◇ 過去の連載 ◇
【Watch記事検索】
  

第502回:ローランドが「Musikmesse」の新製品を披露

〜iPad連携シンセ「JUPITER-50」や「V-Drums」など 〜


 3月21日〜24日、ドイツ・フランクフルトで楽器関連の見本市「Musikmesse 2012」が開催され、各社より、さまざまな新製品が発表された。ローランドも数々の新製品を発表していたが、その国内でのお披露目となる内覧会が4月4日に行なわれた。各種電子楽器のほかに、Wi-Fiで楽器とiPhone/iPadを接続するシステムなど、ユニークなシステムもいろいろと登場してきているので、紹介していこう。

4月4日に国内で新製品発表会を行なった


■ シンセサイザ「JUPITER-80」の弟機が登場

 昨年発表されたローランドのフラグシップ・シンセサイザ・キーボードのJUPITER-80。実売価格が30万円前後と、一般ユーザーにはなかなか手が出せない機材だが、そのJUPITER-80の表現力を継承した弟分、JUPITER-50が発表された。価格はオープンプライスで、5月下旬に実売価格19万円前後で発売される。

JUPITER-80 新モデルのJUPITER-50

 JUPITER-50は全音色がBehavior Modeling Technologyという技術を用いた「SuperNATURALサウンド」を搭載。このBehavior Modeling Technologyというのは、楽器そのもののモデリングだけでなく、奏法における各楽器独特の振る舞いも含めてモデリングするというもので、リアルタイムに自然で豊かな表現を可能にするというもの。

 JUPITER-80と比較すると最大発音数が256音に対して128音だったり、ディスプレイサイズが800×480ドットに対して240×64ドットであるなど、違いはあるものの、シンセサイザとしての魅力はそのまま残している。また、その分、本体が薄くなるとともに軽量化し、重量で比較すると17.7kgに対し11.0kgと持ち運び易くもなっているのだ。

 このJUPTER-50の登場にあわせ、JUPITER-80もファームウェアバージョンアップが図られ、JUPITER-80 Version2へと進化している。これによって、双方ともにiPadとの連携機能が搭載されているのだ。5月にApp Storeからリリースされる予定の無料アプリ「JP Synth Editor」をインストールし、iPad Camera Connection Kit経由でJUPITER本体とUSB接続すると、シンセサイザのパラメータをコントロールできるようになる。本体のディスプレイが小さくても、iPadがあればさらに操作性も高く、大きな画面でエディットできるから問題ない、というわけだ。

 また、DAWであるSONAR X1 LEがバンドルされるとともに、Control Surface Plug-inも同梱される。このプラグイン自体は4月中旬よりローランドサイトよりダウンロード可能になるが、CakewalkのACT(Active Controller Technology)に対応したもので、SONARのコントロールサーフェイスとしてJUPITERを使うことができるようになる。

iPad Camera Connection Kit経由でシンセサイザのパラメータを調整できる JUPITERをSONARのコントロールサーフェイスとして利用できる


■ V-Drumsの新しい2モデル

 エレクトリックドラムであるV-Drumsにも、フラグシップのTD-30シリーズの下のモデルが2つ追加され、いずれも3月30日よりオープンプライスで発売された。音源モジュールにTD-15を採用したドラムキットTD-15KV-S(実売23万円前後)とTD-15K-S(実売19万円前後)、TD-11を採用したTD-11KVS(実売15万円前後)とTD-11K-S(実売11万円前後)。

V-Drumsの新モデル TD-15 TD-11

 位置づけとしてはTD-9の後継となるコンシューマモデルであり、音源モジュールをTD-30と比較してもシンプルな形でコンパクトものになっているが、TD-30に搭載されている「V-Drums SumerNATURALサウンド・エンジン」はここに引き継がれている。この辺の考え方はJUPITERとも共通で、Behavier Modeling Technologyがベースにある。具体的な例を挙げるとと、連打したときの自然な音色の変化を実現したり、キックを踏むとスネアなどのスナッピーが共鳴するなど、ドラムキットとしてよりリアルで自然な音を演出してくれるのだ。実際ヘッドホンをつけて叩いてみたが、TD-9での音とは明らかに違うリアルなドラムサウンドになっていた。

 TD-15とTD-11の音源モジュール単体の販売も行なわれ、従来のV-Drumsとの音源交換も可能となっている。いずれもオープンプライスで実売価格が7万円前後、5万円前後で、ドラムキット数や音色数に違いがあるのだが、最大に違いは「QUICK EDIT」ボタンの有無だ。このボタンを押すと、スネア、各タム、キックなどそれぞれのチューニング、ミュート、スナッピーなどを自在に調整でき、それを自分のオリジナルキットとして保存することができるのだ。やはりドラムキットを使っていても、もうちょっとスネアをミュートしたい、タムの音程を若干下げたい…ということがあるが、そんなときにすぐに調整できるのはなかなか便利だ。

