鳥居一豊の「良作×良品」

「アナと雪の女王」を4K BRAVIA「KD-55X9200B」で味わう

4Kで堪能する3D映像と豊かな音の世界

アナと雪の女王 MovieNEX
(C)2014 Disney

 今回は「アナと雪の女王」を良作に選んだ。劇場での大ヒットに続き、7月16日のBD発売後初週で100本を突破し、7月20日には200万枚突破するなど、これまでのBDのヒット作の記録を次々と打ち破っている大ヒット作だ。大ヒットしたことやソフトが売れたことが必ずしも作品の質を保証するわけではないが、BD初の100万本超えのタイトルがディズニー作品であったことはちゃんと理由があると思う。子供たちが見たがり、一緒に連れて行くことになる親もちゃんと楽しめる作品ということだ。だから劇場でヒットするし、何度も見たくなってソフトも売れる。ファミリー向けは強いのだ。

 とはいえ、子供が見ても楽しめる単純な物語で、大人にも見応えのある内容とするのが難しいのは、誰でもわかるだろう。子供向けの作品は多いが、ファミリー向けの作品は思ったよりも少ない。ディズニー自身、ヒット作もあればそうでないものもあるが、それでもひたすらにこのジャンルの作品だけを作り続けてきたからこその大ヒットなのだろうと思う。

 さておき、うだるような暑さの続く今、雪と氷がいっぱいの作品を見るのは避暑的な気分にもなるし、なにより3D映像が秀逸だ。詳しくは後でじっくりと述べるが、今回の視聴は3D版で行っている。ひとつだけ苦言を呈したいのが、3D版の発売方法。アマゾンでは初回限定版と3D版をセットで販売したようだが、一般の店舗ではBD+DVD版の発売のみ。おかげで僕は発売日に3D版が売り切れたと勘違いして買わずに帰宅してしまった。

 基本的に3D版は、BD+DVD版を購入したユーザーが、MovieNEXの専用ページにアクセスして購入することになる。わかりにくいし手間もかかる方法なので、よりよい販売方法を考えてほしい。というのも、やはり本作は3D版を見るのが正解だから。

 そして、本作は英語版だけでなく日本語もDTS-HD Master Audio 7.1chで収録され、音質差を気にすることなく日本語音声を楽しめる。これは3D版も同様なので、劇場では最初の公開時では見ることができなかった日本語吹き替え版の3D上映(ゴールデンウィークなどに日本語吹き替え版の3D上映が限定で行なわれた)を家庭で楽しめるということになる。

 200万本以上ヒットした作品だが、そのうち3D版で見たのが何人いるのかと想像すると、3D好きとしては哀しい数字しか思い浮かばないが、本作の3D版には大きな価値があるのだということは強くアピールしておきたい。

4Kテレビの3D表示で、「アナと雪の女王」を存分に楽しむ

 これに組み合わせるのは、ソニーの4Kテレビ「BRAVIA KD-55X9200B」。4K解像度の映像での、3D映像表示はBRAVIA前モデルでは偏光式3Dだったが、今回はアクティブシャッター方式となっている。そして、音質面では、左右に大型の高音質スピーカーを備えている。

KD-55X9200B

 昨年モデルのKD-55X9200Aが前モデルに当たるが、これは当時のハイエンドモデルで、最高の画質と最高の音質を兼ね備えたモデルだった。しかし、今年のラインナップでは機能的に最高の画質を備えたモデルとしてX9500Bシリーズがある。X9500Bシリーズは、直下型バックライトを採用し、スピーカーは通常のコンパクトなタイプとしている。逆にX9200Bシリーズは、バックライトはサイド配置のエッジ型とし、大型の高音質スピーカーを両サイドに備えている。

 直下型とエッジ型のバックライトの違いは、主にコントラスト感と言えるが、どちらもVA型の液晶パネルを使っていることもあり、黒の締まりなどについては、暗室で両方を見比べて気がつくレベルだ。明るい環境で使うならば、その差はそれほど大きくない。

 このほかの高画質技術については、映像の明るい部分の表示能力を高め、眩しい光の輝きを力強く再現できる「X-tended Dynamic Range」がX9200B/X9500Bで新採用された。X9500Bはよりダイナミックレンジを高めるPRO版となっている。

