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PS4発売が2月になった理由。日本のゲーム開発の変化

SCE WWスタジオプレジデント 吉田修平氏インタビュー

SCE ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏。目の前にあるのは、SCEが次の春までに発売するゲーム機群だ

 PlayStation 4担当の伊藤氏のインタビューに続き、SCE ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏インタビューをお届けする。

 PS4の発売が2014年2月になることについて、ソフトウエアを開発して提供する立場である吉田氏は、ハードウェアとは別の観点で語ってくれた。

 また、PS4にあたって、特に日本を担当する「ジャパン・スタジオ」が迎えている変化やゲームの作り方など、話題は多岐に渡った。

「ソフトを継続的に出す」ための2月発売、日本は「遅れて」いた

−−今回、PS4は発売が2月になりました。それがユーザーにどういう影響を与えると思っていらっしゃいますか? ビジネス判断的な部分は、私としてはよく分かるつもりなんです。こんな原稿を書いていますから。でも、感情としてはまた別の部分もある。ユーザーの方もそういう部分があるのではないでしょうか。

PlayStation 4

吉田:理想でいえば、全世界同時に発売できれば良かったんですよね。でも、それには色々な条件が整わないと好ましくない、と考えていたわけです。

 一番大事なのはタイトルのラインナップですね。ここ数年、ローンチはタイトル数が多いのに、その後途絶えてしまう……ということが見られていたので、とても気にしました。

 PS4というのは、我々のプレイステーションビジネスを、何年も支える屋台骨になってもらわねばならない、とても重要なもので、そのローンチなわけですね。それで2008年あたりから準備をしてきたのですが……。

 明らかだったのは、去年あたりから、欧米ではパブリッシャー・デベロッパーさんが、PCをベースに開発していたことです。PS4がPCと同じアーキテクチャということもあって、「いつでもPS4タイトルを出せますよ」状態、PS4レディだったわけです。

 PCだと年々性能がアップしていきますからね。PCのパフォーマンスがアップしてきたこともあり、PCをベースに作るのが基本になり、それを全面に出してプロモーションされることが多くなっています。ジャーナリストの方もゲームファンの方々も、「PS3でやると解像度が下がりそう。PC版いいなあ」という話が出やすくなりました。グラフィックスの面では、PC版が一番目立つ存在になっています。

 もちろん、コンソールにはPCにない良さがありますから、グラフィックスだけの問題ではないんですけれど、PS3もそろそろ7年経ったわけですし、「新しいコンソールが欲しい」というのが、ユーザーの側からも上がってきましたし、パブリシャーさんの側からはむしろ「もっと早く出してくれ」とせっつかれている状況でした。

 ところがその準備のために日本を見ていくと、明らかに違ったわけです。基本的には、ポータブルが非常に強い。逆の意味で言えば、PS Vitaが非常に元気だということなんですが。

 PS3は、欧米に比べて、普及に時間がかかったんですよね。日本で作られたゲームも、今となってはPS3で良いゲームがたくさん出てきましたし、先日の発表会でお伝えしました通り、過去1年間のコンソールのゲームの売上のち、7割以上がPS3用、という状態になりました。日本のパブリシャーさんも、PS3でハッピーなわけです。そこは明らかに欧米のパブリシャーと違うわけです。

 今年の2月にPS4の発表会をして、その後に様々なアプローチをした結果、日本のパブリシャーさんも「PS4いいじゃない、やりましょう」と言っていただけるようになってきたんですが、やっぱりスタート時点の違いというか、欧米のパブリシャーさんの方が準備は全然進んでいます。

 日本でも洋ゲーが好きな方が増えてきて、それはとてもありがたいことなのですけれど、日本市場のゲームの好みからいっても、一般のユーザーさんを見ると、日本で作られた日本市場向けのゲームが揃っている状況である必要がありました。しかも、途切れない状況で。その結果、来年2月の方がいいだろう……という形がわかったわけです。

 それから、欧米では非常に強いデマンドがあった。我々の想像するよりもずっと多い引き合いをいただいています。

−−確かに。正直に言って、2月にニューヨークに行った時は、「コンソールゲームはもう終わりじゃない?」的な雰囲気が強かったんですが、3月・6月とずっと取材を続けていると、「いや、コンソールゲームの市場はまだあるぞ」という風に、ゲームメーカーや流通の方々の雰囲気も変わってきたように見受けられました。