 さて、このJUPITERと新V-DrumsにはUSB機能について共通点がある。それは、いずれにもPCと接続するUSB端子が用意されているとともに、USBメモリと接続するUSBホスト端子が用意されていること。PCと接続した場合、MIDIインターフェイスとしてMIDIコントロールができるのはもちろん、オーディオ接続もできるので、演奏した内容をそのままPCでオーディオレコーディングしたり、反対にPCで再生する音をJUPITER側、V-Drums側で聴くといったことが可能となっている。

USBメモリ接続用のホスト端子 PC接続用のUSB端子

 これに加え、今回またユニークな機能が発表された。それがRoland Wirelsss Connectというもので、USBメモリではなく「WNA1100」という機器を接続すると、iPhoneやiPadとオーディオのワイヤレス接続が可能になるというのだ。どんな仕組みで、どんなことができるのが非常に気になったので聞いてみたところ、WNA1100というのは別に特殊なハードウェアというわけではなく、単なる無線LANのアダプタで、NETGEARがPC用の無線LAN機器として海外で販売しているとのこと。

 国内では販売されていなかったので、Rolandが代理店として扱う形で、5月下旬より実売価格4,200円前後で発売されるという。つまりWi-FiでiPhoneとJUPITERやV-Drumsを接続してオーディオ伝送するという比較的シンプルなものなのだ。Wi-Fi接続なので、当然使用するWi-Fiのアクセスポイントが必要になるわけだが、すでに家庭内などでWi-Fiが使える環境になっていれば、それでOKだ。

USBメモリくらいのサイズの無線LANアダプタ「WNA1100」 TD-15に接続したところ WNA1100のパッケージ
iOSアプリの「Air Recorder」

 このアダプタの発売に合わせ、5月ごろより2種類のiPhone/iPad用アプリが無料で登場する。ひとつは「Air Recorder」というレコーディング・アプリ。iPhone内にあるiTunes楽曲を再生すると、その音が楽器側へと送られ、それに合わせて演奏することができる。さらに、その演奏結果をiPhoneでレコーディングできてしまうという構造になっている。

 もう一方は「V-Drums Friend Jam for iPhone」というアプリ。これは現在PC版の「V-Drums Friend Jam」をiPhoneやiPadでも使えるように移植したもので、ソーシャル・ドラム練習ソフトとでもいうユニークなものだ。課題曲もしくは自分の好きな曲に合わせてドラムを叩くとローランド独自の判定基準にしたがって採点され、その結果をTwitter経由でやりとりすることで、世界中のV-Drumsユーザーと得点を競い合えるようになっている。ただ、これまでPCとMIDI接続する必要があるなど、設置場所などの問題からうまく使えなかった人や、接続が面倒で使っていなかった人も多そうだが、Wi-Fi接続ならもっと手軽に使うことができそうだ。

 ここで、やはり気になってくるのがレイテンシーの問題。Wi-Fi接続だと、どうしても音の遅れがでてきそうだが、実はその仕組み上、レイテンシー問題が一切発生しない構造になっているのだ。確かにiPhone側で音が出るタイミングと楽器側に音が届くタイミングではズレはありそうだが、ユーザーは楽器側に届いた音だけをモニターしており、iPhoneでモニターするわけではないので、仮に1秒のレイテンシーがあったってまったく問題がないわけだ。そして、iPhoneから届いたBGMに演奏した結果をミックスしたものを、再度iPhoneへと転送し、録音するようになっているので、ここでも問題は起こらない、というわけなのだ。このことはFriend Jam for iPhoneでも同様である。

 もうひとつ気になるのがCoreAudioとの互換性。これまで数多くのDTMアプリが登場しており、その多くがCoreAudioに対応している。もし、このRoland Wirelsss ConnectのシステムがCoreAudioと互換関係にあれば、大半のDTMアプリで利用できることになるわけだが、残念ながらそうはなっていない。あくまでもRoland Wirelsss Connect対応のアプリが必要とのことなので、今後これに対応するアプリがどのくらい登場してくるかが、普及における大きなポイントになるかもしれない。

 また、仕組み的に考えれば楽器とiPhone/iPad間での接続だけでなくWindowsやMacとの接続も可能になるはずだが、現在のところは具体的なPC用のソフトを開発する予定はないようだった。

