れれば、カメラで撮影した動画にAR101Lで拾った音声が録音されるようになる。

一眼カメラと組み合わせた例

 GoProなどのアクションカムのマイクとして使う時も、デジカメとほぼ同じでバッテリーケースとともに使用する。ただし、GoProの場合はマイク入力端子がないので、ミニUSB端子からマイク端子に変換するGoPro純正ケーブルを別途用意しなければならない。また、手持ち撮影する際にはアクションカムとAR101Lをまとめて固定できるように、マウントを上手に組み合わせる必要もあるだろう。

GoProと各種マウント類を組み合わせた例
使用するパーツはかなり多い

 iPhoneと一緒に使いたい時は、iPhoneのモデルによって接続方法が異なることに注意しよう。iPhone 4S以前のモデルであれば、付属のDockケーブルで本体と単純に接続するだけでOK。iPhone 5以降の場合は、本体とバッテリーケースを接続し、さらにバッテリーケースのUSBポートとiPhoneをLightningケーブルで接続する。

iPhone 5以降の一般的な接続パターンではバッテリケースを介して利用することになる
ここではMicro USB変換アダプタを使っているが、標準のLightningケーブルでもOKだ

 iPhone 5以降でもバッテリーケースを省いて本体だけで使いたい場合は、付属のDockケーブルをLightningに変換するApple純正のLightning 30ピンアダプタが必須となる。身軽さを重視するならアダプタの購入を検討したいところだ。

バッテリーケースを使わない方法だとすっきりした見た目
Lightning 30ピンアダプタが必須となるのがネックか

 デジカメにも、アクションカムにも、iPhoneにも使えるAR101Lだが、手持ちして使う時のスマートフォンホルダーとハンドル、Dockケーブルが同梱されていることから、AR101LはどちらかというとiPhone(もしくはiPod touch)と組み合わせて使うことを意識した製品だ。さらに、AR101L本体の細かい設定は専用のiOSアプリからしかできないので、実質的にiOSユーザー向けと言ってもいいだろう。

 専用アプリ「AR101」は、iOS端末と本体を接続することで利用できる設定用ユーティリティとなっている。本体でも行なえる音声入力レベルや左右バランスの設定に加え、ローカットフィルターやリミッターの調整なども可能になる。MSマイクの設定もこの中で実行でき、マイクや設定をさまざまに変えて音声収録できる自由度の高さが魅力だ。

iOS端末と接続することでAR101Lの細かい設定が可能
“プリセット”モードでは入力レベルなどの簡単な設定が行なえる
“詳細”モードにすると入力チャンネルごとのボリューム設定やバランス、リミッターなども調整可能
MSマイクも選べるようになる

カスタマイズの面白さも味わえる

 実際にAR101Lで音声収録した動画は、当然ながら、iPhone内蔵のモノラルマイクやGoPro内蔵のモノラルマイクで録音したものとは比較にならないほどクリアなサウンドで、臨場感あふれるステレオ音声で聞くことができる。もし付属マイクでは音質に満足できなくなった場合でも、簡単に他のマイクに差し替えて使えるカスタマイズの面白さもある。

 とりあえず手持ちのカメラやiPhoneの録音音質をグレードアップさせたいユーザーはもちろん、将来的にマイクを買い足して、一歩進んだ機材とテクニックでリッチな録音環境を目指したいユーザーも満足のいく一品ではないだろうか。

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AR101L

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、現在は株式会社ライターズハイにて執筆・編集業を営む。PC、モバイルや、GoPro等のアクションカムをはじめとするAV分野を中心に、エンタープライズ向けサービス・ソリューション、さらには趣味が高じた二輪車関連まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「GoProスタートガイド」(インプレスジャパン)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)など。