吉田:そうなんです。「こうなってくれたらいいのになあ」と思っていたことが、まさに起こりつつあるんです。「コンソール、いいじゃないか!」という感じに。

 実際、これまでのプレイステーションの歴史の中で、一番予約数が多いそうです。また、アメリカでは、PS3のローンチ直前までの予約数を、E3後の早い段階で越えてしまった、といった感じです。

 そうした全体のデマンドとタイトルラインナップの準備状況を考えると、日本は2月が一番いいだろう、というのが、我々の出した結論です。

 そこは西田さんがおっしゃる通り、「頭で」考えたものです。ではそれを「ハートで」どう感じられるかどうかについては、説明が効かないところです。ソニーは日本の企業ですし、過去にプレイステーションは必ず日本から出ていました。「なんで今回は違うんだ」とお怒りになっていらっしゃる方の気持ちは、よくわかります。

−−だからといって、「出すことだけ」を目的にしてもビジネスにはならない、と。

吉田:チョイスとしては良くないんじゃないか、というのが我々の選択です。

−−その選択をするための、「日本は遅れ気味だ」という認識は、2月にはもっていたわけですよね。

吉田:それは、去年にはそういう認識でしたね。

−−2月の段階で、日本は遅れるという決断をしていたんですか?

吉田:決まってはいないです。E3で発表した時も、まだ最終決定はしていなかったです。その後の状況も見て最終決断した、ということです。

−−遅らせた結果に納得してもらうには、それだけたくさんのゲームがないといけません。未発表のものもたくさんある、ということですね。

吉田:はい。未発表のものも含め、まだたくさんあります。

「プラットフォームを支える」意識がジャパン・スタジオにも

−−ワールドワイド・スタジオとして見た時に、PS4向けに提供するタイトルとしてはどう考えているのでしょうか? というのは、PS3の時代、WWSから色々なタイトルが出ましたが、意外とその間隔は長い。しかもWWSの中でもいろいろ出てくる国もあれば、そうでない国もある。ぶっちゃけて言えば、日本からはPSPやVita向けを除くと、あまり活発ではなかった。その辺、WWSとしては色々な戦略があるとは思いますが、各リージョンにとってデマンドの強いゲームの価値が高まると思いますが、いかがでしょうか?

吉田:はい、おっしゃる通りです。過去運が良かったのは、プレイステーション1以降、ローンチの時もそれ以降も、キーとなるタイトルをサードパーティーさんが提供してくれていた、ということです。PS1で参入した時には新参者でしたし、ゲーム制作の経験も非常に浅かった。PS1は「リッジレーサー」であったり「鉄拳」であったり、「バイオハザード」であったり、「FF VII」だとか「メタルギア」だとか、数多くのサードパーティーさんのタイトルで支えられてきたわけです。

 それがここ数年、モバイルの市場が大きくなって利益率が高いので、そうした日本の大手のパブリシャーさんが、リソースの多くをそちらにシフトされはじめました。ポータブルでは任天堂さんとの競合もあり、過去のようには、プレイステーションに、サードパーティーさんの素晴らしいタイトルを出していただけるわけではなくなってきた、という現実があるわけです。

 これまで、我々はファーストパーティーとしては、サードパーティーさんのタイトルが市場を引っ張っていく中で、「グランツーリスモ」のようなジャンルトップ・タイトルもありますが、割と個性的なものであるとかを出していけばよかったんです。

 でも、現在のような状況の中では、ファーストパーティーとして引っ張っていけるようなタイトルを作らねばならない、というのが、WWS側でも、SCEJA側にも生まれてきた、というところです。

 過去においては、日本では、スタジオ側が作りたいゲームを作って、あとはマーケティングが「どうやってこれを売ろうか」といったような感じだったんですが、欧米においてはもっともっと早い段階から、マーケティングを交えた話し合いが行なわれていたんです。そういった形で、今はSCEJAのマーケティングチームと、WWSが相乗りで、一緒に問題を議論したり、毎週のように会って話し合いを持つようになっています。お互い兼務で同じチームに入ったりね。コミュニケーションを改善しています。

 なので、日本で作ったタイトルを日本でちゃんとプロモーションしていくとか、最初からプロモーターが入り「この意図はなにか」「もう少しこうしてくれると売りやすい」といった、健全なディスカッションができるようになってきました。

