小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第698回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

40型4K TVをPCディスプレイとして導入したら便利! Mac mini+VIERA AX700

4K TVと4K PCディスプレイ

 40型以上の大画面という文脈で語るならば、もはやテレビの4K化は必然のように思える。昨年ぐらいまで、量販店のテレビ売り場を覗くとメインは4Kモデルで、HDモデルはもはや壁際に追いやられていた。だが今年になると、その壁際でさえ4Kの小型モデルが占領しており、HDモデルはさらに端の方に追いやられているのが現状だ。

筆者の現在の環境

 価格帯としては、10万円台前半〜60万円台ぐらいまでまんべんなく分布しており、中心は46型〜60型である。そこから80型台になると、価格も突然100万円越えになる。

シャープのPN-K321

 その一方で、PCディスプレイの4K化も進行している。おそらく最初の4Kモニタは、日本国内で販売されたものに限ればシャープの「PN-K321」になるだろう。IGZOパネルとしては当時最大の32型で、2013年2月のことだった。

 それから半年〜1年の内に、かなりの数の4Kモニタが出揃った。DELLやLenovo、ASUSといったPCメーカーから低価格の4Kモニタが登場している。もちろん、EIZOやiiyama(マウスコンピューター)といった老舗ディスプレイメーカーも参入している。

 サイズという点では、28型前後か、もしくは32型といったところだ。Philipsの「BDM4065UC/11」というモデルのみ40型で、突出している。価格帯としては、5万円〜10万円内という低価格ゾーンと、20万円超えのハイエンドモデルに二分化されている印象だ。

 今回は筆者の体験談も交えて、コンピュータと4Kディスプレイのマッチングについて、考察してみたい。

4Kディスプレイにまつわる紆余曲折

 筆者は自宅の執筆環境として、3台のディスプレイを繋いだデスクトップ型PCを使っていた。サイズは24型、19型、17型と、バラバラである。ディスプレイ全体としては、自分を囲むようにずらっと横に長い配列なのだが、執筆時には沢山の資料をデスクトップに広げる必要があるため、この配置が使いやすいのである。

 ただ難点は“色が揃わないこと”だ。メーカーも全部違うし、そもそもバックライトが冷陰極管(CCFL)とLEDが混在してしまっているので、どんなに合わせ込んでも限界がある。もちろんディスプレイの製造年も大きく違うので、退色も当然ある。いつかどこかの時点で揃えないといけないとは思いつつも、ズルズルと3年ぐらい来てしまった。

 そこに一つの光明として、PC向け4Kディスプレイが登場したわけだ。最初からわりとリーズナブルな価格であったため、大型の4Kディスプレイ1台にまとめてしまおうかと、昨年後半から色々調べたり実機を見に行ったりするようになった。

 ある家電量販店に4Kディスプレイを見に行ったが、テレビコーナーとは違い、あまり積極的に4Kディスプレイを展示していなかった。27型と32型が1台ずつあるのみである。なぜだろうと店員さんに尋ねてみたところ、Windowsで4Kディスプレイを使用すると、文字やアイコンが小さくなりすぎて使いづらいため、あまり積極的に勧めていないということであった。

 販売店としては、グラフィックスの性能として全てのPCで4K解像度が出力できるわけでもないため、表示できなければ返品されるといったリスクもある。“しばらく様子見”というのは、やむを得ない話である。実際に27型の4Kディスプレイに繋がっているWindowsマシンを触らせてもらったが、確かにこの細かさでは普通の作業がしんどい。32型になったところでそれほど印象は変わらず、どうもこの線はないんじゃないか、という事になった。

 どのみち、今使っているマシンではグラフィックスカードが4Kに対応しておらず、さらにはマザーボードのグラフィックスカードスロットの規格も古いため、グラフィックスカードだけ入れ替えるわけにもいかない。やるならマシンごと買い換えになる。この時点で、計画は行き詰まった。

