鳥居一豊の「良作×良品」

音質を磨き上げたSACDマルチ/BDプレーヤー「UD7007」

ジャイアントロボの熱いドラマに魂を注ぎ込めるか

UD7007

 今回取り上げる良品はマランツのユニバーサルプレーヤー「UD7007」(実売価格129,800円)。BDやDVD、CDだけでなく、スーパーオーディオCD(SACD)やDVDオーディオなどの再生も可能なプレーヤーで、ネットワーク機能としてもDLNA/DTCP-IP対応でNAS(LAN HDD)に保存した音楽や静止画、BDレコーダなどで録画したテレビ放送などの再生にも対応する。

 とはいえ、こういったBDプレーヤーの機能は今やかなり安価なモデルでも備えている機能でもある。10万円を超える高級機はどこが違うのかと言えば、画質・音質だ。本機の場合は、プレーヤー、アンプメーカーとしても名高いマランツだけに、アナログオーディオ回路を新設計している。同社の誇る高速電圧増幅モジュール「HDAM SA2」を搭載したほか、バランス出力も備えている。HDMI出力も2系統備え、映像と音声を独立して出力するAVピュアダイレクトも行える。

 僕は所有するDVD世代のユニバーサルプレーヤーが寿命を迎えたのを契機に、SACDのマルチチャンネルソフトが再生できる高音質プレーヤーを物色していたのだが、現在のオーディオ/AV機器のラインナップがおかしなことになっていることに気付いた。

 オーディオ用プレーヤーとして、SACDのマルチチャンネル出力が可能なモデルがほとんど存在しないのだ。SACDのマルチチャンネル信号を出力するには、アナログ出力で6系統の出力を備えるか、現在ならばHDMIでPCM出力、またはDSDのビットストリーム出力をすることになる。同じマランツの製品を見ても、オーディオカテゴリーにある製品となると、HDMI出力を備えず、アナログ出力もステレオ出力のみ。ピュア・オーディオにおけるマルチチャンネル再生の普及を考えると、こうした製品展開も仕方がないと思うのだが、音楽配信サービスでマルチチャンネル収録された楽曲の配信も始まっているような状況を思うと、少々寂しい。

 話が長くなってしまったが、この場合、ユニバーサル仕様のBDプレーヤーしか選択肢がなく、ピュア・オーディオ並みの音の実力を備えたBDプレーヤーが欲しい! という結論に至るわけだ。個人的な製品選びも兼ねて各社のBDプレーヤーを物色した結果、最有力候補として浮上したのが本機「UD7007」だ。

主要な12cm光ディスクと多彩な音声フォーマットに対応。

 まずは「UD7007」を詳しく見ていこう。薄型・軽量化が著しい昨今にあって、本機のサイズは大きめ。高級オーディオコンポらしいサイズで、重量も7.2kgと重めだ。デザイン的にも同社のHi-Fiコンポーネントと揃っており、ブラックのカラーもあって精悍な印象だ。

 背面には、バランス出力端子の装備が目を引く。高級オーディオ機器では当たり前の装備だ。もちろん、バランス出力を備えたというだけでなく、独立したアナログ出力回路を備え、HDAM SA2搭載をはじめとして、エルナー製のオーディオグレード電解コンデンサーの採用など、本格的な作りとなっている。このオーディオ出力の出来がとても気になるところだ。

前面。カラーはブラックだが基本的なデザインは踏襲。センター部分のパネルはアルミのヘアライン仕上げとなっている。USB端子も装備
背面。ステレオアナログ音声出力は、アンバランス(RCA)端子とバランス端子を備える。このほか、同軸デジタル音声や2系統のHDMI出力、ネットワーク端子などを備える
側面部。鋼板を使った標準的な構成だが作りは堅牢。脚部のインシュレータも大型のもの

 対応メディアはBD/DVD/CDなど主要な光ディスク規格をほとんどカバー。これに加えて、ネットワークおよびUSB経由で、各種の音声、動画フォーマットに対応する。ハイサンプリング音源も24bit/192kHzのWAV、FLACに対応しているので、ハイレゾオーディオを楽しみたいという人にもおすすめできる。

