レビュー

UHD BD時代の定番プレーヤー!? 旭化成DAC/10万円を切る注目機OPPO「UDP-203」

 3月22日の「シン・ゴジラ」など、注目の新タイトルがBlu-ray化される際に、4K Ultra HD Blu-ray版も同時発売されるパターンが増えてきた。昨年はAVファンの中でも、まだ“登場したばかり”という印象だったUHD BDも、2017年は本格的に広がりそうだ。4Kテレビも当たり前のものになっており、「どうせソフトを買うなら、最高の画質・音質で楽しみたい」と思うのがAVファンの人情だ。

OPPOのUHD BDプレーヤー「UDP-203」

 ただ、御存知の通りUHD BDのプレーヤーを買おうとすると、従来はUHD BD再生機能を備えたパナソニックのBDレコーダ上位モデル、ゲーム機のXbox One Sくらいしかなく、昨年6月にようやくパナソニックの「DMP-UB900」が約13万円で登場。その後の7月に約7万円の「DMP-UB90」が登場。UHD BD再生環境が一気に身近になったことで、「そろそろ買おうかな」と考えている人も多いだろう。

 選べるのは実質的にパナソニックの製品だけという状況下だったわけだが、そこに昨年の12月末から直販サイトで先行販売がスタートした、OPPO Digital JapanのUHD BDプレーヤー「UDP-203」が登場した。

 価格はオープンプライスで、直販価格は91,800円(税込)と、10万円を切っている。ちょうど「DMP-UB900」と「DMP-UB90」の間に入るような形だ。OPPOと言えば、BDプレーヤーの定番メーカー。将来的には上位モデルの「UDP-205」の登場も予告されているが、“BDプレーヤーの雄”が手がけたUHD BDプレーヤーの第1弾が、購入しやすい価格で登場したのは嬉しいところだ。

 ネットワークプレーヤー機能も搭載。さらに、プレーヤーなのにHDMI“入力”も備えるユニークなポイントもある。今後の“UHD BD再生のスタンダード”になりそうな「UDP-203」を使ってみよう。

HDRとBT.2020に対応

 概要をおさらいしよう。ディスクプレーヤーとしては、UHD BD、BDビデオに加え、DVDやDVDオーディオ、CD、さらにはSACDの再生もできてしまう。BD-R/REやCPRM記録のDVD-R/RWの再生も可能の“なんでもござれ”仕様だ。

「UDP-203」

 UHD BDと言えば4K解像度だけでなく、HDRや広色域規格への対応がポイントだが、UDP-203はHDR10とBT.2020に対応。年内のアップデートで、HDRのDolby Visionのサポートも予告されている。OPPOのプレーヤーと言えば、BD時代から「いったいどこまで機能が追加されるんだ」という勢いで機能強化アップデートが行なわれたので、UHD BDプレーヤーでもそうした展開が期待できる。

 「まだHDR対応のテレビやプロジェクタを持っていない」という場合でも、HDRの映像をSDRに変換して、自然に表示してくれる「HDR to SDR変換機能」も搭載している。「ソフトはあるから、対応テレビは無いけど、とりあえずUHDプレーヤー買っておこう」というのもアリだろう。

 システム・コントロール基板のSoCには、カスタム仕様のMediaTek製クアッド・コア・プロセッサ「OP8591」を搭載。7.1chのアナログ出力も備え、旭化成エレクトロニクスのDAC「AK4458VN」を採用している。SN比115dBクラスのDACとしては業界最高水準という、低歪-107dBを実現しており、OSRD(Over Sampling Ratio Doubler)という技術で、帯域外ノイズも低減。IRD(Impulse Response Designed)フィルタを使い、内部で32bit処理する事できめ細やかで自然な信号波形を再現するというチップだ。デジタルフィルタの選択も可能なので、そこは後で見ていこう。

 アナログ出力に加え、同軸、光デジタル出力も装備している。パナソニックとの違いでは、この出力端子に注目だ。約7万円の「UB90」はHDMI出力以外には光デジタル出力しかなく、アナログマルチチャンネル出力はできない。約13万円の「UB900」は7.1ch出力や同軸、光デジタル出力がある。“価格はUB900より安く、UB90に近いが、機能的にはUB900並”というのが「UDP-203」と言える。

ドライブにはカスタムメイドのハイプレシジョン・ディスクローダー・メカニズム

 光学ドライブには、高精度な光学レーザーを使ったカスタムメイドのハイプレシジョン・ディスクローダー・メカニズムを採用。特別なチューニングを施し、読み取りを高速化するだけでなく、強力なエラー検知・訂正機能も備え、安定した再生ができるという。

