◇ 過去の連載 ◇
【Watch記事検索】

西田宗千佳の
― RandomTracking

E3 2009特別編 「外部の”つながり”で価値創造」

Xbox Live担当者インタビュー「1080p配信の秘密はZuneに」


米Microsoft Xbox LIVE General ManagerのMarc Whitten氏

 E3関連最後のレポートは、米Microsoft・Xbox Live担当ジェネラルマネージャーのMarc Whitten(マーク・ウィッテン)氏へのインタビューだ。Whitten氏は、8年に渡りXboxに携わり、昨年の新UI版Xbox Live以降、開発リーダーとしてイニシアチブを採っている

 Xbox 360の魅力は、ハード以上にXbox Liveというネットワークサービスにある。今回のE3にあわせ、機能・サービスの両面で、様々な拡張が行なわれている。そこで、サービス開発と運営の責任者であるウィッテン氏に、今回の機能アップの詳細と、その狙い、今後の方向性について聞いた。



■ 1080pの映像配信は「Zuneの魔法」で実現?! 目指したのは「ディスクと同じ使い勝手」

−まず、Xbox Liveが目指す方向性について教えていただけますでしょうか? 特に今回は、ゲームからAV、コミュニケーションまで、様々な機能追加が行なわれていますが。

Whitten:ひとことでいえば、「すべてのエンターテインメントをリビングルームで楽しめるようにすること」です。Xbox Liveは、ゲームにAV、ソーシャルネットワークと、リビングルームの心臓になり得るサービスを目指しています。

 なにかをしたいと思ったら、それがすぐ見つけられるようにするのが、一つの狙いです。

−動画配信の改善について教えてください。Zune HDとの連携が図られるのですよね?

Whitten:はい、今回発表したのは、Zune Video Storeとの統合による、1080pでのストリーミング方式による映像配信です。これまではダウンロードサービスでしたので、非常に長時間待たないといけませんでしたが、これでその必要はなくなりました。

 18カ国でのサービスを発表していますが、我々のゴールは、すべてのサービスをグローバルに提供することです。もっとたくさんの国で、もっとたくさんのコンテンツを提供できるよう、努力していきます。

−現在は日本でのサービスは行なわれていませんが、スタートに向けて努力はしていく、とうことでしょうか。

Whitten:はい、基本的にはそうです。私は情熱をもって、「世界中で同じサービスができるようになれば」と努力を続けています  ひとつ例を挙げたいのですが、アメリカ向けでは「Netflix」のサービスが、イギリス向けでは「SkyB」のサービスが用意されています。これらは各国での体験をよりリッチなものにするための「アドオン」サービスです。こういった形で、日本も含め、各地域にあわせ、すばらしい体験ができるように努力していきたいと考えています。

新しい「Video Marketplace」の画面。トップにZuneとの連携によるインスタントオン対応のビデオストアが配置される

−ということは、各地でその地域に合わせたサービスが追加される可能性がある、ということですね。

Whitten:はい。その通りです。どこでどのようなことが行なわれるかをアナウンスする段階ではありませんが。

 要は、Zune Video Storeが「ファーストパーティーによる基本サービス」で、その他のサービスが「サードパーティーによる付加サービス」だと考えていただければいいんです。

−1080pでの映像配信について。ダウンロードから完全にストリーミングに移行したのですか? また、サービスに必要な回線の速度はどのくらいでしょうか? 回線が遅くなると、1080pでは転送が難しくなりませんか?

Whitten:今回のサービスは、「待たずにすぐ見られる」ことを実現したものです。でも、ダウンロード機能をなくしたわけではないです。必要ならば、すぐにダウンロードに切り換えることもできますよ。

 おっしゃる通り、今回は映像のクオリティを1080p/5.1chサラウンドに変更したことで、利用に必要な回線速度が8Mbps以上に変更されています。

 ですが実は、テクノロジーのマジックにより、そこそこの回線速度しかない場合でも、コマ落ちがしたり、映像が止まったりしないような仕組みが採られています。必要な時には、瞬時により低い解像度の映像へと切り換えて転送するようになっているんです。ですから、常に最高の回線速度を必要とするわけではありません。

 Zune Video Storeの「インスタントオン」(即時再生)機能は、多くのもので使われている「プログレッシブ・ダウンロード」とは大きく違うものです。ちょっとごらんにいれましょうか……(これ以降、デモをしながら解説)

 プログレッシブ・ダウンロードは、あくまで「ダウンロード」ですから、ボタンを押した瞬間から再生できるわけではありません。インスタントオンなら、数秒以内に再生が始まります。

 それに、映像にはチャプターが設定されていて、好きな場所へ簡単に飛ぶことができます。早送り・巻き戻しも同様です。この時にも、待たされたり、映像が止まったりすることはありません。ストリーミングはつねにアップデートされ、ローカルにダウンロードした場合やディスクを再生している場合と、まったく同じ体験ができるようになっているのです。

−いまチャプターをスキップした時、一瞬映像のレゾリューションが下がりましたよね? それが先ほど言った「テクノロジーのマジック」ですか?

