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[BD]「IMAX:Deep Sea 3D&2Dブルーレイ」

Blu-ray 3Dで擬似スキューバダイビング
ヒトデとホタテがバトル。地味でも最高じゃなイカ?


 このコーナーでは注目のDVDや、Blu-rayタイトルを紹介します。コーナータイトルは、取り上げるフォーマットにより、「買っとけ! DVD」、「買っとけ! Blu-ray」と変化します。
 「Blu-ray発売日一覧」と「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。

■ 魚の映像と3Dの関係



IMAX:Deep Sea
3D&2Dブルーレイ

(c) 2006 Warner Bros. Entertainment. All Rights Reserved.
価格:4,980円
発売日:2010年11月23日
品番:TWBA-X8186
収録時間:約41分(本編)
映像フォーマット:MPEG-4 MVC
ディスク:片面2層×1枚
画面サイズ:16:9(ビスタ) 1080p
音声:(1)英語(ドルビーデジタル5.1ch)
    (2)日本語(ドルビーデジタル5.1ch)
発売/販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ

 パナソニックが3Dテレビの発売を開始したばかりの頃、3D映像のアピールとして、店頭で「沖縄水中散歩」というコンテンツがよく表示されていた。青い海の中、熱帯魚や珊瑚礁を立体的な映像で楽しめるというもので、文字通り海中を散歩しているよう。実際に体験してみたという人もいるだろう。

 ソニーも沖縄の“美ら海水族館”を3D撮影し、銀座のソニービルで上映し、“バーチャル水族館”を展開していた。どうやら3D映像と“泳ぐ魚の映像”というのは相性が良いようだ。

 そんな“泳ぐ魚の映像”を3Dで一度じっくり体験したいと考え、今回は11月23日にワーナーから発売されるBlu-ray 3D「IMAX:Deep Sea」を発売に先駆け、借りてみた。IMAXシアターでの3D上映用に作られた作品で、ジャンル的には“海洋ドキュメンタリー”だ。BD 3Dのクオリティで自宅で楽しめるのは嬉しいところだ。

 調べてみると2006年に公開された作品とのこと。監督と撮影はハワード・ホール。海外の公式サイトを見てみると、撮影はIMAX 3Dカメラで行なわれており、片方の目用に、35mmフィルムよりも大きなIMAX 15/70mm(15パーフォレーション)フィルムを使用。カメラも大型になり、さらには水中撮影用に、専用にカスタマイズした水中ハウジングで被われているため、かなり巨大なシステムになったそうだ。

 その結果、ハウジング+カメラの総重量は、なんと約1,200ポンド(約540kg)。だが、水中では“中性浮遊”と呼ばれる重さと浮力が釣り合った状態(浮きも沈みもしない状態)になることで、無重力の宇宙空間で撮影しているような感覚で扱えるというから驚きだ。確かに映像を見ても、500kg以上のカメラで撮影しているは思えないほどスムーズに移動している。公式サイトにはオフショットも掲載されているが、カメラというよりも、もはや“銀色の巨大な岩のカタマリ”にしか見えない。


(c) 2006 Warner Bros. Entertainment. All Rights Reserved.
 映像だけでなく、音声も豪華。この手の海洋ドキュメンタリーに有名人のナレーションがお馴染みだが、この作品ではジョニー・デップとケイト・ウィンスレットが担当している。男女が対話するように展開する音声にも注目だ。

 なお、ディスクはBlu-ray 3Dの1枚のみで、2Dテレビに接続すれば2D映像が楽しめる。3Dの場合は3D/2Dのどちらも再生可能で、メインメニューから切り替える形になる。今回、視聴はプロジェクタではなく、液晶テレビ・AQUOS「LC-46LV3」で行なっている。



■ 海スゲェ

 鑑賞前はアクション映画でもないので、地味な映像だろうと決めつけていたが、実際に再生が始まると映画とは一味違う3D映像の魅力に引き込まれる。理由は“奥行き感”と、それに伴なう“臨場感”だ。

 夜の漆黒の海に、透き通るように白いクラゲが無数に浮遊している映像からスタート。次に、青い海の中を、サンゴをかきわけるように進むシーンへと続くが、どちらも奥行き感がハンパではない。焦点が合わないほど手前にボヤーっと浮遊しているクラゲ、その少し奥にフォーカスがピチッと合った飛び出すクラゲ、その奥の液晶パネルと同じ位置のクラゲ、パネルより奥にクラゲ、さらにその奥に……と、単にクラゲが泳いでいるだけのシーンでも、“海の深さ”に驚かされる。

 日中の青い海も同様。サンゴは自分の頬に当たりそうなくらいに飛び出してくるが、背後に広がる青い海が果てしなく遠くまで広がっており、その“遠い海中”を悠々と泳ぐ青白いサメとの、“距離の対比”が強烈だ。まさに、テレビの画面が潜水艇の窓になったようで、額縁の向こうに広がる果てしない海に吸い込まれそうになる。

 ダイビングやシュノーケリングをやったことがある人はわかると思うが、ちょっと沖合の海の中は、圧倒されるほど広くて深く、単に眺めているだでも“畏怖”に似た、ある種の恐れを感じさせる。あの感覚が、メガネをかけてテレビを観ているだけで蘇ってくるから面白い。

 脳で感じるだけでなく、例えばミナミセミクジラがカメラの頭上を通り抜けるシーンでは、もの凄く巨大なものが、本当に自分の頭のすぐ上を通り抜けていく気がするので、無意識に頭皮に意識が集まり、頭のてっぺんがジンジンと熱を帯びたように感じてしまう。鑑賞というより、体験に近い。海に潜った事が無い人に対して、“潜るとどう感じるのか?”を説明するのに、適した映像だろう。

