西田宗千佳の
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アップルの「電子書籍アプリ審査」から見る電子書籍の実情

~「iPad VS キンドル」電子版発売への紆余曲折~


「iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」電子書籍版

 今回は、電子書籍の話をしてみたい。iPad発売以降、日本でも様々な動きが活発になっている。筆者も3月にエンターブレインより発刊した電子書籍関係のノンフィクション「iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」を、ボイジャーが運営する電子書籍ストア「理想書店」経由で、電子書籍版として発売している。対象機種はiPad/iPhone/PC/Mac。価格は987円となっている。

 「じゃあこの記事って宣伝なの?」といわれそうだが、その気は5%くらいのものだ。実際にiPadを想定して電子書籍を作り、それ以前からも電子書籍ビジネスの前線を取材してきた筆者から見ると、巷に広がる「電子書籍の話題」が、いかにも不正確なのが気になって仕方がないのだ。

 今回は、特にアップルを巡る事情を中心に、「日本の電子書籍の本当のところ」を語っていきたい。

 現状、日本で「電子書籍の最前線」といえば、携帯電話とiPadである。特に現在話題の中心にいるのは間違いなく後者。アマゾンやソニーなど、他のメジャープレイヤーが日本市場に対応した製品を発売していない以上、まずはiPadで商売をしよう、というのが実情である。

 そんな中、「iPadで電子書籍を出すこと」が、どのような状況にあるかを知っている人は意外と少ない。筆者はまさに当時者として(とは言っても、アプリ開発やビジネス上の手続きは出版社側にお任せしていたので、実際に汗をかいたわけではない)関わったので、その一端をご説明しよう。個別事例の話題とはなるが、前提知識としてお読みいただきたい。 


■ 「iPad vs. キンドル」電子書籍版を巡る紆余曲折

 話は2月にさかのぼる。3月の紙書籍版「iPad vs. キンドル」発刊を控え、執筆と並行して進められていたのが「電子書籍版」の提供計画だ。電子書籍がテーマなので、なんらかの形で電子書籍版を、という意識は、版元・筆者ともに共通だった。

 だが、当時は色々問題が大きかった。まず、紙版で使ったものを素のPDFとして提供しても、PCでもスマートフォンでも読みづらい。また、拙著のテーマは「電子版は無料・広告モデルへの依存を脱却できたからアメリカで成功した」ということだったので、「無料配布」はなじまない、と考えた。

 iPhone向けにはすぐ販売できるが、「iPadやKindleの読みやすさにはかなわない」上、当時は文字を画像として提供するビュワーがメインで、読みやすさの点で、これも厳しい。一時はKindle版の製作も検討したが、英語版に提供する場合のビジネススキームや、読みやすい形での提供の難しさから、やはり頓挫した。

 結論は「iPadを待とう」ということだった。2月中はiPadの発売日も「アメリカで3月末、日本で4月」とのことで、「2、3週間遅れならしょうがないか」という話になったのである。

 ところがご存知のように、iPadの発売日はアメリカでも4月となり、日本での発売日は結局5月末まで伸びた。「4月末ならいいか」と思っていたところが、まさか5月末まで電子書籍版が出せないとは……というのが本音だ。

 というわけで、書籍の発売から2カ月近く経過してから、ようやく電子書籍版が販売できる運びとなった。だが、問題は「期間」だけではなかった。当初から、「書籍の内容的に、アップルのApp Storeでは販売できないだろう」という予想がなされていたからである。

「iPad VS.キンドル」iPadアプリ版。文字サイズは可変で、縦書き/横書きどちらでも見られる

 ご存知のように、アップルはApp Store経由で配布するアプリケーションについて、独自の審査を行なう。第一の目的として、マルウエアや極端に動作が不安定なアプリを排除し、プラットフォームの安全性・安定性を保つ、ということがあるのだが、それ以外にも、公序良俗に反するものの流入を防ぐ、という狙いがある。

 別に拙著は公序良俗に反する内容ではないが、別のルールに抵触する可能性が高かった。

 それは、「アップルに関して触れた内容については、その内容如何に関わらず公開できない」というもの。実際、電子書籍出版大手で、我々の書籍の電子書籍版も担当したボイジャーは、2009年中に、アップル社を題材とした書籍をアプリとして電子化する際、上記のような理由でApp Store経由での配布ができなかった。

 そこで我々が考えたのは、ビュワーを無償公開し、書籍の中身は別のストアを経由して販売する、という形である。アップルの審査が必要なのは「ビュワー」だけ。中身は別にダウンロードするので、審査の必要はない。

 ボイジャーのiPad対応版ビュワー「Voyager Books」は、文字サイズの変更や縦書き・横書きの切り替えや混在、1度書籍を購入すれば、iPad/iPhone/PCそれぞれで読めることなど、既存のiPhone版ビュワーにない特性を持ち合わせていた。

 そこで、同社が独自に展開しているウェブ版の電子書籍ストア「理想書店」を経由し、iPad/iPhone/PCで読める電子書籍として販売することとしたわけだ。公開日は、5月28日を予定していた。

 ところが、公開は6月18日まで伸びた。なぜこうなったのか? それには長い長い道のりがあったのである。 


■ 「リジェクト」に阻まれて2週間以上が空転

 まず第一に、iPad発売と同時に公開できなかった理由は「開発の遅延」である。ボイジャー側でVoyager Booksの開発が遅延し、理想書店経由での販売が「5月28日には間に合わない」ことが判明した。遅延については色々な経緯もあるが、あくまで内部事情なのでここで言及することは避けておく。

 しかし、iPad発売直後は、この種のビジネスにとって大きな商機である。筆者としても版元としても、これ以上の遅延は避けたい。

 そこで急遽ボイジャー側より提案されたのが「ダメモトでアプリとして審査に出してみる」という策だ。

 開発が遅延していたのは、内部に様々な書籍データをダウンロードして使う「ビュワー」版のVoyager Books。同じコードを使いつつ、本のデータを埋め込んで単体アプリとして売り出せば、不具合が出ることはないという。

 正直問題はある。すでに述べたように、Voyager Booksを使い「理想書店」経由で販売すれば、1冊分の購入で、iPhone、iPad、PCなど、複数の端末で読める。だが、単体アプリにすると、端末の種類毎に「別のもの」という扱いになる。しかも現状、ボイジャー側の事情により、iPad版/iPhone版を1つのアプリで扱う「ユニバーサル版」はすぐに用意できないという。とすると、iPhoneとiPadで同じ書籍を読むことはできない。iPadとiPhoneで同じ本を読みたい場合「買い直し」が必要になる。

 また前出のように、アップルの基準のこともあり、審査に通らない可能性もある。だが「とりあえずやってみるか」ということになり、まずは審査してみることとなった。予想通りならば「審査に通らずリジェクト」ということになるだろう。

 だが、事情はちょっと違った。1回目の審査では、iPad版はリジェクトされたものの、なんとiPhone版は「通過」したのである。

 通過したということはすなわち、「アップルに関する書籍もApp Store経由で出版ができる」という形に、内部ルールが変更されているということを意味する。

 実はこの点については、我々は内々に情報をつかんでいた。「どうやら審査基準が変更になっているらしい」との情報が入ってきたため、「通る可能性が高まった」と踏んで審査に出した、というのが実情である。

 ただし、iPad版が通らなかったのは意外だった。我々としては(特に版元は)見やすいiPad向けの販売をメインにしたいと考えていたからだ。iPhone版のみが売られる、ということは本意ではなかった。実のところ、一瞬だけ「iPhoneアプリ版」として公開されていたはずだが、この記事が公開される頃には取り下げられている。改めてiPad版として再度審査をスタート、万事うまくいけば数日中にも販売が開始されるだろう……。そう思ったが、甘かった。

 さらに一週間後、再審査に回したiPad版は再度「リジェクト」された。審査を通らず、販売ができなかったのである。

 これは困った。すると、ボイジャー側から「ようやく、Voyager Booksの開発が完了した。単体アプリ版は中止し、再度、理想書店版に戻して販売をお願いできないだろうか」との連絡があった。

 こちらならなんとかなりそうだ。というわけで、2週間以上空転したが、再度最初の計画通り「理想書店」経由で電子書籍版は販売されることになった。

 ちなみに価格は紙版の1,500円に比べ、いくらか安価な987円(本体940円+税)に設定にさせていただいている。 


■ 需要の集中と不透明な「審査」。出版の多様性は「外部ストア型」で維持

 なんだか「えらく遠回りだな」と思われたと思う。正直筆者もそう思う。単に審査に回しただけに思われるだろうが、販売の際には(主に版元側で)書類の手続きなども必要で、その手間もバカにならない。

 ただ、このような大変な思いをしているのは、なにも筆者だけではない。電子書籍をiPad向けに発売しようとしている様々な出版社で、大同小異な苦労がある、と聞いている。

 問題は主に2つある。一つ目は、開発の問題。一気にたくさんの電子書籍を出すために、開発を担当する企業に大量の発注が集中し、現場で捌き切れていないようだ。筆者(および版元)自身は「急に動いた」つもりはないのだが、ラッシュに巻き込まれてしまった感があるのは否めない。

 そしてもう一つは「審査」だ。例えば我々の場合も、本来はiPad版とiPhone版の両方が審査を通るか、どちらも通らないかだろう、と予測していた。ところが現実には「iPhone版のみ通過」だった。また、再度iPad版のみを審査した際にも、まさかリジェクトされるとは思わなかった。

 リジェクトの理由は……といいたいところだが、ここでは明かすことができない。どのような理由でリジェクトされたのかは、アップルとの守秘義務契約に抵触するため、明かすことができないのである。

 様々なソースから聞くところによれば、同様の苦労をしているところは少なくないようだ。特に、書籍を「アプリ」として販売を希望する場合、リジェクトが増えているという。ある出版社は、複数巻のあるタイトルを別々のアプリとして審査に出したところ、「続刊はアプリ内課金で購入するように」という要望でリジェクトされたという。

 問題は、これらのルールが明文化されておらず、「販売できるかどうかは出してみないとわからない」ことだ。しかも審査を通ったかどうかは「App storeで販売が始まったかどうか」で決まる。発売日がはっきりと定まるわけではないので、プロモーション戦略も立てづらい。

 このように、あまりにも「博打的要素」が大きいのは、ビジネスという点で明らかにマイナスだ。

 WWDC 2010の基調講演にて、スティーブ・ジョブズCEOは「アプリの95%は審査を通過しており、残りの多くは技術上の問題から審査を通過していない」と語っている。毎週15,000本のアプリが審査にかけられるということなので、リジェクトされるのは世界中で毎週750本程度という計算になる。筆者を含む電子書籍系の例は「技術的な問題」とは思えないが、いったいどのくらいの本数が同じような問題でリジェクトされているのだろうか。

 ただし、誤解のないように言っておきたいが、私は「アップルが審査をする」ことそのものを非難するつもりも、否定するつもりもない。巷では、書籍の内容をアップルが審査して販売するか否かを決めるのは「横暴であり検閲まがいだ」と非難する声が少なくない。

 しかし、プラットフォーム・ビジネスの本質を考えれば、このような行為は決して珍しいものではない。事実、家庭用ゲーム機のメーカーは、もっと厳しい制約をゲームメーカーに課して、内容の統制を行なっている。

 特定のプラットフォーム上でビジネスを展開する場合には、そのプラットフォームの「安定性」、「永続性」が重要だ。パソコンやAndroid同様、なにもしない「完全にオープンな」プラットフォームもある。その方が可能性は広がるが、マルウエア対策など、安全性の担保はユーザー側に委ねられる。

 他方アップルは、ユーザーに管理の手間を負わせないよう、厳格な管理を行なう方法を採った。文化的にも、低年齢層や女性にも安心して使える「安全で清潔な場」であることをアピールするために、しっかりとした審査を行なう。開発や販売の自由度こそ異なるが、携帯電話事業者や家庭用ゲーム機メーカーと同じ手法である。

 これは「どちらがいい」という話ではなく「違うアプローチ」なのだ。要はアップルは、「iOSのようなプラットフォームでは、完全なオープンよりも、管理された形の方がビジネス上プラスが大きい」と判断しているのである。

 他方、管理されたプラットフォームでは、思想上・文化上、多様なものが出てきづらいのも事実。アップルの審査が批判されるのはそのためだろう。

 だが、そんなことはアップルも出版社も、百も承知なのだ。前出のように、我々は当初「ビュワー+外部ストア型」での展開を想定していた。アップルが審査するのはビュワーとしてのアプリの「安定度」だけであり、内容は審査しない。他の場所で販売されるからだ。

 現在のiPad/iPhone向け電子書籍市場では、この形で展開されるものが意外と多い。日本最大手のマンガ配信サービス「eBookJapan」も、ボイジャーの展開する「理想書店」も外部ストア型。そもそも、最大のライバルと目されるアマゾンも、アップルのプラットフォーム内では「外部ストア型」に他ならない。

 アップルも、電子書籍の世界で「完全自社独占」が必ずしもプラスになるとは考えていない。独占するなら外部ストア型もすべて禁止してしまえばいいだけの話。それをしないのは、外部ストア型を併存させた方が、アップルにとってプラスであると判断している、ということだ、と考えられる。

 消費者にとっても出版社にとっても問題なのは、販路が限定されることによって「得られる書物の幅が狭まる」ことである。実のところ、出版関係者がアマゾンやアップルの上陸で気にしていたのは、売り方・販路をこれらの企業にすべて握られることの方だった。販売の方針や価格設定、ビジネスモデルを他社に握られると、出版は本当に「まとめてコンテンツを出すだけのところ」になってしまい、ビジネスが成り立たない。

 一部には「電子書籍化に大手出版社は抵抗している。だから日本では電子書籍が出ないのだ」と声高に主張する人々もいたが、iPad発売以降の流れを見れば、そんなことはない、とはっきり分かるはずだ。問題なのは、「どうやって売るか」なのだ。

 5月27日、ソニー・凸版印刷・KDDI・朝日新聞社は、4社協同で電子書籍に関する新事業企画会社を7月1日に設立することで合意した。アップルやアマゾンのライバルであるソニーや、通信事業者であるKDDIの名前があるところから、「日本で特別なプラットフォームを作り、海外の事業者を締め出そうとしている」と考えた人々もいたようだが、会見でのコメントや、その後の囲み取材から得られた感触から言えば、まったく逆である。

米ソニーエレクトロニクス 野口不二夫・シニアバイスプレジデント

 米・ソニーエレクトロニクスで電子書籍ビジネスを統括する野口不二夫・シニアバイスプレジデントは、筆者からの質問に、次のように答えている。

「オープンというのは『プラットフォームがオープン』という意味。どのような形で書籍を仕入れ、どのような形で販売するか、という販売プラットフォームを決めるのがこの企画会社の役割。プラットフォームを使って、様々な複数の電子書籍ストアが作れるようになり、それぞれで購入した書籍が、様々なeBookリーダーで読めるようになる。そこには、どんな企業が参入していただいてもかまわない。もちろん、アマゾンやアップルを排除するものでもない」

「複数のストア」を強調するのは、アップルやアマゾンの「独占型ストア」を日本企業が警戒していることを意識してのものだろう。

 だがすでに述べたように、すでにアップルは単純な「独占」を指向していない。「出版における多様性」を維持しつつビジネス展開することが、日本での「電子書籍」の基本になるのは間違いない。

 だから「iPadの上では日本の漫画は読めなくなる」というのは杞憂なのである。 


■ アップルの審査内容は「変わった?」 情報公開と「ルール整備」がまだまだ必要

 だがそれでも、アップルの方針には問題が多い。

 それはいうまでもなく「基準が外からはわからない」ことだ。どうやらアップルは、リジェクト問題に注目が集まり、電子書籍市場に大きな影響を与えそうだ、と考えたためか、iPadの発売に前後して、内部での「内容による審査基準」を大幅に緩めたようだ。筆者の著書がいったんは「iPhoneアプリ版」として審査に通ったのもそのためだろう。もしかすると、以前は通らなかった漫画や書籍も、今なら審査に通るかも知れない。

 ただ、その基準は、審査に出してみないとわからない。それどころか「どこが悪かったか」が審査に出した当人には分かるものの、それを外部に伝えるのは規約違反である。すなわち、情報を共有してもらうことができないのだ。筆者の場合にも「iPhone版は通ってもiPad版が通らなかった理由」、「再度iPad版がリジェクトされた理由」はお伝えできない。内容的には、出版関係者にとても有益なノウハウだと思うのだが……。そのため、本来は守秘義務に反するものだが、出版関係者の間では、リジェクトに関する情報が噂で出回り、情報共有がなされている。

 またこれはあくまで「噂」だが、今後アップルは「単体アプリとしての書籍」をあまり通さない方針になりつつある、とも聞く。iBookstoreへと書籍の販売を誘導したいからかも知れないが、現状、iBookstoreで利用されるePUBフォーマットでは、現実的に「文字中心の英語の本」しか作れない。縦書き・ルビを含む、紙に近い見栄えも持つ書籍や、雑誌・新聞のように、凝ったレイアウトのものを再現し、販売するのは難しい。まだまだ準備が必要だろう。これらの書籍を販売したいがゆえに「外部ストア型」、「アプリ型」を採っている場合が多い、というのが実情だ。

 アプリの審査にはセキュリティ対策の意味もあるので、すべての情報を公開する必要はない。だが「内容のルール」や「技術とは関係のないアプリのルール」については、公にした方がいい。同様にある程度統制を取りつつ進んでいる携帯電話や家庭用ゲーム機の世界でも、そのくらいのことは当然行なわれている。アップルを「信頼して」ビジネスをするためにも必要なことだろう。

 前出の「4社プラットフォーム」も、こういった部分の整備を狙っている。現在主流の「外部ストア型」にしても、外部ストアが乱立すると書籍データが分散し、使い勝手が悪くなる、という問題がある。また、ビュワーアプリによって操作性・見やすさが全然異なるのも問題だ。本来なら、ビュワーと書籍データを分け、「好きなビュワー(ソフト・ハード問わず)で、好きな書籍データを、好きな電子書籍ストアで買って読める」のが理想だが、そのための準備はまだまだ進んでいない。

 「全然電子書籍が出てこなくてつまらない」とみなさんは思うかも知れない。だが、いまの電子書籍ビジネスは、こんなに「ヨチヨチ歩き」なのだ。売り方も、フォーマットもしっかり定まっていない。

「巧遅よりも拙速」がネットビジネスの基本だが、今はまさに「駆け込み」で作ったものが中心であり、このまま定着すると考えるのは問題がある。

 別に筆者のものでなくていいので、みなさんもなにか電子書籍を買って読み、「どこが不満か」を挙げてほしい。日本で、世界で通用する電子書籍の世界を作るのはその「声」だ。

 ベンチャーは独自の工夫を検討中だし、大手は大手なりにコンテンツの提供を考えている。ある大手出版社は「年末までに数万のコンテンツを用意する」とのかけ声で準備中と聞いている。今年後半にかけ、様々な動きが出てくるだろう。

 皆さんが求める「電子書籍」や「アプリ」の姿は、どのようなものだろうか。

(2010年 6月 24日)


= 西田宗千佳 = 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、PCfan、DIME、日経トレンディなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「iPad VS. キンドル日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」(エンターブレイン)、「iPhone仕事術!ビジネスで役立つ74の方法」(朝日新聞出版)、「クラウドの象徴 セールスフォース」(インプレスジャパン)、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)などがある。

[Reported by 西田宗千佳]