 それ以外は高画質化技術については、X9200B/X9500Bはほぼ同様で、外光の反射の影響を低減する「オプティコントラストパネル」、より広い色域を表示できる「トリルミナス・ディスプレイ」技術なども備えている。

 前から見ていくと、KD-55X9200Bは、2013年モデルのKD-55X9200Aとそっくり(スタンド形状や3つのスピーカーの配置場所が違っている程度)なのだが、側面に回ってみると多く形状が異なることがわかる。

KD-55X9200B
X9200Bのスピーカー部。上から順にトゥイータ、磁性流体ユニット採用のウーファ、サブウーファを搭載。X9200Aとはユニットの配置場所が異なっている
【参考】X9200Aのスピーカー部
側面。上方が細く尖ったウエッジデザインを採用し、大型スピーカーのエンクロジャー部分が内部に収まっている

 背面には、各種の入出力端子があるが、さらにポートリプリケーターも付属している。こちらには、3系統のHDMI端子とUSB端子、アンテナ入力があり、本体に多くの配線をつなぐことなく、テレビの裏やラック内など目立たない場所に配線を集中できるもの。壁掛け設置なども含め、よりすっきりとした配線で使えるようになっている。

 使い勝手の点では、電源を入れてすぐに画面が表示される高速起動に対応。待機時消費電力が増えてしまうため、よく使う時間帯に合わせて最大6時間まで設定できるようになっている。さらに、リモコンには「番組チェック」ボタンを採用。画面の下部にテレビ放送や録画番組などのコンテンツのサムネイルを表示し、見たい番組などをすばやく探せる。また、リモコンは一般的な赤外線リモコンに加えて、無線方式で向きを気にせず使えるタッチパッドリモコンも付属する。メニューなどの操作はタッチパッドのフリック操作で行えるほか、NFCのセンサーも備えており、ミラーリングが手軽に行なえるようになっている。

KD-55X9200Bの背面。各種の入出力端子のほか、ポートリプケータ用の端子も
配線をテレビから離れた場所でまとめられるポートリプリケータ。HDMI 3系統やUSBなど
ポートリプリケータを装着

 このほか、Wi-Fiによるスマホ画面のミラーリングやMHLでの接続の対応をはじめ、専用の操作アプリ「TV Side View」を使ったリモート操作など、スマホとの連携やネットワーク機能も一通り備えている。

通常の12キー付きリモコン。赤外線方式で、テレビ放送のダイレクト選局ができる点ではこちらが便利
タッチパッドリモコン。メニュー操作をフリックで行なえる。上部のコントロールバーを押すことで、画面状のキーパッドを表示し、録画機器の操作などが行なえる

画質と音質を調整して、より「アナ雪」にふさわしい映像と音に仕上げる

 では、いよいよ「アナと雪の女王」を見るべく、画質と音質の調整を行っていく。冒頭の氷職人が湖面の厚い氷を切り出しているシーンを見ながら、画質と音質の機能を一通りチェックしてみた。

 今回は、大画面テレビのため視聴を編集部で行なったため、照明を落としても外光はわずかながら入ってくる環境とした。一般的な家庭の部屋よりもちょっと暗い程度の環境だ。本作は3DCGのアニメーション作品なのだが、映像の質感やディテールの再現性は実写に近い精密度がある。そのため、映像モードの選択は実写映画と同じくシネマ1を選んだ。輪郭の不要なにじみや、映像がギラつくような強調感も少なく、素直で見やすい。忠実感の高い映像だとひと目で感じる。冒頭のシーンは薄暗い夜の場面だが、暗部の階調などもしっかりと再現される。このあたりは「トリルミナス・ディスプレイ」技術のメリットだろう。

 本作のポイントはやはり雪と氷の質感だ。本作での雪のきめ細やかな表現や氷の透明感などには驚いた人が多いだろうが、ここがしっかりと表現できるかが重要。さすがは4Kパネルで雪の質感は文句なし。標準のままでは少々いかにもCGっぽい硬い印象になっていたので、精細度は少し落として「20」とした。ディテールの再現が自然になり、積もった雪の柔らかい感じや、降っている雪の軽さがよくわかるようになった。

