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[BD]「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語」

TVシリーズの衝撃再び!? “魔法少女達の壮絶な生き様”の記録

 このコーナーでは注目のDVDや、Blu-rayタイトルを紹介します。コーナータイトルは、取り上げるフォーマットにより、「買っとけ! DVD」、「買っとけ! Blu-ray」と変化します。

 「Blu-ray発売日一覧」と「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。

ホワホワした魔法少女アニメの裏側

劇場版
魔法少女まどか☆マギカ
[新編]叛逆の物語
完全生産限定版
Blu-ray
(C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka Movie Project Rebellion
価格:
10,260円
発売日:
2014年4月2日
品番:
ANZX-3531
収録時間:
本編約116分+特典
映像フォーマット:
MPEG-4 AVC
画面サイズ:
16:9
音声:
(1)日本語(DTS-HD MasterAudioステレオ 48kHz/24bit)
(2)日本語(DTS-HD MasterAudio 5.1ch 48kHz/24bit)
(3)コメンタリ
発売・販売元:
アニプレックス

 4月期も50作品以上のアニメがスタートするが、毎期にたいがいあるのが「ロボットアニメ」だ。ガンダムやエヴァ(ロボット?)のように、少年がある日パイロットになり、戦いの中で成長していく“アニメの王道”パターン。とはいえ、実際そんな状況になったら、パイロットになるのは大人の兵士で、わざわざ少年を乗せる理由はない。リアリティを追求すると、ロボットアニメが全部ボトムズみたいになってしまい、子供が受けがあまり良くない。なんとか少年を乗せるために“偶然乗り込んでしまう”とか“彼にしか操縦できない”とか様々な設定がひねり出される。戦うためには決意も必要なので、些細な点ではあるが、作品全体の流れが決まる要素でもある。

 ロボットアニメと同じようなジャンルとして、魔法少女アニメというのもある。少女の前に、猫ともウサギともつかない可愛いマスコットキャラが現れ、「魔法少女になって欲しい」とお願いされる。敵はロボットアニメよりメルヘンで、例えば魔法の力で凶暴になった動物とか、人間に捨てられた寂しさで動き出したヌイグルミなどが多い。可憐な魔法で倒せば、元の可愛い姿に戻ってめでたしめでたしだ。

 2011年の1月から放送された「魔法少女まどか★マギカ」という作品も、タイトルに書いてあるのだから“魔法少女アニメ”だ。登場する少女達のキャラクターデザインはホワホワで可愛く、猫だかウサギだかのマスコットも出てくる。まどか、さやかという2人の少女が、セオリー通り「魔法少女になって欲しい」と頼まれ、先輩魔法少女・マミさんの華麗な戦いぶりに憧れる。ここまでは実に“まっとうな魔法少女アニメ”で、私のような大きなお友達も目尻を下げて観ていられる。だがその直後、マミさんが怪物に頭部をまるごと食われて死ぬシーンがテレビに映し出され、深夜にダイエットコーラを鼻から吹く事になる。

 魔法少女アニメらしく可愛く表現すると“パックンチョ”だ。響きが可愛くても、映像の凄惨さは繕えない。魔法少女アニメといえど、敵と戦うのだから、負けたり傷つく事もあるだろう。リアリティを持ち込めばその通りなのだが、実際にメルヘンな映像の中でそれをやられると衝撃的だ。「リリカル・マジカル・ピピルピ〜♪」的な魔法で可愛く敵をやっつけた後、魔法のドレスにべっとりついた返り血を風呂場で洗っている主人公を目撃してしまったような、強烈なショックで視聴者をひきつけた。

 坂道を転がるように、そこからは凄まじい展開が続く。シリーズ構成と脚本は、ハードな作品で定評のあるニトロプラスの虚淵玄氏。この時点で「普通の魔法少女アニメになるわけがない」とマニアは身構えていたはずだが、その斜め上を突き進み、「こんな壮絶な運命に叩き込んでいいのだろうか」と気の毒なほど容赦のない展開で最後まで突き進んだ。文句無しに面白いのだが、胃もたれしそうな“重さ”に好き嫌いが別れそうな作品でもある。後半の宇宙規模のカタルシスも手伝い、近年のアニメの中でも“別格”的な人気を獲得したのはご承知の通りだ。

 TVシリーズを再構成した総集編的な劇場版が公開。その後の2013年10月から公開されたのが、TVシリーズの続編となる新作「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語」だ。そしてそのBlu-ray/DVDが、4月2日から発売された。ファンは劇場で鑑賞し、BD版も購入している事だろう。ここでは「話題だけれど観たことがない」という人に向け、ネタバレを控えめに紹介していく。なお、劇場版の前にTVシリーズは押さえておきたい。昨年12月25日に、BD-BOXの低価格版が発売されているので、これと一緒に、一気に「[新編]叛逆の物語」まで楽しむというのもアリだろう。

衝撃のテレビシリーズ。その後の世界とは……

(C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka Movie Project Rebellion

 大好きな家族がいて、親友がいて、時には笑い、時には泣く、そんなどこにでもある日常。市立見滝原中学校に通う普通の中学生・鹿目まどかも、そんな日常で暮らす一人。ある日、彼女は不思議な生き物・キュウべえと出会い、「魔法少女になってほしい」と自らとの契約を勧められる。魔法少女になれば、どんな願いでも叶えられるという。しかし、謎の転校生・暁美ほむらは、まどかに対し、その誘いを拒否するよう忠告する。

 魔法少女の使命は“魔女”と戦う事。先輩の魔法少女・マミの戦いぶりを目の当たりにし、魔法少女に憧れる一方で、その危険性や、過酷な運命も知るまどか。一方、まどかより一足先に魔法少女になった友達のさやかは、その運命に翻弄され、追い詰められていく。次第に明らかになるキュウべえの正体、まどかに拘り続けるほむらの目的。全てを悟ったまどかは、大きな犠牲を払いつつも、魔法少女達を、その残酷な運命から解き放つ事に成功する……。

 ここまでが、テレビシリーズの大まかなあらすじだ。劇場版は、その後の世界を描いた新作。まどか、さやか、ほむら、マミ、杏子の魔法少女達が、学園生活を送りながら、ナイトメアと呼ばれる怪物が出現すると、魔法少女に変身。退治する毎日が描かれる。

 序盤は、彼女達の華麗な戦いぶりと共に、各キャラクターを改めて紹介するような物語が展開する。ただ、キャラクターの性格が若干TV版と異なっており、同時にテレビシリーズの続編であるならば、そこに登場するはずのないキャラクターもいたりと、楽しみながらも「なんかおかしいな?」、「これっていつの話なの?」という違和感を抱いたまま鑑賞する事となる。

 言ってしまえば“ありがちな魔法少女アニメ”としてスタートするわけだが、その世界に違和感を感じたほむらが、その究明を始めると、幸せそうだった世界が、急にカキワリのような不安定さを露呈、その奥に“異様な何か”が見え隠れし、鳥肌が立つ。藤子不二雄のSFとか、ビューティフル・ドリーマーとか、そういった作品に似た“静かな狂気”が漂う。ふんわり魔法少女アニメが、“パックンチョ”でガラッと雰囲気を変えたあの衝撃を、劇場版で再び再現するような流れが面白い。

 劇場版の世界が何なのかが明らかになると、物語は一気に“まどマギ”らしい壮絶なものへと変化。キュートな魔法だけでなく、銃器も用いるのがこのアニメの特徴だが、今回は魔法少女同士のバトルまで展開する。「リベリオン」のガン=カタか、「緋弾のアリア」か「ゼロイン」を彷彿とさせるような、近距離でのガンアクションが1つの見どころ。流血もいとわない少女達のバトルは、独特の美しさがあり、目が離せない。

 TVシリーズが2011年なので、細かな設定を忘れてしまった人もいるだろう。魔法少女と魔女の関係、魔獣とは何か? あたりを、事前にネットなどで軽く調べておいてから観ると、ほむらと共に“何かおかしいぞこの世界”という違和感を感じられ、映画の中へと入り込みやすくなるだろう。

 最終的に、事態は“宇宙規模”のスケールへと発展するので呆気にとられるが、全体を通した印象としては、TVシリーズであまり報われなかったキャラクターの救済がテーマだと感じられる。多くのアニメは劇場版となると、やたら風呂敷を広げて壮大な話になるもので、たいがいは「愛」とか「みんなを思う気持ち」みたいな“綺麗なパワー”で事態を収束させがちだ。しかし、単純にそうはならないのが“まどマギ”らしい。

 力づくでも、視聴者の予想通りで終わってやるものかというこだわりが、画面から滲み出る。愛なんて生ぬるい、いっそのこと“ヤンデレ”まで行ってしまえというような、予想の斜め上を最後まで突き抜けていく姿勢が、最後まで貫かれていて小気味良い。このテンションの高さが、TVシリーズのラストから落ちないまま、むしろさらにパワーアップしている。こんな映画化は、なかなかお目にかかれない。

異なる質感が同居した個性派映像

 映像面の特徴は、魔法少女が戦う場所となる“異界”の表現だ。布地や切り絵をツギハギしたような世界で、まどか達キャラクーと質感がずいぶん異なる。また、異界に登場するナイトメアなどの動きはフレームレートが低いようなカクカクしたもので、滑らかに動く魔法少女達と、動きの対比もユニークだ。

 この表現はテレビシリーズでも同様だったが、劇場版のBDを大きなスクリーンで鑑賞していると、少し戸惑う事がある。背景が平面的で、色彩が豊かなので、悪くいうと“ゴチャッ”としており、カクカク動くナイトメアに視線を奪われていると、シーンチェンジの際に魔法少女の動きを見失う事がある。しばらく観ていると目が慣れてくるので気にならなくなるが、もう少し明度などに差をつけて、瞬間的に認識しやすくして欲しかった気もする。

