■マイナーチェンジ以上の充実
昨年10月にRD-BZ800/700を発売し、Blu-ray搭載RDとしてBDレコーダ市場に本格参入を果たした東芝だが、今年早くも後継機をリリースしてきた。最近は各メーカーともレコーダは年1回、だいたい秋口発売をめどに新商品を投入してくるが、東芝は前モデルから約半年で次期モデルを投入してきたことになる。
前作は従来のRDとほぼ同じ機能でBD化というところがメインだったが、他社の水準からはどうしても半年~1年遅れの機能制限があった。2番組同時圧縮録画できない、録画中は市販のBlu-rayタイトル(BDMV形式)の再生ができない、高速ダビング中に録画番組が再生できない、DR2(チューナ2)の録画で「マジックチャプター」が使えない、といったことだ。
しかし今回登場したRD-BZ810/710シリーズは、これらの動作制限を撤廃し、他社のレコーダとほぼ同じ事ができるようになった。さらに従来にはなかった新機能も搭載している。前モデルをベースにしているとは言え、半年でここまで来るのは開発ペースとしてはかなり早いほうだろう。
上位モデルのBZ810は1TBのHDDを搭載し、市場想定価格は11万5千円前後。すでに販売が開始されており、ネットでは7万円中盤あたりまで下がってきているようだ。
エコポイント終了の影響もあり、今後AV機器は厳しくなると言われているが、アナログ停波を目前に控えて次はレコーダ買い換えを考えている人も多いだろう。マニア御用達と言われたRDが、いよいよ本格始動する。早速試してみよう。
■デザインはまったく一緒
まず外観だが、前面パネルが三角に飛び出しているところは、前作から変わっていない。天板の大きなBlu-rayロゴも同じで、外寸も同じなので、デザインはリニューアルなしということでいいだろう。
基本的なデザインは同じ | 三角に飛び出したフロントパネルが特徴 | 天板ロゴも同じ |
フロントパネルのアナログAV入力端子が省略されている |
前面USB端子からAVCHDカメラの取り込みにも対応 |
違いと言えば、前作は前面パネル内にアナログAV入力端子が付いていたが、今回は省かれているところぐらいである。その部分が不自然に凹んでいるのが、デザイン的にはややマイナスだ。
前面のUSB端子は、以前からUSBキーボードなどに対応してきたが、今回はAVCHDのビデオカメラからの映像取り込みに対応した。これまでビデオカメラも作っているソニーやパナソニックのレコーダは、自社製品のカメラのバックアップ先というストーリーでカメラ取り込みをサポートしてきた。
しかし東芝も同様のソリューションに乗り出してきたわけだ。東芝がAVCHDカメラ市場に参入というのは考えにくいが、製品情報サイトではソニーとパナソニック以外のメーカーで動作確認しているあたりが、なかなか興味深い。これもあとで試してみよう。
BDドライブも基本的に変わらず、AVCRECの録再に対応。過去東芝が推進してきたHD Recも再生のみサポートしている。内蔵HDDは1TBで、背面のUSB端子により外付けHDDが増設できる。以前は最大2TBのHDDまで対応していたが、今回は4TBまで対応している。
背面も基本的には変わらず、アナログチューナなしでデジタル放送のみのレコーダだ。前面のアナログ入力が一つ減ったため、アナログAV入力は1系統。出力はアナログAV1系統のほか、D4端子、HDMI端子がある。
リモコンは前回同様メインリモコンと、シンプルリモコンが付いてくる。当然シンプルリモコンではボタン数が少ないために操作体系が異なるわけだが、番組予約は録りたい番組を選んで「録画」ボタンを押すだけという「番組表一発予約」機能を搭載するなど、簡易化を図っている。
背面パネルは前回と変わらず | 今回も2つのリモコンが付属 |
■多彩なダビング機能
まずは番組表から見ていこう。従来どおり、縦・横表示切り替え、最大表示数などの変更により、見え方をカスタマイズすることができる。
多くのレコーダでは、地上波とBSなど、別の放送波の番組は、放送波の切り替えを行なうようになっているが、本機の場合は一つの番組表の中で全部横に繋がっている。これにより予約の重複なども、視覚的に把握しやすくなった。