 また、少し先の明るい場面のシーンを見て、画質の詳細設定にある「ライブカラー」を「切」から「弱」とした。「切」のままでも十分に豊かな色が出ていたのだが、CGアニメということでもう少し色乗りを派手ぎみにし、楽しい映像にした。特に肌の赤みや赤系の鮮やかな色が際立つ印象で、派手すぎることはない。また、夜の暗いシーンでも木々の緑がしっかりと出るなど暗色の再現もよくなった。好みにもよるが、実写の映画などでもそのままで良さそうだ。

画質調整画面。画質モードは暗い環境での視聴に適したシネマ1。明るい環境用のシネマ2も選べる。忠実感があり演出の少ないストレートな再現だったので、明るさや色の濃さといった基本的な調整はすべて初期設定のままとした
「リアリティークリエーション」の調整画面。精細度はちょっと控えめの20としている。ノイズ処理はBD再生なので最小(0)だ。
画質の詳細設定で、色の鮮やかさを強める「ライブカラー」を「弱」とした。CGアニメ作品らしい鮮やかで楽しい雰囲気の映像になる

かぶりつきの近接視聴で、映像の世界へと旅立つ!

 おおよその調整が済んだところで、いよいよ視聴の開始だ。視聴距離は4Kテレビの最適距離とされている1.5H(画面の高さ×1.5)としている。55型の本機の場合は、画面の高さが80cm程度なので1.2~1.5m程度だ。一般的なリビングに置いた場合の視聴距離としてはかなり短くなる。お母さんから「もっとテレビから離れて見なさい」と言われかねない距離だ。そんな距離でも画素が見えることはないし、細やかなディテールがしっかりと確認できる。それ以上に目の前に大きく広がる映像の存在感が非日常的だ。いつもこんな距離で見る必要はないが、映画を見るときくらいは、こういうかぶりつきの位置で見たいと思う。

 では上映スタート。アクティブシャッター式の3D映像は、解像感が半減することもなく緻密な4K解像度のまま3D表示が行なえる。反面、左右の映像がまざって映像が二重映りのようにぶれてしまうクロストークが発生しやすい。特に目立つのは字幕だが、これはオフにできるので問題のないレベル。気になる場合は3D設定で「3D奥行き調整」を標準の「0」から「-1」とすると多少緩和できる。

 また、動画ボケを解消する「モーションフロー」は「切」とした。3D表示では個人的によく使う「インパルス」が使用できないため。本作は24コマ収録ではあるが、3DCGらしい滑らかな動きが好ましいならば、「モーションフロー」で動画補間を加えて滑らかな動きにするといいだろう。

3D設定の設定画面。好みに応じて3D映像の奥行き感を調整することが可能。クロストークが気になるときは、マイナス方向に少し動かすと緩和できる
画質調整にある「モーションフロー」の設定画面。今回は3D視聴のため「切」で視聴している

 本作の見どころは雪と氷の質感であることは間違いないところだが、アナとエルザが住む城やそれを取り囲む海と山々の景色のパノラマ的な景色にも圧倒される。3DCGの技術もかなりのレベルとなり、ディテール感は極めて緻密だ。だが、キャラクターがアニメーション的にデフォルメされて描かれることもあり、建物や景色もディテールはリアルだが、どうしても作り物っぽい印象になる。それが本作では驚くほど景色の見え方が自然なものになっている。よく確認してみると、3D表示での視差による立体感だけでなく、映像自体も遠景で色が浅くなるとか、わずかにボケるといった工夫があり、4K解像度でそれらが忠実に再現されることもあり、こじんまりとした箱庭ではなく、オープンセットを眺めているような感覚になる。スムーズな奥行き感がリアルな距離を実感させてくれるというわけだ。

 3D映像は、このところどんどん見え方が自然になってきており、初期の3Dのように強調された遠近感という感じもないし、目への負担も少ない。あまりにも自然なので本当に3Dになっているの? と3Dメガネを外して確認してしまうほどだ。

 そんなリアルな存在感を持つ舞台で、アナをはじめとする魅力的なキャラクター達が自由に動き回る。エルザが女王となる戴冠式の場面では、久しぶりに門を開いた城に興奮したアナが歌い、踊る。デフォルメされたキャラクターは人形アニメ的とも言えるが、滑らかに踊る手足や翻ったスカートなど、アニメ的なオーバーアクションをともなった動きはまさに命を得て動いているようだ。

