小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1205回

ベーシックを極めたら何でも撮れるように。ソニー「α7 V」
2026年1月14日 08:00
ベーシックモデルが再起動
フルサイズミラーレスを長らく牽引してきたのは、ソニーのα7シリーズだ。ベーシックモデルのα7、高感度モデルのα7S、高解像度モデルのα7R、薄型軽量のα7Cと4シリーズを展開している。
その中で昨年末にベーシックモデルがリニューアル、「α7 V」として登場した。前作α7 IVからおよそ4年ぶりの後継機となる。市場想定価格はボディのみで42万円前後。「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS II」が付属するレンズキットはこの春以降の発売となるようで、こちらは市場想定価格44万円前後となっている。
なおレンズ単体は4万3000円前後となっているので、レンズも買うならレンズキットの方がお得である。
新開発の部分積層型センサー「Exmor RS」と、AIプロセッサーを内蔵した新画像処理エンジン「BIONZ XR2」を搭載。動画性能としては4K60pのフルサイズ撮影と、Super35mmクロップでの4K120p撮影に対応する。
前作α7 IVでは、静止画と動画のハイブリッド機であることが強調された。もちろん今回のVも同じ路線だと考えられる。ベーシックモデルを再定義するというα7 Vの実力を、早速テストしてみよう。
ボディはほぼ据え置き
まずα7 Vのボディだが、ボタン配置などは前作α7 IVと同じで、ボディ外寸がミリ単位で違う程度。構造上の最大の違いは、背面液晶のヒンジである。前作は横出しのバリアングルであったものが、今回は横出しバリアングルに加え、チルト機構も追加されている。またモニターサイズも3型・103.7万ドットから3.2型・209.5万ドットへと変更されている。
端子としては、USB-C端子が2つとなっている。前モデルはUSB-CとmicroUSBだったので、時代に合わせた変更ということだろう。
メモリーカードスロットはCFexpress Type AとSD UHS-IIのデュアルタイプで、これは前モデルと同じだ。ただCFexpress Type Aの採用は、現時点ではαシリーズだけである。色々な理由や背景はあるにせよ、他社カメラも併用するユーザーにとっては、Type Bの採用が待たれるところだ。
中身のポイントは、新開発のイメージセンサーだ。画素数は有効3,300万画素で前作と同じだが、αとしては初搭載となる部分積層型CMOS「Exmor RS」を採用した。画素数は前モデルと同じ約3570万画素だが、部分積層型となったことで読み出し速度が向上した。
前作は4K60p撮影時にはSuper35mmクロップとなっていたが、今回は同じSuper35mmクロップなら4K120p撮影を可能にしている。フレームレート換算では単純にスピードが倍になったわけだ。もちろんフルサイズの4K60p撮影も可能である。
画像処理エンジンも刷新され、「BIONZ XR2」となった。これは以前から別チップとして搭載していたAIプロセッサの機能を統合して、画像処理エンジンと1チップ化したものである。当然省電力・高速演算が可能になっており、今後のα7シリーズにも搭載されてくるはずだ。
動画コーデックと撮影機能についてまとめておく。
| 撮影モード | 解像度 | フレームレート |
| XAVC HS 4K | 3840×2160 (4:2:0, 10bit) | 119.88p、59.94p、23.98p |
| 3840×2160 (4:2:2, 10bit) | 119.88p、59.94p、23.98p | |
| XAVC S 4K | 3840×2160 (4:2:0, 8bit) | 119.88p、59.94p、29.97p、23.98p |
| 3840×2160 (4:2:2, 10bit) | 119.88p、59.94p、29.97p、23.98p | |
| XAVC S HD | 1920×1080 (4:2:0, 8bit) | 119.88p、59.94p、29.97p、23.98p |
| 1920×1080 (4:2:2, 10bit) | 59.94p、29.97p、23.98p | |
| XAVC S-I 4K | 3840× 2160 (4:2:2, 10bit) | 59.94p、29.97p、23.98p |
| XAVC S-I HD | 1920×1080 (4:2:2, 10bit) | 59.94p、29.97p、23.98p |
ここで謎なのは、XAVC HS 4Kでは未だ30p(29.97p)が撮影できない事である。前作IVの時代からそうだったのだが、他のコーデックと比べて明らかに欠落しているので、ファームアップ等でそのうち解消されるものと思っていた。何か撮影できない技術的理由があるのだろうか。あるいはサポートする必要がない合理的理由があれば、公式に見解を出すべきであろう。
ちなみに30p(29.97p)は、60pほどヌルヌルせず24pほどパラパラせず、60pで駆動するディスプレイと親和性が高いため、動画広告ではよく使用されるフレームレートである。
動画撮影でもう一つ特徴的なのが、「4K動画画角優先」という機能だ。これは動画モードに切り替えると、静止画よりも若干画角が狭くなってしまうが、それを静止画と同じ画角(横幅)にするという機能である。ただこの機能が使えるのは4K解像度で、フレームレートが60p(59.94p)か120p(119.88p)の時という条件がある。
強力な手ぶれ補正とカラー
では早速撮影してみよう。今回使用したレンズはキットレンズではなく、G Masterの「FE 24-70mm F2.8 GM II」である。