Whitten:まさにその通り。スキップして即座に再生が必要な場合には、まずローレゾリューションの映像を表示し、すぐに本来の1080pの映像へと切り換えます。常に、その回線速度・転送状況で最適な画質が保てるように、自動的な調整を行なっているのです。

−Zune HDとの関係を教えてください。どのように連携するのですか?

Whitten:これまでご説明したものは、Zuneで培われた技術を生かしたものです。マイクロソフトのクラウド・サービスやその他のLiveサービスで得られたものを使い、このように素早く再生できるシステムが構築できたのです。

 今回発表したのは「Video Marketplace」に「Zune Video Store」を統合した、というお話までで、Zune HDと具体的にどのような連携をするのかといったことは、まだ秘密です。アナウンスが可能になった時点で、その詳細をお伝えしたいと思います。

各タイトルはDVDのパッケージを模したアイコンで表示され、選ぶのも簡単。テレビ番組に関しては、各配信事業者(映像の場合には、米国のSci-Fiチャンネル)毎に分類されることになっている 再生中に早送りなどをすると、このような画面が現れる。左下隅には、回線速度や現在の解像度などが表示されるようになっているようだ
Xbox Live Partyモード。Xbox Live上の友人同士で、同じ映画を同時に見ることが可能。これは、他のサービスにはない、非常に特徴的なものだ。 イギリス向けの「特化サービス」となる、Skyネットワークとの連携サービス。このような、各地域に根ざしたサービスの用意も検討されているようだ

 

 ここで少し、新しいVideo Storeの内容について補足しておきたい。

 ウィッテン氏の説明通り、インスタントオンによる再生は文字通り「インスタント」だった。ウィッテン氏は「数秒」と言っているが、ほぼ「再生」ボタンを押した直後から映像が始まるといっていい。早送りなども同様だ。これは、いままでに目にしたストリーミング系サービスとは一線を画する快適さであり、確かに非常に効果的だ。

 帯域の自動制御については、どうやら映像のビットレートそのものが変化しているような印象を受けた。チャプターを送った瞬間、解像度が下がるだけでなく、ブロックノイズなどもかなり大きめに発生したからだ。ただし、1秒程度でそれも落ち着き、また1080pの映像に変わっていく。

 画質については、長時間見られたわけでも、複数の映像をチェックできたわけでもないので、はっきりとした判断は保留しておく。ただし、「ダークナイト」を数分間見た範囲では、少なくとも地デジと同等かそれ以上のように思えた。なお、映像のビットレートは「非公開」としている。おそらく、高くとも十数Mbps、低ければ10Mbps程度なのではないだろうか。もちろんBlu-rayのソフトほどのクオリティはないだろうが、「レンタル感覚で、ディスクの感覚ですぐに映像を見られる」サービスと考えれば、かなり魅力的であるのは間違いない。日本での展開を強く願いたいところである。特に、NetflixやSkyのように「日本独自のサービス」が追加できるなら、可能性が高そうなサービスがいくつか思いつくのだが……。


■「フルゲーム」を配信する「Games on Demand」。MSが「仕入れて」オンラインで「売る」形式を採用

−ゲームの配信について。今回新たに、パッケージのソフトと同じ内容のゲームをフルに配信するサービスも追加すると伺いましたが。

Whitten:はい。「Games on Demand」というサービスで、今夏より開始を予定しています。こちらは、日本でも行ないますよ!

 おっしゃるとおり、パッケージソフトとして販売されているものと同じ内容のゲームを、ダウンロードにて販売するものです。スタート時点では30タイトルほどを用意し、毎週新タイトルを、日本においても、少なくとも1本は追加していく予定です。

−価格はどのようになっているのですか?

Whitten:基本的には、リテールプライス(店頭価格)と同じです。少し違うのは、常に同じ価格なのではなく、市場でのリテールプライスの変化にあわせて価格が変わるということです。

−それはどういうことですか? 要は、マイクロソフトがゲームをメーカーから仕入れて、オンライン経由で「リテーラーとして」販売しているということですか?