 リモコンは標準的なもので、メニュー操作用のボタン群や再生操作ボタンのほか、10キーによる選局ボタンなども備える。このほかに、iOS端末やAndroid端末などで使えるリモコンアプリ「Marantz Remote App」での操作に対応するが、これを使うには対応する同社のAVアンプとHDMIケーブルなどで接続する必要がある。

本体上面には、対応するさまざまなフォーマットロゴがずらりと並んでいる。BDやDVD、SACDなどだけでなく、DIVX+ HDやAVCHDにも対応
付属のリモコン。サイズはやや大きいがボタン数は少なめで、操作がしやすい。十字キーなどの主要なボタンは暗い場所で発光する蓄光ボタンとなっている

 接続を済ませてさっそく電源を入れてみる。感心したのは、ディスクトレイのローディングの動き。ガシャガシャと安っぽい動きをせず、スムーズかつ静かにトレイが出入りする。ドライブメカ自体も自社開発のメカモジュールを使用。アルミ製カバーでシールドされ、専用ダンパーを備えて制振性を高めている。

 さらに、ファンレス設計を採用したことで、再生中の動作音は極めて静かだ。ローディング直後の読み込み時や再生開始時は多少ドライブの動作音が聞こえるが、再生が始まると動作音が耳に入ることはない。これは音質を重視したプレーヤーが欲しい人にとっては重要なポイントになるだろう。

完結までに7年。今年で20年を経たアナログ時代の最高峰のひとつ「ジャイアントロボ」

ジャイアントロボ THE ANIMATION 〜地球が静止する日〜 アルティメットBlu-ray BOX -期間限定生産品-
※ジャケットとは異なります
(C)光プロ/ショウゲート フェニックス・エンタテインメント

 では、続いて良品だ。UD7007が音質の良さに秀でたモデルということもあり、画質はもちろんのこと、音質的にも優れた作品を使いたいと、いろいろとソフトを探していた。実写作品とサントラ盤を組み合わせて視聴するのも面白そうだと、ある程度候補を絞っていたのだが、最終的に「ジャイアントロボ THE ANIMATION 〜地球が静止する日〜 アルティメットBlu-ray BOX」に決めた。

 1990年代初頭からOVAとしてスタートし、完結までに7年近くを要した大作で、アナログ製作時代末期ということもあって、作画のクオリティを含めて最高峰のひとつと言える作品だ。作品の内容の良さは言うまでもないが、オリジナルネガを4Kスキャンし、HDリマスターするなど、作画の質の高さを存分に堪能できるものになっている。

 決め手は、全7話のサウンドトラックも収録していること。こちらはなんと24bit/96kHzのリニアPCM収録だ。これがかなりの高音質で、オリジナル音源が当時としてはあまり例がないハイレゾ録音だったのかと驚くほどだった(いろいろと調べてみたところ、オリジナルの音源自体はハイレゾ録音というわけではなく、本作のサウンドトラックも、サントラCD用のマスター音源をアップコンバートしたもののようだ)。

 そうは言っても、ワルシャワ・フィルによる海外録音で制作された劇伴は聴き応え十分で、映像の魅力を何倍にも高める大きな役割を果たしている。アニメ作品であろうが、良い物は良いのは間違いないので、音質の良い本格的なBDプレーヤーと組み合わせるには違和感を覚える人がいるのを承知で、本作に決めた。

本格的なオーディオ機器だからこそ、最初の準備は丁寧かつ念入りに

 こうした比較的高額な製品を記事で扱うと、高額なのだから画も音も良くて当たり前と感じる人は多いと思うが、実は高額な製品になるほど最初の準備が重要になる。付属の電源ケーブルは梱包のために折り曲げられているので、それを揉みほぐしてまっすぐにしてやる。しっかりとしたラックにきちんと置く、ウォームアップを兼ねて適当なソフトをしばらく再生しっぱなしにしておく、などなどの手間をかけてやると、ようやくその製品本来の実力が出るようになる。

