藤本健のDigital Audio Laboratory

第652回

iOS 9のオーディオ/DTM関連機能をiPhone 6sでチェック

ハイレゾ再生やUSBオーディオ/USB DACとの動作は?

 毎年恒例となっている9月のiOSアップデートと新iPhoneの発売が今年も行なわれた。あまりドラスティックな変化がなさそうだったので、筆者個人的には、iOS 9もiPhone 6sもさほど関心が持てず、9月16日にiOS 9が出ても放置状態で、iPhone 6sの予約受付が始まっても、今年は見送るつもりでいた。が、いざiPhone 6sが発売されると、やはりSNS上はお祭り状態。読者の方々からも、動作チェックに関するリクエストをいっぱいいただいたこともあり、発売日翌日の9月26日に買うことを決心した。

新たに購入したiPhone 6s(左)と、手持ちのiPhone 6 Plus(右)

 予約をせず大手量販店に行ってみたところ普通に在庫も置いてあったので、iPhone 6sの64GBのモデルを買って帰ってきた。それまで使っていたiPhone 6 Plusは下取り価格が安かったため、これで売ってしまうのももったいないと判断し、そのまま手元に残すことにした。一方、iPad Air2のほうもiPhone 6sを購入した後にiOS 9へとアップデート。その時点ではiOS 9.0.1だったが、その後9.0.2が出たため、双方とも9.0.2の最新環境にした。これらを使い、iOS 9でのオーディオ機能に何か進化点があるのか、また不具合などは起きていないかをチェックしてみることにした。

iPad Air2をiOS 9へとアップデート
その後、iPhone/iPadを共にiOS 9.0.2へ更新した

ハイレゾ対応はまだ先?

 まず最初に試してみたのは、iPhone 6sやiOS 9自体がハイレゾに対応したのではないか、という淡い期待の元でのテスト。以前からiPhone内蔵のDACはハイレゾ対応のものが搭載されているけれど、OS側でサポートしていないだけ、という話を聞いていたので、どこかのタイミングで対応するのでは……という期待をしていたのだ。

 ここで行なったのは、とっても単純なテスト。PC上で動かすiTunesは96kHz/24bitのWAVファイルやAIFFファイル、またALACファイルなどを再生することができるので、それをライブラリに読み込んだ上で、iPhoneやiPadへと転送して再生させようというわけだ。もし、うまく再生できれば、その音を波形分析して高域の周波数成分が含まれているかをチェックしようと思っていたのだ。

 が、そんな目論見はあっけなく砕け散った。iOS 8と状況は同じなので、当然のことではあるのだが、そもそもiPhoneやiPadへ転送することすらできず、当然再生することはできなかったのだ。つまりは、まだAppleはハイレゾにすぐ対応させる予定ではない、ということなのだろう。「最近はiTunes Storeへの納品は96kHz/24bitのWAVになっている」といった話をよく聞いていたので、iTunes Storeがハイレゾ化する日も近いのでは……と思っていたのだが、それを実行するにはiPhoneやiPadの本体でハイレゾ再生ができることが大前提だと思うので、それがiOS 9で行われていないということは、まだ先だと考えていいのだろう。

ハイレゾのファイルは通常のiTunes楽曲としては転送できなかった

USB DAC/USBオーディオインターフェイス出力をチェック

 続いての実験はハイレゾ対応のUSB DACやオーディオインターフェイスをiOS 9が走るiPhne 6sやiPad Air2で利用できるのか、という点。もともとiOS 8で使えていたので、機能向上というのではなく、単なる機能継続性、互換性のチェックということだが、手元にある機材を使ってためしてみた。具体的には下の5機種。

  • REX-KEB03(ラトックシステム)
  • SonicPort VX(Line 6)
  • UD-301(ティアック)
  • UR-242(Steinberg)
  • US-4x4(TASCAM)

 このうちREX-KEB03およびSonicPort VXはLightningケーブルを同梱するiPhone/iPad対応の製品。それ以外はすべてUSBクラスコンプライアント対応の製品であるため、Lightning-USBカメラアダプタを使っての接続だ。

 それぞれの動作チェックにはiOS標準アプリであるミュージックを使って音が出るかを確認するとともに、オンキヨーのHF PlayerおよびコルグのiAudioGateを使って96kHz/24bitのWAVとFLACが再生できるか、また2.8MのDSDファイルが再生できるのかをチェックした。iOS 9リリース前後にいくつかのメーカーから、「iOS 9にすると不具合が出る」という情報が出ていたので、何らかの問題が発生しないかの確認テストだ。

