■ 地デジチューナーが熱い?
NHKの発表によると、今年10月末でデジタル放送受信機の普及台数が6,000万台を突破したそうである。内訳を見ると、テレビが半分以上を占めているものの、意外にデジタルチューナ(レコーダ含む)が健闘している。
すでに経済的に困窮度の高い世帯に対して無償で簡易地上デジタルチューナを配布する事業もスタートし、イオンや西友でも5,000円以下のチューナが販売開始されるなど、これから年末にかけては、デジタルチューナが注目を集めそうだ。
さて、廉価チューナは本当に地デジが見られるだけだが、もうちょっと頑張って録画もできるものが出てきた。今年10月から発売開始された、日本デジタル家電の「ハイビジョンロクラクSlim・NEO」(以下ロクラクNEO)がそれである。
ロクラクシリーズをご存じない方もいらっしゃるかと思うが、'02年から大手家電メーカーとは違ったスタイルのレコーダをリリースしており、PCやITとの親和性の高さからファンも多い。また業務用機も販売しており、実際にテレビ局の中でもオンエア同録機として稼働していたりもする。
ロクラクNEOは、一見単なる地デジチューナだが、USB端子にHDDなどを接続することにより、地デジレコーダとしても使えるようになっている。最大13台接続できるのがウリだ。直販価格29,400円でレコーダに化けるというロクラクNEOを実力を、さっそくテストしてみよう。
■ はがきサイズ?
まず外形寸法だが、公式サイトでは「はがきサイズ強」と謳っているものの、どこをどういうふうにはがきと比較していいのか悩むサイズである。正面からでは小さすぎるし、側面からでは全然はがきよりもデカい。どう見ても普通の外付けHDDユニットぐらいの大きさである。
はがきサイズ(?)のボディ |
前面パネルはアクリル貼りだが、ボディは金属製のがっちりしたケースだ。印字が横向きにも付いているところから、横置きしても構わないのだろう。ゴム足が付属しており、縦置きか横置きかを決めたのち、自分で貼り付けるようになっている。
本体には電源、録画、再生のステータスLEDがあるが、スイッチ類は一切なく、電源ボタンすらない。すべてリモコンで操作する。製品には地デジ専用の青いB-CASカードが同梱されており、前面のスロットに差し込む。カードは全部入らず、少し出っ張ることになる。
背面を見てみよう。映像出力としてアナログAV端子、D端子があるが、HDMI端子も付いている。一般的な地デジチューナは、アナログ放送時代のテレビに繋いでデジタル放送を視聴するのが目的なので、HDMI端子がないものがほとんどだが、このあたりがロクラクNEOの特徴を表わしていると言えるだろう。
B-CASカードはちょっとでっぱった状態になる | HDMI端子ほか、USB端子が両タイプある |
すべての操作はリモコンで行なう |
そのほかUSBのA/B端子、ネットワーク端子がある。電源はACアダプタだ。リモコン用のIR制御端子があるが、本体のフロントパネルにも受光部があるので、通常は使う必要はない。
ではリモコンを見てみよう。地デジのみのチューナではあるが、録画機能もあるためボタン類はかなり多く、メニュー操作と動画再生などを兼ねる十字キーもある。いわゆる汎用リモコンに無理矢理機能を割り付けた感はあるが、ボタンはクリック感がしっかりしているため、使い辛くはない。
■ HDDまわりは若干複雑
結構丁寧なウィザード画面 |
まず最初に電源を入れると、初期設定のウィザードが現われる。地域設定を行なったのちチャンネルスキャンをして、チャンネル設定が完了する。チューナとして利用するなら、設定はこれだけである。
USB HDDを繋いでみよう。本機はUSB HDDなどが最大13台接続できるのがウリだが、背面にはポートが1つしかないので、USBハブ経由で接続することになる。HDDはデジタル録画のために暗号化する必要があるため、最初にHDDを接続すると、フォーマットを促す画面が表示される。
HDDを1台しか繋がない場合はフォーマットだけだが、複数台接続する場合はドライブを区別するため、名前を付けてやる必要がある。ここでは3台のHDDを繋いでみた。
HDDを接続すると、自動的にフォーマット画面が現われる | 複数のドライブは、名前を付けて管理する |
ロクラクNEOでは、標準的に使用するHDDをどれにするかを選択できる。さらに「録画ディスク設定」では、地デジEPGで提供されている13ジャンルに対して、どのHDDで録画するかを割り付けることができる。割り付けされていないジャンルの番組は、標準として割り付けたHDDに録画されるという仕組みになっている。
デフォルトのディスクを指定する | ジャンルごとに録画HDDを指定することもできる |
これにより、アニメ専用HDD、バラエティ専用HDDと言った具合に、ジャンル別にHDDを分けることができる。ただそれをやって何が嬉しいかというと、そんなに嬉しいこともあんまりないような気がする。というのも、記録したHDDを取り外して別の機器で視聴できるなら別だが、基本的には録画したロクラクNEOに接続しないかぎり、見られないからである。
まあしかし、なんらかのジャンルだけ集めていっぱいになったら、別HDDに交換するといった運用も考えられる。この機能をどんなふうに有効に使うかは、ユーザーに下駄を預けられた格好だ。
番組表は、フォントの見栄えがあまり良くない |
では番組表から見ていこう。リモコンの「番組表」ボタンを押すと、横軸にチャンネル、縦軸に時間を配した番組表が表示される。サブチャンネルが表示されないので最初からすっきりしているが、フォントが細いため、離れた位置からの視認性は低い。このあたりはいかにもLinuxで動いてます的な雰囲気である。
またこれに続くチャンネルを見る場合は、1列ずれるのではなくページ丸ごと入れ替わってしまう。こうなると1画面から押し出されてしまうチャンネル番号の大きい局が、モロに不利になってしまう。ここは改善の余地があるだろう。