 そういうことは、昨年(2012年2月発売)の「GRAVITY DAZE」から始まって、「TOKYO JUNGLE」、「SOUL SACRIFICE」などで、徐々にスタジオとマーケティングが一緒に力を発揮できる体制が整ってきました。まだまだ大ヒットを飛ばせるところまでは行っていませんが、「続編を作って欲しい」と言っていただける作品を作れるところまでやってきたということは、これから先、そこで努力を積み重ねていけば、プラットフォームを引っ張れるようなタイトルも作れるようになっていくのではないか、と思っています。

−−すなわち、これまでSCEはプラットフォーマーでありながら、自身のタイトルでプラットフォームを支える意識が弱かったけれど、それが変わってきた、ということですか?

吉田:それがかなり強くなってきた、というところです。まだそこまで行っていないですけれど。それに対し欧米のスタジオというのは、「プラットフォームを支える」という意識が非常に強いですね。過去も、今も。その意識が日本でも生まれ始めた、ということです。

 Vitaに一番投資してゲームを作っているのは日本、ジャパン・スタジオです。もちろん今、海外でも「KILLZONE MERCENARY」のような大作が作られるようになっていますが、コンスタントに投資を続けているのはジャパン・スタジオになります。プラットフォームを引っ張るタイトルを作らなきゃ、という意識でやっています。

 じゃあPS4はどうかというと、時間をかけてやっていくしかない。PS3はやっぱり出遅れたんです。それは技術的な面でもそうですし、PS2の頃から、スタジオ内がどういうディレクションで行くべきなのか、方向性が難しかったんです。その時、私はもうずっとアメリカで仕事をしていたんですが、端から見ても、わりと小さい規模でクリエイターが作りたいものを作っているな……という意識でした。

 PS2時代から日本市場は、欧米市場に比べると、相対的に大きくなっていない。伸びていない、という言い方が正しいのだと思いますが、その中で欧米のチームは大規模な技術や開発体制に投資するようになっていました。欧米のユーザーさんは、非常にリアリスティックなゲームが好きですから、PS2やPS3の能力を使うにはピッタリだったわけです。

 一方で、日本人の好むアニメ的なスタイルは、そこまでハイエンドなグラフィックは求められずに、むしろゲーム性やストーリー性が重視された。コンソール、PS2やPS3が目指した方向性と市場性がちょっと違った、ということはあったかも知れないです。

 どちらにしろ、PS2の時代には(ヒットタイトルという)資産を作ることが出来なかったんです。今でもジャパン・スタジオの大きなIPというのは、「グラン・ツーリスモ」にしろ「みんなのゴルフ」にしろ、PS1の時に生まれたIPです。PS2の時に生まれて今でも……というのは、なかなか挙げられない。「ICO」や「ワンダと巨像」のように、「チーム」という意味では評価されたチームもありましたが、定期的に続編を出していって、ユーザーさんがついてくれている……というIPは、PS2以降、ジャパン・スタジオにはほとんどないんです。

 それが結局、プラットフォームを引っ張るタイトルを出せていない、ということです。

 ですからその改善は一朝一夕ではできませんので、がんばって時間をかけてやっていくしかない、ということですね。

−−それは、「アンチャーテッド」や「God of War」のような、いかにも今世代を代表するタイトルの存在を見て、日本のスタジオの意識も変わってきた、と。

吉田:変わってきたところですね。まだ完全ではありませんが。

 その一つのカギは、ジャパン・スタジオのヘッドに、サンタモニカのスタジオのヘッドだったアラン・ベッカーが着任したことです。日本に来てもらったんですよ。

 彼は実は日本人とアメリカ人のハーフで、日本生まれ・18歳まで日本育ちで、日本語ペラペラなんですよ。日本のカルチャーとアメリカのカルチャーを両方持っている人で、もちろん日本の文化が大好きなんです。日本のクリエイティブなゲーム、例えば「パラッパ・ラッパー」とか、大好きなんですよ。それで「ジャパン・スタジオを任せたいんだけど」と言ったら「ぜひやりたい」とのことだったので、来てもらいました。

 サンタモニカ・スタジオは、「God of War」のようなプラットフォームを代表するようなタイトルを作ったり、「JOURNEY」(邦題:風ノ旅ビト)だとかといったインディーと一緒に仕事をしたりといった、とてもユニークなスタジオなんです。そこのヘッドがいま、ジャパン・スタジオのヘッドになって、色々なクリエイティブに関する考え方など、開発しやすい環境作りも含めて、いまドコドコ進めているとことです。

