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第145回:最高画質3D BRAVIAが新エンジンで進化

メニュー操作も高速化。ソニー「KDL-46HX920」



KDL-46HX920

 ソニーはBRAVIA最上位モデルとしてHX920シリーズを4月25日から発売した。

 先代HX900シリーズは、直下型白色LEDバックライトシステムを採用し、圧倒的なコントラスト感を実現した「BRAVIA最高画質」を謳った製品であった。また、一枚岩のようなモノリシックデザイン、映像を表示面ギリギリに表示して見せるオプティコントラストパネル技術など、BRAVIAの新イメージ確立に貢献した記念碑的モデルだっただけに、その後継のHX920シリーズには期待感が高まる。

 HX920シリーズは46型と55型の2モデルで構成されるが、今回の大画面☆マニアでは46型「KDL-46HX920」を取り上げる。HX920の製品としての評価をメインに、今期モデルからワールドワイドで採用された新映像エンジン「X-Reality」の実力も検証した。



■ 設置性チェック〜厚さわずか3.8cmの極薄ボディに額縁段差無しの表示面

設置台位置からディスプレイ部下辺までの隙間はわずか3cm。丁度DVDパッケージ2つ重ね分くらいの隙間しかない

 ディスプレイ部のサイズは108×3.8×66cm(幅×奥行き×高さ)。スタンドの接合部を除けば、ほぼ奥行き3.8cmになっており、その薄さに驚く。スタンドを含む外形寸法は108.1×25.8×69.2cm(幅×奥行き×高さ)。ディスプレイ部だけの重さは19.4kg。スタンド込みで24kgだ。

 筆者宅で2階に上げるのは2人で行なったが、スタンドへの合体や階下への運搬は筆者ひとりでも行なうことができた(実際の設置時には2人以上での作業が推奨されている)。前モデルKDL-46HX900がディプレイ部だけで約30kgあったことを考えると、この軽量化はすごい。

 スタンドは首付部分と台座をネジ止めして組み立て、その際には同梱の六角レンチを利用する。スタンドは左右の首振りに対応する。首振り範囲は左右±20度に加え、上向き6度までにも対応する。最近の46型クラスの大型テレビで上向きのチルト調整に対応しているのは珍しい。スタンドからディスプレイ下部の隙間は3cm程度小さいため、テレビ台が低いと画面がかなり低い位置に来る。上向きのチルト機能は、確かに意味がありそうだ。


スタンドの接合部を除けば、ほとんどがこの奥行き3.8cm

 設置台は、商品セット同梱の標準スタンドのほか、ディスプレイ部を石板風に立てかけるようにして設置できる専用スタンド「サウンドバースタンド SU-B461S」(実売25,000円)もオプションとして設定されている。

 出力10W+10Wのフルレンジスピーカーと出力20Wのサブウーファも搭載した2.1chサウンドバーシステムの機能も持っており、スタイリッシュに設置できるだけでなく、音響性能の向上も実現できる。


サウンドバースタンド「SU-B461S」 サウンドバースタンドの利用イメージ

 ディスプレイ部表面は、HX900でも話題になったシームレス加工が今回も適用されている。「モノリシックデザイン」(Monolithic:一枚岩的な)というヤツで、実際、電源オフ時には、表示面は額縁のない全くの黒の平面にしか見えない。この独特のスタイリッシュかつ高い質感はオンリーワンといった風情で、実に魅力的だ。

 ちなみに、物理的な額縁は無いものの、映像が表示されない構造上の額縁は存在している。実際にこの未表示部分(事実上の額縁)は実測で上31mm、左右31mm、下56mmとなっていた。HX900(上45mm、左右53mm、下部78m)よりも狭額縁化がさらに進んだ。

 極薄型のテレビというとスピーカー部の存在が気になるものだが、本機もスピーカーユニットはいわゆる“インビジブル”タイプで、正面からユニットの開口部は見えないようになっている。ユニットは3×15cmでディスプレイ部左右の下部に下向きに実装されており、出力は10W×2。ディスプレイ部の背面は低音用に6cm径、出力10Wのウーファユニットも搭載している。

 スピーカーが下向きに設置されてはいるが、定位感はちゃんと画面内に位置している。音質的には中音域再生に特化した特性という感じで、低音のパワー感と高音の明瞭感がもう少し欲しい。より高音質を追求するならばサウンドバースタンドの「SU-B461S」を利用した方がいいだろう。

 仮想音源技術「S-Force」機能も搭載されており、これを有効化することで出音のアンビエント感を拡張することもできる。2chのステレオサウンドもS-Forceを有効化すると音像がワイド化されて面白い。音楽番組や映画番組などでは重宝しそうだ。

 消費電力は144W、年間消費電力量は138kWh/年。前世代の同サイズ機KDL-46HX900(189W、204kWh/年)よりも低いだけでなく、他社製の同クラス競合製品と比較しても低い。稼働時の音はほとんど無視できるレベルで、静粛性能は優秀だ。背面にある冷却用のスリットから光漏れが確認できるが、暗室状態にしても、この光が表示映像に影響を及ぼすことはない。