手ぶれ補正は、手ぶれ切、光学式5軸ボディ内手ぶれ補正のみの「スタンダード」と、画角は狭くなるが光学式と電子補正を組み合わせた「アクティブ」、「ダイナミックアクティブ」の4つがある。他社でも電子補正を組み合わせた補正には2段階を設ける例が多いが、ソニーは長くアクションカメラを作っていた経緯もあり、手ぶれ補正にはかなりのノウハウがある。
実際に試してみると、「アクティブ」は補正の限界値まで来ると映像がジャンプするような動作が見られる。一方「ダイナミックアクティブ」ではこのジャンプ動作が抑えられ、かなり滑らかな補正が得られる。この滑らかさは、なかなか他社のフルサイズミラーレス機では実現できないところである。
ちょっと面白い機能に、「フレーミング補正」がある。「センター」と「マニュアル」の2モードがあるが、センターにすると中央部分をだいたい3倍ぐらいに拡大する。カメラを振ると多少粘るような動きをするので、一種の強力な手ぶれ補正としても使用できる。
「マニュアル」では画面内の任意の被写体をタップすることで、その被写体を極力センターに持ってくるように動く。手持ちで遠くの被写体にロックしたい場合には、手ぶれ補正の代替兼エクステンダーのように使える。フレーミング補正中は手ぶれ補正機能は使えなくなるので、手ぶれ補正の機能を拡張したものと考えられる。
今回のサンプルは、夜間撮影以外はXAVC HS 4K/60pで「4K動画画角優先」で撮影している。4K撮影は、シネマ用のDCIサイズがないので、設定としてはシンプルだ。
最新のセンサーを搭載しただけあって、映像のキレが良く、普通に撮影しても高いダイナミックレンジの一端を感じさせる。特に何も設定しなくてもちゃんと撮れる安心感がある。
カラートーンを変えるクリエイティブルックは、新たにFilm2、Film3を加えて12種類となった。それぞれにシャドウやハイライトが調整できるので、自分のトーンを作ることもできる。
また色域等をプリセットできるピクチャープロファイルも使える。HLGやS-Cinetoneが使えるほか、ルックとして既存のLUTを読み込んで撮影することもできる。なおZV-E1から搭載が始まった「シネマティックVlog設定」は、Vlog向けの簡易シネマカメラではないということか、搭載されていない。
センサーの強みを活かしきった機能
本機はLog撮影機能も搭載されている。選択できるのは、S-Gamut3.Cine/S-Log3とS-Gamut3/S-Log3の2つだ。今回はS-Gamut3.Cine/S-Log3で撮影し、Davinci Resolveでカラーグレーディングした後HDRコンテンツにしている。
かなり高コントラストに仕上げてみたが、これだけ絞り上げてもノイズ感はほとんど感じられず、階調も十分だ。ただ60p撮影なので、シネマ風ではなく動きにヌルヌル感がある。こうした作品を作る際に、XAVC HS 4Kでは30p(29.97p)が撮影できないのがネックになってくる。
続いて夜間撮影をテストしてみる。ソニーのセンサーは裏面照射型がベースであり、高感度が強みとなっている。今回もその例に漏れず、動画での最高ISO感度は51200で、さらに増感すれば102400まで上げられる。静止画の最大感度は204800だが、動画での最高感度は102400となっている。
夜間撮影は、XAVC S 4K/30pでシャッタースピード1/30固定で撮影している。ISO感度はオートだが、現場は本当に暗いので、ほとんどのケースで51200である。増感してもそれほど暗部ノイズが増えるわけでもなく、かなり良好だ。センサー特性だけでなく、画像処理エンジンによる後処理も上手いのだろう。この暗部性能は、報道やドキュメンタリーなどでも重宝するはずだ。
サンプルのラストカットは、色温度の違う光源の間を移動しているが、カットの最初の椅子の照明部分は、他のカメラでは緑色になってしまうところだ。ここもうまくバランスを取っている。また暖色の光源下へ移動すると、途中は真っ赤だが、徐々に追いついて暖色系のバランスに落ち着いていく様子がわかる。このあたりは、AIをフルに使ったショックレスホワイトバランスの成果である。
ショックレスホワイトバランスは、スタンダード、雰囲気優先、ホワイト優先の3モードがある。また追従速度は3段階で選択できる。サンプルの動画は、スタンダードで追従速度最速で撮影している。
スロー撮影もテストしてみた。今回は120p撮影、24p再生のため5倍速である。Super35mmサイズにクロップされるとはいえ、4Kでの解像度も十分出ており、画角が狭くなること以外は十分である。スロー撮影に特化するなら、廉価で軽量なAPS-Cレンズを付けるという手もある。
総論
α7無印シリーズはベーシックモデルという位置づけではあるが、ベーシックを極めた結果、α7 Vはなんでも対応できるカメラに仕上がった感がある。特にセンサーも画像処理エンジンも初物ということで、夜間撮影などはまさにαでしか撮れない絵を出してくるカメラだ。センサーやエンジンの強みを活かしきった機能を一通り揃えたという点で、ベーシックの再定義という意味だろう。
メニューの構成もこなれており、機能があちこちに散っているという感じもない。また様々な条件で機能が排他になるが、グレーアウトした機能を選択すると、どの機能と排他になっているのかがわかる。つまり「この機能を使いたいんだけど代わりにどの機能を変更すればいいのか」がわかるようになっている。
実はこの機能は、10年ぐらい前に筆者が当時の開発チームとのディスカッションの中で提案したもので、現場でマニュアルと格闘するようなことがない。
新たに搭載された液晶のチルト構造は、いちいちモニターを横に引き出さなくてもいいので、撮影中のモニタリングはかなり助かる。また横に引き出して回転させた時に、液晶モニターがちょっと斜めにかしげたりしないのも、水平を取る際に確認しやすい。このあたりのヒンジのメカ設計がしっかりしているのも、いいところだ。
ベーシックモデルの割には価格がベーシックじゃないという意見も聞かれるところだが、ここまでオールマイティに使えたらそれもやむなしと思えてくるカメラである。
