 アラン・ベッカーは影で働く人で、あんまり表に出たがらないんですよね。でもものすごく歴史は長くて、プレイステーションの最初から関わっているんですよ。立ち上げの時にはアメリカでのプロデューサーを担当してました。「クラッシュ・バンティクー」の1本目は、私が日本側のプロデューサーをやってましたが、アランはアメリカのプロデューサーでした。その時から一緒に仕事している仲です。

−−そうするとPS4では、クラッシュのオリジナルクリエイターのマーク・サーニーさんと、吉田さんとアラン・ベッカーさんの3人が揃うことになるんですね。

吉田:そのトリオがずーっと一緒に仕事をしていて、今一緒に「KNACK」を作ってる、ということになりますね(笑)。プレイステーションそのものも良く理解していますし、愛着ももちろん大きいです。なんとか成功させたい、という強い思いを、マークもアランももっています。マークはSCEの外部の人ですけれど、そういう思いはすごく強い。

−−そういうことを積み重ねると、PS4の発売時期についても、この時期に無理矢理にではなく先に……ということになるわけですか。

吉田:そうです。だからといって、2月発売の翌月、3月に、ジャパン・スタジオからスゴいタイトルが出るのか、と言われると、そうではないです。残念ながら。ローンチで「KNACK」は出しますが、あれはマーク・サーニーとジャパン・スタジオのコラボなので、純粋なジャパン・スタジオ製とは呼べないかも知れないです。でも、誰もが楽しめるタイトルということで、PS4のラインナップの中で、あるポジションを占める重要なものだと思っています。それが認められて、SCEJAは、初期のPS4ユーザーさんには、すべてダウンロード版を同梱したスペシャルパックを用意したわけです。要は、みなさんに遊んでもらいたい、ということです。

Vita TVは「面白い商品」、地域によっても使い方は変わるか

PlayStation Vita TV

−−Vitaの方はどう考えていますか? E3の時には「もう少し小回りの利くものを」というお話でしたが、「Vita TV」が出てきたことによって、ちょっと様子が変わってきたと思います。PS4もPS3もVita TVも「コンソール」だから食い合いが発生する……とまで単純な話ではないと思いますが、小粒なタイトルだけでなく、それこそ「KILLZONE MERCENARY」のようなしっかりしたサイズのタイトルを売りやすい環境が整うのでは、とも思います。

 WWSとして見た時、Vita TVのようなライトなものと、PS4のように、リビングの中央にドーンと鎮座するもの。それらをどう見て、どうソフトを提供していくつもりでいますか? Vita TVは面白いんですが、面白すぎてポータブルとの関係が見えづらい。それこそ「重厚長大なコンソールは不要」という意見に近づいていくようにも思えます。

吉田:Vita TVはとても面白い商品ですよね。私も、発表できる日を心待ちにしてきました。

 というのは、Vitaの開発の途中から、「Vitaの能力を使った新しいデバイス群も考えられるよね」という話が出て、色々試作を作ってきたものの一つです。最初に形になったのがVita TVで、まずは世に問うてみよう、ということになりました。

 我々も、どこが一番ウケるのかわかんないんですよ。使われ方やユーザー層としては、大きくわけると2つ予想してます。

 1つは、非常にカジュアルなユーザー。アメリカではビデオサービスが当たり前ですが、日本ではそこまで浸透していない。そこにお手軽な価格で人気のビデオサービスが乗っかってて、ゲームも低価格で遊べる。ゲームが主でなくてもお手軽にビデオサービスなども楽しめる、インターネットが楽しめる、という層です。

 もう一つはもっとガチガチに、プレイステーションユーザー向け。Vitaユーザーはすでにデジタルタイトルをもっておられる。Vita TVを買えばすぐに無料で再ダウンロードして遊べるわけです。もしくは自宅と移動中。移動中はVitaで遊び、クラウドセーブで連携して続きをすぐにVita TVで遊べる。そしてPS4が出てくれば、リモートプレイで他の部屋でPS4のゲームが楽しめる。インターネット環境が良ければ、外にVita TVを持って行ってPS4で遊べる……。そういうこともできるかも知れない。プレイステーションやPlayStaion Plus(筆者注:プレイステーションユーザー向けの月額課金制サービス)のユーザーの方が、これを追加することでもっと楽しめる、というコンパニオンデバイスとしての扱いですね。