 こうした歌と踊りが随所に挿入されるミュージカル形式は、ディズニーアニメの基本フォーマットと言えるものだが、完成度の高い3DCGを見ていて、何故かセルアニメ時代の「美女と野獣」を思い出した。「美女と野獣」も背景に3DCGを採用しているが、当時からディズニーが目指していたアニメの理想形が、今ようやく現実になって現れたようにも感じる。

ある意味クライマックスとも言える「Let it Go」は、映像と音の饗宴

 序盤の見どころというか、クライマックスと入ってもいい「Let it Go」の場面を見てみよう。映像的には、エルザが魔法で雪と氷を操るときに現れる粉雪が舞い散るエフェクト。細かな雪が舞い上がるような描写だが、それらが平面的にでなく、立体的に舞っていることに関心する。粉雪の感触や、雪の塊が表面の粉雪を吹き払うと同時に氷の階段となる場面、雪面から氷の柱が伸び大きな城へと変わっていく場面が、曲の盛り上がりとともに展開していく。この高揚感は、作中でも随一と言えるだろう。

 ここでは、エルザの歌う声と伴奏の音楽、そして氷の魔法や城ができていくときの効果音で構成されるが、その音は案外数が多く、混濁して細かな音が消えてしまいがちだ。特に魔法をかけたときのサラサラとした雪が舞うような音が埋もれてしまう。

 実はこうした音まで、曲の一部として構成されていることに気がつくのだが、「こういう表現はホームシアターシステムで聴きたいところだ」などと言ってしまいたくなるところだが、KD-55X9200Bは内蔵スピーカーでもかなりのレベルでこうした緻密に構成された音を再現しきった。個々の音の粒立ちが良いので、細かな音まで埋もれることなく聴こえる。声はクリアで、吐息などのニュアンスも豊かに再現される。

 低音もホームシアターのような低音の伸びこそないものの、音楽のリズムなどはしっかりと再現できるだけの能力があり、しかも量感だけのぼやっとした響きではなく、力強さやキレもある。品位の高い小型スピーカーを組み合わせたときのような、まとまりのよいサウンドだ。

 アクション映画での大迫力の重低音などを期待するならば、別売のワイヤレスサブウーファ「SWF-BR100(実売3万円)」を組み合わせるといいだろう。当然ながら、本機にサウンドバーなどのシアターシステムは必要ない。サラウンドシステムと組み合わせるならば、比較的大きめのスピーカーを使わないと、内蔵スピーカーの音の方が良かったなどということになりかねない。

 映像と音、そして歌が一体になったこのシーンは、だからこそ印象的で、劇場公開時から今にいたるまで、電気店に足を運ぶとそこかしこで「レリゴー、レリゴー」と聞こえてくるありさまだ。耳について離れなくなってしまう人も少なくないと思うが、ここまで強く印象に残るのは、まさに映像と音が一体となったときの感動があるからこそだと思う。

 KD-55X9200Bも規模で言えば映画館よりは小さくなるものの、質的には同等の映像と音の一体感が表現できている。フルHDが主流で、4K試験放送も始まっているという今だからこそ、映像一辺倒ではなく音にも力を注いだシステムが欠かせないと感じた。

音質調整の画面にある「サラウンド効果」の調整。個人的には「+3」あたりが広がり感や奥行き感が自然で聴きやすかった。効果を強めすぎると違和感が出てしまいやすい

 なお、本機の音質調整を見ると、サラウンド効果という項目があり、ソニー独自の「S-Forceフロントサラウンド」も搭載されている。しかも、本機の場合は5.1chの音声ならばまず全チャンネルをデコードしてから、バーチャル5.1chとして再生するため、サラウンド感の再現性が高い。

 テレビのサラウンド機能というと、あまり期待していない人の方が多いと思われるが、本機の音はサラウンド効果も含めて、不自然さのないサラウンド再生が楽しめる。ただし、効果を強めすぎると強調感が出てしまうので、違和感を感じないほどほどのレベルで使うといいだろう。

 思う存分に歌い上げたエルザのふっきれた表情も素晴らしい。実在するハリウッド女優やスーパーモデルが、こういうキメ顔をしていたような? そんなふうに思えるくらいのキメ方で、自信に満ちた感じがよく出ている。ここまで堂々と「引きこもり」宣言をされてしまったら、どうしようもないと言わざるを得ない。

