小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第730回:“録画マニア”のためのハイエンド6chレコーダ、パナソニック「DMR-BRG2010」

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第730回:“録画マニア”のためのハイエンド6chレコーダ、パナソニック「DMR-BRG2010」

ネット配信全盛ではあるが…

 今年はネットサービスの当たり年なのか、国内外から強力な動画配信サービスが次々に立ち上がってきている。まだ残すところ2カ月あるが、まだまだどんなものが飛び出すのか油断ならないところである。

パナソニック「DMR-BRG2010」

 一方でテレビ放送のほうも、先日見逃し配信サービスである「TVer」がスタートし、盛り返しが期待されているところである。ネットではテレビ局に対する批判も多いが、テレビ放送は未だ強いコンテンツであることに変わりない。

 さてそんな中、レコーダの立ち位置も変わってきた。ハイエンド機では予約を気にしなくていいということで、複数のチャンネルをずっと録画し続ける、いわゆる「全録機」が注目を集めている。

 その一方で、そんなにテレビ見ないからとダブルチューナ機を購入したものの、家族で使ってみるとやっぱりチューナが足りなかった、という例が後を絶たない。地上波だけでなく、衛星放送の専門チャンネルやケーブルテレビを含めたら、意外に時間がちょっとだけ被ってて録画できないというケースは、かなり多いのではないだろうか。

 それなら最初から3チューナ機買っとけば良かったじゃんよ、って話なのだが、全録ではないレギュラーモデルの中では3チューナがハイエンド機になってしまうので、売り場で「いやいやそこまでは……」となってしまうらしい。それならハイエンドをもっと上に上げていけば、3チューナ機が「普通」に見えるはずである。

 今回ご紹介するDMR-BRG2010は、6チューナのレコーダだが、全録にも個別録画にも、両方に対応できるモデルとなっている。これまでパナソニックの全録機は11チューナか7チューナだったわけだが、そこよりも多少手加減しつつ、レギュラーレコーダの倍のチューナ数を誇る。ついでに“下位モデルを買いやすくする”という妙な役割も担っているわけだ。

 店頭予想価格は10万円前後となっているが、すでに通販サイトでは約8万円といったところだ。買いやすい上位モデル、BRG2010の実力を、さっそくテストしてみよう。

どこにでも置ける上位モデル

 6チューナ搭載、さらに内蔵HDDが2TBと、スペック的には十分ハイエンドで通るモデルだが、奥行きはかなり短い。ストレージやチューナモジュールの小型化ゆえだろうが、高さも44.5mmと低く、かなりペタンとしている。あまりテレビ台などを用意しない家庭も増えた昨今、テレビの足の前にポンと置いただけで使えるスタイルは受けがいいだろう。

6チューナ機ながら薄くてコンパクト
奥行きの短さもポイント

 前面、天板ともに黒を基調としたアクリルで光沢感は強い。以前からちょっと気になってはいたのだが、ここまでアクリルの面積が広いと、静電気でホコリを吸着しがちだ。テレビ台に収納しない場合、天板のこまめな掃除は必要だろう。

黒を基調としつつ、光沢感は強い
天面は光沢のあるアクリル仕上げ

 B-CASカードスロットは2つで、上が視聴・録画兼用、下が録画専用だ。有料放送を契約している場合、契約カードは上のスロットに入れたほうが、視聴に困らないだろう。画像取り込み用として、SDカードスロットとUSB端子もある。Blu-rayドライブは左側で、イジェクトボタンを押すとフロントパネルを押し開けてトレイが出てくるスタイル。内蔵HDDは2TBと、家族で録画しても困らない量である。

B-CASカードスロットは2つ
Blu-rayドライブも薄型

 背面に回ってみよう。アンテナ入力は地上波と衛星放送に分かれており、それぞれにスルーが付いている。外部入力はアナログAVが1系統。出力はHDMI×1、光デジタル音声×1となっている。そのほか増設HDD用USB端子と、i.LINK端子がある。ネットワークは、有線と無線の両方が使用できる。

背面端子はシンプル

 リモコンも見ておこう。作りやボタン数は昨年のDIGA「BRZ2000」のものと同じだが、機能が多少違っている。まず目立つところでは、従来「もっとTV」のボタンがあったところに、Netflixボタンがつけられた。放送波の並びと同じところにあることでお分かりだろうが、このボタンを押せば直接Netflixの画面に切り替わる。

昨年のレギュラーDIGAとほぼ同じリモコン

 また従来検索ボタンがあったところには、「新番組」ボタンが付けられた。番組改編時期の10月はもう過ぎてしまったが、また来年の4月には大活躍するだろう。また以前は「セレクトバー」として訴求されていた、画面の四辺に表示されるメニューは、「再生メニュー」という名前に変わったようだ。セレクトバーという名称はあまり定着しなかったのかもしれない。

全録と自動録画のハイブリッド仕様

 6チューナもあるということは、かなり色々な使い方ができる。そもそも普通に予約録画をしていて、6チャンネルが同時に稼働するようなケースはそうそうないだろう。従って本機は、全録レコーダではないものの、チャンネル録画機能も付いている。

