ミニレビュー
ソニーの新感覚学習リモコン「HUIS REMOTE」の心地よさ
レイアウトカスタマイズの魅力。PC用アプリも
(2016/2/16 10:00)
ソニーは2月15日、昨年クラウドファンディングを募集した学習リモコン「HUIS(ハウス) REMOTE CONTROLLER」を、クラウドファンディングへの出資者に対して提供を開始した。また同日には一般販売も開始した。価格は27,950円(税込)で、3月以降に配送される予定だ。
今回、HUISを一足先に手にすることができたので、そのインプレッションをお届けしたい。また、今後の展開について、開発チームへの補足取材も行なっているので、HUIS REMOTEの進化の方向についても触れていく。
「電子ペーパーをタッチ」するシンプルなボディ
HUISのパッケージはかなりシンプルな「白い箱」。中にはHUIS本体とマニュアル、充電用のmicroUSBケーブルが入っている。取り出した時にはちょっとしたしかけがあるのだが、それをここで語ってしまうのは野暮だと思うので、クラウドファンディングに応募した人だけのお楽しみ、としておこう。
手に取ってみて、まず目立つのはディスプレイだ。
HUISは電子ペーパーを使った学習リモコンで、操作はタッチで行なう。中身はAndroidをベースとしたコンパクトなコンピュータであり、一般的なリモコンに比べるとインテリジェントな機器といえる。要は「スマホのようなものでリモコンを作った」わけだが、電子ペーパーを使っているので、通電していない時でも画面が消えない。リモコンの場合、大半の時間は「操作しておらず、机の上などに放置されている」時間だが、そこで電源が入っているとバッテリーは持たない。だからこそ、ほとんどのリモコンは物理キーを使っている。そうでないものは、非常に簡単な機能しか持たないか、バッテリーが持たないかのどちらかであった。スマートフォンアプリをリモコン代わりにすることもできるが、いちいちアプリを起動するのは面倒だ。
だが、HUISでは電子ペーパーを使ったので、使っていない時にもリモコンの表示は出たまま。スマホではないので電源ボタンもない。画面を押せばすぐ使える。内部的にはスリープモードが存在し、しばらく使わないとスリープして消費電力を下げるのだが、画面は変わらないのでわからない。そして、操作のために持ち上げたり、画面をタッチしたりすると、内部のモーションセンサーがそれを感知して、スリープモードから出るので使えるようになる。文章で書くと、その移行時にタイムラグがありそうに思えるが、ここ1週間ほど毎日使ったが、ラグを感じることも、スリープから復帰しないこともなかった。スペック上は、普通に使えば、内蔵バッテリーで1カ月は動作するという。
充電は、本体底面のmicroUSB端子から行う。フル充電には4時間程度必要、とのことなのだが、そこまで待つ必要もない。番組を1本見る時につないでおけば、終わるころには半月分の充電ができている、という感じだ。また、充電しながらの操作もできるので、気になる時にちょっとつないで操作する、というくらいで問題なかろう。詳しくは後述するが、HUIS本体のソフトウエアアップデートや、リモコンのカスタマイズのためにはPCを使う。その時にも、このmicroUSB端子でつなぐことになる。
学習リモコンなので、当然赤外線送受信部もある。本体上面の、いかにもリモコンらしい場所にある。本体は立てておけるようになっているが、立てたままの操作は想定していないようだ。
外観に目立つボタンはなく、本体としてはごくごくシンプル。本体下部に「ホームボタン」(詳しくは後述)があるが、デザインに溶け込んでいるのであまり目立たない。「画面をタッチして操作する」こと以外は、リモコンとして戸惑うようなところもないだろう。
本体内でシンプルに機器登録
リモコンとしてHUISを使う場合には、当然、まず「使う機器の設定」が必要だ。
基本は、「機器種別」と「メーカー名」を端末内で選ぶやり方である。国内メーカーの一般的な製品は登録済みなので、タッチパネルを使って選ぶだけだ。選んだあとには「試運転」もあり、そこまで一本化されている。その機器で必要なボタンは、この時自動的に登録される。
これを繰り返せば、HUISは「複数の製品のリモコンを1つにまとめた機器」になる。HUISの外周下部には「ホームボタン」があり、ここを押すと、各リモコン画面から「リモコンのリスト」へ移動するので、そうやって操作する機器を切り替える。
リモコンコードの学習については、テレビやレコーダはまず問題ない。扇風機のようなものの場合、内部にデータベースがないこともある。その時は、リモコン信号を学習させ、ボタンを設定する。方法は一般的な学習リモコンと大差ない。