オンキヨーのHF Player
コルグのiAudioGate

 まず、REX-KEB03にiPhone 6sを接続して試してみたところ、まったく問題なし。各アプリ、すべてのデータで問題なく再生できることが確認できた。同様にiPad Air2でも問題なく動作する。

REX-KEB03にiPhone 6sを接続
問題無く動作した

 続いてSonicPort VXでも同様に試してみた。実はこれは、マイク入力やギター入力をメインとするDTM系のデバイスであり、対応しているのは48kHz/24bitまで。その意味ではiPhoneやiPad内蔵のオーディオデバイスと同等ともいえるわけだが、これで試してみてもすべて問題なく再生することができた。もちろん、48kHzにダウンサンプリングされた上での再生ということにはなるが、フォーマットとしては一通り再生できたわけだ。

SonicPort VXでも問題無く動作

 次に試してみたのがUD-301。これはDSDにも対応した据え置き型のUSB DACであり、電源も独自で持っているから簡単に繋げるはずと思ったら、「接続されたデバイスは消費電力が大きすぎます」のエラー表示。これはiOS 9になったせいなのだろうかと思ってiOS 8のままのiPhone6 Plusで試してみたが結果は同じ。そこで、セルフパワー型のUSBハブを噛ませて接続したところ、無事認識し、音を鳴らすことができた。いったん接続さえできてしまえば、ハブのACアダプタは切り離しても問題なく使うことができるようだった。

UD-301との接続時に表示されたメッセージ
セルフパワーのUSBハブを介して接続すると動作した

 UD-301の場合、どのサンプリングレートで動いているか、インジケータで確認できるので試してみたところ、96kHzを鳴らせば96kHzがオンになるし、DSD 2.8MHzを鳴らせばDSD 2.8MHzがオンになるのが確認できる。問題なく使えているようだ。

UD-301のインジケータ(96kHz)再生時
DSD 2.8MHz再生時

 さらに、UR-242およびUS-4x4のほうも試してみたところ、これらも問題なく使えた。UR-242、US-4x4ともにACアダプタが付属しており、これを使えば問題なくiPhone 6sともiPad Air2とも接続することができ、UD-301のときのようなエラーは表示されなかった。そのうえで、標準のミュージックプレーヤー、HF Player、iAudioGateそれぞれで音を鳴らしてみたが、特に引っかかる点もなく再生できた。

UR-242
US-4x4

 こうした結果を見ても、iOS 8からiOS 9へアップデートしても、オーディオ機能的にはほとんど何も変わらず、とくに不具合もなさそうだ。なお、他のモデルでは、ラディウスの「AL-LCH91W」などで、iPhone 6sから音が出ない問題もあるようだ。また、DTM系のアプリにおいては若干不具合が出るものが存在していた。具体的にはAnimoogやCassini、Argonといったシンセサイザの類を使い、iPhone 6sの内蔵スピーカーで鳴らしたときに限り、ノイズが乗ったり、音が途切れたりするのだ。これについて。作者に問い合わせてみたところ、どうもバッファサイズの調整過程におけるトラブルのようで、アプリ側からiOSにバッファサイズを問い合わせた結果戻ってくる値と、実際の値で違いがあるために、エラーが起きているようなのだ。アプリ側で修正を行なうとのことだったが、本来であればiOS側のトラブル。ぜひ、次のアップデートでこの辺のバグを修正してもらいたいところだ。

AudioUnits活用でアプリの充実に期待

 なお、まだ具体的なアプリは出てきていないように思うが、iOS 9の開発環境においてAudioUnitsの機能がフルサポートされたのは大きなニュース。AudioUnitsとはMacのDAWなどで標準的にサポートされているエフェクトやソフトウェア音源のプラグイン規格。これがiOS 9でもサポートされたという。

 もちろん、Macのアプリをそのままユーザーが利用できるというわけではなく、開発者側がプログラムを数行書き換えるだけで、iOS 9上でも使えるようになるというもの。ユーザーインターフェイスをどのようにするのか、そもそもプラグインをどの環境で動かすのかなど、詳細が分からない点がまだいろいろあるが、これが使えるようになると、Mac用のアプリを簡単にiOS 9に移植できるようになり、数多くの優良なアプリが登場してくる可能性もあるわけだ。

 たとえば、GaragebandのようなDAWにMac上で動作しているLogicのエフェクトやソフトウェア音源が組み込まれてくる可能性もあるし、NativeInstrumentsやWAVES、Steinberg、iZotopeといったMac用の著名プラグインがInter-App Audio対応の単独アプリとして発売される可能性も非常に高くなったのだ。これによって、今後どんなアプリが登場してくるのかは楽しみに待っていたい。

藤本健

 リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。  著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto