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REGZA Z9X開発者インタビュー「画質直球勝負」で4Kを攻める

直下型LED&広色域の4K時代の画質とは?

 テレビ各社は、今年を「4K本格普及の年」と位置づけている。4月に入り発表された今年の新製品を見ても、その力の入りようはおわかりいただけると思う。4Kネイティブコンテンツが不足する中での4Kテレビ訴求を、冷ややかな目でいる人々がいるのも事実だが、筆者の視聴した実感として、「ハイクオリティなブルーレイを見る場合、現状のトップクラスの4Kテレビの場合、2Kと4Kの間には隔絶した差がある」と感じており、決してフェイクではない。だからこそ、各社とも4Kテレビを「本格的な画質軸での競争」と捉えている。

 では、各社は「4Kテレビ」をどういう製品と位置付け、広げていこうと考えているのだろうか? その戦略には似たところもあるが、各社各様の思惑がある。

 今回から数回を使って、4Kテレビを発売する企業の技術者・商品企画者に、「今年の4Kテレビに賭ける思惑」を聞く。

 第一回目は東芝だ。今期の東芝は、フラッグシップ「REGZA Z9X」シリーズを中心に展開する。同社はテレビメーカーの中でも、最初期から4Kの製品を扱ってきた企業である。その東芝は、かなり強い覚悟をもって、今年の4K市場に臨んでいる。同社が4K製品で狙うものはなんなのだろうか?

左から画質関連技術担当の住吉氏、商品企画担当の本村氏、プラットフォーム担当の山内氏

 ご対応いただいたのは、商品企画責任者の東芝ライフスタイル株式会社 ビジュアルソリューション事業本部 VS第一事業部 国内商品企画 参事の本村裕史氏、プラットフォーム担当として、ライフスタイルソリューション開発センター オーディオ&ビジュアル技術開発部 グループ長の山内日美生氏、そして画質関連技術を担当する設計センター VS設計統括部 VS設計第二部 アシスタントシニアマネージャーの住吉肇氏である。

狙うは「買い換え層」、50型Z9Xをキラーモデルに

 冒頭で述べたように、東芝は今年、Z9Xシリーズを軸に攻める。サイズバリエーションは、50型、58型、65型、84型の4モデル構成。ただしこのうち、84型のみ液晶パネルとバックライトが異なる。実質50/58/65型の3モデル+サイズ重視の84型、という構成と考えていい。

REGZA Z9Xシリーズ
84Z9X
58Z9Xと65Z9X

 また、4Kモデルとして、40型の「40J9X」が用意されたことも注目されている。現状、4Kのテレビ製品として、40J9Xはもっとも小型の製品だ。特に単身者からは注目度が高く、ネットでは一番人気となっている。

キラーモデルと位置づける「50Z9X」

 今回、特に注目なのは、Z9Xの50型、58型、65型の3モデルだ。この3モデルは、液晶パネルの供給元も同じであれば、バックライトも同じ、東芝開発によるエリア駆動・直下型LEDバックライトだ。そのため、「画質面ではほぼ同じと考えていただいてかまわない」(住吉氏)という。その上で、日本国内では受け入れられやすい50型からラインナップを作り、価格も抑えた。実売価格は65型が63万円前後、58型が43万円前後、50型が32万円前後。サイズに比例した価格になっていて、非常にわかりやすい構成だ。特に50型は、サイズと価格のバランスが良く、東芝側もヒットを期待しているモデルでもある。本村氏はずばり「キラーモデルにしたい。50型が当たり前の時代がやってくる」と話す。

 なお、40型のJ9Xはさらに安く、23万円前後と予想されているが、6チャンネルの地デジ番組を常時録画できる「タイムシフトマシン」を搭載せず、直下型LEDバックライト採用だがエリア駆動はしない。

 今回のモデルラインナップについて、本村氏は次のように考え方を説明する。

商品企画担当の本村氏

本村氏(以下敬称略):そもそも、なぜお客様が「テレビを買いたい」と思うか、ポイントはなんなのか、ということです。

 AV機器をなんのために買うのかといえば、「感動するために買っている」のだと思います。そこが他の家電、白モノ家電との違いだと考えています。正直、大きいテレビだから利便性がある、ベネフィットがあるという話じゃないですから。

 なぜ大型テレビが欲しいかといえば、「わあきれい」「わあ大きい」という感動とわくわくを与えられるからです。

 昔、50型は趣味の世界、ある程度限られた方が買う製品でした。一部の富裕層の方々が購入するものでした。4Kについても、あこがれ・情報としての4Kであり、「自分が買うんだ」というステージに入っていませんでした。

 しかし今は、「もう買える」というステージに入っています。大画面の4Kで、どれだけ感動していただけるか。ベタな話ですが、もうそれしかないんです。機能表の、○×の競争ではないです。

 こうした分析の背景にあるのは、テレビの買い換えサイクルだ。

 地デジへの買い換えは確かに2011年がピークだったが、それを見据えた薄型テレビへの移行は、2006年頃から本格化していた。テレビの平均的な買い換えサイクルは7年から8年。そうすると、2006年から2008年頃までに薄型テレビを買った人々は、去年から今年、来年にかけてが買い換えの時期になる。2006年から2008年に薄型テレビを買った人々はかなり多く、需要としても底堅い。その当時、大型といえば32型から40型。だが、いまや32型はパーソナルサイズで、決して大きくはない。多くの人はサイズに慣れてしまい、より大きなものを求めるようになっている。

 8年の技術進化により、テレビの設置面積はかなり小さくなった。いまや50型でも極端に大きなスペースは必要なくなりつつある。「50型は、買い換えのお客様にしてみればすごいステップアップ」(本村氏)というのは間違いない。以前買った時は「あこがれ」「特別なもの」だった50型が、はじめて薄型テレビと買った時と大差ない価格で手に入り、しかも自宅に置くことが現実的なサイズになってきた……。

 この論理は、東芝だけでなく、すべてのテレビメーカーに共通する考え方だといっていい。その上で重要になるのが、「いかに買い換えにつながる感情を刺激するか」だ。大きくなることは魅力だが、それだけでは足りない。そこで出てくるのが「画質」である。2Kで50型以上だと、ドットの荒さを感じることがある。そこで4K化し、解像感を高めることで画質価値を追求しよう、という論理になる。4Kに取り組む日本メーカーがこぞって「画質追求」に取り組んでいるのは、テレビに求められるのがやはり「画質」であり、大画面化は高画質化を抜きにしては語れなくなっているわけだ。

 各社が「テレビを買い換えてもらうための付加価値」として、大画面での画質を打ち出す以上、東芝としての差別化策が必要になる。それが、今回のZ9X・J9Xに込められた戦略だ。

本村:レグザ(REGZA)ブランドはずっと「本物を作るぞ」という意気込みで、色々チャレンジしてきました。録画対応もその一貫です。ただここにきて、他社のスペックもあがってきて、「レグザじゃなくても同じことができますよ」、という声を聞くことも増えてきています。

 そこで、改めてレグザらしさが欲しかった。それが「Z」に与えられた使命です。「タイムシフトマシン」の搭載はオンリーワンですが、画質軸では圧倒的なことをしないといけない。それが、スペック面でいえば700nitの高輝度、ということです。

 すでに述べたように、Z9Xシリーズでは、50型から65型で東芝独自開発によるエリア駆動対応・直下型高輝度LEDバックライトを採用した。高輝度LEDバックライトによる高画質化というアプローチは、昨年後半に登場した2Kモデル「Z8」でも試みたものだ。今回はZ8で採用したバックライトをさらに改良し、昨年の4Kモデルである「Z8X」と比較した場合、色域は約30%、輝度は約75%向上しているという。その画質への効果は後ほど詳しく述べるが、これを一気に「キーとなる3モデル」に投入してきたところが、東芝のチャレンジとなる。

自社開発の直下型高輝度広色域ダイナミックLEDバックライト
高輝度広色域ダイナミックLEDバックライトの概要

本村:バリエーションを絞っている意識は、あまりないです。確かに2011年より前の地デジブームの時は、色々な型名でやっていました。本音をいうと、ニーズにあわせてというより、メーカーサイドの都合もあって……。数が出るので、複数のメーカーの複数のパネルを用意しないと、数量を揃えられなかったんです。その結果、製品ラインナップがわかりにくくなっていた、という自己反省はあります。

 しかし現在がそれを乗り越えたので、あるべき姿のラインナップ構成ができています。

 4Kはもう次世代ではないので、「X」型番ではありません。現時点のZシリーズにおいては、「4K」が付加価値なのではなく、「高画質軸」で必要なもの、という認識です。

 正直、価格とスペック、相反するところが大きいです。お約束ごととして、妥協なきハイスペック、という目標は立てづらい。しかし、そこをブレイクスルーできているのは、バックライトもエンジンも自社開発である強みが最大限生かされた、ということです。「買える最高位モデルを目指す」ことで、自社開発の強みを絶対的に出せると考えました。