SONYロゴを挟んで左右に配される人感センサーと3Dエミッタ

 HX920のセンサー類の位置についても言及しておこう。3D映像の同期信号送出用の3Dシンクロトランスミッタ(3Dエミッタ)は表示面正面下部のSONYロゴの右側に配されている。

 このSONYロゴを挟んで反対側(左)に実装されているのが人感センサーと明るさセンサーだ。

 ともに低い位置にあるため、ここを遮蔽してしてしまうと3D映像が正しく表示されなかったり、省エネ制御がうまく働かなかったりする。

 今回の評価は、高さ46cmのローボードに設置し、そこから70cm離れたところにリビングテーブルの先端がある環境で行なったが、テーブルの先端を人がいると勘違いして「近すぎます」の警告メッセージが表示されてしまっていた。このメッセージは人感センサーをオフにすることで回避することができる。本機は画面の下辺が低い位置に来るので、リビングに設置した場合、背の低いインテリアとの干渉に気を配る必要がある。

 


■ 接続性チェック〜豊富な接続端子もアナログビデオ系は専用アダプタに

 奥行き3.8cmという極薄ボディながらギリギリの寸法内で最大限の接続端子を実装している。きっと多くの人は、HX920を目の前にしたとき「どこに接続端子が!?」と思ってしまうことだろう。こうした設計力の高さはさすがはソニーと言ったところか。

背面接続端子パネル

 接続端子パネルは、正面向かって左側の背面と側面にレイアウト。背面側には地デジ放送、衛星放送用のアンテナ端子と、Ethernet、2系統のHDMI端子を備えている。

付属のビデオ/D端子アダプタ。アナログビデオ入力系はここに接続する

 これ以外に見慣れない端子が1つあるが、付属の「ビデオ/D端子アダプタ」を接続するための専用端子だ。これはコンポジットビデオ+ステレオ音声入力と、D5+ステレオ音声入力の2系統の入力をHX920に加えるものになる。アナログビデオ系入力端子が消えゆく過渡期の中で、「端子をなくすことはできないが、物理的に製品に実装するまでもないだろう」という判断の下、こうした対応策がとられたのだろう。

 側面側にもHDMI入力が2系統あり、全てのHDMI端子がHDMI 1.4a相当の3D映像入力に対応している。ただし、AVアンプ接続用のARC(オーディオ・リターン・チャンネル)への対応はHDMI1入力端子のみだ。角形タイプの光デジタル音声出力も側面に1系統備えている。

 側面にはUSB端子が2系統あり、USB HDDを接続しての録画はUSB 2端子でのみ行なえる。USB1、2共にデジカメやビデオカメラ等への接続が可能だ。なお、純正オプションのUSBデバイスとして、Skypeを利用したテレビ電話が楽しめるマイク内蔵コミュニケーションカメラ「CMU-BR100」を設定している。こちらもどちらのUSB端子でも利用できる。

側面の接続端子部 Skype用コミュニケーションカメラ「CMU-BR100」

 アナログ音声出力(ステレオミニ)は、ヘッドフォン用出力と外部アナログ音声出力との兼用になっている。工場出荷状態ではヘッドフォン端子となっているが、「音質・音声設定」メニューの「ヘッドホン・音声外部出力設定」を「音声外部出力」へ変更すると出力レベルがラインレベルに調整される。

 側面には、この他、PC入力端子としてアナログRGB接続に対応したD-Sub15ピン端子が実装されている。Xbox360をアナログRGB接続して解像度テストを行なったところ、1,680×1,050ドット、1,440×900ドット以外の主要な画面モードはほとんど表示することができた。1,920×1,080ドットモードのドットバイドット表示のほか、1,360×768ドットに関しては横方向を1,366ドットにしたリアル16:9表示と、1,360ドットのまま表示するドットバイドット表示の両方をアスペクトモードの切り替えで選択できた。

 PCとの接続にはHDMIも利用出来る。HDMIであれば基本的にどの端子でも良いが、PCの音声を同時にHX920で再生したい場合にはHDMI4入力が推奨される。

 HDMI階調レベルの設定は「画質・映像詳細設定」メニューの「HDMIダイナミックレンジ」で設定ができる。「リミテッド」「フル」「オート」の3つの設定が出来る。今回の評価ではPS3、PCいずれにおいても「オート」設定が賢く動作しており、適性のHDMI階調レベルが自動選択されていた。先代のHX900では、「オート」設定が使い物にならなかったが、HX920では大きく改善されたようだ。地味ながら高く評価したいポイントだ。

 HX920の内蔵スピーカーをPCスピーカーとして活用できる機能もあり、側面接続端子の最下部のD-Sub15ピン端子下にひっそりと実装されているアナログ音声入力端子を利用する。この端子は「音質・音声設定」メニューの「HDMI/DVI音声入力設定」にて「PC音声」を選択することでHDMI入力4の映像表示中にアナログ音声入力端子からの音声を再生できる。「オート」で自動選択する設定もあるが、一部のPCではわざとHDMIラインに無音の音声を出力している場合があるため、明示設定を行なった方が確実だ。

HDMI階調レベルの自動設定(オート設定)が賢くなった。PS3もPCもオート設定のままでよくなった。HX900から進化したポイントの1つ 本機内蔵スピーカーをPCスピーカー的に活用したいときにはこの設定