 そんな折に登場したのが、先週レビューしたばかりの「iMac Retina 5Kディスプレイモデル」だった。サイズは27型にもかかわらず、アイコンやメニューなどは一般的なDPIのディスプレイと変わりない。YosemiteよりOSが正式に4K対応したということで、Windowsでの「メニューちっちゃい問題」がMac OSなら解決することがわかった。

iMac Retina 5Kディスプレイモデル

 ただ、作業面積として27型は、それほど効率的とは言えない。これでは解像度が上がるだけで、3モニター時代から面積は大幅に減少する事になる。5K iMacにさらにディスプレイを追加するという考え方もあるが、色が揃わないという問題が解決できない。やはり1モニターで、サイズ的には40型ぐらいないと、現状の作業エリアをカバーできないのではないかという結論に至った。

方向性は見えてきた

 Mac OSで4K/40型という方向性は見えてきた。そこで浮上してくるのが、Philipsの4K/40型ディスプレイ「BDM4065UC/11」である。入力端子としてはDisplayPort、Mini DisplayPort、HDMI、D-Subを備えており、ある意味何が来ても大丈夫な作りではある。MacのThunderbolt 2端子は、Mini DisplayPort 1.2としても機能するため、Thunderboltケーブルがあれば接続できるはずだ。

Philipsの4K/40型ディスプレイ「BDM4065UC/11」

 ただここで問題が出てきた。「BDM4065UC/11」は、DisplayPortで接続すれば4K/60p表示が可能だが、HDMI端子の方が1.4のため、4K/60pの表示ができない。せっかく4Kディスプレイを買うなら、本誌でレビューする4K/60pカメラの映像確認用としても使いたいところだ。価格的には8万円台と納得できるところだったので、気持ち的にはかなり買う気だったのだが、4Kカメラはゆくゆく60pになることはわかっているので、断念した。

 そこで浮上してきたのが、“いっそのこと4KテレビをPCディスプレイとして使ったらどうか”というアイデアだった。4Kテレビであれば、現行モデルであればHDMI 2.0対応は標準である。そこで昨年末時点でもっとも低価格な4Kテレビを探したところ、パナソニックのVIERA「TH-40AX700」が浮上した。40型の4Kテレビで、HDMI 2.0入力が3系統、D4端子、アナログコンポジット入力がある。当時の価格は11万3,000円。「BDM4065UC/11」より2〜3万円高いという事になるが、4Kテレビだと思えば値頃感は高い。

VIERA「TH-40AX700」

 一方で4K出力が可能なMacとしては、Mac Proは当然ではあるが、原稿執筆用のマシンとしてはいささかオーバースペックである。ノート型はすでにMacBook Air 11を所有しており、そもそも持ち歩きを前提とはしていないので、MacBook Proという線もない。

 そこで5K iMacと同時に発表された、Mac mini(2014)を検討してみることにした。およそ2年ぶりに投入された新型であるが、発表当時は大変に評判が悪かった。なぜなら、2012年モデルに比べてCPUの世代は上がったものの、4コアが選択できなくなり、2コアしかなくなった事で、マルチコアパフォーマンスがダウンしているからだ。さらにメモリが直付けで、ユーザーが自分で増設できなくなった。

 しかし筆者は別のところに注目していた。まずThunderboltが2になった点、そして内蔵グラフィックスが「Intel HD Graphics」から「Intel Iris Graphics」にアップしている点だ。Iris Graphicsは、Haswell世代から大幅にパフォーマンスがアップしたGPU性能をブランディングすべく付けられた名称で、4K解像度に対応している。

 問題は、TH-40AX700にはDisplayPortがないため、Macとの接続もHDMI経由になることだ。Appleの場合、本体内蔵のHDMIはあまり力を入れておらず、2.0ではなく1.4である。あのMac Proでさえ1.4だ。Mac mini(2014)内蔵HDMIポートも、当然の事ながら1.4である。つまり4K解像度は出せても、フレームレートは30p止まりということである。現在PCとディスプレイの接続では60pか59.94Pでの接続が主流で、30pで接続する例はほとんどない。

 Mini DisplayPortとHDMIの変換コネクタも、ごく一部の製品で4K/30pに対応しているのみで、「先週もお伝えした」通り4K/60pのアダプタは、先日のCESでようやく製品がお披露目されたぐらいのタイミングである。まだすぐには入手できないだろう。