Whitten:そういう理解で結構です。枠組みとしては、これまでのXbox Live Arcadeと同じなのですが……。

 また今回から、各国の通貨による価格設定と、クレジットカードによる決済も可能となりました。ですから日本では「円」で表示されます。

−流通手段としての、Games on Demandの位置づけについて教えてください。最終的には、ディスクに変わる販売方法として期待しているのでしょうか?

Whitten:いえ、そうではありません。ディスクでの流通が基本、という点は変わらないでしょう。実際便利ですしね。また、特にアメリカでは、リテーラーの力がきわめて強い。彼らの協力がなければ、ゲームビジネスに成功はありえません。

 ですが、Games on Demadには、また別の側面があるんです。

 例えば……。この「Civirization Revolution」(筆者注:文明を育てて他国と戦い、世界の征服や外宇宙への進出といった目的の達成を競う、対戦型ストラテジックゲーム)というゲームは、非常によくできた、面白いゲームで、私もとにかく大好きなタイトルなのですが、市場で大きな成功を得られたかといと、残念ながらそうではありません。

 しかしGames on Demandであれば、そういったタイトルを再び流通させることができ、ユーザーに「発見して」もらうことができます。

 そのためこのアップデートにあわせ、Xbox Liveでは「レーティング」の機能を搭載します。Games on Demandで購入したタイトルなどに対し、ユーザーが自由に「星」をつけて評価できます。各タイトルは、レーティングの高さなどを基準にソートして表示できますので、評判の良いソフトを見つけるのも簡単になります。

−レーティングはGames on Demandのソフトだけに適用されるのですか?

Whitten:いえ、Xbox Live Marketplace全体です。映画でも、アバター・アイテムでも、Xbox Live Arcadeのタイトルでも、すべてに星をつけて評価することができます。

−今回、「Joy Ride」という無料のレースゲームが出ましたね。こちらでは、車やコースなどを有料販売し、最終的に利益を得る構造と聞いています。こういったシステムは、これまでPC用のネットワークゲームで見られた仕組みですが、Xbox Live上では、今後このような形でのマネタイズ(収益化)も促進していく予定なのでしょうか?

Whitten:「1 vs 100」というゲームはご存じですか? これは、アバターを使ったクイズゲームなのですが、これでも同様のマイクロ・トランザクションによるマネタイズを行なっています。また、Joy Rideが画期的である点は、「共有」も出来る点です。誰かが購入すれば、そのコースで友人も一緒に遊ぶことができます。

 マイクロ・トランザクションによるマネタイズは、あくまでひとつの形だと思っています。目標は、ネットワークの中にある、ありとあらゆるマネタイズの手法を採り入れ、ゲームメーカーにとってのビジネスチャンスを拡大することです。

−クレジットカード決済が可能になった、とのことですが、これはGames on Demandだけですか? 今後、マイクロソフト・ポイント(筆者注:Xbox Live内で決済に使われる仮想通貨)の位置づけはどうなりますか?

Whitten:現在は、Games on Demandだけです。

 マイクロソフト・ポイントは、非常にうまく、有効に活用されています。リテールストアで購入し、ついでに他のものも買ったり、友人にプレゼントしたり、といった形でも使えますし。また、「使いすぎ」を防ぐため、バランスを見ながら利用できる点も有効でしょう。今後とも、マイクロソフト・ポイントはメインの決済方法として活用していきます。

Games on Demandのサービス画面。パッケージ版と同じソフトを、「パッケージのイメージ」を見ながらダウンロード購入できる。決済はマイクロソフト・ポイントの他、クレジットカードもOK。日本では日本円決済となる。またこの画面では価格が「20ドル前後」となっている。これは、店頭ですでに価格が下がっているため、それに合わせて変更されているためだ

 Games on Demandについても、少し補足が必要だろう。ウィッテン氏の説明通り、このサービスは「フルサイズ」のゲームを販売するものだ。そういう意味では、SCEがPSPやPSP go向けにソフトのダウンロード販売を始めることと、似た意味合いを持っている。これで、フルサイズのダウンロード販売を手がけていないプラットフォームは、任天堂のものだけとなる。これは、ハードディスクのように大規模なストレージを持たないからだ。また一般的に、任天堂の顧客の方がコンサバで、「物理メディアのない、フルサイズのゲームの販売」に消極的であろう、という側面もある。

