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西田宗千佳の
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録画番組から“つながり”を生む「RZタグラー2.0」

Twitter活用など、開発責任者 片岡氏が語る狙い


RZタグラー Ver.2.0

 東芝が「REGZA」、「レグザブルーレイ」で展開している「Appsコネクト」が強化される。10月上旬に公開予定のRZタグラーの「Ver.2.0」だ。詳しくは別記事を参照していただきたいが、これはちょうど1年ほど前に公開されたRZタグラーの拡張版であり、新展開といえる。

 その狙いはなにか? Appsコネクト系の開発を統括する、株式会社東芝 デジタルプロダクツ&サービス社 商品統括部 プロダクト&ソーシャルインターフェース部 部長の片岡秀夫氏に話を聞いた。



■ 閉じた世界から「外との連携へ」。RZタグラー ver2.0の新機能とは

東芝 デジタルプロダクツ&サービス社 商品統括部 プロダクト&ソーシャルインターフェース部 部長 片岡秀夫氏

片岡氏(以下敬称略):今回のアップデートでは、タグリストシェアの機能の中で、足りなかった領域を埋めていこう、と考えました。

 説明の冒頭、片岡氏はそう切り出した。

 細かな説明をしていく前に、Appsコネクトの中でも「RZタグラー」とREGZAシリーズが連携して実現していたことがなんだったのか、もう一度確認しておきたい。

 RZタグラーで実現されていたのは「タグリストシェア」という機能だ。文字通り「タグリスト」を共有するものだが、タグリストとというのは、各利用者が録画番組につけた「コメント付きプレイリスト」のような役割を果たす。チャプターに似ているが、映像そのものに加工はしておらず、あくまで「再生位置」とそこに付けられた「コメント」を記録したデータである。


RZタグラーによる「タグリスト」操作の概念図

 この仕組みにより、REGZAユーザーは、自分が番組のどこでどう感じたか、という情報を他のREGZAユーザーと共有できるようになった。サッカーの試合で各プレイをどう感じたか、他人に伝えたいドラマでの名シーンなどを共有することができる。

 もちろん、よりシンプルに、チャプタ情報をやりとりするがごとく、番組の区切りそのものを共有することもできる。例えば、音楽番組で各アーティストの出演場所をマーキングして公開したり、アニメ番組のオープニング、CMの位置、本編の区切りなどを公開したり、といった使い方が一般的だろう。

 昨年秋の公開以降、対応機種も増え続けており、タグリストの公開も活発に行なわれている。

 ただしタグリストシェアには、片岡氏が指摘するとおり、まだ実現できていなかった点がある。それが「外部とのつながり」だ。

片岡:閉じていた世界を、外部と情報連鎖できるようにしたかったんです。

 片岡氏はそう説明する。

 タグリストシェアは、REGZAシリーズで録画したデータに関しての情報を共有するための仕組みである。だがそれゆえに、どんなタグリストが共有されているのか、そこでどんな世界ができあがりつつあるかを「外から」、すなわち、REGZAシリーズを持っていない人、さらにはREGZAシリーズを使ってはいても、基盤アプリである「RZタグラー」を使っていない人には「なにが起こっているか」が分かりづらかった。

 そこで東芝は、RZタグラーの大幅バージョンアップ「2.0」投入に伴い、3つのネット機能を組み合わせ、「タグリストを作っている人達の間でなにが盛り上がっているか」を外の世界からも共有できるようにする仕組みを整えることになった。


■ Twitter連携で情報流通を加速、タグリストの中身をウェブ経由で閲覧可能に

 RZタグラー「2.0」は、まずAndroid用のアプリケーションが公開される。1アプリで複数の解像度に対応しており、スマートフォンとタブレットの両方に対応する。iOSとパソコン向けについては準備中であり、公開時期はまだ明らかになっていない。

