鳥居一豊の「良作×良品」

手頃な価格でDSDを満喫できるUSB DAC 3製品聴き比べ

コルグ/デノン/フォステクスで表情豊かなギターの音色を

 PCオーディオにおいて、より高音質で音楽を楽しむためには欠かせないUSB DACが今回の良品。USB DACとは、PCとUSB接続してPCの再生した音源をノイズの影響の少ないデジタルデータのまま受け取り、良質なアナログ音声信号に変換してオーディオ機器へ出力する機器だ。USB DACは今や純粋なDAコンバータとして商品化されることは少なく、多くのモデルがヘッドフォンアンプを備えるし、スピーカーを駆動するためのアンプを備えるものもある。逆にAVアンプの上級機やCDプレーヤーがデジタル入力のひとつとしてUSB端子を備えることも多い。このほか、最近注目度が増しているハイレゾ対応携帯プレーヤーと組み合わせて使うポータブルヘッドフォンアンプもUSB DAC機能を備えるものが少なくない。と、このように一言でUSB DACといっても、商品にはかなりのバリエーションがある。

デノン「DA-300USB」、フォステクス「HP-A4」、コルグ「DS-DAC-100」。いずれもコンパクトでデスクトップなどのスペースにおける

 今回は、いわゆる据え置き型のUSB DACを集めた。フォステクス「HP-A4」、コルグ「DS-DAC-100」、デノン「DA-300USB」の3モデルだ。PCと組み合わせてデスクトップで高品位なオーディオ再生システムを構築することもできるし、より本格的な単品コンポーネントのシステムと接続し、大型スピーカーで音楽を楽しむこともできる。今回は集めたのは実売で5万円未満となる比較的手の届きやすい価格帯のものだが、人気の高い価格帯ということもあり、製品の充実度は極めて優秀だ。

 USB DACでもうひとつ注意したいのは、対応するデジタル信号の種類だ。リニアPCMならば対応するサンプリング周波数と量子化bit数であり、最近ではDSD音源に対応するかどうかもチェックしておきたい。これから紹介する3つの良品は、いずれも最大192kHz/24bitのリニアPCMと、2.8MHz/5.6MHzのDSDに対応している。現在配信サービスで扱っている音源のほとんどがカバーできるスペックで、これからUSB DACを選ぶならばこれを満たしたものを選ぶのがお薦めだ。

USBバスパワーで使える小型モデル フォステクス「HP-A4」

フォステクス「HP-A4」の正面。上部にはデジタル信号の種別を表示するインジケーターがあり、入力セレクターなどのボタンが4つ並ぶ。右端の大きなダイヤルがボリュームだ

 一番手はフォステクスの「HP-A4」(実売価格37,660円)。サイズとしてはもっとも小型で、机の上などに置いて使うなら好適なモデルだ。コンパクトではあるが顔付きはツマミが数多く配置されたオーディオ機器ライクなもの。

 中央の4つのボタンは左から入力セレクター/フィルター切り替え/ゲイン切り替え/出力セレクターとなる。入力はUSBと光デジタルが切り替えでき、出力はヘッドフォンとライン出力の切り替えとなる。フィルターは量子化ノイズを取り除くデジタルフィルターの特性を選択できるもので、2種類の特性を曲や好みに合わせて選べる。ゲインはヘッドフォンのインピーダンスに合わせて選択するもので、ハイ/ローの切り替え式だ。

 サイズはコンパクトながら、美しく面取りされたスチール製シャーシは剛性も高く、がっちりとした質感。形は小さくともオーディオ機器らしい風格がある。

HP-A4
側面図。ボリュームのツマミが比較的大きく飛び出しているのがわかる。サイズがコンパクトでもボリューム調整はしやすく、使い勝手も良好
PCとの接続用にUSBケーブルが付属。必要なケーブル類がきちんと揃っているので、すぐに使える。初心者にはありがたいだろう
背面。ライン出力はRCA端子のアンバランス出力。USBデジタル入力のほか、光デジタル入出力も備えている。右端のマイクロSDスロットは、ファームウェアアップデート用だ