 HX920にはIEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LAN機能も内蔵。インターネット接続やIPTVやコミュニケーションサービス、DLNA/DTCP-IPクライアント機能「ソニールームリンク」などの機能が利用できる。薄型ボディながら、HX920は先端機能を一通り実装しており、必要十分な接続性と拡張性を兼ね備えていると言える。

 


■ 操作性チェック〜RFリモコン採用。超高速レスポンスのメニュー操作

リモコンは電波式なので、テレビに向けずに操作可能

 リモコンはHX900とよく似たデザインだが、十字キーの位置、各種ボタンのレイアウトまでが全く異なっており、ほぼ新デザインという印象を持つ。HX900のリモコンにはあった最下部にあしらわれていた開閉式の蓋も無くなり、HX920のリモコンでは全てのボタンへのアクセスがそのまま行なえる操作系になった。

 リモコン上部はレコーダやHDMIリンクされたHDMI機器操作系のコントロールボタンが集中し、下に向かってテレビ向けの操作ボタンが増えていくレイアウト。ボタンサイズが小さく、ボタン上の記載文字が細かいのは相変わらずだ。

 操作してみての第一印象は、とにかくレスポンスが軽快ということ。メニューアイテムの切り替えや、メニュー階層の切り替え、カーソルの移動の全てが早い。前モデルHX900では、起動直後に限ってメニュー操作レスポンスが遅くなる問題があったが、HX920ではそうした問題は改善されている。

 加えて、リモコンは赤外線式ではなく、2.4GHz帯のRF方式を採用しているため、テレビとリモコンの間に遮蔽物があっても、斜めから操作してもちゃんと反応してくれる。リモコンの背面にはFeliCaポートも搭載。電子マネーEdyのチャージや残高照会が出来るだけでなく、ネット経由の有料コンテンツの決済にも対応する。

HDMIリンク機器を操作するためのボタンが上部に並ぶ リモコンの背面にはFeliCaポートも搭載

 電源オン操作をしてから地デジ番組が表示されるまでの所要時間は約3.5秒となかなかの早さだ。ちなみに、電源ボタンではなく、チャンネル数字ボタンを押しても電源が入り、その押した数字のチャンネルの番組が表示される。地味ながら心憎い機能だ。

 チャンネル切り替え所要時間は約2.0秒。待ち時間の間に、切り替え先チャンネルの番組情報が表示されるため、あまり待たされていると言う印象はない。

 入力切り替えは最上部の[入力切換]ボタンを押して入力端子リストメニューを開いて、任意の端子を選択する方式。切り替え所要時間は、HDMI→HDMIで約3.0秒、HDMI→D5で約2.5秒で、メニュー操作の軽快さから比較すると遅い印象。

 ちなみに、入力端子リストメニューにおける表示は端子名ではなく、「ゲーム」「PC」「BD・DVD」「ビデオカメラ」などの接続機器名の表示にカスタマイズが可能だ。また、未接続の入力端子を表示しないように設定できる。

 アスペクト比の切換は、前モデルでは専用操作ボタンがあったが、HX920ではこのボタンがなくなってしまい、[オプション]ボタンを押して「ワイド切換」メニューを呼び出し、アスペクトモードの一覧から選択する方式になった。用意されているアスペクトモードは「ワイドズーム」「ノーマル」「フル」「ズーム」「字幕入」と言うラインナップで本連載第104回で取り上げた「KDL-55XR1」の時から変更はない。切換所要時間はほぼゼロ秒だ。

 プリセット画調モードは、先代HX900と同じく、活用シーンに応じた画質モードが選べるという独特な2段階層管理方式が採用されている。

 流れとしては、まず、「シーンセレクト」メニューにて「シネマ」「スポーツ」「フォト」「ミュージック」「ゲーム」「グラフィックス」「シーンセレクト切」「オート」の8つの「シーン」から1つを選び、続いて各「シーン」に用意されている「画質モード」を選ぶという感じだ。ちなみに、シーン=オートとした場合、デジタル放送の番組内容や、HDMI1のコンテントタイプ情報を吟味して最適な画質モードを自動選択してくれる。これはテレビの設定はいじりたくない、という初心者にはお勧めな設定だ。

 なお、各「シーン」で選べる画質モードは以下のようなラインナップとなっている。基本は先代HX900と同じだが、新しく「アニメ」モードが新設された。

【シーン】 【画質モード】
シネマ シネマ1、シネマ2
スポーツ スポーツ
ミュージック スタンダード、ダイナミック、カスタム
アニメ アニメ
フォト フォト-スタンダード、フォト-ダイナミック、
フォト-オリジナル、フォト-カスタム
ゲーム ゲーム-スタンダード、ゲーム-オリジナル
グラフィックス グラフィックス
シーンセレクト切 スタンダード、ダイナミック、カスタム
オート スタンダード、ダイナミック、カスタム

 大半の「シーン」では、画質モードを複数の選択肢から選べるようになっているが、「スポーツ」「アニメ」「グラフィックス」を選択しているときは、画質モードは「シーン」名と同一の画質モードが選択されて固定されてしまう独特の動作をする。

