とにかく便利なAirPlayと広い音場再生能力
新世代のiPhone/iPodスピーカー「JBL ON AIR WIRELSS」
JBL ON AIR WIRELSS |
毎週のように新製品が登場するiPhone/iPod用スピーカー。その中でも今一番注目したい機能が「AirPlay」だ。
すでにAV Watch読者にはおなじみかと思うが、AirPlayはAppleの無線映像/音声伝送技術で、iPhoneやパソコンの音楽を対応機器へ無線LANを経由してワイヤレス伝送する機能だ。これにより、iPhoneやiPad、パソコン(iTunes)などから、各機器内の楽曲を選択し、AirPlay対応機器から再生できる。
第1弾製品としてオーディオだけでなくビデオ伝送に対応した「Apple TV」が発売されたほか、AVアンプなどでも対応が進んでいる。さらに、デノン「DNP-720SE(50,400円)」のようなネットワークプレーヤーでの対応も増えてきた。ただし、単体で音が出る「いわゆるiPodスピーカー」での対応はB&Wの「Zeppelin Air」だけで、その価格も79,000円と高価だった。
そんな中、ハーマンインターナショナルがJBLブランドで発売開始した「JBL ON AIR WIRELESS」は実売価格で39,800円。Zeppelin Airに比べるとほぼ半額のAirPlay対応スピーカーとして登場したこととなる。AirPlayの利便性をより多くの人が体験可能になるという点で注目したい「JBL ON AIR WIRELSS」をテストした。
■ アーチ状の特徴的なデザイン
JBL ON AIR WIRELESSは、アーチ状の特徴的なデザインを採用。リモコンやACアダプタ、ユニバーサルDockアダプタ、FMアンテナなどが付属する。
アーチ状デザインの左右に45mm径のフルレンジ「Phoenixネオジウムドライバー」を装備、高域用の25mm径Ridgeネオジウムドライバーを上部に搭載する。アーチの上部をよく見てみると、アラームクロック用のスヌーズボタンも備えている。
出力は6.5W×2chで、再生周波数帯域は20Hz~20kHz。アーチの中央部にiPhone/iPod用Dockを装備するが、接続はアナログとなる。iPhone/iPodの充電にも対応する。Dockの下部にはカラー液晶ディスプレイを装備。AirPlay再生時に楽曲のジャケット写真や曲名などのメタデータ表示が可能できるほか、ネットワーク設定もディスプレイ上部や左右のボタンを利用して行なう。
IEEE 802.11b/g無線LANに対応。外形寸法は280×198×238mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.7kg。
JBL ON AIR WIRELSS。前面にカラー液晶を装備する | 背面にステレオミニのアナログ入力を装備 |
DockにiPod touchを接続。iPodとの接続はアナログ | 充電にも対応する。Dock周りのボタンで接続したiPod操作だけでなく、無線LANや時計のタイマー設定などが行なえる | 側面 |
上部にスヌーズボタン | リモコンが付属する |
■ とにかく便利なAirPlay。広い再生範囲が魅力的
さっそくAirPlayスピーカーとして利用してみる。ON AIR WIRELSSの液晶で、FM/iPod/AirPlay/AUXなど入力ソース選択があるので、AirPlayを選んでおけばiPhoneやパソコンからコントロール可能になる。
ただし、利用前に無線LANルータをアクセスポイントとし、そのルータにON AIR WIRELSSを参加させる必要がある。設定画面の[Network]を選択して、ルータのSSIDを指定し、パスワードを入力するという流れだが、WPSのような設定補助機能などは備えていない。パスワードの入力はリモコン、もしくは右側のカーソルキーで行なう。
アクセスするルータのSSIDとパスワードさえわかっていれば、それほど難しくは無いのだが、従来のiPodスピーカーのように「Dockに乗せれば音が出る」という誰にでも簡単かつ分かりやすいものではない。このあたりはAirPlay普及の課題になるのかもしれない。
メインメニューでAirPlayを選択 | 無線LANネットワークに接続。Dock右のカーソルキーでパスワードを入力する |
iPhoneのオーディオ出力先としてON AIR WIRELSSを選択 |
ON AIR WIRELESSの再生指示を行なうiPhoneやパソコンなども、同一の無線LANネットワークに参加していれば、すぐに利用可能になる。
今回はiPhone、iPadの楽曲をON AIR WIRELESSに伝送し再生したほか、MacBook ProとWindows PCのiTunesからのAirPlay再生などを試した。iPhoneでは再生画面の右下に出てくるAirPlayアイコンを選ぶと、スピーカーの選択画面が現れるので、ここでON AIR WIRELESSを選択すれば、音声出力先がON AIR WIRELSSになる。
選曲やボリュームなどの操作はiPhoneとまったく同じ。iPhoneを操作して、その出力先を選ぶのがAirPlayなので当然ではあるが、iPhoneの操作に慣れていれば戸惑うことはないだろう。