 この全然ちがう2つのユーザー層を見ています。

 これは地域によってもまったく違うかも知れません。昨日(9月18日)にアジア向けにも出荷すると発表しましたが、すでに欧米の方からものすごい反響をいただいています。彼らはPS4のエクステンダー、他の部屋でPS4のゲームを楽しむための機器として考えているようです。「家にたくさんテレビがあるから、それぞれの部屋用にVita TVを4個買う」といっていただけている方もいらっしゃったりとか。

 また将来的には、Gaikaiのクラウドゲームがきますから、それを遊ぶのに適したデバイスになります。そういう部分が非常に評価されています。

 我々としても非常に楽しみなデバイスなんですけれど、逆に言えば、「Vitaを出します」、「PS4を出します」と言った時のような、会社の屋台骨になってもらおう、という新しいプラットフォームを出す、という意気込みではない。「Vita TVが売れないと会社がつぶれちゃう」という意気込みではない、わけですね。

 ですから我々としてはとても面白い試みだと思いますし、これからのプレイステーションのエコシステムがよりサービス向けになっていく中で、こういうデバイスがポン、と中に入ってくると、さらに楽しめますよ、という先駆けのようなものになるかな、と思っています。ですから非常に楽しみにしています。

「モバイル」が生み出した変化をコンソールゲームにも

−−伊藤さん(筆者注:第一事業部 事業部長の伊藤雅康氏。インタビューを別途掲載)にお話を伺った時、今後PS4では、人の好みによってゲームの内容や難易度が変わる、すなわち「サービスベース」でありながらコンソールベースである、ということが大きな違いである、という話が出てきました。そうしたことは、スタジオとして考えた時に、どういう風に飲み込んでタイトルに生かしていくことになるんでしょうか。

吉田:ゲームの中身でいえば、これまでも、どれとは言わないですが、ゲームのプログラムの一部として、ユーザーのプレイの仕方をみて挙動を変えることはしています。ユーザーさんが一番楽しめるように……という配慮の元で、です。例えば「自動難易度調整」のような形で、ですが。それはある種「パーソナライズ」の例といえるかもしれません。

 一方で、今のモバイルゲームの発展がもたらした業界への貢献は、ものすごく細かくユーザーさんの挙動をデータで捉えてゲームの内容を良くしていく、というカルチャーがあります。これは完全にウェブのカルチャーですよね。ウェブサイトなどでは、クリックの数を増やすために修正をくりかえします。そういうインテリジェンスを使ってゲームを良くするということは、当然コンソールでもやらなければならない。だってみんなやっていて、それでいいサービスになっているわけですから。そういった手法の良さを採り入れていかなくてはなりません。

 伊藤がいうのはシステムレベルでの話だと思います。システムメニューをどう出すか、ということもあると思いますが、サービスとしてのゲームの内部でもやるべきことです。

 ゲームは発売したら終わりではなく、追加したり修正したり難易度調整をしたり、ということが続くでしょう。そうしてユーザーコミュニティからの反応やプレイの仕方で判断することになります。「ああ、みんなここでひっかかっているから調整しよう」とか、「ここは人気がないから短くしよう」とか、そういうことをやっていくと、ゲームがもっともっと良くなるはずです。

 それはシステムレベルでも、ソニー・ネットワークエンタテインメントのチームが計画していますし、ゲームレベルでも、各スタジオでそういうツールを使いながら、アナリティクスの手法を使った開発を考えています。特にマルチプレイヤーのゲームではもうやっていますね。ベータテストから難易度調整をしたりとか。

−−いままでそうしたことは、ゲームを出荷する「ディスク」ができる前、内部テストの段階で行なわれていたことかと思いますが、それがこれからは、アップデートなどでずっと続くことになる、と。

吉田:ずっと続くことになると思います。そうすると当然、収益モデルなども変わらざるを得ません。

−−すると、PS4の世代では、ゲームの内容もビジネスモデルも、ユーザーの間でも受け止められ方も、さらに変わっていくことになる、ということですね。

吉田:そうですね。我々は、ずっとコンソールゲームに集中しています。その分、業界の中ではそうしたアプローチが遅れています。モバイルであるとかソーシャルゲームをやっているチームの方が全然進んでいますので、我々も学びながらやっていきたいと思っています。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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