 厄介なのは、選択したシーンに含まれない画質モードは選べないところで、例えば「シーンセレクト切」でシーンをオフにした場合は、ゲームやアニメなどの画質モードは選べない。「初心者を迷わせないことに配慮した自由制限」という感じなのだろうが、逆に中級者以上のユーザーにとっては使いづらい。せめて[シーン]ボタンと[画質モード]ボタンくらいは用意してくれないと、メニューの行ったり来たりがつらすぎる。

 画質調整項目の種類、調整結果のメモリ管理方式、ユーザーメモリの仕様も従来から大きな変更は無し。各調整項目についての詳細な解説はそちらを参照して欲しい。

 HX920では2画面機能が進化しており、2画面を横に並べたサイド・バイ・サイド(SBS)方式、主画面と子画面を同時に表示するピクチャー・イン・ピクチャー(PinP)方式の両方式に対応している。ただし、HX900では、リモコンボタンで一発で呼び出せた機能だったのだが、HX920ではリモコン上の[オプション]ボタンを押して開くオプションメニューから機能を選択して起動しなければならなくなった。

 その代わりHX920では機能的には進化した部分がある。2画面表示時に、デジタル放送同士の2画面、あるいはHDMI入力同士の2画面以外は、大きな制限なく好きな入力系統を選択して表示できるようになったのだ。SBS時には左右画面の表示サイズをリモコンの上下ボタンで自在に変更することもできるようになり、親子画面時はリモコンの上下ボタンで子画面の表示位置を瞬間的に移動させることが可能となった。その操作レスポンスは実に軽快で、まるでゲーム画面をいじっているかのような軽やかさだ。

 基本的な使い方はデジタル放送を見ながら外部入力画面を見るか、あるいはその逆パターンがメインとなる。ちなみに、デジタル放送の異なる2チャンネルを2画面表示できないのは、HX920がシングルチューナ仕様のためだ。

 インターネット機能は「ネットチャンネル」と言う形でまとめられ、これまでの「パソコンのネット機能をテレビにも搭載しました」という感じから、「オンデマンド放送の一形態」という感じの扱いになっている。

 具体的には、リモコンの十字キーの上方向ボタンの外郭にある[ネットチャンネル]ボタンを押すと「YouTube」「DMM.TV」「U-NEXT」「goo映画」「Qriocity」などの各ネットサービスのリストが表示されるので、ここから方向ボタンの上下で任意のサービスを選択する…という流れで操作することになる。

「ネットチャンネル」という形でまとめられたインターネット機能 YouTubeはマイアカウント経由での接続にも対応。ただし、動画アップロードには未対応

 各ネットチャンネルへの起動/移動速度は約6秒程度。早いとは言いがたいが、予想してたよりも待ち時間は少ないという印象。一度起動してしまえば、それからの操作レスポンスは遅くはない。動画サムネイルの描画速度もPCと比較して大きく遅いということもない。

 一般的なWebサイトを見るためのWebブラウザはネットチャンネルにはなく、[ホームボタン]メニュー階層下の「アプリケーション」に位置している。Webサイトの表示スピードは、テレビ内蔵型のWebブラウザにしては結構速い。

 表示範囲も「縮小」表示モードを利用すればPCで見ている状態に近い表示を再現することもできる。Impress Watchサイトのような縦方向にコンテンツが伸びるサイトのスクロールも色ボタンの[青]と[赤]でページ送りをさせれば、かなり高速に上下ページ送りができる。HX920の一貫した軽快な操作感は大したものだ。

Webブラウザは「アプリケーション」にまとめられている。「ネットチャンネル」にないので最初戸惑うかも 標準状態でのAV Watchの表示 縮小状態でのAV Watchの表示。かなりPC的な見栄えのレイアウトになる

 ただ、完璧にPC上のWebブラウザのように使えるかというと、まだ課題は残っている。1つはFlash Playerを用いたサイトが利用出来ないという点だ。Flashを組み込んだWebページを表示すると「Flash Playerがない」という旨のメッセージを出力したウィンドウが表示されてしまう。なお、YouTubeについてはWebブラウザ経由ではなく、HX920のネットチャンネル機能として対応しているため、ちゃんと再生できる。

 Webブラウザを使う上でもう一つ不満だったのはUSBキーボードが利用できないという点。検索キーワードなどの文字入力には、携帯電話的な数字ボタン入力を行なわなければならないのが煩わしかった。REGZAなどはUSBキーボードに対応しているので、ソニーも追従してくることを期待したい。ただし、スマートフォン用のアプリ「Media Remote」
も提供されており、これを活用することでスマートフォンからの文字入力が可能となっている。

右に立ち並ぶアプリキャスト群。リモコンでカーソル選択すればWebブラウザが起動して詳細情報が見られる

 アプリキャスト機能は、HX920でも引き続き搭載されている。アプリキャストとはWindowsで言うところのデスクトップ・ガジェット的なもので、ニュースや天気予報などのリアルタイム情報をテレビ画面に出力してくれるものだ。HX920ではリモコン上の[アプリキャスト]ボタンを押すことでワンタッチで機能のオン/オフが可能になっている。

 ただ、アプリキャストは画面画面右端に縦並びに表示され、主画面の映像はここを避けるように小さく表示されてしまう。稼動アプリキャストのガジェットを1つ2つに限定しても、この表示領域の区分けは変わらないため、画面面積の利用としては非効率で、実際の使用感もあまりよろしくない。主画面の映像にオーバーレイさせて表示させるモードがあればいいのにと思う。「コンテンツの同一性保持」のため難しいと聞くが、解決してほしい課題だ。