 通常世界の描写はグレインも少なく、クリアそのもの。キャラクターの輪郭を薄い色で、複数の線で描く事でフワッとした柔らかさを出しているのがこのアニメの特徴だが、BDではアップになっても細かな線の描写が安定している。髪の毛の細かな動きも美しい。

 前述の異界の中では、布や写真を切り貼りした背景&オブジェクトと、クリアな魔法少女達という異なる質感が1つの画面内に同居する事になるが、その特徴がしっかりと描き分けられている。テレビやプロジェクタを調整する際は、布地の細かな凹凸などが滑らかに表示できているかを指標にすると良いだろう。細部に謎を含んだメッセージが登場する作品なので、コマ送りで確認できるBDの発売は喜ばしい。イマジネーションの洪水のような映像美は、見慣れてしまうと“まどマギだから当たり前”と感じてしまうが、改めてスクリーンで鑑賞すると、アイデアと色彩の豊かさに圧倒される。

 音声はDTS-HD MasterAudioのステレオと5.1chで収録。どちらも48kHz/24bitで収録されている。弾丸乱れ飛ぶバトルシーンの移動感や、後半の静かな表現など、広い空間描写が楽しめる。中にはキャラクターが部屋の中をグルグル回るような面白いシーンもあり、サラウンドでの鑑賞をオススメしたい。

 私のようなアニメファンはもう何も考えずに“とりあえず限定版”を買うのが癖になっているが、限定版にはサントラCD、特典BDが付属している。特典BDの目玉は「HOMURA 1st take version.(stereo / 5.1ch)」。これは、物語の終盤の、あるシーンから後のほむらの声(CV:斎藤千和さん)の、ファーストテイク版を収録したもの。どうして劇場公開された音声と異なるテイクを収録したのかはブックレットに書かれている。

 聴き比べてみると、感情の強弱の表現がかなり変わっている。セリフは同じなのだから、そんなに変わらないではと思っていたが、通して聴いているとほむらというキャラクターから受ける印象がかなり変化して驚かされる。やはり上映されたバージョンの方が神秘的で、作品にマッチしていると感じる。

 オーディオコメンタリはキャスト陣が登場。作品への思い入れが強く、考察や、演じていた時のエピソードなどを語ってくれ、情報量は豊富。映像が抽象的なシーンも多いので、「台本の段階では意味がわからなかったけれど、映像になってなるほどと理解した」という趣旨のトークが多くて、まどマギらしい。

 他にも、劇場マナー告知短編映像、特番の「劇場版公開記念 2時間でわかる! 大ヒットアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」」なども含まれている。この特番はテレビ版の内容をおさらいしているので、これで復習してから本編を楽しむというのもアリだろう。通常版BDの特典はオーディオコメンタリ、ノンクレジットOP/EDのみだ。

“少女達の生き様”の記録

 アニメは、ストーリー展開、世界観の設定、キャラクターといった素材を、クリエイターが調理し、完成した料理として視聴者に振る舞ってくれるものだ。視聴者はそれを楽しむと共に、キャラクターだけを抜き出して好きなように味付けして、同人誌やネットなどで盛り上がったりする。

 まどか☆マギカという作品の特徴は、料理として完成した状態であっても、それらの素材の結びつきを意図的に弱くしてある事だと感じる。つまり“何でもありにしやすい作品”だ。出来上がったカレーライスを肉じゃがに変えろと言われたら難しいが、下ごしらえをした人参、玉ねぎ、じゃがいも、豚肉の状態で維持されていれば、そこからカレーにも肉じゃがにもできる。

 作品を“ストーリーの流れ”で楽しむ人にとっては、その流れがあまり重視されていないので、地に足がつかないような不安定感を感じる作品だ。逆に、魔法少女達のキャラクターに強く感情移入し、彼女達の喜怒哀楽に寄り添うような視聴の仕方をすると、不安定な足場は無視して、グッとのめり込める。「エヴァ」のように、謎が多いのでつい一歩引いて「えーと、これはどういう事だ?」と考えたくなるが、それをせず「ほむら頑張れ!!」などと、前のめりで鑑賞するのが良いだろう。

 TVシリーズと劇場版が作られた後の現時点でも、彼女達という素材はゴロゴロした状態で維持されているので、いかようにも“次が作れる”作品だと感じる。個人的には、劇場第2弾もあるならば観てみたいが、“彼女達がどこに着地するか”に興味はあるものの、あまりに自由度が高いので、そこまでにどんなストーリーが展開するかには、正直もう興味が沸かない。全体のストーリーはもしかしたらどうでもいいのかもしれない。友を想い、恐怖と後悔を乗り越え戦うことを選んだ“少女達の生き様”、それ自体に価値を見出し、先鋭化した傑作だ。

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(山崎健太郎)