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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

 

第517回:Twitterユーザー必須!? Eye-Fi Mobile X2

〜 写真をスマートフォンにダイレクト無線転送 〜



■ 一石二鳥を狙いたい

 簡単に自分の持っている情報を共有できるツールとして、Twitterを便利に使っている人も多いだろう。プライベートな呟きも主流だが、場所情報、イベント情報、見つけたものなど、写真付き、ジオタグ付きで投稿すれば、140文字以上の情報が発信できる。

 筆者も展示会などの取材では、もっと写真付きツイートを沢山投稿したいと思ってはいるのだが、いかんせんスキームが完成されていないところがある。簡単に写真添付で投稿するなら、写真もスマートフォンで撮影するのが一番手っ取り早いのだが、そうなると記事で使うためにデジカメで写真を撮ったあとに、もう一度スマートフォンを取り出して撮影しないといけなくなる。そこまでしてなー、とついつい面倒になってしまうわけだ。

 本来ならば、記事用に撮ったデジカメ写真をツイートできれば一番いいのだが、今度はカメラからスマートフォンに写真を転送するのがまた一苦労。ケーブルを繋いだりメモリーカードを差し替えたり、はたまたいったんPCに取り込んだり、とそこまでするならPCで投稿した方が早い。

 現場でスマートに写真付きで投稿、しかも写真は本番のカメラの絵が使えれば言うことないわけで、そういう願いを実現する機能が、無線LAN内蔵SDカード「Eye-Fi Mobile X2」の登場に合わせて実現した、「ダイレクトモード」である。

 これまでEye-Fiシリーズは、タイプによってできることに差はあるものの、基本的には無線LANのアクセスポイント経由で写真をPCに転送するというものだった。しかし今回のダイレクトモードは、Eye-Fiカード自体がアクセスポイントとなり、スマートフォンがそこから写真を吸い出すというアクションになる。

 ネットワーク機器としての動作は、ぶら下がる側からぶら下げる側へと逆になるわけだが、ユーザーから見ればこれまでパソコンに向かってアップしていたのを、スマートフォンに向かってアップできる、というだけのことに見える。モバイル環境でこれができるのは大きい。

 今回はこのダイレクトモードについていろいろ試してみよう。



■ ラインナップを一新

 今回Eye-Fi Mobile X2というタイプが新発売になったわけだが、それに合わせて容量、直販価格なども改定されているので、ちょっと整理しておこう。

タイプ 容量 旧直販価格 新直販価格 ダイレクトモード
Eye-Fi Explore X2 8GB 9,980円 生産終了
Eye-Fi Connect X2 4GB 6,980円 5,980円
Eye-Fi Mobile X2 8GB - 7,980円
Eye-Fi Pro X2 8GB 15,800円 9,980円

 

容量は同じで機能違いのPro X2(左)とMobile X2

 【お詫びと訂正/2011年5月25日】
 記事初出時に、「Explore X2はダイレクトモードに対応しない」と記載しておりましたが、ファームウェアのアップデートで対応可能でした。お詫びして訂正させていただきます。

 旧来のConnect X2とPro X2は価格を下げて継続販売で、ダイレクトモードはファームウェアのアップデートにより対応する。従って現ユーザーもダイレクトモードが利用できるわけだ。また、Explore X2も同じくファームアップでダイレクトモードに対応できるが、製品自体が生産終了となる。そして今回発売されたMobile X2は、事実上Connect X2が8GBになったというぐらいのことで、機能的には同じものである。昔の価格からすれば、プラス1,000円で容量が倍になった、という見方もできる。

 ではMobile X2 とPro X2はなにが違うかというと、Pro X2では無線LANのポジショニングシステム(WPS)によるジオタグが付けられること、RAWデータが転送できること、の2点だ。2,000円の差でこれが必要かどうか、というところが選択の分かれ目であるが、Pro X2は旧価格から約4割ぐらいの値下げなので、お買い得感がある。

 【お詫びと訂正/2011年5月25日】
 記事初出時に、「GPS受信によるジオタグに対応」および「GPS受信ユニットを内蔵」と記載しておりましたが「無線LANのポジショニングシステム(WPS)」の誤りでした。お詫びして訂正させていただきます。


ジオタグとRAWデータに対応するPro X2
全製品にカードリーダーも付属


■ 合理的な設定方法

 今回ダイレクトモードのターゲットとしては、iPadとiPhone 4を使用した。ダイレクトモード用のAppは無料で配布されている。以前は独自の方法でiPhoneへの転送を実現していた有料のAppもあったそうだが、本家が対応したことで必要なくなったことになる。