 コンパクトながらもヘッドフォン出力とライン出力を備えるほか、光デジタル入出力も持つなど、単体DACとしても十分に使える。豊富な入出力を備える一方で、電源のための端子はない。これはUSBバスパワーで動作するため。PCとつなぐ場合はUSBケーブル1本で電源供給と信号伝送の両方が行える。光デジタル入力を使いPC以外と組み合わせる場合は、USB給電が可能なACアダプタ付きのUSBハブなどを使うといいだろう。

 DAC部を詳しく見ていくと、DACチップはバーブラウン「PCM1792A」を採用。カスタムの水晶発振器を使い、PC側で発生するジッターの影響を低減できるアシンクロナス・モードでの接続が行える。最近のUSB DACとして特に目立った部分は少ないものの、おさえるべき部分はしっかりとおさえた堅実な作りだ。

 PCとの接続は、Windowsの場合は専用のドライバーソフトをダウンロードする必要がある(Macは不要)。DSD再生もDoP方式とASIO方式に両対応している。さらに、フォステクスでは同社のUSB DAC製品専用のプレーヤーソフト「Fostex Audio Player」も用意されている。起動時にHP-A4などの製品を認識しないと起動しないため、汎用の再生ソフトとしては使いにくい面もあるが、ドライバーと専用プレーヤーをインストールするだけで、面倒な設定をすることなく、DSD再生などもスムーズに行えるのは大きなメリットだ。

ユニークな形状ながらバランス出力装備など、作りは本格的。コルグ「DS-DAC-100」

 続いては、コルグの「DS-DAC-100」(実売価格49,150円)。昨年、5万円を切る価格ながらもDSD音源に対応したことで話題となり、発売当初は品薄が続いた人気モデル「DS-DAC-10」(同42,500円)の上位モデルだ。

 ラウンドフォルムの独特のボディが独創的だが、脚部はスパイクによる3点支持とするなど、音の点でもよく考えられた造形だ。

コルグ「DS-DAC-100」。マット仕上げのボディはヘッドフォン出力と中央のボリュームツマミのみのシンプルなデザイン。入力信号の表示は右側のインジケーターで知らせる
斜めから見ると、湾曲したボディの形状がよくわかる。一見するとオーディオ機器には見えないちょっとしたオブジェのような印象だ。

 マット調の仕上げに、製品名などを表示する印刷さえも暗いグレーとしたデザインは、良い意味でオーディオ機器らしさがなく、ちょっとしたインテリア小物のようにも見える。PCと組み合わせるにしても、あまりにもオーディオ然とした機器をずらりと並べるのは抵抗があるという人にも似合いそう。とはいえ、高級オーディオ機器で採用されることが多い3点支持やスパイク形状の脚部など、オーディオに詳しい人にも納得の機能美も兼ね備えたデザインはなかなかのもの。なお、スパイクはそのまま机やラックに置いて使うこともできるが、木製のラックなどのキズがつかないように、スパイク受けも付属する。

 背面には、USB端子とアナログ出力を備える。シンプルな構成ではあるが、バランス出力も装備しているのが本機の大きな特徴。音楽製作の現場で活躍する録音機器などを数多く発売しており、また回路設計も業務用機のノウハウを受け継いだモデルだけに、スタジオ機器やハイエンドなオーディオ機器と組み合わせやすいバランス出力を装備したのは、コルグらしいこだわりと感じる。