 HX900の時には、アプリキャストが表示するニュースをリモコンで選択して、Webブラウザを起動、そのニュースの本文が読めるようになるまで約25秒も待たされたが、HX920では約18.0秒となりかなり短縮された。待たされている感がなくなったわけではないが、進化の片鱗はうかがえる。

 紙印刷の取扱説明書は簡易的なものにとどめ、機能解説はテレビ本体側に内蔵した電子マニュアルで対応するコンセプトは従来モデルを継承している。先代HX900の取扱説明書は、複数機種に対応した紙マニュアルをただ電子化しただけで、「機種によって異なります」という断り書きが各ページに散見され、メーカー側のコストダウンの都合しか伝わってこなかったが、HX920では幾分改善がなされている。

 全文検索機能はなく、ページ構成も相変わらず複数機種対応を前提としている感じで、各ページで「機種によっては設定できません」という特記が所々で目立つが、索引キーワードや機能の解説文は増えているようだ。

 また、使い勝手も向上しており、リモコン上の[電子取説]ボタンを押せば約2.0秒で起動する。過去に閲覧したページが最初に表示され、今使っている機能に連動したページが表示されない操作系には好き嫌いが分かれそうだが、[青]ボタンを押せばトップページには瞬間的に戻れるので、慣れればそれほどストレスはない。また、よく見るページには[赤]ボタンでブックマークを付けることができる。

 


■画質チェック〜圧倒的な画素フォーカス感。低クロストークで明るい3D映像にも感動。エリア駆動には課題も

オプティコントラストパネルがもたらす、画素形状がくっきりと見える驚愕のフォーカス感

 先代HX900の時も驚かされたが、HX920に引き継がれた「オプティコントラストパネル」構造の表示面は描画画素のフォーカス感が凄まじい。1、2m離れた同一距離で、同一サイズの一般的な液晶パネルと比較して見てもそのフォーカス感の違いは歴然で、HX920では1ドットの描画鮮鋭度が抜きん出ている。まるで自分の視力が上がったと思うほどのフォーカス力だ。本来の使い方では無いかもしれないが、ドット表現がクリアなHX920はPC映像やゲーム映像との相性がいいと思う。

 HX920は、表示面に光沢処理を施したグレアパネルになるのだが、表示面を形成するガラス板と液晶パネルとの間を特殊な透明樹脂で埋めた構造とし、この効果によって表示面ギリギリで映像が結像しているように映像を見せることに成功しているのだ。「オプティコントラストパネル」とはこの構造を指している。

 この構造の副次効果として、額縁部分がシームレスとなり、ソニーがいう「モノリシックデザイン」とは、まさにオプティコントラストパネルをデザイン視点で呼び方を変えたものだといえる。

 このオプティコントラストパネルの効果により表示映像はウレックス石(テレビ石)を通して見たような見栄えとなり、前述したようなフォーカス感以外に広視野角特性ももたらしている。HX920では、斜めから見たときの色調変位がほとんどない。少し前であれば、この広視野角特性はプラズマのような自発光パネルと間違えたかも知れない。

 バックライトシステムはエリア駆動(部分駆動/ローカルディミング)に対応した直下型白色LEDバックライトシステムを採用している。

「インテリジェントピークLED」システムの概要

 直下型白色LEDバックライトで奥行き3.8cmを実現していることには驚かされるが、これは新開発の「インテリジェントピークLED」バックライトシステムによって実現されたものだという。

 HX900では白色LEDと導光板を1まとめにした小型のバックライトモジュールで構成する導光型と直下型のハイブリッドバックライトシステム「インテリジェントダイナミックLED」を採用していたが、今回のHX920では純粋な直下型バックライトシステムを採用したようだ。近年、LEDを駆動回路基板と共に一体成形する新技術が急速に立ち上がってきており、「インテリジェントピークLED」はまさにその産物といったところだろう。コントラストと輝度スペックは非公開。エリア駆動の分割数も非公開だ。

 実際に映像を見てみると、輝度ダイナミックレンジは圧倒的に高い。映像中の明部がとても明るく伸びやかだ。南国の陽光に照らされた眩しげな屋外シーンなどは非常にリアルに見える。

 インテリジェントピークLEDではエリア駆動時に、局所的な明部に対して輝度をブーストしてコントラスト感を強調する制御が入ると言うが、実際、逆光状態の夕焼けの太陽や車のヘッドライトなどは非常に明るく輝く。

 ただ、気になる点も散見される。同一シーン内で明暗が同居する際、その明暗部分の位置関係によっては黒浮きが生じてしまう点だ。

 一番分かりやすいのはシネスコ(2.35:1)の映画ソフトを見ているときだ。こうした映画ソフトでは上下に黒帯が出ることになるが、映像中の明部が2.35:1表示領域の下辺や上辺に近づくと、その黒帯部分がパーっと明るくなってしまうのだ。