 30p接続でコンピュータのディスプレイ表示が使えるのか不安はあったが、いざとなれば別々のものとして使えばいいやと腹をくくり、両方を発注した。

すばらしき4Kの世界

 まず先にVIERA「TH-40AX700」(以下40AX700)が届いたのだが、驚いたのはその軽さである。重量わずか11kgしかない。11kgは十分重いだろうと思われるかもしれないが、40型というサイズ感を考えると、かなり軽く感じる。7年前に購入した東芝REGZA「37Z3500」が37型で23kgあったことを考えれば、片手で持てる重量である。

 筆者の仕事机は120cm幅のホームエレクター(スチールラック)で組んであるので、高さの調整は自由だ。早速既存のディスプレイをどかして設置してみると、丁度いい感じになった。

到着した40AX700。狭額縁の軽量テレビだ
横はシルバー、縦は黒の額縁で、横方向の区切り感が少ない
HDMIは3系統
HDMIケーブルを挿しただけで、あっさり4Kディスプレイとして認識

 一方Mac miniのほうは、2.6GHzデュアルコアIntel Core i5の、いわゆる真ん中モデル(74,800円)を注文した。自分で増設できないということだったので、メモリのみ16GBに変更した(+19,600円)。これのHDMI出力と40AX700を繋いでみたところ、問題なく4K出力でデスクトップ画面が表示された。ほっと一安心である。実は「表示されるはず」と勝手に踏んでいただけで、実際に4Kで出力できるのかどうか、ネットを調べてもこの組み合わせで“できた”という情報が無かったので、わからなかったのだ。

現在の執筆環境。テレビの下にMac miniを置いただけの、シンプルなスタイル

 なおThunderbolt 2端子経由の接続では、手持ちのHDMIの変換アダプタでは4K表示ができなかった。このアダプタは量販店で購入した廉価のものだが、先週5K iMacでのThunderbolt 2端子からの変換で、4K/30p出力はできることを確認している。そのうち4K/60p出力可能なアダプタが出た時点で、改めて出力テストしてみるつもりだが、Mac miniのThunderbolt 2端子からは、4K出力が出せない可能性もある。

Thunderbolt 2からの変換では、4K出力できず

 現在はHDMI端子接続で4K/40型のディスプレイ環境を堪能しているが、相当にいろんな資料を展開しても余りある広さだ。さらにMacOSは仮想ディスプレイ(複数のデスクトップ画面に切り換えられる)機能も備えているので、1面に入りきれないものはセカンダリのデスクトップへ移している。

十分な広さの作業環境

 30pというフレームレートでコンピュータ画面を操作する事に関しては、まったく問題ないと言っていい。そもそもコンピュータ画面などは、動画でも再生しない限りほとんど止まってるも同然なので、特にフレームレートは問題にならない。マウスカーソルの動きやテキストスクロールも、30pだから支障があるというわけでもない。まったく普通に操作可能だ。

 広いデスクトップの恩恵は、動画編集や写真のレタッチなど、画面とツールが沢山表示される作業に効果を発揮する。ざっくり言うなら、従来解像度の20型モニタを4枚、田の字型に並べたのと同じなわけである。しかもつなぎ目がない。この4倍解像度+面積4倍、これが高効率の秘密だ。

 だが恩恵は、グラフィックスツールだけではなかった。書籍や雑誌の著者校正作業では、PDF化された紙面にAcrobatで注釈を入れていく。A4サイズの紙面を見開き画面を開いて、横にツールを表示させてもまだ余りある広さとなるのだ。紙面全体を一度に見渡せるし、小さい脚注なども拡大表示せず綺麗に見える。これまで印刷物のPDFによる校正は、狭い窓から世界を覗くような狭苦しさがあり、それを嫌ってわざわざプリントアウトする人も少なくないが、4K/40型ディスプレイは、その問題も解決する。

 もちろん、Philipsの40型を諦めてまでHDMI 2.0にこだわった甲斐があって、4Kカムコーダの画質評価にも十分威力を発揮する。そもそも現状では、フル4K解像度の動画を気軽に楽しめるのは、自分で撮影した映像くらいで、そこで4K動画対応のカメラの出番なわけだが、表示結果は十分満足いくものだった。