 シャーシには高剛性のスチールを採用。フロントパネルはヘアライン仕上げのアルミニウム合金。外形寸法は430×311×79mm(幅×奥行き×高さ)のいわゆるフルサイズ。重量は4.3kg。消費電力は40W。パナの「DMP-UB900」(435×199×68mm/約2.4kg)と比べると大きく重いが、ピュアオーディオ機器ととらえればマイナスポイントではないだろう。

 実際に持ち上げたり、触れてみると、各部のパーツの質感が高い。高額な「DMP-UB900」よりも、高級感は「UDP-203」の方が上だ。電源ケーブルは着脱可能で、約1.3mの2P-3P変換アダプター付電源ケーブルが付属する。このケーブルも太く、音質も良さそうだ。

 また、1.8mのHDMIケーブルも付属する。このケーブルはHDMIプレミアム認定取得の18Gbps伝送に対応したタイプで、4K/60pやHDR映像に最適のもの。単品で購入すると結構いい値段がするので、標準で付属するのは嬉しいポイントだ。

付属の電源ケーブル。太めでシッカリしている
付属のHDMIケーブルはHDMIプレミアム認定取得の18Gbps伝送対応モデル

ネットワークプレーヤー機能も搭載。HDMI入力があるのはなぜ?

 ファイルオーディオ関連として、前面にUSB 2.0×1、背面にUSB 3.0×2を装備。USBメモリに保存したファイルや、ネットワーク経由での音楽ファイル再生ができる。PCMは192kHz/24bitまでで、フォーマットはAIFF、WAV、ALAC、APE、FLACなどに対応。DSDも5.6MHzまでサポートし、マルチチャンネルの2.8MHz DSDも再生できる。ネットワークプレーヤー機能としては十分な性能だ。

前面にUSB端子
背面

 ネットワーク用の端子として、Gigabit Ethernet、IEEE 802.11ac対応の無線LANを搭載。DLNAやSMB方式でPCやNASに保存されたファイルを再生できる。

 ホームメニューのネットワークアイコンを選び、DLNAサーバーを選択して再生する。SMB/CIFS/NFSのサーバーにアクセスする事も可能だ。DMP(デジタルメディアプレーヤー)としてだけでなく、DMR(デジタルメディアレンダラー)としても動作。スマホアプリなどのDMC(デジタルメディアコマンダー)からの指令で再生する事もできる。

DLNAサーバー内のコンテンツを選んでいるところ
ハイレゾ楽曲の再生画面

 また、日本向けの仕様もきっちりサポートするOPPOらしく、DTCP-IPもサポート。BDレコーダなどで録画した番組を、ネットワーク経由で再生する事も可能。日本市場向けに、AACのパススルー出力やモノラル2カ国語音声にも対応している。

nasneの録画番組を選んでいるところ

 こうしたメディアプレーヤー機能に加え、HDMIの入力端子も備えている。何に使うのかというと、ここにChromecastなどのHDMI接続型メディアプレーヤ-を接続するためだ。

 前述の通り、ネットワークプレーヤー機能を備えているが、NetflixやHuluなどの映像配信サービスを利用する機能は搭載していない。であるならば、HDMI入力を用意し、そこにユーザーが別途用意したChromecastなどの端末を接続してもらえばいいという、なかなか豪快な考え方だ。

プレーヤーなのに、何故かHDMIの入力端子が

 だが、冷静に考えてみると“うまいやり方”でもある。昨今の4Kテレビは、ほとんどスマートテレビ機能を備え、インターネットの映像配信サービスに対応しており、多くの場合、機能が“かぶる”事になる。

 また、BDプレーヤーやテレビなどで、こうした映像配信に対応する機器は存在するが、処理能力などの面で、Chromecastのような専用端末と比べ、動作が遅かったり、操作性が今ひとつだったり、新たなサービスへの対応が弱いといった部分がある。

 一方で、HDMI入力に端末を接続する形であれば、専用端末を買い換えれば、前の端末がチープになったとしても、新しいものに差し替えられる。このくらい豪快な割り切りをした方が、末永く使うプレーヤー機器としてはいいのかもしれない。「テレビのHDMI端子に繋げれば?」と思うかもしれないが、テレビ側のHDMI入力を専有せず、またUDP-203の高画質処理なども使えるのでHDMI入力があるのは利点だ。なお、このHDMI入力は4Kにも対応している。