UD7007のメニュー画面。ネットワーク、USB再生の「MEDIA PLAYER」、「YouTube」のアイコン、「SETUP」アイコンがある

 こうした準備をしながら、設定などを一通り確認する。多機能化が進んでいるとはいえ、再生専用機のBDプレーヤーだから、設定などはそれほど複雑ではない。本機の設定画面も比較的シンプルだ。

 最初の慣らし運転も兼ねて、軽くYouTubeやネットワーク再生を試してみる。YouTubeは薄型テレビなどAV機器向けの汎用のインターフェースを採用したもので、十字キーを使って手軽に操作できるようになっている。操作のレスポンスも比較的スムーズで、使い勝手はまずまずだ。

 DLNAによるネットワーク再生もシンプルなインターフェースで、ネットワークに接続されたDLNAサーバーがリストに表示される。このあたりはDLNAの仕様どおりで、他のネットワークプレーヤーとほとんど同様。WAVの24bit/192kHz音源も問題なく再生できたし、BDレコーダの録画番組の再生も行なえた。

メニュー画面。ネットワーク、USB再生のための「MEDIA PLAYER」、「YouTube」のアイコンのほかは、設定のための「SETUP」アイコンがある
「メディアプレーヤー」のDLNAサーバー画面。基本的なネットワーク設定を行なうだけで、ネットワーク内にあるNASやBDレコーダがきちんと表示される
NAS内にあるハイレゾ音源フォルダを表示してみたところ
ハイレゾ音源ファイルの再生画面。WAVファイルのため、タイトルなどの情報が表示されない

 ハイレゾ音源対応や、DLNA/DTCP-IP対応と、機能的には申し分ないが、取り立てて目立つところはない印象だ。価格的に高機能を求めると多少物足りない印象もあるだろうが、やはりそれは本題ではない。対応するさまざまなコンテンツを高画質、高音質で楽しめるというところが本機の真骨頂と言えるだろう。

 続いて、設定を一通り見ていく。ここでポイントになるのは当然ながら画質・音質関連の設定だ。HDMI出力は2系統あり、映像と音声を独立して伝送するAVピュアダイレクトに関係する設定などを確認した。

 色差信号出力やRGB出力などの映像出力信号方式は、2系統それぞれが独立して行なえる。HDMIディープカラー出力(12bit出力)も同様。これらの設定は、ソフトの再生中などにAVピュアダイレクトを選択すれば自動的に映像と音声を個別に出力するようになるが、念のため個別に設定を確認しておくといいだろう。個人的にはAVアンプ側に接続するHDMI出力はディープカラー出力をOFFにしておくようにしている。最後はHDMI出力設定で、出力先を「HDMI Dual」とすればHDMI設定は完了だ。

設定メニューの画面。上部のアイコンを横に動かすと項目が選択できる。写真は全般設定を選んだときの設定リスト。初回の基本設定やネットワーク設定を行なう
ビデオ設定のリスト。組み合わせるテレビのタイプ選択や3D選択のほか、HDMI出力の設定がある
HDMIディープカラー出力の設定。アンプ側とモニター側を個別に設定可能
HDMIディープカラー出力の設定。念のため、アンプ側の映像出力信号方式は「オフ」にしている
HDMI出力は2系統の出力を同時に使用する「HDMI Dual」を選択する。HDMI出力を1系統しか使わない場合も、使用する方を選択しておけば、不要な干渉を抑えられる
オーディオ設定の設定画面には、バランス出力の極性の切り換えも可能

 オーディオ設定は、同軸出力、HDMI出力の両方で、PCM変換出力とビットストリーム出力を選択できる。HDMI出力でビットストリーム出力を選択しておけば、対応するAVアンプなどならば、BDのロスレス音声などだけでなく、SACDのDSD音声もそのまま出力される。