 黒帯が明るくなるくらいならば実害はないが、この現象は暗い映像でも散見される。

 例えばBDビデオ「アバター」の冒頭の宇宙シーンで大きく三日月状体で浮かび上がる惑星パンドラの陰の部分の宇宙の黒さに比べ、明部近辺の宇宙は黒浮きが生じ、黒というよりは灰色になってしまう。BDビデオ「ダークナイト」のチャプタ23のジョーカーの尋問シーンでは電気スタンドが明るく輝き、その光に照らされる机も明るく光り、インテリジェントピークLED効果が現れているのと引き替えに、その周辺の暗闇に黒浮きが出てしまっている。

 他にも、暗闇にいる人物が腕を上げ下げしたり、移動したりするとその軌跡に残像のように黒浮きが追従するといったアーティファクトも確認される。いずれにせよ、この黒浮きは暗い映像を見ていると非常に気になる。

 「エリア駆動の分割数が少ない」「拡散板が優秀すぎて隣接する領域への迷光をもたらしてしまっている」などなど、原因はいくつか考えられるが、あえてピーク輝度重視の画質に作り込んでいる意図も感じられる。ただ、黒領域が多い場合や明部と暗部の位置が近いときには、このピーク輝度重視の画質を抑制する制御が欲しい気がする。

 もちろん、こうした現象は部屋を暗くして視聴したときのことであり、蛍光灯が皓々と輝いている照明環境下ではあまり気にならない。

黒領域の多い映像に対し… このように時報(右下)を表示するとその回りが明るくなる。暗室で見ていると思いのほか、こうした領域が明るく見えて気になる

 ちなみに、このアーティファクトを低減できないか、と、エリア駆動の動作を調整出来る「LEDコントロール」の設定をいじってみたのだが、エリア駆動を弱めれば弱めるほど黒浮きが目立ってしまう。最も効果が大きかったのは「スムースグラデーション」の有効化だ。この設定を強めると、黒浮きが低減される効果が得られる。エリア駆動によって生じた黒浮きを階調補正で低減しようとするやや“後ろ向き”の調整ではあるが、結構効くので気になった人は試してみるといい(ただし、3D時はスムースグラデーションが利用出来ない)。

 発色は、派手さを抑えたナチュラル系にまとめ上げられている。赤、緑、青の純色系も無理に広色域に振られておらず、ハイビジョン色域のBT.709を正確に再現しようとする意図を感じられる。

 二色混合グラデーションにおいても擬似輪郭は少なめで色ダイナミックレンジはかなり広くチューニングされているようだ。

 肌色もいい。先代HX900ではやや黄味が強い印象を受けたが、HX920ではそうしたクセはなく、非常に透明感のある発色となっている。肌色の色ダイナミックレンジも広く、陰部分の茶色に近い肌色から陽光を浴びて白飛び寸前のハイライトの肌色までが実にリアルに描き出される。

 もちろん、昔のBRAVIAの色調が好きな人のために、広色域モードの「ライブカラー」モードも用意されている。彩度の高い色味が好きなユーザーはこの機能を活用するといいだろう。

ライブカラー=切 ライブカラー=強

 階調については、インテリジェントピークLEDの黒浮きのアーティファクトを除けばリニアリティは保たれており違和感はない。

 暗部に溶け込む柔らかな陰影表現においても、疑似輪郭などは皆無で、非常にスムーズな階調表現を実現している。これは、高階調処理技術「スーパービットマッピング」の恩恵かもしれない。

スーパービットマッピング」の設定

 3D画質についても触れておこう。HX920は、いわゆる「3D Ready」で本体側は立体視(3D)に対応しているが、標準では3Dメガネは同梱していない。3Dメガネは標準サイズの「TDG-BR250」(実売1万円前後)と小型サイズの「TDG-BR50」(同5,000円前後)が用意されており、これらを購入することで初めて3D視聴が可能となる。

 3D実現様式はフレームシーケンシャル方式(アクティブシャッターメガネ方式)だ。3D同期用の3Dエミッタは前述したように本体側に内蔵されているので別途購入する必要はない(HX900では3Dエミッタも別売りだった)。


標準サイズの3Dメガネ「TDG-BR250」

 さて、その3Dの画質だがインテリジェントピークLEDによる高輝度バックライト駆動システムの効果もあり、アクティブシャッターメガネ方式の3Dの割にはとても明るい。蛍光灯照明下でも、かなり明るい3D映像が楽しめるのは感動的であった。先ほど触れたインテリジェントピークLEDの黒浮きアーティファクトも3Dメガネをかければわからない。

 この明るい3D映像は、バックライトのハイパワー以外にもう一つ要因がある。それは、ソニーBRAVIAの3D視聴用アクティブシャッターメガネのレンズには前面(表)側に偏光板を配していないからだ。

 液晶パネルは液晶分子を2枚の偏光板でサンドイッチしたような構造になっているが、BRAVIAでは、液晶パネルの表示面側の偏光板を、3Dメガネの液晶シャッター(レンズ)表側に入れるべき偏光板と同特性に最適化することで省いているのだ。つまり、3Dメガネの表側の偏光板一枚分だけ、他社製のアクティブシャッターメガネ方式の3D映像よりも明るいのだ。