前方の脚部のアップ。国内のオーディオ製品では珍しい装備だ。木製ラックなど柔らかめの台に置く場合は、付属のスパイク受けを使う
ケガの防止のためスパイクの先端はわずかに丸められているが、実際に触れてみると十分に鋭いのでケガに注意。スパイク設置は設置面圧を高め、より安定した設置をするための工夫だ
裏返して底面から見たところ。底面が湾曲しているため、前側と後ろ側ではスパイクの背の高さが異なる。ガタつきのない設置ができる3点設置であることもわかる
側面から見たところ。側面は四角形の形状だが、底面や天面の独創的な形状はよくわかる。
背面の出力端子。入力はUSB端子のみ。出力はRCAのアンバランス出力とXLRのアンバランス端子を備える
前面に大型のボリュームを装備

 前面はボリュームとヘッドフォン端子、入力されたデジタル信号の種別を示すインジケーターのみ。背面もUSB入力とアナログ出力(バランス、アンバランス各1)とシンプルだ。本機もUSBバスパワーで動作するため電源ボタンもなしと、機能としては最小限のものとなっている。

 もちろん、入力可能なデジタル信号は最大192kHz/24bit、DSD 2.8/5.6MHzに対応する。DAC部は同社の録音機器であるMRシリーズと同じ、シーラスロジック「CS4398」を採用。DSD音源の録音の分野で高いシェアを誇り、実際現在流通しているDSD音源も多くが同社のMRシリーズで製作されている現状を踏まえ、録音機器の技術を採り入れ、色づけのない高忠実度を追求した作りは、スタジオでの音をそのまま家庭で聴くことができるハイレゾの魅力をストレートに味わえるものと言える。

 ドライバー類は、Windows/Mac用の専用ドライバーと、同社オリジナルの再生ソフト「Audio Gate 3 Player」が用意されている。Audio Gate 3 Playerは同社のUSB DAC用のプレーヤーソフトではあり、音作りを含めてハード側とソフト側で協調して開発されており、汎用プレーヤーと組み合わせるよりもKORGの目指した音を再現できるものとなっている。その一方で、他社のUSB DACとの接続時でも使用できる。最大192kHzのリニアPCMやDSD音源の再生も可能だが、同社のUSB DAC以外での使用時はソフト側で48kHzに変換されて出力される。

CDプレーヤー技術をそのまま受け継いだ高音質。デノン「DA-300USB」

デノン「DA-300USB」。デジタル信号の種別や入力ソース、ロゴマークなどはすべて有機ELディスプレイに表示されるため、電源オフ時はかなりシンプルな印象になる

 最後はデノンの「DA-300USB」(実売49,660円)。側面がわずかにラウンドしたモダンなデザインで、タテ置き/ヨコ置きの両方が可能になっている。ユニークなのは、内部にセンサーが入っており、前面の有機ELディスプレイが置き方に合わせて表示の向きが変わる点。タテ/ヨコ置きが可能な機器は少なくないが、刻印されたロゴの向きがおかしくなるなど気になることもあった。ロゴをディスプレイ表示とすることでその問題を解決しているのはユニークなアイデアだ。

 ツマミやボタン類が多いオーソドックスな外観デザインが多いデノンの製品として見ると、本機は意外なほどシンプルな顔付きで、電源オフでは電源ボタンやボリュームツマミだけになる。置き方によって表示の向きが切り替わる有機ELディスプレイの採用や入力切り替えもタッチセンサーとすることで、ボタン類を最小としたデザインになっている。

 今回聴いた3機種の中では、本機が長方形フォルムということもあってやや大柄な印象になるが、ボディの剛性感はむしろ一番がっちりとしている。ボディの肉厚も見てもかなり高い剛性があるのがわかる。また、付属のスタンドを使ったタテ置き設置ならば、むしろ設置面積は本機が最小となるので、PCと組み合わせて使うにしてもあまり置き場所を気にする必要はないだろう。

斜め上方から見たところ。ハーフサイズの長方形フォルム。側面がゆるく湾曲した形状となっているのがわかる。押し出し材の肉厚の厚みにも注目
上下2分割のシャーシとすることで、継ぎ目が目立ちにくい。天面には、彫り込みでデノンのロゴが刻印されている
側面は上下で分割された継ぎ目があるが、デザイン処理を施すことですっきりとした印象にまとめている