 SCEの手法との違いは、「仕入れ」という形でマイクロソフトがリスクをとって配信する点にありそうだ。一般的なオンライン販売では、「売れた数だけの売り上げ」しか得られず、流通に卸しさえすれば売り上げが立つ店頭販売に比べると、「発売初動で得られる売り上げ」が減るリスクがある。だがGames on Demandでは、マイクロソフトへ卸した時点である程度まとめて収入を得られるわけで、従来の販売方式にこだわるメーカー側としては乗りやすいかも知れない。

 ただし、「店頭価格」とリンクする形の値付けになるということは、時期が来れば大幅に安くなる可能性がある一方で、発売されてすぐのタイトルでは「ディスクやパッケージがないのに値段だけは同じ」になる点が、ユーザーにとってはデメリットといえる。そういう意味でも、マイクロソフトは「隠れた名作の再評価」という、補完的な位置づけを狙っているのだろう。


■ Xbox Liveの「外」とSNSでつながる。Twitterは「ゲームとの相性がいい」

−facebookやTwitterとの連携についてうかがいます。元々Xbox Liveは、非常に「ソーシャルな体験」を重視しているサービスですが、これらとの連携は、どのようにして生まれたものなのでしょうか?

Whitten:おっしゃるとおり、Xbox Liveは、非常に優れたソーシャルネットワークだと思います。おそらく、リビングにおける最大のソーシャルネットワークです。3,000万のアカウントがあり、毎日600万人が利用しています。

facebookもXbox Liveから利用可能に

 しかし、Microsoftで働く私ですら、「古い友人をXbox Liveの中で見つける」ことはできません。facebookは非常にメジャーで、多くの利用者を持つコミュニティです。こういったサービスと連携することで、常に友人たちと「リビング」でコミュニケーションが可能になっています。

 気に入っているのが、facebookのアカウントと、Xbox Liveのゲーマータグをリンクする機能です。facebookの友人の中からXbox 360を持っている人を探し、ゲームに誘うこともできるんです。

−すなわち、Xbox Liveの「外」にあるネットワークと連携することで、よりXbox Liveの価値が高まると考えているわけですね。

Whitten:その通り。一つ例を挙げましょう。実は、私の妻がXbox Liveを初めて使ったのは、去年のことなんです。私にとってはとにかくうれしい瞬間でしたよ! ついに私が作っているものを使ってくれたわけですからね(笑)。

 彼女が使い始めた理由は「Netflix」があったからです。ゲームから入ったわけではありません。リビングでNetfilxが使えるのは、彼女にとって非常に魅力的だったわけです。

 彼女はそこから使い方が広がり、Xbox Live Arcadeのゲームをダウンロードしてプレイしたり、「1 vs 100」に参加してみたりと、楽しげにXbox Liveを使ってくれています。

 fecebookなども、これと同じだと思っているんです。まだXbox Liveのことを知らない人に、とにかく楽しんでもらいたい。リビングで色々なエンターテインメントを体験できる環境が「いま、すでにある」ことを認識してもらいたいんです。

facebookのフォトギャラリーを利用。ウェブブラウザによる表示ではなく、Xbox Liveに特化した、統一感のあるユーザーインターフェースが利用できることは、大きな魅力といえる

Whitten:特に重要だと思っているのが、facebookのフォトギャラリーとの連携です。私の妻なども、facebookで共有した写真をよく見ているのですが、リビングでラップトップを開いて「これ見てよ」っていう感じで見せてくれるんです。でも、それもちょっと……ですよね(笑)

 Xbox Liveを使った方法ならば、もっと簡単に、リビングで写真を楽しめます。しかも大きなテレビで。

−写真のアップロードもXbox 360からできるのですか? Twitterのメッセージ作成は?

Whitten:もちろんできますよ! プロフィールのアップデートもできますし、コメントの書き込みもできます。facebookに用意されている、すべてのアプリケーションが利用できるわけではありませんが、多くの人がリビングから利用したい、と思っている機能のほとんどは、活用できます。サービスのローンチ以後も、機能の拡張は日々続けていきます。

 Twitterは、特にゲームとの相性がいいと思いますね。リアルタイムのコミュニケーションシステムとしては、現在もっとも活気があるサービスですが、ゲーム中に思ったことを書き込んだり、他の人がどう思っているか読んだり、といった使い方は、とてもXbox Liveにマッチしていると思います。

(2009年 6月 8日)


= 西田宗千佳 =  1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、月刊宝島、週刊朝日、週刊東洋経済、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、家電情報サイト「教えて!家電」(ALBELT社)などに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。

[Reported by 西田宗千佳]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

Copyright © 2016 Impress Corporation. All rights reserved.