 これまでHDカメラでは、大画面で表示させるといまひとつドットが粗い印象は避けられなかったが、その感じが全くない。特に4K/60pのパナソニック「HC-X1000」で撮影したカットのリアリティは、動きの点でも解像感の点でも素晴らしいものがあった。やはり4Kの動画が撮れるカメラを買ったら、小さくてもいいから4Kテレビは欲しいところである。

 ただ日常的にディスプレイを見ていると、不満も出てくる。まず、四隅が暗く見えるのだ。これは他の40AX700購入者も指摘しているところだが、元々このディスプレイは、四隅が暗い。エッジライトのようだが、四隅までライティングが足りないのだろうか。さらに1mぐらいの距離で見ると、どうしても四隅や四辺は目の位置から角度が付いてしまうため、視野角が狭いパネルではさらに輝度が下がって見えてしまう。そのあたりはどうしても、値段なりの弱点として残る部分だ。

Mac OS標準のディスプレイキャリブレータ・アシスタント

 さらにHDMI入力ごとに、映像調整の設定が別々に指定できない。例えば「HDMI 1」はテレビ向けの設定、「HDMI 2」は映画向け、「HDMI 3」はPC向け、といった設定を持つ事ができず、全入力共通になってしまう。一応画質連動設定として、入力ごとにオート、写真固定、グラフィック固定、オフの4つは選べるのだが、色温度やシャープネス、「バックライトAI」といったパラメータは共通となっている。東芝機は入力ごとに調整できたので、イマドキのテレビはみんなそうなのかと思っていたのだが、メーカーによって考え方が違うようだ。

 仕方がないので、テレビ側はスタンダードな設定にしておき、ガンマやRGBバランスなどはMac側で調整している。MacOSはかなり正確に調整できるカラー調整ウィザードを持っているので、その点でも相性が良かった。

総論

 AV Watch的には4Kテレビとしての40AX700を評価すべきところなのかもしれないが、一応アンテナ線は繋いでいるものの、実際にテレビとしてはほとんど使っていない。それほど、4Kディスプレイによるコンピューティングは、未来を感じさせるものだった。

 現在はスマートフォンやタブレットがあればPCはいらないという人も多いが、大画面で高解像度なディスプレイを作業環境に持ちたいのであれば、PCが一番フィットする。現時点ではWindows側の対応があまり芳しくないため、今すぐ恩恵を受けられるのは主にMacユーザーという事になる。将来的には4Kディスプレイに繋がるスマートフォンが登場するかもしれないが、この作業環境が簡単に得られることは、PCの大きなウリになるだろう。

 一方4Kテレビとしては、今年のCESのレポートでもいくつか触れられているように、今年テレビのOSは、モダンOSに移行する流れだ。そういう意味では、今売られている4Kテレビは、第1世代の最後となるだろう。

 一応AX700でもアプリによってネットのストリーミングサービスは楽しめるが、いろんなところでUIがバラバラなので、使いづらい。また各サービスを提供するアプリも、バックグラウンドで待機できるわけでもなく、別画面に切り換えたのち戻ってくると、最初から立ち上げ直しになる。スピード感としても、スマートフォン感覚ではとても使っていられない。

 リモコンも、タッチパネル搭載の音声入力可能なものが付属するが、すべての操作がそれだけで完結するわけではなく、最終的には旧タイプのリモコンに持ち替えないと先へ進めないというところも数多くある。こういうところが、モダンOSによって地ならしされていく事になるのだろう。

 筆者のように、4Kディスプレイとして新しいコンピューティング体験に使うと割り切るなら、第1世代の4Kテレビはこれから値下がりが予想されるため、お買い得だ。一方テレビの未来を体験したいという方は、次世代モデルを購入する方が賢明だろう。少なくとも筆者の場合は、この環境が今の時点で先取りできて、大変満足している。

 皆さんも4Kテレビを映像だけでなく、コンピューティングに利用するという視点で、見直してみてはいかがだろうか。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。