Chromecast Ultra
Chromecast Ultraを接続したところ。このように、専用端末の接続を想定している

 実際にChromecast Ultraを接続してみたが、当然ながらテレビに接続した際と同じように利用できる。利用時にはUDP-203のリモコンを操作し、外部入力を選ぶわけだが、プレーヤーのリモコンで外部入力を選択するというのはなんだか不思議な気分だ。Chromecast Ultraはスマートフォンと連携し、スマホで検索・再生しているコンテンツを、Chromecast Ultraから再生させる事ができる。YouTubeやNetflixの動画も同様だ。

Chromecast Ultraと連携したスマホから、テレビに表示したいコンテンツを選び……
UDP-203経由でテレビに表示しているところ

 一方、HDMI出力は2系統あり、映像・音声出力用HDMI 2.0のメイン端子と、HDMI 1.4に対応する音声出力専用端子に分かれている。UHD BD/4K対応のテレビやAVアンプと繋ぐ際はHDMI 2.0を、非対応のAVアンプと繋ぐ際は音声のみのHDMI 1.4で伝送するというわけだ。

 映像だけをHDMI 2.0からテレビやプロジェクタに、音声をHDMI 1.4からAVアンプに、A/V分離出力する事も可能。映像信号の影響を受けず、より高音質な伝送が可能というもので、この価格のプレーヤーでも、こうしたこだわりの出力が利用できるのはポイントだ。

HDMIは、映像・音声出力用HDMI 2.0のメイン端子と、HDMI 1.4に対応する音声出力専用端子に分かれている

 リモコンは自照式でシアタールームでの利用にも適しており、コストを削った感じはしない。操作ボタンも豊富で、設定メニューにもダイレクトにアクセスできる。

付属のリモコン。ライバルのUB90に付属するリモコンよりボタン数が多く、使い勝手は良い
自照式だ

インターフェイスと操作性は快適

 使い勝手の面をチェックしよう。UHD BDをプレーヤーに入れて、絵が出てくるまでの時間を計測すると約15秒。“データ量が大きいUHD BDになったから遅くなるのでは?”と覚悟していたが、まったくそんな事はなく、従来のBDとさほど変わらない。読み込みが遅くてイライラするような事はないだろう。パナソニックの「UB90」は18秒程度。

 UHD BDを再生しながら、ポップアップメニューやトップメニューを操作する際にも、リモコン操作とのタイムラグなどは特に感じず、快適だ。UDP-203側の画質設定などのメニューも、表示は素早く、カーソル移動もキビキビとしていて気持ちが良い。ネットワーク再生機能で、DLNAサーバーから録画番組を選んでいる時なども操作感は快適。パナのUB90もレスポンスは悪くないのだが、押してからカーソルが動くまで僅かなラグがあり、UDP-203の方がスピーディーだ。

前面ディスプレイの左上にUHD BDという文字が出る

 UDP-203のホームメニューは、下部に機能別の大きなアイコンが並び、画面の上部には美しい星空などの壁紙が表示される。マニアックな設定も可能なプレーヤーだが、基本的な操作は簡単で、ホーム画面では複雑な設定が見えないようになっている。「お父さんがいないとUHD BD/BDは再生方法がわからない」なんて事もないだろう。

ホームメニュー画面
選択する機能アイコンを変えると、壁紙も変わる

 画質設定メニューに入ると、UHD BDプレーヤーらしく、HDRの設定項目がある。オート出力に加え、強制ON/OFFも選択可能だ。色空間もオートに加え、RGBビデオレベル、RGB PCレベル、YCbCr 4:4:4、YCbCr 4:2:2、YCbCr 4:2:0が指定できる。HDMIの色深度はオート、12bit、10bit、8bitを用意。こうした細かな設定がキッチリできるところが、BDプレーヤーの定番メーカーらしい安心感だ。なお、HDR10カラーのUHDを再生する際は、色深度はHDR出力のためにオート、もしくは10bitを指定する必要がある。

HDR設定
色空間の設定
色深度も細く設定できる

 オーディオ出力設定では、音量調節も可能。アナログ出力の音量調節も可能で、工場出荷時は可変だが、固定出力にもできる。電源投入時の音量や、最大音量の指定、ダイナミックレンジ圧縮なども利用可能だ。

