ソニー、KDDIなどが電子書籍配信新会社。年内スタート

-ソニーはReaderをKDDIも端末発売。オープンに展開


5月27日発表


 ソニーと凸版印刷、KDDI、朝日新聞社の4社は27日、電子書籍に関する新事業企画会社を7月1日に設立することで合意した。新会社は、書籍、コミック、雑誌、新聞などを対象としたデジタルコンテンツ向けの共通配信プラットフォームの構築、運営を目標に設立。年内の事業会社移行とサービス開始を目指す。

 参加4社は、保有する技術やノウハウを集結し、新聞社や出版社などが安心してデジタルコンテンツを提供できる環境を整備。国内最大級の電子書籍配信プラットフォーム構築を目指す。

代表取締役に就任予定の今野敏博氏

 資本金は3,000万円、出資比率は4社各25%の折半出資で、取締役も4社から選任される予定。所在地や従業員数は未定。代表者には携帯電話向け音楽配信事業を手がける「レコチョク」の今野敏博社長が就任する(6月24日付けでレコチョク代表執行役社長を退任予定)。

 他の参加企業にも広く門戸を開き、事業への参加を呼び掛けていく方針。事業会社化した際には、様々な端末を通じてコンテンツを提供できるオープンなプラットフォームの整備を図るとしている。

 事業会社では、出版、新聞コンテンツの収集、電子化、販売、配信、プロモーションを手掛け、必要なシステムの企画、開発、構築、提供を行なう。参加4社と企画会社では、「『いつでも、どこでも』読みたい電子出版物を手軽に楽しめる機会を広範な読者に提供し、国内電子書籍市場の発展を目指す」としている。

 具体的な内容についてはこれから企画会社で策定を進め、フォーマットやDRM、利益の配分については現時点では決まっていない。ただし、電子書籍販売サイトについては、「(AmazonやAppleのように)このプラットフォームでひとつのストアでなく、複数のストアを作れるようにしたい(米ソニー・エレクトロ二クス 野口不二夫 シニア・バイス・プレジデント)」という。

 同企画会社については、出版社31社からなる「電子書籍出版社協会」(電書協)の加盟社からも賛同を得ており、講談社や小学館、集英社、文芸春秋などの出版社も設立趣旨に賛同している。

オープンなプラットフォームを目指す事業会社の目標

 


■ ソニーはReaderなどを年内投入。KDDIもスマートフォンや専用端末で対応

米国ソニー野口シニアバイスプレジデント

 米国ソニー・エレクトロ二クス シニア・バイス・プレジデントの野口 不二夫氏は、「電子書籍は20年以上の歴史があるが、ここ数年、ようやく大きなうねりになってきた。2007年以降、北米を中心に市場が立ち上がり、数百万台の電子書籍端末、数千万のコンテンツがダウンロードされている。北米、欧州、アジアで急速に広がっている」と現状を報告。「そのなかで、いよいよ日本で電子書籍ビジネスがスタートする。電子書籍の新たな元年になるのではないか」とした。

 野口氏は「出版物は文化に密接に結びついている。これを大事にしていかなければいけない。日本で電子書籍を立ち上げるためには、『日本の市場にあったビジネス』が必要。出版社、新聞社が安心して提供できる環境づくりが必要で、さらに読者が安心して購入できる環境が必要」とし、今回の企画会社で目指す方向性を説明。「あくまでオープンなプラットフォームの構築を目指したい」と語った。

 “オープン”の意味としては、「プラットフォームとして誰でも参加できる」ことを訴求。今回の4社の直接の競合となるメーカーや、通信事業者、出版社、印刷会社などともすでに話をしているという。企画会社において、各社の参加を募っていく。国内だけでなく、海外展開も視野に入れており、「そこはソニーの役割とも思っている」とした。

 また、「ソニーとしても年内のサービス開始と端末発売を目指す」と語り、同社のe-bookリーダ「Reader」の日本市場投入を明言した。

凸版印刷 前田経営企画本部長

 凸版印刷 取締役 経営企画本部長の前田幸夫氏は、「出版に新たな大きな波が来ている。紙の出版と電子書籍作りを連動するラインをつくり、リアルな出版の活性と、新たな電子書籍の販路を整え、両面で出版社を支援したい」と語った。

 KDDI 取締役 執行役員常務 グループ戦略統括本部長の高橋誠氏は、企画会社への積極的な参加を宣言。「いままでも音楽や映像、書籍などのエンタテインメントに力を入れてきた。電子書籍でも2003年にサービスを開始し、携帯電話初の書籍ポータルや、biblioといった対応端末を発売し、電子書籍のビジネスに取り組んできた。今回も積極的に推進する」と説明した。

 さらに、「携帯電話やスマートフォン、専用端末などの広がりも見込まれ、若い人だけではなく、市場が拡大すると期待している」とし、「KDDIとしては、スマートフォンも積極的に展開する。専用端末にも取り組んでいく。配信プラットフォームの取り組みとあわせて、端末側での取り組みも進めていく」とハードウェアの発売を明言。なお、モジュールの端末組み込みや料金徴収ビジネスなどへの参加の可能性についても、「3Gや3.9Gの通信手段というのはこれからの電子書籍デバイスでは欠かすことのものになる。また、MediaFloのような放送系の技術もこれから出てくる。これらをデバイス側にどのように展開するか。いろいろな方法がある」と語った。

 朝日新聞社 デジタルビジネス担当の和気靖氏は、「異業種の4社が並んだが、日本の文化、コンテンツを発展させたいという志は一緒。事業会社として継続的に運営するために、プラットフォームが新な価値を持つように努力していく。さまざまな出版社に積極的に活用してもらい、ハードで積極的に対応してもらえるようなものにしていきたい」と語った。

KDDI 高橋グループ戦略統括本部長朝日新聞社 デジタルビジネス担当 和気氏

(2010年 5月 27日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]