 また、アンバランス出力の極性も切り換えが可能。組み合わせるアンプのバランス入力端子の極性に合わせて選択しよう。

 一通り設定が終わったところで、テレビ側の画質調整で明るさとコントラスト、カラーバランスなどを揃えた。テストチャートなどで調整を行なったところ、全体的な傾向としてはコントラスト感が高く、黒の締まる傾向になっていた。これらの持ち味が生かせるようにテレビ側のコントラストや明るさレベルを適正に合わせた。色合いなどは比較的ニュートラルで、色の階調性や彩度の高い色の鮮やかさの再現などもバランスの取れたものになっていた。

 ちょっと気になったのは、チャートの輪郭などに白いふちどり(オーバーシュート)が多少目立っていたこと。精細感を高めた画作りだと思うが、このままでは特にアニメの場合、セル画の描線が不自然に太くなったり、細かなタッチが不鮮明になりやすいので、テレビ側のシャープネスをやや落として輪郭がすっきりと再現されるようにした。

 こうした画作りは、実写作品では精細感が高く、キレの良い印象になるものの、アニメの場合は不自然さを感じやすくなるので、注意したいところだ。

こんなに強そうなロボはない! 「ジャイアントロボ」発進

 では、「ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日」を上映しよう。ファンファーレにも似た象徴的なイントロで始まるメインタイトルが流れ、「来るべき近未来!!」というナレーションで世界観が語られる。本作は、基本的な設定こそ横山光輝の原作どおりに、国際警察機構とBF団の戦いという構図を取るが、登場するキャラクターは、ジャイアントロボだけでなく、横山作品のオールスター共演という感じで、三国志や水滸伝などからも幅広く登場している。

 絵柄も横山光輝のキャラクターの特徴をよく捉えているが、これだけ個性的な面々を取りそろえて、しかも極上のエンターテイメントに仕立て上げているところが素晴らしい。監督の今川泰宏は、破天荒なキャラクターやストーリーで知られるが、本作はその代表作と言える出来映えで、ジャイアントロボに負けない大活躍を見せる個性豊かなキャラクターたちのアクションが次々と展開し、シリアスに進行していくストーリーをダイナミックに盛り上げている。

 僕もLDでの発売当時から熱狂し、次巻の発売を首を長くして待っていたひとりだが、DVDでは得られなかった当時の熱狂が蘇ってくるのを感じた。まず、映像が鮮明だ。セル画の描線はタッチまでも鮮やかに再現され、描き手の力の入り具合までよくわかる。フィルムの質感が、ではなく、セル画を見ているような再現は、さすがは4Kスキャンだと感激する。

 UD7007も、持ち前の解像感の高い描写もあって、鮮度の高い再現をする。輪郭の描写もシャープネスをやや絞ったことで、細かなカスレや強弱の変化に伴う描線の太さの違いまできちんと再現した。そして、豊かな色はまさにセル画に塗られた絵の具の感触。デジタル彩色とはひと味違う独特の艶、深みのある色が映像の凄みを何倍にも増している。

 第1話冒頭での南京を舞台にしたジャイアントロボの初登場場面でも、迫力あるデザインのロボの青いボディを、何色もの青系の色で塗り分けて、鋼鉄の重みと凶悪とさえ感じる表情に相応しい強さを伝えてくる。こんなに強そうに見えるロボットが、他にあっただろうか。そう思ってしまうほど映像のパワーが凄い。

 それを盛り上げてくれるのが、音だ。ワルシャワ・フィルのオーケストラは100人を超える規模だそうだが、迫力ある演奏や音の厚み、混声合唱によるコーラスなども実に精細かつダイナミックに再現される。

 本作の音声は、リニアPCMのステレオ音声となっており、欲を言えば5.1ch化なども期待したかったところだが、実際に見ているとまったく不満を感じない。ロボの重厚な足音や駆動音、大作少年の指令に応えるときのお腹に響くような声などの効果音は広々と広がり、大編成オケのBGMは奥行き深く配置される。そこに、今では豪華すぎるキャスト陣の個性豊かな熱演が画面から飛び出すかのように立っている。確かな技術があるからこその味のある演技、真似ようにも真似られないその人だけの声に、心を奪われてしまう。この立体的な再現ならば、5.1ch化などは不要だ。UD7007の見事なステレオイメージの描写はBDプレーヤーとしては抜群の再現で、音質の優れたBDプレーヤーを求める人には待望の一台だ。