 ではMobile X2を使ったダイレクトモードの設定から見てみよう。いきなり最初からダイレクトモードのみでの使用は想定されておらず、最初の設定ではWindows PCなりMacなりが必要になる。製品付属のカードリーダーを使ってUSB接続すると、設定用のEye-Fi Centerのインストールを促される。

 ウイルス対策ソフトウェアによってはインストーラが立ち上がらないので、その場合は手動でインストールする必要がある。なおUSBハブや市販のSDカードリーダーではうまく認識しないこともあるので、最初は付属のカードリーダーを使ってPC直挿しが無難だ。

 管理ソフトは以前はWEBアプリだったが、X2シリーズ以降はAdobe Airベースの専用プログラムになったようである。

 設定のポイントは、ネットワーク設定だ。ここに家庭内LAN、公衆無線LANへの接続設定と並んで、ダイレクトモードの設定がある。「接続開始までの待機時間」は、カメラの電源を入れたあと、iPhoneなどからEye-Fiに接続するまで、ダイレクトモードとして待機する時間だ。この時間内にiPhoneなどが接続してこないと、ダイレクトモードが解除されて通常のEye-Fiとしての動作、つまりアクセスポイントを探しに行く動作に切り替わる。


単体アプリとなった管理ソフトEye-Fi Center ネットワーク設定でダイレクトモードを有効に

 なおEye-Fiがネットワークに接続しようとする順序は、アドホック→Wi-Fiルーター→公衆無線LAN→ダイレクトモードの順番だそうである。したがってカメラの電源投入直後に設定した時間だけダイレクトモードで待機するが、それ以降はこれらのアクセスポイントを順番に探しに行くということのようだ。

 受信側の設定として、iPadの例で見てみよう。Appを起動してEye-Fiアカウントでログインしたのち、設定から「カードのペアリング」を選ぶと、アカウントに登録したEye-Fiカード一覧が現われる。ここでペアリングしたいカードを選ぶと、ネットワークIDとパスワードが表示される。

 「パスワードをクリップボードにコピー」という便利ボタンがあるのでこれを活用して、iPadの「設定」にあるネットワークのWi-Fi設定にこれを移すわけだ。Eye-Fiがダイレクトモードになっている時にiPadのWi-Fi設定でEye-Fiに接続すると、ダイレクトモードによる転送が始まる。


登録したカードの一覧が自動で表示される パスワードは入力する手間がない


■ 実際の運用は…

 さて、ダイレクトモードの設定ができたところで、さっそくこれが実際にどのように動作するのかを実験してみたい。用意したカメラは若干古いが、パナソニックのDMC-GF1である。通常のJPEG保存のほかRAWでも保存でき、AVCHD Liteによる動画撮影も可能だ。

PCへの転送にもいくつかのオプションがある

 まず通常のJPEGは、フル解像度である4,000×3,000ピクセルの低圧縮で、1枚の転送にかかる時間は、ダイレクトモードで10秒程度。ただ毎回必ずその速度というわけでもなく、コンディションが良ければ数秒で終わるときもあれば、場合によっては1分以上かかる時もあるといった具合で、その時々の接続状況によって差がある。したがって1枚撮ってはTwitterに書き込む、といった用途にはあまり向いていない。まとめて撮影し、しばらくほっとくと転送されているので書き込み、といった程度に考えておいた方が良さそうだ。

 iPadに転送された写真は、次にiPadがホームネットワークなどに接続した際に、PCに転送される。3G回線付きのiPadなら、そちらを経由して転送されることもあるだろう。そういう動きを好まない人は、Wi-Fiに接続したときのみ転送するように設定できる。

うまくダイレクトモードに接続できればいいが…

 実際に使ってみてまず一番の問題だったのが、カメラの電源の入り切りでダイレクトモードが入ったり切れたりするので、iPadとEye-Fiの間で繋がり待ちという状況が発生することだ。またカメラの電源がOFFの時にiPadが見知ったWi-Fiを見つけると、そっちに接続しに行ってしまうので、次にカメラの電源を入れたときにEye-Fiのダイレクトモードに接続しに行かないという問題が発生する。Wi-Fiでどこにも繋がりそうにない場所ならいいが、繁華街では公衆無線LANのスポットが結構あるので、ダイレクトモードに再接続しないこともあるだろう。

 そう考えると、カメラから転送してTwitterに書き込むというワークフローも、実際にはかなり作業を分けないと難しいことになる。なにせダイレクトモードで繋がっているときは当然インターネットには接続していないわけだから、ネットにアクセスしたいときはWi-Fi設定で繋ぎ直さなければならない。

 それは3Gモデルとて同じ事で、3Gでネットに繋ぐためには、いったんWi-Fi接続をOFFにしなければならない。うまいタイミングでダイレクトモードが勝手に切れていればいいが、そう小まめにWi-Fiを手動で切り替えるという必要性が今までなかっただけに、そういう作業は面倒である。現実的には、撮った写真をiPadで確認&保存といった程度の用途で、写真を撮った後から逐一何かするという事は想定されていないのかもしれない。



■ Eye-Fi Pro X2のメリットは?