iPhoneのプレーヤー機能と違うのは、楽曲を選んで再生開始までは1秒弱、曲のスキップ操作時には2~3秒のタイムラグが発生すること。とはいえ、手元のiPhone内の楽曲を自由に選曲でき、スピーカーから簡単に出せる環境というのは、使う前に想像していた以上に便利で快適だ。
もちろん、パソコンのiTunesの出力先としても、ON AIR WIRELESSを指定でき、iPhone/iPadやiTunesの「ホームシェアリング」を使えば、ネットワーク内のLAN HDDなどに保存した音楽も、iPhoneで操作しながらON AIR WIRELSSから再生できる。
無線LANの届く範囲であれば、さまざまな機器から音楽を再生できるし、慣れたiPhoneやiTunesの操作系をそのまま使えるといのがうれしい。注意したいのは、他の機器からAirPlay再生している際には、一度停止してからでないと、AirPlayの出力先が選べないことぐらいだ。
本体ディスプレイにアルバムアートや曲名を表示 | パソコンのiTunesの出力をON STAION WIRELESSに変更 |
他の機器からAirPlay接続していると、エラーが表示される |
AirPlay対応機器といえばApple TVもあり、AirPlayビデオ出力対応など機能的にはApple TVのほうが上。ただし、別途アンプの接続/操作などが必要になる。ON AIR STATIONのようなAirPlayスピーカーの場合、無線LANの設定さえできれば、それ単体で音が出て機能として完結するというシンプルさがあり、また別の魅力と感じた。
また、前面のカラー液晶ディスプレイにはアルバムアートや楽曲名表示も可能となっているほか、時計としても利用できる。
独創的なデザインなので、音質が気になるところ。4万円弱とiPodスピーカーとしては高価な部類に入るが、やや厚めの中域と高域の分解能の高さが効いており、特にボーカルものとの相性の良さや、高域のヌケの良さなど、デザインの割に品のいいスピーカーという印象。最低域はそれほど出ていないのだが、ヒップホップ系の楽曲でもしっかりと効いた低域が感じられる。
特筆したいのが音場の広さだ。本体の左右から聞いてもステレオ感が出ており、キッチンの床に設置して、立ちながら料理して聞いても、かなりしっかりとしたサウンドで聞こえる。BGM的に流しているつもりでも、思いのほかしっかり音楽を鑑賞できてしまうので、ハッとさせられることが多い。床置きでもデスクトップ設置でもいいし、ソファに座っても、床で寝てもちゃんと音楽が楽しめるというのはON AIR WIRELSSの大きな魅力と感じた。
iPhone/iPod用ドックも搭載しているが、この場合はアナログ接続となる。AirPlayではデジタル接続となるので、音質面でも基本的にはAirPlayのほうが有利と考えていいと思う。なによりアーチ状のDockに設置してしまうと、操作が難しい。そのため、Dockは基本的には充電台と考えていいと思う。Dock接続時の対応モデルはiPhone 3G/3GS/4と、第2世代以降のiPod nano、iPod classic、第5世代iPod。
時計やアラームクロック機能も備えている。アラームは毎週、毎日指定などかなり高機能なのだが、ACアダプタを抜くと時計が初期化されてしまうのが残念 |
USB端子も備えているのだが、これはファームウェアアップデートなどを想定したもので、パソコンとの連携には対応しない。
ステレオミニの音声入力を備えているので、iPhone/iPod以外のオーディオプレーヤーも接続できる。また、FMチューナを装備し、10局までのプリセットが可能。アラームクロック機能も備えている。アラームクロックは液晶上部のボタンで時間設定が可能で、FMとiPod、アラームなどの音源を指定できる。また、スヌーズ機能も備えているなど機能的には充実している。
ただし、ACアダプタが抜けると時刻設定が初期化されてしまうので、あまり信用が置けないのが残念なところ。ACアダプタを抜いてもしばらくは時計として利用できるようにしてほしいところだ。
■ AirPlayの利便性と、広い音場再生能力が魅力
ON AIR WIRELSSの魅力はやはりなんといってもAirPlayの便利さ。そして、あまり場所に縛られずに音楽を楽しめるスイートスポットの広い音作りだ。実売39,800円という価格はiPod用スピーカーとしては高価な部類に入るが、個人的にはAirPlay対応という一点だけにおいても、価格に見合う価値は十分あると感じる。
以前Apple TVを試用した時にもAirPlayの使いやすさは把握していたつもりだが、ON AIR WIRELSSのように、iOS端末/iTunes+スピーカーだけで、完結するというシステムのシンプルさも魅力に感じた。
一方で、AirPlay普及のためには、無線LAN設定を少し簡単にできるような仕組みも必要かと感じた。最近の無線LANルータはAOSSやWPSなどの設定支援機能を有しているが、Apple製品はこれらに対応しないので、SSIDとパスワードを確認して、入力する必要がある。もちろんコンピュータなどに詳しいユーザーには全く難なくこなせるだろうが、今後の広がりを考えると、こうした部分はAppleや周辺機器メーカーを巻き込んだ取り組みが必要かと感じる。
ともあれ、AirPlayとON AIR WIRELSSによる、オーディオリスニング環境の快適さは、一度味わうと離れがたい魅力を有している。さらなる低価格化も含め、今後の展開にも期待したい。
[AV Watch編集部臼田勤哉 ]