番組の予約に関しては従来どおりで、重複予約の時にもアラートが出る。ただし今回は2系統ともAVC録画が可能なので、R2側の予約画面もR1とまったく同一である。さらにAVC記録だけでなく、自動でチャプタを付ける「マジックチャプター」も両系統に搭載されているので、機能的にも全く同じになった。
地上波もBSも同じ番組表で表示される | 予約重複時のアラートも以前と同じ |
そうなると、重複予約の時にいちいちアラートが出る意味があるのか、というところに疑問を感じないでもない。機能差があれば「それでいいか?」とユーザーに問い合わせる意味があるが、同じならばいらないのではないか。現に録画予約可能であれば、アラートを出さないレコーダもある。
録画モードも、今回長時間モードのビットレートが見直され、より長時間の録画に対応している。RDの場合は、放送波をそのまま録るDRモード、BD向けに圧縮するAVCモード、DVD向けに圧縮するVRモードの3種類がある。
注目のAVCモードでは、AF、AN、AEといったプリセットの他に、好きなビットレートで自由に録画できる。可変幅としては、最高17Mbps、最低1.4Mbpsで、1.6Mbps以下はSD画質にダウンコンバートされる。また録画時に設定できるのは最低2.4Mbpsまでで、それ以下のレートは録画後にトランスコード(間引き圧縮)する場合のみ使用できる。
記録モード | HDD録画時間(1TB) | BD-R |
DR(地上波) | 約130時間 | 約3時間 |
DR(BS) | 約92時間 | 約2時間 |
17Mbps | 約130時間 | 約3時間 |
AF(12Mbps) | 約185時間 | 約4時間 |
AN(8Mbps) | 約277時間 | 約6時間 |
AE(2Mbps) | 約924時間 | 約22時間 |
1.4Mbps | 約1,584時間 | 約38時間 |
ただし録画時にAVC記録したものは、AVCの別のビットレートにトランスコードすることはできず、VRフォーマットへ圧縮するのみとなる。異なるレートでAVCの高圧縮したい場合は、DRモードで録画しておく必要がある。
DRモードからのトランスコードは、3.4Mbps以上のビットレートでは2~3倍、2~3.4Mbpsでは等倍、2Mbps以下では0.8~等倍でのダビングになるという。
また本機では、Blu-ray(BD-R/RE)からの書き戻しにも対応した。この機能は昨年10月発売のパナソニックブルーレイDIGAが初めて実装した機能だが、ディスクの整理機能としてさっそく東芝も対応してきた。
今回は2番組同時AVC録画だけでなく、動作制限が大幅に撤廃されたのもポイントだ。詳しくはここにまとまっているが、2番組録画中にBDビデオの再生に対応した点が、最も大きいところである。録画中の高速ダビングも可能だが、レート変換ダビングはできない。
【お詫びと訂正/2011年6月1日】
記事初出し時、前モデル(RD-BZ800)では2番組録画中の録画番組再生ができなかったと記載しておりましたが、可能でした。R1とR2で同時録画中に、内蔵HDDからのディスクダビングはできません。また、後述している登録できるUSB HDDの数も、前モデルから8台登録可能でした。お詫びして訂正させていただきます。
■拡張機能も充実
外付けHDDでの拡張は前モデルからすでに対応していたが、まだ試していなかった。今回は余ったHDDがあるので、それを繋いでみよう。メーカーとして動作確認モデルは外部電源付きの3.5インチモデルだが、今回は簡易的にノートPCに入っていた2.5インチHDDを外付けケースに入れたものを繋いでテストしている。バスパワーだけでは電力が足りないので、別途電源を繋いでいる。
USB HDDは8台まで登録可能に |
USB HDDは、BDドライブと切り替えになるため、まずはクイックメニューからUSB HDDへ切り替えを行なう。BZ-810本体を再起動するとHDDを認識するので、設定メニューでHDDの登録とフォーマットを行なう。