 ここで気になるのが、上位モデルのEye-Fi Pro X2を使うメリットがあるか、ということである。違いはジオタグとRAWデータが扱えるかどうかだ。

 ジオタグはもちろんユーザーの用途次第だが、GPSが付いているカメラがあまり多くない現状では、カメラの拡張機能としてPro X2を選択するという考え方もあるだろう。

 しかし実はEye-Fi Mobile X2もハードウェア的にはWPSに対応しており、あとからアップグレードでジオタグ機能を付けることができる。アップグレード価格は2,980円。最初はいらないと思っても、あとから欲しくなった時に対応できるわけだ。ただ最初からEye-Fi Pro X2を買った方が、あとからアップグレードするより980円お得ではある。

 もう一つの機能差、RAW対応は、あとから現像処理したい人には必須機能なので、そこが選択の分かれ目になるだろう。ちなみにiPadは以前から販売されている「iPad Camera Connection Kit」でもRAWの転送に対応しており、ブラウジングもできる。有料だが、RAWデータを編集できるAppもあるようだ。

 ただファイルサイズの違いから、転送にはJPEGの10倍以上の時間と容量が必要になるので、大量の撮影には向かないだろう。少なくとも転送だけなら、iPad Camera Connection Kitを使った方が全然速い。もう一つ付け加えるなら、プロ仕様の表現手法であるRAW現像を行なうのに、iPadのディスプレイを信用して大丈夫かという問題もある。そこは考えどころだろう。

 最後に動画転送に関してだが、以前からEye-Fi X2シリーズはAVCHDの動画転送にも対応している。従ってビデオカメラからの転送も可能だ。iPad Camera Connection KitはAVCHD転送に非対応なので、ここにも一つのアドバンテージである。

 キヤノンのHF-G10を例にすると、2つのSDカードのうち、BスロットがEye-Fiに対応している。Aスロットに差し込むとアラートが出るので、ちゃんとEye-Fiカードであることを認識しているようだ。

 静止画のカメラと違うのは、ダイレクトモードも含め映像の転送は、再生モードに切り替える必要があることだ。設定でEye-Fi通信をオートにしておけば、再生モードになった時に自動接続し、転送が終わると接続が切れるようになっている。おそらく省電力化のために、常時接続しないようにしているのだろう。

スロットに差し込むと、アラートが出る Eye-Fiで転送中の画面。転送が終了するとEye-Fiマークが消える

 ただ、AVCHDをiPadに転送してどうすんだ、という話はある。動画ファイルは巨大なので、転送はRAWデータの比ではないほどの時間がかかる上に、ストレージ容量も大量に消費する。さらにiPadではAVCHD Liteも含めFullのAVCHDを直接再生したり編集したりする手段がないので、本当に「そっちに移すだけ」である。

 三洋Xactiや、ニコン「COOLPIX P500」、キヤノン「IXY 31S」、ビクター「GC-PX1」などのiFrame記録はApple製品と互換性があるだろうが、それ以外の点では、ビデオカメラでEye-Fiを使う意味はあまりなさそうだ。



■ 総論

 Eye-Fiが築いてきたWi-Fiによる画像転送は、対応機器の豊富さからだいぶスタンダードなものになってきた。カメラメーカー各社もEye-Fi対応を正式に謳うようになってきており、相性問題で使えないというケースは少ないだろう。

 しかし、最近ではあちこちにWi-Fiアクセスポイントが増えてしまい、いったんコンフリクトが起こってしまうと、目に見えないだけに何が原因で繋がらないのか、あるいはなぜ転送できないのかといったことがわかりにくい。

 例えば昨年のInterBEEの会場でアクセスポイントを探したところ、なんとあちこちのブースからの電波で20個ぐらい見つかるという始末だ。そこでダイレクトモードを使っても、空きチャンネルなどどこにもないという可能性はある。

 ダイレクトモードはワイヤレスでモバイル機器に映像を転送できる便利なソリューションだが、実際に上手く動作するかどうかはかなり使用する環境に左右されるのではないかと思う。今すぐ確実に転送したいという急を要する用途ではなく、気がついたらいつの間にか転送されていた、という程度に捉えるべきものなのであろう。

 

(2011年 5月 25日)

= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]