40J9X

 40型のJ9Xは、パーソナルなものとして別の提案が必要だ、ということで考えたもので、新たな市場を作るものだと考えています。相当社内でも議論をしました。昨年CEATECで展示させていただきましたが、あの時点ではコンセプトを固めていた段階で、商品化は決まっていなかったんです。しかし、40型はパーソナルテレビとして需要あり、という皆様からのリアクションが、肌温度で響いてきました。ですので、単なる小型版ではないです。

 なお、東芝のテレビ事業は、4月から白モノ事業と合流し、「東芝ライフスタイル」が扱うことになる。だが、テレビ事業そのものの目指すところに「なにも変化はない」と本村氏は言う。

本村:テレビはやっぱり「驚き」「感動」の商品。テレビファンの夢を最大化することが我々の目標です。こんなハイパーなモデルを開発できることがありがたい、と考えています。

4K+高輝度・広色域だから「ギミックでない」画質が必要

 では、そこまで東芝が自信を持つ「画質」とは、どういうレベルに来ているのだろうか?

 率直にいって、解像感があるのは当たり前だ。だがそれ以上に、バックライトの変化による光の表現の自然さがプラスに働いている、と感じる。明るいことが重要なのではない。むしろ、暗いところがベタ塗りにならず、しっかりと表現できるようになっているところを評価したい。暗めの背景に煙がたなびくような描写が、Z8X世代に比べ良好になった印象だ。

山内日美生氏

山内:Z8Xを開発した結果、4Kと「レグザエンジンCEVO 4K」との組み合わせで、2Kの時代とは違う次元のもの、「リアリティ軸」をいかに高めるのか、という課題が出てきました。現実感・現物感といえばいいのでしょうか。2Kは「画面を見ている」中でのきれいさだったのですが、4Kは違うんです。実際、昨年モデルである「Z8X」で全部できたかというと、物理的なパネルなどの制約もあって、やりたいことがすべては出来ていませんでした。

 「レグザエンジンCEVO 4K」は、かなり先を見て開発したエンジンです。広色域なパネルを操ろうという思いは、開発段階からありました。広色域復元については、3年前から仕込んでいたものなのですが、なんとか今回、入れることが出来ました。

 昨年末の2Kモデル(Z8)でバックライトを改善しましたが、あれは4K用に開発したものを、先行で2Kに投入したのです。バックライトでの画質向上は、Cell REGZAの時からなんとかやりたいと思い、エンジンに仕込んでいたものです。ですから、アルゴリズムを変えられるよう、ハードでなくソフトウエアで実装していました。

 当然、バックライトの制御には大変な処理が必要になります。バックライトの制御だけすればいいだけじゃなく、信号制御も必要なんです。バックライトを点灯させると、周囲に光がひろがります。それがそれぞれ重なって、1つのエリアの絵を生成します。ですからどのプロファイルでも、すべて計算上で考慮して適切な映像補正をかけています。ヒストグラムを解析し、それに階調のトーンカーブも合わせているわけです。

 これは、2KのZ8のものとはまったく異なるものなので、Z9X世代向けにやり直しています。大変な処理量なのですが、X3(2011年発売の55X3)・XS5(2012年発売の55XS5)の開発をする中で、「4Kの処理量はこのくらいになる」ということを理解していたので、先行して仕込めた、ということでもあるのですが。

 結果、どのような画質を狙うことになったのか。住吉氏は「自然界に近い絵」と断言する。確かに、その理想は分かる。高輝度なバックライトを搭載した、と言う言葉からは意外に思えるかも知れないが、これまでの東芝の4Kテレビに比べると、Z9Xは「派手さ」がない。確かにピーク輝度は高いのだが、とにかく明るい絵を作っているわけではく、それを抑えめに使い、リアリティのある絵作りを心がけている印象がある。

 簡単なようだが、これは非常に難しいことだ。パネルが4Kになったということは、液晶パネル的に見れば、2Kに比べ、バックライトから光が透過する度合いが劇的に減った、ということでもある。バックライト輝度を上げれば明るく見えるが、開口率が下がった液晶の後ろからライトを焚くのは、厚手のカーテンの後ろから無理矢理光を焚くようなもの。暗い部分の微細なコントロールがしづらくなる。だがむしろ、Z9Xでは表現が自然になっているように思えた。

画質関連技術担当の住吉氏

住吉:最高画質を求めるためになにが必要かといえば、コントラスト・階調性・ノイズ・色彩、すべてのレベルが高くキープできないといけません。精細感については、4Kパネルで基礎はできたのですが、他も追求する必要があります。

 ただ現状、環境がかわってきています。2Kソースだとしても4Kで作られたマスターであれば、そこには広色域の情報も入ってきています4Kから作った2Kのソースが増えてきた結果、コンテンツを評価しながらチューニングできるようになってきました。

 しかし、そうしたチューニングも「基礎体力」がないと意味がありません。そこで必要なことは、直下型のバックライトLEDシステムとエリア制御、そして、階調性を再現する上で効いているのがエンジンです。フル12bitで処理できる基礎体力がなければ無理です。CEVO 4Kは、最初からその基礎体力をもっていて、信号をロス無く伝えられる点が有利です。

 バックライトのパワーあがってきた結果、映像の方は、撮影に使ったカメラが捉えている光に近いものが表現できるようになってきました。そこで、いままで通りに精細感を上げるような処理を行なうと、映像がキツく見えるんですよ。テクスチャーが余計に目立ってしまう。自然界に近いコントラスト感が出てくると、自然とそこにディテールが見えてくるんです。結果的に、超解像の精細感を上げる処理は、抑え気味にしないと、より自然でリアルなものにはならないんです。このあたりは、Z8Xを開発した時に気付いたのですが、Z9Xでも同じ事が言えます。

レグザエンジンCEVO 4K

山内:広色域になって鮮やかな色になるということは、明るく見える効果もあるんですね。なので、信号処理で誇張しなくても、自然と人に感じられる力が強くなるんです。なので、ギミック的な処理をしなくても、自然な映像に見える、ということにつながっているのだと思います。

住吉:テレビ画面から三次元的なもの、立体感を感じられるか、ということが大切なのですが、4Kでは、そこがわかりやすくなる、くみ取りやすくなります。しかし、くみとれないような絵作りをしてしまうと、意味がなくなります。

 4Kというとまず「精細感」が思い浮かぶ。結果、ディテールを見せるため、どうしてもエッジのきつい絵になりがちだ。その結果、本来映像が持っている立体感が失われ、平板な映像に見えてくる。第1世代の4Kテレビでは、そうした部分に違和感を感じた人もいたようだ。Z9X世代では、そうした部分に手を入れ、「よりやさしく自然な表現」を目指した、ということなのだろう。

4K広色域復元

 そこで大きな役割を果たしているのが、色域の再現性を高める「4K広色域復元」というプロセスだ。

山内:色は、明るさによって、彩度を表現できる範囲が、自然界の物体色によって違うんです。これを「最明色」と呼んでいます。この色の軸、色相を64軸もっていまして、さらにそれを、彩度方向と明るさの三次元の空間でテーブルを持っています。明るさ毎・色合い毎にテーブルを見て、自然界に近い鮮やかさになるよう調整しています。これによって、不自然な色が飛び込んでくることなく、再現できるようになりました。

住吉:64の色相・輝度毎に彩度が違ってくるので、6,144のポイントができて、それぞれでどう色をコントロールするか、という、大変なカラーマネジメントを行なうハードウエアを持っている、ということですね。

 大変な処理なんですが、これをしないと、特定の場面で、なんか蛍光体みたいな色に、不自然に見えてしまう、ということが起こりうるんです。なので、単に広色域で高輝度のパネルを持てば、これと同じ絵が出るか、というと、そうではないです。それだけの処理ができるエンジンがないといけないですし、それだけのパラメータがないと、自然かつ鮮やかな映像が作れない、というのが実際のところです。

本村:画質は、スペックの○×では語れないです。広色域○、直下型○、という評価ではなく、実際に絵を見ていただいて、そこで自分が過去に見てきた映像をイマジネーションして、「どれが一番近いか」で判断していただきたいです。ギミックな赤やあり得ない緑を見て「鮮やかだ」というのではなく、それだけでは正しい画質の見方になるとは思っていなくて、「実際にイマジネーションしたものに近いのはどれか」で判断していただきたい。少なくとも我々は、その時に「レグザだ」と言っていただけるように作ったつもりです。

4Kソースのない「アニメ」での4Kの価値とは

 4Kにおける高画質化は、これまで「自然画」について語られることが多かった。実際、カメラで撮影された映像には、非常に多くの情報があり、まだまだきちんと表現しきれていない領域がある。その領域を引き出し、元ソースの解像度に留まらない解像感やリアリティを生み出すのが、4Kでの「超解像」の役割だ。

 だが、我々がテレビで見るのは自然画だけではない。特に日本でAV機器に拘りをもって投資する人々の中には、アニメファンも多くいる。

 4Kでのアニメについては、若干の不安材料もある。カメラをなんとかすればソースが作れる自然画と異なり、4Kでアニメを作るには、きちんと「4Kで作る環境」を整備しないといけない、ということだ。ハードルはより高くなる。2Kのいまですら、フルHDでソースを作っていないアニメは少なくない。4K時代になっても、ネイティブ4Kで制作されるアニメはそうそう出ないだろう……と予想されているのだ。

 そんな中での「アニメでの4Kの価値」を、東芝はどう考えているのだろうか?

コンテンツモード/アニメや4Kネイティブモード、モニターD93/D65など搭載

住吉:アニメの高画質化については、自然画とはまったく違う方向性で考えています。アニメでは、どうしても斜め線のジャギーが目立つ、という声があります。4Kパネルをもってきて高解像度化しないと、ジャギー感は絶対に改善されません。

山内:細い線が画面上でしっかり表現できるというのは、4Kでなめらかに高解像度化しているからです。ドットバイドットではどうしても画素に邪魔されて、表現しきれない部分がでてきているので、そこに4Kの価値があるな、と感じますね。

住吉:あとはグラデーションですね。画素が4倍増えた分だけ、より階調性としてもきちんとつながってきて、バンディングのない映像につながってくるかな、と思います。もちろんその時に一番大事なのは、精度の高い、ビット精度のある信号処理です。それができれば、アニメのグラデーションの部分の表現力が高まります。

 特に日本のアニメは、顔などがべた塗りで、輪郭は黒描線。ビットレートが低い場合、モスキートノイズも出やすい、わかりやすい傾向にあります。

 そこで、コンテンツモードを正しく設定していただければ、それに合わせた処理を施すようにしています。

 黒の描線はくっきりさせた上で、斜め線のジャギーがみえないように処理するようにしています。エッジ補正はかけるのですが、斜め線の4K化では、自己合同性超解像を使い、従来からの処理によってジャギーを発生させることなく、斜め線をはっきりさせているのが重要です。

 特に「ハイビットBD」モードにした場合には、12ビットキャプチャの4:4:4に合わせた処理をします。

 また、50型・58型・65型のZ9Xでは、「スムーズダイレクトモーション480」という機能も入れさせていただきました。これは、オンエアのアニメに最適なものです。

 アニメはほとんど24pで作られていますが、それが放送では60iで伝送されます。60iの信号を24pにするための2-3プルダウンが必要になります。そこから中間フレームを生成してなめらかにする処理が必要になります。従来は2-3プルダウンのところでかなりのフレーム数を見ながら処理をしていたので、2-3プルダウンをするまでにちょっと時間がかかったので、カクつきが見えたり、ということがあったようです。その部分を、非常に短い期間で処理を見れるよう、アルゴリズムを変えたので、非常にスムーズな形で動画処理が行なえるようになりました。今回、そこは大きく変わっています。

 4Kといえば「解像度」に注目される。その次に、各社は一様に「色」を拡張する流れに出ている。

 そういう意味では、東芝のアプローチも他社のアプローチもそう遠いものではない。その点は、東芝側も認めるとことだ。

 だが、今回Z9Xに東芝が絶大な自信をもっているのは、過去にやってきた高画質化の試みを総まとめし、積み重ねの上に「4Kを軸にした価値」を重ねているからでもある。

 本村氏は1月、筆者にこう言った。

「4Kでの画質訴求は直球勝負」。

 デバイスでのジャンプが起きた今こそ、画質という軸で「できる限り、真ん中をぶらさずに勝負しよう」という意図が見えてくる。

 これは、同社がREGZAブランドを立ち上げ、「Z2000」「Z3500」あたりで挑戦してきた姿に似ている、と筆者は考える。そういう観点で見れば、東芝は、地デジブームを一巡し、ふたたび「本質的な価値でテレビを買ってもらう訴求」に戻ってきた、といえそうだ。それを支持するかどうかは、やはり店頭などで、実際に製品を見比べて考えていただきたい。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
 メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」を小寺信良氏と共同で配信中。 Twitterは@mnishi41

臼田勤哉