機器種別にあってリモコンコードがないものを学習させた場合には、ソニー側がデザイン済みの「ボタン配列」が現れる。だから使うのは簡単だ。機種種別にない機器を1から登録することもできるが、その場合には、ボタンの配置や中身を自分で決める必要がある。
HUISではAV機器の他、エアコンや照明など、赤外線リモコンでコントロール可能な機器に対応する。筆者宅では、テレビ・レコーダ・照明を登録して使っているが、自宅にある機器の中で学習できなかったのは、古いエアコンのリモコンだけだった。エアコンはやりとりする情報が多く、HUISだけでなく、多くの学習リモコンで、対応が難しい場合も多い。ただ、主要メーカーの近年の製品は、HUISでもある程度カバーできている。
そうして登録したリモコンレイアウトは、画面上にボタンの絵として表現される。ボタンをタップすれば操作できるわけだが、その辺はスマホのリモコンアプリと同様だ。パネルに配置するリモコンボタンは大きめで、シンプルに使うのに向いている。画面に入りきらない分は、画面を端から端へと「スワイプ」する感じで移動させれば出てくる。
違うのは、タッチ時に振動と音が出るため、「操作したかどうか」がより分かりやすくなっていることだ。個人的な印象では、バイブレーションはもう少し強い方が「操作した」感じがするか、と思ったが、音の方はかなり自然な感じだ。耳障りな「電子音」でもなく、心地よい操作音だと感じる。
タッチ操作なので、さすがに物理ボタンのように「指先だけ」で探って操作するのは難しい。また、電子ペーパーは外光がないと見えないので、暗いところでは操作しづらい。だが、電子ペーパーはかなりコントラストが高く、「暗い中で映っているテレビから漏れる光」程度でも操作はできた。暗いところで使う機器は、後述するカスタマイズによって「大きめのボタン」にしておくことで解決できそうだ。
タッチ操作リモコンは、けっこう操作感に難のあるものも多いが、HUISはこの種のタッチパネル型リモコンの中では、かなり使いやすい方だと感じる。従来、タッチパネル式の学習リモコンでは感圧式パネルが多かった。その場合、ボタンの入力感覚も良くないし、ページ移動をスワイプのような操作で行なうのも難しい。HUISはスマホと同じ静電容量式なので、タッチもスワイプもスムーズだ。
HUISの本領は「レイアウトカスタマイズ」にあり
HUISにソニーが出荷時に登録しているリモコンレイアウトは、基本的にシンプルで使いやすいものが多い、と感じた。とはいえ、複数の機器を頻繁に切り換えて使うのはちょっと面倒。実はHUISにふさわしい使い方ではなさそうだ。
そこで、「カスタマイズ」機能を使うことになる。
HUIS本体内でのカスタマイズは、登録済みのリモコンから「使うボタンを集めてくる」感覚である。リモコンをレゴのように分解し、必要なパーツだけをくっつけて「自分だけのリモコン」にする、と思えばわかりやすい。
この時、ボタンのサイズを変えたり、左右に寄せたりすることはできないが、上下の順番は自由に変えられる。必要な機器の必要なボタンだけを集めたリモコンを作り、普段はそれを使う、という形が基本になる。この時、頻繁には使わないが必要、というものは2ページ目以降に配置し、切り替えながら使うようにするといい。
HUIS本体内で行なえるのは、けっこうシンプルなカスタマイズだ。これは、本体だけで複雑なカスタマイズをするのは難しい、という判断に基づくものだ。とはいえ、もっと凝った操作面を作りたい、という人もいるはずである。
そのため、ソニーはPC上でのカスタマイズアプリを開発中で、2016年春に提供予定という。
このPC用アプリを使うと、ボタンのサイズや配置を自由に変えられるし、画像を読み込み、本体内に登録されていない柄のボタンとして配置することもできる。ボタンだけでなく「壁紙」のように画像を配置することもできる。
HUISのディスプレイはモノクロ16階調なので、画像もモノクロ16階調に変換される。でき上がったデータは、将来的にはユーザー間で交換できるようになるという。
ここで公開しているカスタマイズアプリの画面は、開発中のプロトタイプで、実際に公開されるものとは異なる。とはいえ、ソニー側でも、アプリを完璧に作り込んで公開するより、重視していることがある。
カスタマイズアプリはオープンソース・ソフトウエアにて、GitHubに公開が予定されている。その情報を使い、自由にカスタマイズアプリを作ってほしい、という狙いがあるためだ。
現状のHUISはあくまで「バージョン1」。ファームウェアも、カスタマイズ用アプリも、そこに連携するウェブアプリも進化していく。開発チームも、ユーザーの要望や提案を楽しみにしているという。