 ただ、3Dメガネレンズ入口側で入射光の偏光方向を整えないため、首をかしげた時には両目に左右の目用の映像が半分ずつ入ってきてしまうためクロストーク現象(二重像知覚)が盛大になる。これは、あらかじめわかりきった特性なので、BRAVIAユーザーはこの3D映像特性に対して理解する必要がある。

 ちなみに、首を完全に90度に傾けると入射光の偏光方向が90度逆転したことになり、3Dメガネ側の液晶シャッターが閉じたときに光が通り、液晶シャッターが開いているときに光が遮られ、左右の目で知覚すべき映像が逆転する現象が起こる(テスト映像の実験でも確認)。これは、いわゆる逆視状態となり、健康安全上良くないとされる。注意して欲しい。

 さて、正常な状態で見たときのクロストークだが、皆無とは言わないが、かなり低減できていると実感できる。クロストークテストにはもってこいの「怪盗グルーの月泥棒」のジェットコースターのトンネルシーンでもトンネル内壁の電球はかなり理想に近い形で見えていた。

「3Dメガネの明るさ」の設定

 リモコンの[3D]ボタンを押すことで3Dメニューが開け、ここで「3Dメガネの明るさ」を「オート/暗/中/明」から選択ができるが、「暗」と「中」設定ではかなりクロストークが少なくなる。「明」では非常に明るくなるのだがクロストークはかなり強く出るようになる。デフォルトの「オート」設定は、「画質モードに連動して自動的に明るさが調整される」と説明されているが、具体的な動作アルゴリズムはよく分からず(部屋の明るさとは無関係だった)。ただ、クロストークの少なさと明るさをうまくバランスしてくれている実感はあるので、普段はこれの常用でいいだろう。

 HX920の3D映像を見ていて、特に気に入ったのは、3D映像の解像感の高さ。きめ細かい表現にもちゃんと立体感が感じられるのだ。「怪盗グルーの月泥棒」で言えば、グルーの着ている衣装のシワの凹凸感はもちろん、布の細かい肌理の凹凸感までが立体的に見えるのだ。これは、オプティコントラストパネルの特性とクロストークの少なさの相乗効果によるものだろう。

 2D映像を3D映像に疑似変換する「シミュレーテッド3D」はHX920にも搭載されているが、HX900から大きな進化はない。映像全体がテレビの中に奥行きを持って表示されると言うくらいのもので、凹凸や前後の関係を把握できるほどの立体感は得られない。あくまでおまけという感じだ。

 画質モード(シーンセレクト)については、基本的に「シーンセレクト=オート」で問題ない。映画を見るときには「シーンセレクト=シネマ 画質=シネマ1」を利用。説明書によれば、「マスターモニターを目指したチューニング」とのことで、コントラストと階調バランスが良い。ゲームプレイ時には「ゲームオリジナル」を利用した。

 ここからは、HX920に搭載されている高画質化ロジックの新機能と振る舞いの解説を行ないつつインプレッションを述べていく。

●モーションフローXR960

 補間フレームを挿入して残像低減を行なう倍速駆動技術。ソニーは早くから補間フレームを3枚生成して秒間240コマを実現するリアル4倍速駆動にこだわってきたが、HX920では、補間フレーム数こそ変わらないものの、直下型LEDバックライトを960Hzでスキャニング駆動することで16倍速相当駆動を行なう「モーションフローXR960」を搭載している。

モーションフローXR960

 HX920では、設定項目の「モーションフロー」で、この機能の振る舞いをいじることができる。選択バリエーションとしては「切、スムーズ、標準、クリア、クリアプラス」が用意されている。

 「スムーズ」は補間フレーム支配率が最も高いモードで、「標準」はこれをやや下げたもの。「クリア」はバックライトスキャンの黒挿入が組み込まれるモードで、「クリアプラス」は黒挿入期間がさらに長くなるモードで、全モード中、最も暗い。「クリア」は「クリアプラス」よりも明るいが、補間フレーム支配率はやや高め。

 補間フレームのエラーだが、動きがなだらかなシーンではかなり起こりにくくなっている。まだ、動きの速いシーンではブルブルっと震えることがよくあるが、オリジナルフレームが支配的な「標準」設定にしておけば、不快になることはない。以前と比べればだいぶ使える機能になったと思う。

 なお、3D時は黒挿入がクロストーク低減に転用されるためか、3D時は「クリア」「クリアプラス」を選択することはできなかった。

●リアリティクリエーション

 X-Reality PROが誇るデータベース型超解像技術が「リアリティクリエーション」機能だ。これはX-Reality PROを構成するコンパニオンチップ「XCA-7」によって提供される機能で、時間方向に複数枚の映像を解析した結果と、ソニーが蓄積した映像データベースを参照した結果を組み合わせて、失われた解像度情報を復元するというものだ。

データベース型超解像技術 入力画像の動きを含めてパターンを解析し、データベースと参照する

 確かに通常のシャープネスコントロールとは違い、ノイズは強調されずにテクスチャ情報だけが先鋭化されるため、解像情報が復元されるような効果が現れている。ブルーレイなどの1080p映像に対しては、かなり強めに掛けても破綻が少なく、見栄えも向上する。