 マニアックなところでは、旭化成エレクトロニクスの内蔵DAC「AK4458VN」の機能として、デジタルフィルタの設定も可能だ。アナログ出力時の音質に関する部分で、「Sharp Roll-off」、「Short-Delay Sharp」、「Slow Roll-off」、「Short-Delay Slow」、「Super Slow」から選択できる。

DACのデジタルフィルタの設定は5個から選択でき、アナログ出力の音の違いが楽しめる

 スピーカー設定では、ダウンミックスモード、スピーカー数、各スピーカーまでの距離、サイズ、トリムレベルなどの設定が可能。AVアンプのようにクロスオーバーも調整できる。

スピーカー設定も細かい

UHD BD観る。HDRの効果は絶大

 HDR設定は基本的には「オート」でOKだが、前述のように設定で強制的にON/OFFも可能だ。さらに、リモコンの右下に専用の「HDR」ボタンも備えており、これを押すとHDR切り替えメニューが画面下部に小さく登場。映像を観ながらすぐに切り替えられる。映像を観ながらHDR効果を確認したい時や、誰かに「HDRって凄いんだぜ」と自慢する時にも便利そうだ。

リモコンの右下に専用の「HDR」ボタンが
再生中画面の下部に、HDR切り替え専用メニューが出る

 「エクソダス:神と王」のチャプター7。夜の街並みに、上空から俯瞰で迫り、街中にカメラが移動するシーン。SDR従来BDと、HDRのUHD BDを比較しながら観ると、暗部の沈み込みの深さと、松明の強い明るさまでのダイナミックレンジが、HDRの方が圧倒的に広い事がわかる。

 SDRも明暗が鮮やかで美しい映像なのだが、HDRで観ると、闇に沈んだはずの岩肌のディテールが細かく知覚でき、パッと見では真っ黒に感じる部分の中にも、驚くほどの情報があるのがわかる。現実世界でも、暗くて何も見えない場所で、しいばらくじっと目を凝らしていると、徐々に置いてあるものが薄っすら見えてくるが、あの感覚に似ている。

 同時に、建物の壁面をゆらゆらと照らす松明の光は鮮烈だ。夜にライトを見ると、刺激が強く、ちょっと目を細めたくなるが、あの感覚が、テレビを観ていて再現される。この強くて明るい光と、情報量の多い闇の部分が画面内に同居する事で、相互の距離感、奥行き感がプラスされ、3D表示ではなのに立体的に見える。本当に画面の奥が3次元的に広がっているようだ。薄型テレビを壁掛けして“窓のよう”という形容をする事があるが、HDR表示をすると、本当に窓から現実世界を観ているかのようなリアリティがある。

 夜のシーンだけでなく、例えば昼間の会話シーンでも、身につけている装飾品に光が当たって鋭く煌めく様子や、陽の光が壁に当たっているところの眩しさと、室内の影のコントラストがよりリアルに感じられ、「ああ、こんなに高価な装飾品を首にかけられる身分の人なんだな」、「これだけ日差しが強いと昼くらいかな」などと、セリフで語られない情報がひと目でわかる。

 俳優がアップになるシーンでも、肌に当たる光と、光が当たらない首元の暗部の明暗差が大きく、HDRでは立体的で、生々しい。しばらくHDRを観た後でSDRに戻すと、急に映像が平面的で、人間や建造物に奥行きが感じられなくなり、あまり面白くない映像に感じてしまう。

 4K解像度の威力もある。ハチャメチャなノリが魅力の映画「デッドプール」だが、激しいアクションの途中でスローになると、デッドプールのコスチュームの素材の質感や、目のまわりのラバーっぽい部分と、それ以外の布の部分の光の反射の違いといった、細かい部分までUDP-203+UHD BDではよくわかる。実際触れた事はないが、「触るとここはザラっとしているんだろうな」と想像できてしまう。

 SNも良く、パナのUB90と較べても、UDP-203はクリアでクッキリとした表示に見える。「エクソダス:神と王」で比べると、夜のシーンの暗部の締まりというか、暗い部分の深さ、コントラストはややUDP-203の方が強めと感じる。テレビでそのあたりが見にくい場合は、設定メニューからコントラストを1目盛りだけ弱めると見やすくなった。部屋を暗くしてHDR対応プロジェクタで鑑賞する場合はデフォルトのままでも良さそうだ。