 特徴は充実したデジタル入力で、USB端子に加えて、同軸×1、光デジタル×2の計4系統の入力を備える。アナログ出力はRCAアンバランス出力とヘッドフォン出力だ。また、本機は電源はACアダプタを使って供給するため、電源端子も備えている。

付属のスタンドを使ってタテ置きにしたところ。すっきりとしたデザインもあり、よりスマートな印象になる
背面の接続端子。アナログ出力はアンバランスのみだが、豊富なデジタル入力を備える。薄型テレビやCDプレーヤーとの組み合わせなど幅広く使える

 本機の最大の特徴はデノン自慢のDAC設計だろう。同社のCD/スーパーオーディオCDプレーヤーの開発で培ったデジタル技術が惜しみなく注ぎ込まれている。デジタル信号を32bit化し、44.1kHzならば16倍、192kHzならば4倍にオーバーサンプリングして信号処理をする「Advanced AL32 Prosessing」を採用。クロックは44.1kHz系と48kHz系の2つのクロックを使い分ける「DACマスター・クロック・デザイン」、USBの信号線を通じて流入するノイズを遮断するデジタルアイソレーターを入力部に備えるなど、信号処理からノイズ低減まで徹底した作りとなっている。

 さらには、ヘッドフォンアンプも、電圧増幅段に高速オペアンプ、出力バッファーはディスクリート回路とした専用設計のヘッドフォンアンプ回路とするなど、万全の構えだ。

 本機はWindows用に専用ドライバーが用意されるが(Macでは不要)、他のモデルのようにプレーヤーソフトは用意されていない。そのため、試聴では本機のみDSD再生のためのコンポーネントを組み込んだ「foobar2000」を使っている。

DSD音源の良さを実感した名盤「ジム・ホール/アランフェス協奏曲」

ジム・ホール/アランフェス協奏曲

 これらのUSB DACで聴く良品が、「ジム・ホール/アランフェス協奏曲」。最新のUSB DACの聴き比べということもあり、音源はDSDから選ぼうと思っていろいろと候補を探したが、最新のDSD録音から選出したいと思いつつ、結局のところ昨年末に惜しくも亡くなったジャズ・ギタリストの巨匠ジム・ホールによる1975年の録音「アランフェス協奏曲」とした。

 このアルバムにはちょっと恥ずかしいエピソードがある。このアルバムを聴いたのもジム・ホールが亡くなった後でハイレゾ配信された後のことのなのだが、何の情報も入れずに曲を聴いたとき、あまりにも鮮度の高い音に驚き、おそらくは晩年のジム・ホールのラスト・レコーディングなのではないかと勘違いしていた。まさか、CD登場前の1975年録音とは思えない音の鮮やかさ、ギターの複雑かつ自由自在なメロディは今聴いてもまったく古さを感じないものだったからだ。

 だから、この曲を選ぶからには、その音の鮮度がいかにしっかりと味わえるかが個人的なポイントになる。

 さっそく表題曲の「アランフェス協奏曲」を聴きたいところだが、まずは小手調べということで収録曲のひとつである「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ(You'd Be So Nice To Come Home To)」を聴いてみる。ジャズ・ボーカル曲としても有名なスタンダードナンバーだ。

 なお、各モデルは、それぞれメーカーが用意したプレーヤーソフトを使って再生している。デノンが汎用の「foobar2000」を使うため、プレーヤーソフトを共通にすることも考えたが、それぞれ専用のプレーヤーソフトを使うことで、メーカーの持ち味がより明確になると考えたためだ。