 作品の構成は、世界の様々な海にカメラが潜り、面白い生き物達の暮らしぶりを紹介するもので、日本のテレビ番組にもよくあるタイプ。ただ、尺が41分と短いのに、多くの生き物が出てくるため、1つ1つの生き物を説明する時間は少ない。“海洋生物の生態に詳しくなる”というよりも“説明付きで、いろんな海を散歩している”という印象で、気軽に視聴するタイプの作品だ。

 魚の動きがよくわかるのも、3Dならではの利点。カタクチイワシが、まるで竜巻のような群れを作り、外敵から集団で身を守るシーン。日本のテレビ番組でもよくあるシーンだが、3Dではその竜巻が、敵に襲われると手前と奥にも自在に形を変える様がよくわかり、迫力がまるで違う。2Dに切り替えると単に沢山のイワシが乱れなく泳いでいるだけだが、3Dではその群れに頭を突っ込んで、必死に泳ぐイワシの動きを間近で感じられるため、“彼らの危機感”みたいなものが強く伝わってくる。

 クラゲも2Dで観察する分には面白く無いが、3Dでは印象がガラリと変わる。透明な傘の部分が画面の奥にあり、そこから胴体が手前に伸びて、長い触手が画面から飛び出して鼻先をかすめそうな距離でゆらゆら動くと、その体の構造の“不思議さ”、無数の触手の“形状の面白さ”など、細かな点に注意が向き、眺めているだけで飽きない。

 最も面白かったのは、ニチリンヒトデとホタテ貝の攻防。ホタテを食おうとヒトデが近づくのだが、触れられた途端、ホタテは泳いで逃げ出す。その泳ぎ方は、まるで“意思を持った入れ歯”のような動きで、とてもユーモラス。ヒトデがゆったりと移動するたび、その足元からホタテが“パクパク”言いながら次々と飛ぶように逃げていく。3Dで観ているとホタテが自分の方に“大変だ大変だ”と言いながら飛んでくるように見えて、思わず笑ってしまった。圧巻はラスト近くのサンゴの“一斉産卵”。粉雪をさらに細かくしたような無数の卵が視界を覆う非現実的な美しさは、一見の価値がある。


■ 出てくる生き物がわりと地味

 3Dでじっくりと海の中を観察するのは新鮮な感覚で、非常に面白いのだが、内容的に若干不満な点もある。それは登場する生き物が、わりと“地味”なことだ。カメやミズダコ、イカ、ヒトデなど、お馴染みの生き物達の暮らしぶりがわかるのは面白いのだが、もうちょっとスター性のある生き物も追って欲しい。例えばサメが獲物を追い回したり、シャチがアザラシに襲いかかるなど、“派手”なシーンがあまり無いのだ。“タコとシャコの睨み合い”の次は“ヒトデとホタテ貝”といった感じに、海底の、こじんまりとした一角に目を向けたアングルが多いのだ。もしかしたらカメラが巨大で、動きの素早い魚を撮影するのが難しかったのかな? と邪推してしまった。

 2D表示で確認するとフィルムグレインは多めで、遠景は輪郭の甘いボソボソした描写なのだが、3D表示にすると不思議なほど気にならない。近景の解像感の高さ、情報量の多さは流石にIMAXで、海底の砂粒の1つ1つまで見え、小さな生き物の動きもよくわかる。デジタルシネマのようなクリアさは無いが、フィルムらしいこってりとした色合いや、粘りのある暗部の階調は、深い海の映像にはマッチしている。

 音声フォーマットは英語、日本語ともにドルビーデジタル5.1ch。映像がこれだけのクオリティで、なおかつ長い作品でもないので、音声フォーマットはロスレスのものを採用して欲しかったところだ。なお、ナレーションは落ち着いたトーンで聴きやすいのだが、3D映像に字幕が入ると、焦点の移動が多くなり、若干疲れを感じる事もある。途中で日本語吹き替え&字幕無し設定でも再生してみたが、この方が目への負担は少なそうだ。

 また、特典が一切無いのがちょっと寂しい。水中の3D撮影には様々な苦労があったと思われるが、そのあたりを解説するコンテンツが欲しかったところ。環境系ソフトでよく見られる、ナレーションをOFFにして音楽と映像だけで楽しめるモードなどもあると、ヒーリングソフト的に楽しめて良かっただろう。


■ 映画以外の3D作品が持つ魅力

 個人的な経験だが、ハイビジョンのデジタル放送が始まった事で、鑑賞するテレビ番組のジャンルが変化した。以前はバラエティなどが中心で、たまにドキュメンタリーや紀行物などを楽しむ程度だったのだが、今はBSデジタルなどで放送されている旅番組や、世界各地の街の風景などを紹介する番組を、積極的に録画している。

 これは一重に、ハイビジョン化した事で映像の情報量がアップし、“美しい映像を観ているだけで楽しい”という感覚が芽生えたためだ。紀行物では“その場に行ったかのような臨場感”が向上することで、番組自体が面白くなる。3Dには、こうしたSD→HDの臨場感アップを、さらにもう1歩前に進める力がある事がこのソフトでも確認できた。来客時に3D映像の魅力をアピールするにも良い1本だが、ボリューム的に4,980円という価格はもう少し下げて欲しかったのが正直なところだ。

 今のところ、3Dコンテンツと言えば映画がメインで、3D鑑賞する事自体が日常生活と異なる、一種のイベントという感じになっている。だが、将来的にテレビで3D番組が増えた場合、むしろ動物番組や、ヨーロッパの街並みを紹介するような番組、宇宙の神秘を紹介するような番組こそ、3D鑑賞したいと思うようになりそうだ。



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(2010年11月15日)

[ AV Watch編集部 山崎健太郎 ]