深い黒の階調が支える映像と大音量でも混濁しない音が、ストーリーに厚みを

 本作は全7話、再生時間も軽く6時間を超える内容で、しかも全編が見どころと言っていいため、語り出したらキリがない。そこで、以降は特に印象的な映像と音の部分に限って紹介していこう。

 まずは、ストーリーの要所でもある「バシュタールの悲劇」。10年前に起きた悲劇はモノクロ調の映像で再現されるが、背景画などを見るとその濃淡がよく出ており、筆致がわかるどころか、描かれた紙の質感までわかるほどの情報量だ。そこまで見えてしまうと、普通ならば作り込みが見えて興醒めになるのだが、もともと本作は巨大なスケールの漫画映画というか、最初から作り物としての面白さを徹底追求しているから、そのフィクションとしての魅力がさらに高まる。今でも立ち読みのできる書店などで見かけるが、漫画の誌面を食い入るように見つめている子供の気持ちだ。ザラ紙に印刷されたインクの臭いまで吸収したくなるあの感じになるのだ。

 そして、黒の深さ。画質調整では黒がきちんと非表示の黒(輝度ゼロ)になるように調整するのだが、それでいてなお、黒のさらに深い黒が見えてくる。1%単位の黒の階調が見事に再現できているBDプレーヤーの暗部再現の凄さ(暗部のノイズが極めて少ないこと)にも感心するが、そこまで黒の深さ(闇の深さ)にこだわった作り手の心意気には感嘆する。だって、'90年代の主流であるブラウン管のテレビではそんな黒は再現できなかったのだから。

 そんなテレビで見ることを前提としたOVAで、フィルム上映でないと再現できないようなレベルの暗部階調まできちんと作り込んでいたのは驚きだ。OVAでありながら、劇場公開作品の質を超えたという当時の評判が今さらながら思い出される。なお、この黒の深みはAVピュアダイレクトでさらに黒の深みと締まりが増す。輪郭の描線のキレ味もより鮮明になるので、AVアンプなどをお使いの人はぜひともHDMI2本出しのAVピュアダイレクトで本作を楽しんでほしい。

 続いては、手作業によるアナログアニメの驚くべき仕事が見える描写。ロボなのに、腕が壊れたときには滝のような涙を流すなど、実に生き生きと描かれるジャイアントロボだが、激戦を重ねて傷つき、涙の跡が染みついた様子などは、すべて手描きだ。それが、巧みなカットワークによって、ちゃんと動いているように(一枚一枚作画しているように)見えるのも見事だ。この入魂の作画はアニメーションの真髄と言っていいものがある。

 横山光輝の画風そのままの漫画的なキャラクターが、だからこそ人間にはできないような超絶アクションを繰り広げる。等身大のキャラクターの動きが俊敏だからこそ、ロボの巨大さや重量感がさらに強調される。実在するメカとしてのリアリティーにこだわったロボットアニメが失ってしまった大切なものが、ここにあるのだ。

これがアニメのサントラ!? と驚嘆するクオリティ

 最後に、24bit/96kHz収録されたサウンドトラックを聴こう。冒頭でも触れたように元々は16bit/44.1kHzの素材をアップコンバートしたものだが、その音は良い意味でソースの質を疑うほどのクオリティだ。

 まず、本編では劇伴という名の通り、SEやダイアローグと一体になって完成するものだから、台詞に被らないように音量レベルも抑えられているし、コンプレッションのかかった小さめの音量でも聴き応えを損なわないメリハリをつけた調整もされていることがわかる。それが、音楽だけが主役となるサントラ盤では、当然ながらダイナミックレンジも拡大されるし、細かな音もより鮮明になる。なによりも、音の厚みが驚くほど違う。