立体感に加えて、軽さと重さまで描き切る映像が、ストーリーを盛り上げる

 ありのままの自分で居るための冴えた答えが「引きこもり」という展開は、現代的というか、何か身につまされるものも感じるが、その先があるから本作は名作になり得たわけだ。ここまで堂々と引きこもった人物を外に出せるのは、家族しかいないだろう。

 というわけで、妹のアナがエルザの元へ向かう。ここからはアクションありユーモアありのディズニーお得意の展開だが、そんなシーンでも映像と音の饗宴が繰り広げられ、見応えのある場面が続く。

 吹雪の中をソリで疾走していく場面は、そのスピード感や雪の舞い散る感じが見事で、新雪の中でスキーをしたことがある人ならば、舞い散る粉雪の動きが極めてリアルであることに気付くだろう。

 大暴れするスノーゴーレムは、その巨体が踏みならす轟音も迫力だが、一度溶けた雪が固められてから再び凍結した重さと硬さがよくわかる。同様に、夏に憧れる雪だるまのオラフは、ちょくちょく溶けるが、そのときの溶けた氷の様子が見事だ。個人的には、関東でも記録的な豪雪があった今年のはじめ、自宅前の雪かきで腰を痛めた記憶が蘇ったほどだ。

 また、激しくなる一方の吹雪を受けて、樹氷となった森の木々の美しさや、吹きすさぶ風のうなりなど、映像と音のディテールへのこだわりが凄い。映画は基本的に作り物で、アニメはしかも「絵」なのだから、だからこそディテールを積み上げることで本物に迫れる。まさにそれを地でいく作り込みだ。そんな神が宿ったかのようなディテールを、KD-55X9200Bは、映像も音も十分以上のレベルで描き出してくれた。この満足度は見事なものだ。

 そして、2D版をリビングのテレビで適当に見たときは、どうして体重が重いのかがすぐにわからなかったトロルたちも注目。ファンタジーにおけるトロルがそういう存在なのかはよく知らないが、本作のトロルは石の妖精で、だから重いわけだ。

 3D版を買うために買わせられた2D版ということでいい加減に見ていたせいもあるが、石の質感や、ゴロゴロと歩き回るときの足音の低音の厚みなどが感じられないと、石だと気付かないのだ。3D版で見て、ちゃんと石だと気付いたわけだが、逆に言えば、トロルたちがちゃんと石であるとわかるかどうかは、テレビやスピーカーの実力を確かめるポイントになるだろう。

安心の展開だが、期待通りのカタルシスを味わえる文句なしの出来

 後は、期待通りのクライマックスとラストシーンが訪れるわけだが、ディズニー作品では欠かせない、典型的(だが憎まれないキャラクターでもある)悪役がいないように感じたこともあり、ちょっと意外な展開にも感じたし、見終わった後ではこれしかないという結末だったとも思う。冒頭で感じた圧倒的なパノラマ感が再び目の前に広がる、このカタルシスは実に気持ちがよく、何度も見たくなってしまう。

 昨年のKD-55X9200Aも音の良さでは高く評価されたモデルだが、現行のKD-55X9200Bはそのレベルを大きく超え、質の高い映像と音が一体になったときに感動を味わわせてくれた。個人的には、このX9200Bシリーズの40型サイズが欲しいと感じた。ソニーが大画面の高画質モデルはスピーカーを簡略化したように、大画面モデルならばサラウンドシステムやシアタースピーカーを組み合わせる人は多く、せっかくのスピーカーが無用になりかねない。しかし、個室やそれほど広くないスペースで使う40型ならば、シアタースピーカーなどは不要でテレビ1台で使える高品位なモデルというのもそれなりに需要があると思うのだ。

 良い映像だからこそ、良い音が不可欠な存在であるということを改めて教えてくれたKD-55X9200B。60型かそれ以上に感じる大柄なサイズは、部屋に置けないという問題も抱えるので悩ましいところだが、少なくとも現時点ではプレミアムな製品である4Kテレビなのだから、映像だけでなく音も4Kにふさわしい実力のものを商品化して欲しいと思う。本機のような優れたテレビで、「アナ雪」のような作品を家族一緒に楽しんで欲しい。

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鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40~60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。