チャンネルごとのリスト表示にもなる |
メインメニューの「番組表」からたどっていくと、リスト表示も可能だ。チャンネルボタンの1~3を押すと、サブチャンネルの番組リストも見ることができる。
番組視聴に関しては、今どのチャンネルが何を放送しているのかの「今」を教えてくれる機能をいくつか搭載している。「チャンネル切り替えサーチ」は、指定した秒数で自動的にチャンネルを切り替えてくれる機能である。いわゆるザッピングを自動化してくれる機能で、見たい番組が見つかった時点で機能を止めるということになる。正直こういうのは自動化する意味があるのかよくわからないのだが、まあアナログ放送のようにすぐにチャンネルが切り替わらないので、多少なりともストレスが軽減されるということだろうか。
もう一つ同じような機能で、「分割一覧サーチ」がある。これは自動的にチャンネルを切り替えながら画面全体を9分割して、番組情報とともにサムネイルを見せてくれる画面である。こちらは見たい番組を探すのに一役買うだろう。
人の代わりにザッピングしてくれる「チャンネル切り替えサーチ」 | 今の番組をサムネイルで表示する「分割一覧サーチ」 |
■ 工夫がいる自動録画と再生機能
番組表を使った録画予約画面では、「予約設定」の変更で毎週録画や番組追従、録画ディスクの指定などができる。予約が重複した場合は、先に予約した方を優先するか、あとに予約した方を優先するかを選択できる。
一応番組の自動録画機能もある。ただしキーワードを自分で入力することができないので、工夫が必要だ。日本語入力機能を搭載していないので、例えば人名でキーワード検索したい場合、まずその人が出ている番組を自力で見つけたのち番組情報を表示させ、そこから必要な文字のみを残すという方法で、検索キーワードを作ることになる。
キーワードで自動録画設定を行なうと、キーワードリストに赤いタイマーのマークが付けられる。実際に検索すると相当数の番組が引っかかるが、予約リストを見ると近接したものしか表示されないようだ。おそらく使い方としては間違っていないと思うが、何せこの部分はマニュアルにも載っていないので、やり方が正しいのかよくわからない。もう少し詳細なマニュアルが欲しいところだ。
番組情報の文字列を削除してキーワードを作る | キーワードによる自動録画設定も可能 |
録画番組の再生は、センターボタンを押して一覧表示から選択するのが一番速い。ただしここで出てくる番組は、「ディスク」の設定で選択したHDDに記録されているものだけである。つまり予約時点で別HDDに記録するよう設定していた場合は、わざわざディスクメニューでHDDを切り替えなければならない。13台繋がるからといって、すべて平行で動作するわけでもないようだ。
番組を選んでセンターボタンを押すと、各種メニューが表示される。番組の削除なども、このメニューで行なう。番組再生時は、リモコンの十字キーが再生動作をダイレクトに担当するが、「メニュー」ボタンで操作画面を出すこともできる。面白いのはスキップボタンで、何秒、あるいは何分ジャンプするかを選択することができる。15秒、30秒、1分、5分、10分…といった選択ができるので、見たいところまで一気に飛ぶには便利だ。ただCMスキップとして使うには、2分、2分半といった選択肢が欲しかったところである。
センターボタンで録画一覧を表示 | スキップ機能が強力 |
トリックプレイの一種として「スロー再生」もサポートしているが、実際に使ってみるとIフレームのみを再生して、むしろ早送りになるようである。まあ早送りなら早送りで構わないのだが、機能名と合わないのはなんとかしたほうがいいだろう。
移動やコピーも録画一覧から行なう |
また本機は、ダビング10にも対応している。とは言ってもBDなどにダビングできるのではなく、USB接続のHDD間で番組のコピー、ムーブを行なうことができる。コピーした場合は、オリジナルのHDDに記録された番組から1回カウントが減り、別HDDにコピーが一つできる。一方ムーブを選んだ場合は、オリジナルのHDDからは番組が消え、残り9回の情報を持ったまま別HDDに移動する。編集機能はまったくないが、番組をまとめて一つのストレージに保存できるという意味では、意外にムーブ機能は使える。
■ 総論
先日のMedia Centerを利用するアイ・オー「GV-MC7/VZ」もそうだが、ここに来て地デジの録画コストがぐっと下がってきているのを感じる。以前はワンセグチューナが手軽で安いということでずいぶん売れたものだが、フルセグのチューナも先日発表された「GV-MC7/HZ3」がついに1万円を切るなど、ワンセグに迫る勢いである。
一方ストレージでは、昨今は3.5インチHDDなら、速度を選ばなければ1TBが7千円前後で買えるようになっている。またHDDケースも千円台からあるようだし、いわゆる「お立ち台」系のインターフェースを使えば、2.5インチと3.5インチを差し替えることもできる。特にロクラクNEOのような独立したチューナであれば、PCの調子によって録画が失敗することもないのもメリットだ。
しかし、DVD/BDレコーダのダブル録画や自動録画機能の充実ぶりから見ると、低コストは低コストなりの機能の低さというか、プリミティブ感はある。例えば本機は、予約録画が始まると、番組表の表示なども含め殆どの機能が使えなくなる。これが唯一の地デジ視聴手段だと、不便なシーンも出てくるだろう。ただHDDはすでにあるものとしてその価格を無視すれば、現時点では実売ベースでもおそらく最安のレコーダである。またストレージに拡張性もあるという点も、魅力である。
少なくともテレビ録画に関して、PC・IT系の技術を使った低価格の選択肢がでてきたという点では、明るい要素だといえる。