 面白いのは、例えば被写界深度の表現などで、カメラのレンズの絞り形状の丸形のボケも美しく先鋭化されるところ。こういう箇所はボケたままの方が自然なのだが、データベースから持ってきた情報の影響なのだろうか、ものすごく自信ありげに円形を美しく描き出してくれる。正しいかどうかは見る人の判断に委ねられることになるが、かなり遊べる機能であることは間違いない。

「リアリティクリエーション」の設定

 DVD映像(480p)映像に対しても色々試してみたが、プレーヤー側で直出力した480p映像に対して掛けるよりは、プレーヤー側で1080pにアップスキャンコンバートしてから掛けた方が美しい映像になった。480pのままでかけると時間方向のノイズまでが先鋭化されてしまう。

 HX920のリアリティクリエーションは、入力映像の解像度にて適用され、これをアップコンバートして表示する動作フローになっているようだ。DVDビデオの再生頻度が高いユーザーは、この特性を理解してリアリティクリエーションを活用しよう。

元映像(1080p) 元映像を480p出力 480p映像に対して「精細度」を「強」設定でリアリティクリエーションを適用

●MPEGノイズリダクション

 MPEGノイズとしてよく知られている湯気のような揺らぎノイズ(モスキートノイズ)とタイル状の色境界擬似輪郭ノイズ(ブロックノイズ)を低減する機能。HX920ではX-Reality PROによる新アルゴリズムによって効果的なノイズ低減が実現出来るようになったとされる。

 確かに、地デジ放送の映像やDVDビデオ映像などで試してみたところ、細かいディテール表現やテクスチャ情報をぼやかすことなく適度なノイズ低減を行なってくれていた。なかなか優秀だ。

 こうしたMPEGノイズ低減はネット動画に効かせたいところだが、その動作特性にはちょっとだけクセがある。低ビットレートのネット動画はHX920のネットチャンネル機能を用いて再生した場合には効果的に効くが、HDMI接続したPC上のWebブラウザやプレーヤーで低ビットレートの動画を再生してもほとんど効かない。

 しかし、PC上でも、デスクトップ解像度を720×480ドットモードに変更して、480pとしてHX920に認識させてやれば、ネットチャンネルとほぼ同等のMPEGノイズ低減機能を享受できたた。ちなみに、640×480ドットではダメ(PC画面として認識されてMPEGノイズ低減機能が不活性化されてしまう)。

●表示遅延について

 恒例の東芝REGZA 19RE1との表示遅延比較。2Dの表示遅延は、HX920をプリセット画調モードを「ゲームオリジナル」に設定して測定した。表示遅延は約2フレーム。

 面白いのは、3Dモード時には表示遅延が1フレーム短縮されて遅延が1フレームとなる点だ。3Dモード時は高画質化ロジックの一部がバイパスされる関係で早くなるのかも知れない。いずれにせよ、HX920は3Dゲームプレイには適したテレビだということが出来そうだ。

画調モード=ゲームオリジナル。遅延は1フレーム 3D時(サイドバイサイド)。3Dメガネをカメラレンズに適用して撮影。遅延は1フレームに シミュレーテッド3D時。3Dメガネをカメラレンズに適用して撮影

 


■ まとめ

 先代HX900から正常進化を遂げたモデル。これがHX920に対する筆者の印象だ。

 オプティコントラストパネルのクリアな画素描画性能を継承しつつ、直下型バックライトシステムをさらに進化させつつ、薄型デザインをもさらに押し進めるという、ソニーらしいイノベーションを感じさせる製品だ。

 操作系が機敏になり、アプリキャストやネットチャンネルなどの各種ネット機能も使いやすくなって、スマートテレビとしての存在感も高まった感じがする。

 輝度重視のエリア駆動は2D映像において暗部に黒浮きを発生させるアーティファクトを生んでしまったが、3D画質にはこの高輝度特性はよい方に働く。その意味では、HX920は3Dテレビとして訴求されるべきなのかもしれない(だとすれば、3Dメガネが別売なのには少々の疑問符が付くのだが)。

 2D画質のアーティファクトも、蛍光灯照明下の明るい部屋であれば気にならない。3D映像も、蛍光灯照明下で十分に明るく見られるので、HX920は、リビング環境が明るい日本にはよく適合したモデルだといえる。もっとも、暗い部屋でしっとり楽しむためにエリア駆動を最適化した画質モードは次期モデルには欲しいところだが。

 価格について触れておこう。5月中旬の実売価格は、55型「KDL-55HX920」が43万円前後、46型「KDL-46HX920」が35万円前後となっている。発売から日が浅いこともあって同クラス/サイズの他社製3Dテレビと比較するとやや割高となっているが、コストが高く付く直下型バックライトという点などを考えれば妥当かもしれない。ただ、純粋にテレビ製品としてみるとHX920は、USB HDD録画対応ながらも、シングルチューナ仕様であり、録画機能重視のユーザーから見ると心許ない。

 明るい照明環境での視聴を想定し、3D画質も重視。なおかつ録画環境は既に所有しているか、別機器で賄うことが出来る人。HX920にはそんなユーザーの姿を思い描くことができる。

(2011年 5月 19日)

[Reported by トライゼット西川善司]

西川善司
大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちらこちら。近著には映像機器の仕組みや原理を解説した「図解 次世代ディスプレイがわかる」(技術評論社:ISBN:978-4774136769)がある。