 実は「2.0」においては、タグリストの機能そのものは変化していない。ネットサービスの立ち上げと、それらに対する連携機能の部分、ユーザーインターフェースなどが主な変更となる。

タブレット利用時のメインメニュー レコーダ利用時 テレビ利用時
スマートフォンのメインメニュー。見慣れた鳥のアイコンが

 RZタグラー2.0の画面を見てすぐに気がつくのは、画面上に見慣れた鳥のアイコン、すなわちTwitterの機能があることだ。RZタグラー2.0では、タグリストを公開する際、内蔵されたTwitterクライアントを介し、タグリストの情報をつぶやけるようになった。その際には自動的に、いくつかのハッシュタグが追加される。

 一つは広くタグリスト情報用として使われている「#taglist」であり、この他に、各放送局/チャンネルを示すハッシュタグ(例えばNHKなら#nhk、といったもの)、さらには各番組を示す一意の特殊なハッシュタグが追加される。


作成したタグリストをツイート タグリスト詳細情報 タグリスト情報をツイート

片岡:Twitterは、ただ単に人と絡むのではなく、特に「知らない人」と絡むのに向いています。そうして仲間を増やしていける。閉じた世界に近いfacebookなどより、開いた世界のTwitterの方が向いているだろう、と思ったのです。

 これまでも、タグリストを公開するとTwitterに書き込む、という人は少なくなかった。片岡氏自身も、音楽番組のタグリストを作り、積極的にTwitter上で公開している。RZタグラー2.0でのTwitter連携は、これを自動化したもの、といってもいいだろう。ハッシュタグはもちろんだが、番組名なども自動で挿入されるようになっている。

 だが、Twitter上に公開されるだけでは意味が薄い。ツイートやハッシュタグだけを見ても、タグリストの中身はわからないからだ。

RZタグラーのサービス概要

 そこで東芝は、新たにWebサービスを追加。これにより、タグリストの内容(どのようなタグがつけられ、番組内にどのようなマーキングがなされているのか)を、Web上で見られるようになる。タグリストに関するツイートの中には、このWebへのリンクが埋め込まれるので、ツイート経由でタグリストがついた番組の情報は広く拡散し、活用することが可能になるわけだ。

 公開されるのはあくまで「タグリスト」だけであり、映像は公開されるわけではないし、タグリストを活用するには、対応のREGZA/レグザブルーレイが必要である点には変わりない。しかし、「タグリストってどんなものだろう」「この盛り上がっている番組の内容はどのようなものだろう」といった情報が、タグリストを実際に使っている人々の「外」からも確認できるようになることは、タグリストの利用を促進し、タグリスト対応のREGZAをアピールする上で大きな価値を持つ。

 REGZAユーザーでなくても「RZランキング」がWebから確認できるので、「こんなに細かくて面白いタグを公開している人がいるのか」という面白さを体験していただけるはずだ。

スマートフォン版のAppsコネクトページでRZランキングをチェックできる

 ツイート自身は、一般的なTwitterクライアントでももちろん見られるが、RZタグラーに内蔵されたTwitterクライアント機能からも確認できる。

 ツイート時には様々な情報を付加することになるので、140文字のうち半分程度が埋まることになる。返信したりリツイートしたりする際には文字が足りなくなることもあるが、その際には、番組名や不要なタグなどを自ら削って送信すればいい、と片岡氏は言う。

片岡:今回のアプリには、我々が開発した、ほぼフル機能のTwitterクライアントが入っています。見る、つぶやくことはもちろん、リツイートしたりもできます。結局きちんと作らないと、ということになったんです。

 また実際には、タグリストを公開した時以外にもハッシュタグリストを使う人がいるんです。「この番組のタグリストを作ります」という、予告に使っている方もいらっしゃる。そういう用途につかっていただいてもいい。それで私も見てみよう、という形で視聴誘導ができれば、世界が広がるじゃないですか。