 なお、Roland Wirelsss Connectに対応している機材は上記のTD-15、TD-11、JUPITER-80、JUPITER-50のほかにTD-30、JUNO-DI、JUNO-GI、Lucina AX-09と次に紹介するFR-1Xとなっている。



■ V-Accordionや、ギターアンプ、BOSSのボーカル向けエフェクトなど

 そのほかにも、いくつかの機材が発表されているので、簡単に紹介していこう。まずは、電子アコーディオンであるV-Accordionの新モデル、FR-1XとFR-1Xb。ともに6月発売でオープンプライス。FR-1Xが鍵盤タイプで実売が20万円前後、FR-1Xbがボタンタイプで21万円前後だ。そもそもアコースティックのアコーディオンは、流通数、生産数が減っていることもあり、非常に高価なものになってきている。オモチャタイプを除くと、安くて20万円、通常50〜100万円近いものとなってしまうため、比較的安くて高機能、高性能ということでV-Accordionが注目を集めているのだ。

FR-1X FR-1Xb

 今回のモデルでは、約6.5kgと軽量・小型ながらスピーカーを内蔵しているため、まさにアコースティックアコーディオン感覚で気軽に弾いて、外での演奏なども可能になっているのだ。最新のテクノロジーで物理モデリングしている音源だから、音色もいろいろとだせるし、USBメモリに入れたWAVファイルやMP3ファイルをBGMに演奏できるというのもアコースティック機器では実現不可能だったところだ。

GA-212(下)とGA-112(上)

 ギターアンプのGA-212およびGA-112の2機種も発表された。いずれも7月発売でオープンプライス、GA-212の実売価格が10万円前後、GA-112が8万円前後となっており、ローランド自慢のモデリングテクノロジー、DSPによるCOSM技術を搭載したアンプとなっている。

 ご存知のとおり、ステージ用のギターアンプは真空管アンプが圧倒的となっているが、今回のギターアンプはDSPアンプとしてこの世界にチャレンジする製品。モデリング技術を使うアンプというと、その多くはFenderやMarshall、VOXなどの往年の名機を復刻させるものとなっているのに対し、GA-212/GA-112はあえて既存の機器の復刻版ではなく、オリジナルアンプにしている。

 特徴はプログレッシブ・アンプという新開発のモデリングを搭載していること。DRIVEツマミとBOOSTボタンを使うで、ピュアなクリーンサウンドから、クランチサウンド、スーカー・エクストリームまでワイドなサウンド・キャラクタを簡単に作り上げられるようになっている。


VE-5

 BOSSブランドからは手軽に楽しめるボーカル向けエフェクト、VE-5が7月に発売される。これもオープンプライスで実売が25,000円前後になるが、これまであったVE-20の新モデルであるが、これまでのフットペダル型から、手で操作するタイプの機材に変わっている。

 従来機と同様、リバーブや、ディレイといったボーカルエフェクトはもちろん、音程の補正ができるピッチコレクト機能、音のばらつきを抑えるダイナミクス形、歪みや特殊効果を加えるSFX、音をカサネタリハーモニーを生み出すことができるダブル/ハーモニーなどのエフェクトを搭載している。そして一番のポイントは音を重ねて録音できるフレーズ・ループ機能で、誰でも簡単にループパフォーマンスができるようになっている。

マイクスタンドにも取り付けられる

 今回のVE-5では外付けのマイクだけでなく、コンデンサマイクを本体内に内蔵したため、これ1つでプレイが楽しめる。また、マイクスタンドに取り付けることも可能になっているので、ライブ・パフォーマンスなどでも利用しやすくなっている。

 オープンエア型のモニター・ヘッドフォン、RH-A7も発表された。これはデジタルピアノなどの電子楽器演奏用に開発されたヘッドフォンで、オープンエア型の採用と、200gという軽さにより長時間の練習でも疲れにくいこととともに、レッスン時の会話など、ヘッドフォンをかけた状態でも周囲の音が聴こえるのがポイント。カラーバリエーションは3つあり、スタンダードなブラックとブラック&レッドのツートンカラーが4月下旬の発売、ホワイトが5月下旬の発売で、いずれも標準価格が7,980円となっている。


RH-A7。カラーは3種類

 以上、ローランドの新製品を一通り見てきたがいかがだっただろうか? 個人的にはTD-15かTD-11を入手した上で、Roland Wireless Connectを試してみたいと思っているところだ。


(2012年 4月 9日)

= 藤本健 =  リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
 著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。EPUBマガジン「MAGon」で、「藤本健のDigital Audio Laboratory's Journal」を配信中。Twitterは@kenfujimoto

[Text by 藤本健]