 フォステクスのHP-A4は、ギターの速い爪弾きがまったくもたつかず、テンポがやや速いかのようなスピード感のある爽快な鳴り方。音調もブライトで音の広がりやステージでの楽器の配置が目に見えるようだ。もともと軽快に演奏される楽曲だが、より気持ち良い鳴り方になる印象。音の立ち上がりの反応の良さ、解像感の高いシャープな再現が特徴だと感じた。

 コルグのDS-DAC-100では、都会的なムードさえ感じさせる洗練された演奏ながらも、ギターの奏でるメロディの持つ表情の豊かさが出た。ジム・ホールの気持ちがダイレクトに伝わってくるようなリアルさがある。ギターをはじめとする楽器の音色にもしっかりと厚みがあり、最新の録音と勘違いしたほどの音の鮮度の高さは十分。リズム感や音の立ち上がりといったオーディオ的な聴き方でも十分な実力があるのは間違いないが、それ以上に生っぽいライブに近い鳴り方をした。

 最後のデノンDA-300USBは、良い意味で大人の演奏。おっとりしているとまではいかないし、ギターの変幻自在な演奏がもたつくわけでもないのだが、ゆったりと落ち着いたムードの演奏になる。低音の伸びが量感をふくめてもっとも充実感があるのがその理由のようで、ギターの胴鳴りやベース、ドラムなどの鳴りっぷりも堂々としている。そして、各楽器の配置や空間の奥行きなど、ステージの立体的な再現はデノンがもっとも優れており、広いスタジオの雰囲気がよく感じられたのも印象的だ。

・情報量が豊かでギターの音色を高解像度で描き出す「HP-A4」

HP-A4の「FOSTEXAudio Player」

 では、いよいよ「アランフェス協奏曲」を聴いてみよう。この曲は1939年にホアキン・ロドリーゴが作曲したギター協奏曲で、クラシックの原曲は3楽章構成。作曲当時に起きたスペイン内戦の悲しみと平和への願いをこめた曲と言われている。本アルバムで演奏されているのは第2楽章にあたる曲だ。この第2楽章はジャズでの定番でもあり、ジム・ホールだけでなく数多くの大物ジャズ・ミュージシャンが演奏していることでも知られる。

 愁いを帯びつつも美しいメロディではじまるギターが実にきめ細やかで丁寧だ。解像感が高く、細部まではっきりと再現する傾向もあるため、ややクールな印象もあるものの、ギターの音色の変化や曲のもの哀しいムードもしっかりと伝わる。音の強弱の違いをはっきりと出すダイナミックな表現も上手で、高解像度だが測定器でテストしているような無味乾燥さはなく、各楽器の音色のきめ細かな鳴り方に驚かされる。

 一番驚いたのはサックスの奏法の違いを明瞭に再現したことで、吹き方というか息を吹き込む感じのニュアンスがよく出たところには驚いた。同様にドラムのリズムの微妙な変化などもはっきりとわかる。

 総じて言うと、高性能なモニタースピーカーで聴くような、情報量が豊かでひとつひとつの音を正確にならすタイプだが、デリケートな変化、ニュアンスの豊かさもしっかりと再現することで、無味乾燥な分析的な音に成り下がっていないのは見事だ。自分でも演奏をする人にとっては、こうした情報量の豊かさは頼りになると思うし、じっくりと聴き込める音だと思う。

・鮮度の高い生き生きとした音。体温を感じる生演奏的再現の「DS-DAC-100」

DS-DAC-100の「Audio Gate」

 続いてのコルグ「DS-DAC-100」では、哀しみを内に秘め、ぐっと感情を抑えたイントロのテンションの高さにまず魅了された。ジャズ・ギタリストのバカテクぶりは、ロック系ギタリストの速弾きとはまたひと味違う魅力があるが、川の流れのように変幻自在で流麗、それでいて一音一音の音はしっかりと立たせた演奏に驚かされる。常人では真似できそうにない指の動きが見えるような演奏は実に生き生きとしていて、目の前で演奏しているかのようなダイレクトさがある。