HDDの登録は8台まで可能。だが、同時には1台しか認識しないので、8台を繋ぎ替えることになるわけだ。
BDドライブの代わりにUSB HDDを使うというイメージ |
登録されると、録画予約画面の記録先ドライブに、内蔵のほかUSBが選択できるようになる。内蔵HDDからUSB HDDへのコピーやムーブなどは、BD-REを使う場合と条件は同じである。ただしUSBとBDが切り替えになっているため、USB HDDからBDへのコピーやムーブは、いったん本体のHDDを経由しなければならない。またネットdeダビングも内蔵HDDからしかできないので、映像をいろいろやりくりして整理したい人は注意が必要だ。
再生機能としては、自動的にCMスキップされたプレイリストを作成して再生する、「おまかせプレイ」を搭載している。昨年11月には、民放連会長がテレビやレコーダのCMを自動的に飛ばして再生する機能を問題視したことを受けて、東芝も「おまかせプレイ」機能を見直すのではないかと言われてきた。
ボタン一つでプレイリストを自動作成 |
実際に録画した番組で、「おまかせプレイ」試してみた。操作は簡単で、「見るナビ」画面で再生したい番組を選び、リモコンの「おまかせ」ボタンを押すだけである。すると自動的に番組本編だけのプレイリストを作成し、自動的に再生に移る。
実際に録画された番組のチャプター状況とプレイリストの中身を比べてみると、CMだと思われる部分が省かれて本編だけになっているのがわかる。製品サイトの説明を見ても、CMが飛ばせるとは一言も書いておらず、「本編だけを楽しめます。」とあるあたり、民放連への力強くも確実な配慮を感じる。
オリジナルのチャプター状況 | 「おまかせプレイ」で作成されたプレイリスト |
このプレイリストはテンポラリ的に発生するわけではなく、その後も残るので、これを利用してBlu-rayなどへのダビング用リストとして活用することもできる。従来の偶数・奇数選択でプレイリストを作るよりも確実で簡単だ。
AVCHDカメラを接続すると起動する「取込ナビ」 |
最後に新機能である、AVCHDカメラからの取り込みをテストしてみよう。カメラを再生モードにして前面のUSBポートに接続すると、自動的に「取込ナビ」が起動する。カメラ内の動画は、日にちごとに一つのタイトルとしてまとめられるようだ。ここではサムネイルが一つしか出ていないが、複数カットを撮影している。
操作としては番組のダビングと同じ方法で、タイトルをリストに登録して転送するというスタイルだ。転送後はAVC記録の番組と同じ扱いで、各カットは内部的にはチャプター扱いになっている。
■総論
元々RDはDVDレコーダ時代から「何でもありマシン」のような位置づけで他社と一線を画してきた。BD市場では出遅れたが、ここに来てほぼ他社と肩を並べたことになる。すでにパナソニックはトリプルチューナーまで行っちゃってるが、あれはまあ特殊として、他社と同じに並ぶためにはAVCHDカメラの対応も必要だったのだろう。
独自の強みとして、ネットワークあるいはHDMI経由のコントロールやダビング機能、USB HDDによる拡張機能などを謳っている。そのほかスマートフォンなどからRDをコントロールする「Appsコネクト」に対応しており、タグリスト作成やタッチリモコン機能を備えた「RZタグラー」や、タグリストシェア、リモコン機能を持つ「RZコマンダー」が用意されている。詳細はレビュー記事を参照して欲しい。
今後は「RZタグラー」のPC版アプリや、スマートフォン用新アプリ「RZ見るナビ」、「RZ現在番組」、「RZアートリモコン」などが追加される予定だが、執筆時点の5月29日ではまだAppが公開されておらず、こちらは試すことができなかった。
この4月に発表された組織変更では、テレビ/レコーダなどの映像事業とパソコン事業を統合するという。今回のRDにはまだこのシナジー効果は感じられないが、今後はネットワーク機器としての性格を強めていくことになるだろう。
RDシリーズそのものが変わっていくのか、それとも全然別の製品群が登場するのかはまだわからないが、もしかしたら従来形のRDとして、一つの完成形を見たのが本機なのかもしれない。