 それにしてもHDR映像はリアリティが増すので、映像の力が“強い”。「このシーンがHDRではどんな表示になるのかチェックしよう」と思って、一部だけのつもりで再生をスタートするのだが、絵の力が強くて、画面に目が吸い寄せられてしまい、ついつい停止を忘れて見続けてしまう。この威力は誰にでもすぐにわかる。フルHDが4Kになった事よりも、HDR化した魅力の方が強いかもしれない。「UHD BDとHDRテレビ/プロジェクタを買って良かった」と、実感しやすいのは嬉しい。

効果大のHDMIスプリット出力、デジタルフィルタ設定も楽しい

 音質も良好だ。まずHDMI経由で試聴したが、音場が広く、AtmosなどのオブジェクトベースのサラウンドやHDオーディオで実感する以前に、2chのCDやSACDをかけても、左右スピーカーの外側にまで音場がきちんと広がり、音場の壁のようなものも感じられない。音が素直に、のびのびと出ており、基礎的な音質の高さがわかる。

 だが、これまだ序の口。映像を分離した、音声出力のみのHDMIに差し替えると、SNがグッと良くなり、空間の広さがさらに広大になり、音がしない瞬間の静寂具合、そこからスッと音像が浮かびあがる生々しさまで一気にアップする。HDMIケーブルがもう1本必要になるが、音を聴き比べると、映像分離出力でないと我慢できなくなるだろう。

 「AK4458VN」でデコードされた音は、広い空間表現と、低域から高域までナチュラルなバランスを維持している。「OPPOと言えばESS」というイメージを持っている人も多いと思うが、今までのESS DACのサッパリしたサウンドの印象と「AK4458VN」は異なる。素直でクセの無い音であると同時に、音像の表情がよりわかりやすく、生々しさやダイレクト感のある音に仕上がっている。「クリス・ボッティ/In Boston」の余韻もより深く、旨味がある。

 前述の通り、デジタルフィルタの設定で音も変化する。「Sharp Roll-off」と「Slow Roll-off」の違いは、明瞭度や音の繋がりの滑らかさなどに出るが、「AK4458VN」ではさらに、プリエコーが無く、インパルス応答の立ち上がり特性を自然界の音に近づけたという「Short-Delay Sharp/Slow」というタイプも追加されている。

 実際にShort-Delayの音を聴いてみると、音の輪郭がクリアに、クッキリする。無音の状態から、ビッグバンドジャズのブラスがズバッと音を出すような楽曲では、トランジェント良くなるのがわかる。切り込むような鋭さのある鮮烈なサウンドで、個人的にはとても気持ち良く楽しめる。ただ、人によっては“音がキツイ”と感じるかもしれない。このあたりは、組み合わせるアンプやスピーカーによってマッチする/しないはありそうだ。

コストを大胆に配分した、新時代の定番プレーヤー

 御存知の通り、新しくメディアが登場し、それに対応した各社プレーヤーの第1弾というのは、「とりあえず再生はできます」というレベルで、高価だが製品としてこなれていない事が多い。

 しかし、UDP-203はそれは当てはまらない。OPPOがBDプレーヤーで培った蓄積があるのが大きく、操作性や処理速度も含め“こなれた感じ”が最初からある。価格も10万円を切っており、ハイクオリティなディスクプレーヤーとしては購入しやすい。オマケにネットワークプレーヤー機能までついているので、むしろお買い得感すらある。このあたりは価格でも攻めるOPPOらしさであり、逆にライバルメーカーからすれば脅威だろう。

 ネットワークメディアプレーヤーとして見た場合、重要度が高まる映像配信サービスへの対応がバッサりカットされているのが気になる部分だ。ライバルのDMP-UB900/UB90は、HuluやNetflixなどの再生機能も搭載している。

 「UDP-203」は、HDMI入力を備える事で、「映像配信が使いたいならば、HDMI端末を繋いでね」というスタンス。追加でHDMI端末を買うコストはかかるが、UDP-203を買うようなユーザーは、既にこうした端末を持っている可能性もある。もっと言えば、HDRに対応したテレビには、ほぼ映像配信の受信機能が搭載されているだろう。画質・音質に大事な部分にコストを割り当て、低価格を実現するというのは実にOPPOらしいやり方だ。

 ハリウッド映画に限らず、日本のアニメや邦画でも、2017年にディスク化される大作では、UHD BD版がラインナップされる事が珍しくなくなるだろう。コストパフォーマンスと操作性に優れたUDP-203は、UHD BD時代の幕開けを象徴する定番プレーヤーになりそうだ。

 (協力:OPPO Digital Japan)

山崎健太郎