 音のエネルギー感や音圧的なパワーの出方がスムーズかつ素早いのだろうが、そうした音としての表現というよりも、演奏するプレーヤーの存在、音楽としての実在を感じさせる迫力がある。これぞ、昔の録音とは思えない鮮度の高さで、生き生きとした再現だ。

 こうしたギターやベース、ピアノといった楽器の存在がしっかりと出てくるせいか、音楽との距離の近さを感じる。特にピアノは鍵盤を叩いて(ハンマーが弦を叩いて)鳴る直接的な音を響板で反射した響きが一体となり、一音一音は不明瞭になることも少なくないのだが、明瞭さと響きが周囲に拡散していく様子まで生々しく再現した。

・極めてしなやかで柔らかい音色、圧倒的なパワー感も。「DA-300USB」

DA-300USBでは再生ソフトが付属しないためfoobar2000を使用した

 最後のデノンは、まさに熟成とか充実といった言葉が思い起こされる再生。冒頭のテンションの高いギターの旋律からして、音色が柔らかくなめらかな感じになり、あまりテンションの高さは出てこない。大人しい鳴り方と感じてしまいがちだが、充実した低音の支えられた音の芯の強さや厚み、ぐっと盛り上がるパワー感は他にはないものだ。特に演奏が盛り上がる部分の高揚感はかなり聴き応えがある。

 それと同時に、ステージの奥行き感や楽器の配置が見えるような見通しのよい音場も兼ね備えている。高解像度の静止画のような写実的なものではなく、眼前に迫ってくるような押し出しの強さでもなく、あくまでも自然。スピーカーとスピーカーの向こうにプレーヤーが存在するかのような落ち着いた佇まいだ。

 絶対的なパワー感を持ちながらもそれを印象づけず、解像感の高さや見通しの良さもさりげなく描き切る。オーディオ機器の音を評価するさまざまな要素が高いレベルでバランスした結果、音楽の姿だけが浮かび上がってくるようなまとまりの良さがある。まさしく円熟の極みであり、本格的なオーディオに精通した人にとっては、これぞ目指していた音楽の鳴り方と言いたくなるような完成度の高さがある。

身近な価格ながらも、音の優秀さと個性の豊かさが面白い。USB DACは今が旬

 こうして3モデルの音を聴いていくと、5万円ほどの比較的身近なオーディオコンポでありながら、その音の実力が極めて高いことがよくわかった。情報量の豊かなDSD音源ということもあるが、その豊富な情報量をしっかりと出し、しかもそれぞれに異なる印象を与える個性の豊かさは、本格的なオーディオ機器となにも変わらない。オーディオの世界の中で言えば、かなり身近な存在なPCオーディオではあるが、その懐はかなり広いということを改めて実感した。

 それだけに、この3モデルの中でベストを決めるのは難しい。今回は聴いていないが僕の好きな女性ボーカルをじっくりと聴き込むならば情報量ならば一番のフォステクスHP-A4がいいし、僕が考えるDSD音源の最大の魅力である音の生々しさ、ライブ感のある音を求めるならばコルグのDS-DAC-100。オーディオ的性能では頭一つ抜けていると感じるデノンは、それでいてオーディオを感じさせない音楽との対話が楽しい。

 個人的には、15万円ほどまで予算を上乗せして、その価格帯で一番好みに合うモデルを選ぶよりも、この3台を所有して気分や曲に合わせて使い分ける方が楽しいのではないかと感じる。

 ハイレゾ音源やPCオーディオは、今や一過性のムーブメントではなく、オーディオを楽しむジャンルのひとつとして定着したと感じるし、予算的な負担や、設置する場所などのスペース的な問題でもハードルが低く、今までのオーディオにはなかった裾野の広さがある。ここで紹介した3つの良品なら、ハイレゾ再生を含めた楽しい音楽の時間がさらに充実したものになるだろう。

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鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40〜60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。