 タグリストで解決したかったのは、録画しっぱなしでため込んで観ない、結果、録らなくなっていく、ということです。こういうものがあるなら便利だから見てもらおう、録ってもらおう、ということになればいい。そのための情報のやりとりを活性化していくのが狙いです。

 なお、番組毎のユニークなハッシュタグをつけるということは、そのハッシュタグは「なんの番組を示しているものかわからない」ものになる、ということでもある。そうすると、タイムラインに判別不能な文字列が並びやすくなり、利用者には嫌われる原因となりやすい。だが片岡氏は「このサービスの場合、大きな問題にはならないでしょう」と話す。

片岡:実況などのリアルタイム系と違い、録画番組を扱うものですから、同じ時間帯に、同じ識別子の入ったハッシュタグ入りのツイートが並ぶことは少ないと思います。だから、そう目障りにはならないと思うんです。不要な時には削ってツイートしていただければ、と思います。


■ 「ランキング」機能で作成者のモチベーションアップを狙う

 もう一つ重要なのが「ランキング」だ。「RZランキング」にアクセスすると、検索してタグリストを見つけられるのはもちろん、「新着タグリスト」、「今週の人気タグリスト」、「人気番組」などの情報が見られる。スマートフォン用・PC用両方のウェブサイトが作られているので、どちらでもアクセスOKだ。

RZランキング 新着タグリスト 人気タグリスト 人気タグラー
16段階のタグラーレベル

 もうひとつ重要なのが「タグラーレベル」のランキングだ。タグリストを作る人々を俗に「タグラー」と称しているわけだが、タグラーレベルは、彼らに評価を与えて報いるための施策といえる。

 タグラーとしてユーザー登録を行なうと、各ユーザーにはブロンズからプラチナまでの4段階、さらに各段階に一つ星から四つ星までの評価を加え、全16段階の「評価マーク」がつく。

片岡:タグリストをたくさん作っていただける方のモチベーションになれば、と考えました。例えば、同じ番組に複数タグリストがあった時、評価をみてチェックしてみる、といった使い方ができます。

 現状では、ダウンロード数、すなわちどれだけタグリストが使われたか、という情報と、作っている数を重視して評価しています。単純なダウンロード数だけだと、人気のある番組のタグリストを作っている人が有利になってしまいますので。評価点はすべて等間隔ではなく、上にいくほど厳しくなります。下のレベルならすぐに上がりますが、上はなかなか上がらない、という感じですかね。すぐにトップになってもつまらないでしょうから(笑)

 ランキング機能を作ったのは、タグリスト作成のモチベーションを上げ、このサービスを長く使ってもらうための策だ、と片岡氏は言う。

 ネットサービスにおいては、「そのサービスがなにをしているか」が重要だ。タグリストを作るタグラーの人々が盛り上がり、結果楽しいタグリストが増え、それに関するツイートが増え、それにつられてタグリストの内容を見る人が増える事が望ましい。

 そういった特性を、タグリスト利用者の拡大につなげるため、タグリスの詳細情報表示用の上部には、RZタグラーを配布するウェブサイトへのリンクが用意されている。「どこでどのようにアプリを入手すればいいかわからない」という人々に対し、アプリ入手先への導線を示すためだ。

 もう一つ、利用者を増やすための変更がある。

 従来は、タグリストを作って登録する人だけでなく、利用するだけの人もユーザー登録が必要だった。だが今回より、利用だけ、閲覧だけの人は登録が不要になった。これも、利用の敷居を下げるための施策といえる。

 楽しさを機器に閉じず、広い世界へ出て行き、ポジティブな連携を生み出す。それこそが、「2.0」で狙う改良点なのである。

(2011年 9月 29日)


= 西田宗千佳 =  1971 年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、PCfan、DIME、日経トレンディなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う?世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ!クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?」(徳間書店、神尾寿氏との共著)、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)などがある。

[Reported by 西田宗千佳]