 いわゆるクラシックの演奏を録音した音楽ソフトとは違い、3次元的なステージ感やホールの響きまで収録しようという録音ではないが、それだけに楽器の音色に迫る音になっているし、音楽自体も濃密だ。メインタイトルのトランペットを聴くだけで、映像が頭に蘇る。記憶をダイレクトに刺激する音だ。

 このサウンドトラックを使い、アナログ出力とデジタル出力による音の違いを聴き比べてみた。HDMIによるデジタル出力では、AVピュアダイレクトで聴いているが、情報量の豊富さや各楽器の音色の細かな再現などがよく出て、精密な再現になる。中低音域に厚みのある骨太な再現のせいもあり、やや硬めの印象もある。デジタル同軸出力になると、多少微小音の再現や低域の伸びに違いを感じるが、基本的な傾向は同様だ。

 これをアナログ出力に切り換えると、力強さと厚みが倍加してくる。それでいて情報量が減るとか、楽器の細かな表情が曖昧になるといったことはない。純粋に音の質が向上したような違いだ。デジタル出力で感じた音の硬さもとれ、強さと同時に柔らかさやしなやかさが感じられる。より自然な再現だ。実際のところ、本編の視聴でも音はアナログ音声で聴いているわけだが、迫力たっぷりで胸が熱くなりっぱなしのストーリーには、アナログの体温を感じる強さとしなやかを持った再現がふさわしいと思う。

 24bit/96kHzのハイレゾ音源というと、タイトル数としては決して多くはないSACDや音楽配信サービスばかりと思われがちだが、実はこうしたミュージック仕様のBDは海外を中心にタイトルが出揃ってきている。こちらのメリットは、BD再生環境があれば容易に楽しめること。PCを使ったネットワーク再生のように難しい知識や準備も必要ないので入りやすい。ミュージックBDが国内でも普及するかどうかは、ソフト次第とも言えるのだが、映画やアニメの特典としてハイレゾのサントラをつけるというのはうれしいと感じる人も多いと思う。この流れはぜひとも他の作品でも追従してほしいと感じる。

時間をかけて作った大作ならではの良さを、じっくりと

 本作は、僕のような年季の入ったアニメ好きならばもちろん、若い人でもその名前くらいは知っているであろうもの。残念ながら、エピソードによって本編の長さにけっこうなバラツキがあり、WOWOWの一挙放送でもない限りTVオンエアが難しいことなど、パッケージを購入するしか見る機会がないというのは、ハードルの高さも感じる。それでもぜひとも見て欲しい作品だと思う。それこそ、7年かけてじっくりと何度も見て欲しいくらいだ。

 お金をかければ良い物ができるわけではないように、時間をかければ良い物になるわけでもない。だが、毎週放送をベースとした制作スケジュールではとてもなし得ない仕事であり、それは作品の魅力でもあるし、商品価値にもなっていると思う。こうした時間をかけた作品制作は、「ヱヴァンゲリオン新劇場版」もそうであるし、「宇宙戦艦ヤマト2199」や「機動戦士ガンダムUC」もテレビスケジュールよりも余裕のあるスケジュールで制作されている。こうした作品の多くがきちんと人気を得ているのはちゃんと理由があると思う。

 僕を含む視聴者にとっては、次の発売まで待てない!! という不満もあるし、ビジネスを考えれば、なかなかできることではない。その意味でも本作は貴重な作品だし、一度見たらば満足の作品には終わっていない。本作のテーマはSFにおいては普遍的なテーマだが、福島原子力発電所の事故を経験した現代に見ると、そのテーマはより濃厚に伝わるはず。もちろん、親子で一緒に見て欲しい作品でもある。それだけの質と量を備えた正真正銘の大作だ。

 BDにはそのすべてが収録されており、それを余すことなく再現できるBDプレーヤーもある。ファンならばやはり最上の状態で見てほしいと思う。それが作り手の情熱とその労力に報いることにもつながるだろう。

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鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40〜60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。