 ただ、本物の全録機に比べると、機能は簡易的だ。チャンネル録画設定に入ると、6チューナの設定画面が現れる。ここまでは同じだが、録画モードがDRしかない。

 もっとも本機の場合、通常の予約録画で1.5~15倍の録画モードを選んだ場合も、一旦DRで録画して、電源切の時間帯に順次設定画質に変換する。おそらくエンコーダの数が少ないため、やりくりする必要があるのだろう。

 また録画時間も最大8時間に限定されている。通常の全録は、曜日ごとに稼働時間が設定できたりするのだが、そのあたりの細かい機能はなく、大雑把に何時から何時まで、と決めるだけである。

一見すると普通のチャンネル録画設定に見えるが……
詳細設定には画質設定がない
実行時間は時間帯を設定するだけとシンプル

 またもう一つここは大きなポイントかと思うが、チャンネル録画が動作している時間帯は、通常の予約録画が動作しない。たとえチューナが空いてたとしてもだ。だからチャンネル録画機能を使うのであれば、フルにチューナを稼働させないともったいないことになる。

チャンネル録画の時間帯にかかっていると、警告画面が出る

 この条件からすると、設定の考え方も2通りあるだろう。1つは、ゴールデンタイムをフルでチャンネル録画しておき、それ以外の時間帯を個別録画するというやり方。6チューナでチャンネルが足りるのであれば、この方法がいい。

 もう一つは逆に、掘り出し番組が多い深夜枠などをチャンネル録画しておき、ゴールデンタイムは後述する予約録画機能をフル活用するという手もある。見たい番組が大体決まっているタイプにはこちらがおすすめだ。もちろん、チャンネル録画は使わず、手動と自動録画をフル活用するという方法も考えられるだろう。いずれにしても、チャンネル録画と通常録画が同じ時間帯で動かないというのは注意ポイントである。

 番組表を開くと、画面下に「新番組のお知らせ」が表示されている。右下には、リモコンの新番組ボタンへの導入が示されている。全録機であればわざわざ注意しなくても勝手に録れているものだが、このレコーダの性格上、自分で選んで録るということが重視されているようだ。

番組表の下に新番組のお知らせが

 ではその「新番組」ボタンを押してみよう。すると新番組一覧画面が表示される。番組改編時期は過ぎているが、そこそこドラマなどは第1話があるようだ。画面では全ジャンルを見ているが、青ボタンで放送種別、赤/緑ボタンでドラマとアニメに絞り込みができる。

新番組情報がまとめて表示される

 今回はこの手のサジェスチョン機能が多いのがポイントとなっているが、操作はリモコンの十字キーを多用することになる。だがこのリモコンは十字キーがかなり下の方についており、片手で持つ場合かなり下の方を持たなければならない。そうすると握るところが少ししかなく、また前方が重くなるためバランスが悪い。製品の性格を考えれば、今年の全録機「DMR-BRX6000」で採用したような、再生系(再生や早送りなど)のグループと十字キー周りの位置が逆になったタイプの方が良かったのではないかと思う。

番組予約には、「カテゴリーでまとめて予約する」という項目がある。これを選ぶと、番組を中心に予約対象を広げていくことができる。例えば番組名のみから始まり、バラエティ内でもランキングもの、ゴールデンのバラエティ、トークバラエティといった具合だ。

カテゴリー予約もポイント
予約をカテゴリー内で広げていける
全録機「DMR-BRX6000」のリモコン

 例えば「ゴールデンのバラエティ」を予約してみると、19時スタートだけで5番組が一気に予約できる。カテゴリをバラエティに限定しているので、ゴールデンタイムでも映画やドラマは予約されないわけだ。代表的な番組一つを選んでガバッとすくい取るような予約スタイルは、チューナ数が多い本機の真骨頂だと言える。

ゴールデンのバラエティを一気に捕捉

 おまかせ録画も、カテゴリの選択によってかなり絞り込みができる。検索条件をジャンルではなくカテゴリにすることで、特定の海外ドラマだけを録画することができる。ただ、ここに番組名が出てくるからといって、必ずしも現在放送されているとは限らない。現時点では放送されていない番組も出てくるようだ。

カテゴリ検索によるおまかせ録画設定

スマートフォン連携も面白い

 録画番組一覧では、おまかせ録画番組は一つにまとめて表示される。自分が明示的に録画したものとレベルを変えて表示することで、番組を探しやすくしている。

録画一覧では、おまかせ録画はまとめて表示される

 おまかせ録画は、何かの番組に関連付けて録画されたはずである。従って、その関連元になった番組を再生中に、関連番組として見つけるというのが筋である。番組再生中に「再生メニュー」ボタンを押すと、四辺にメニューが表示される。画面下の「似たものおすすめ」を選ぶと、おまかせ録画で録画された類似番組が表示される。

番組再生中にのみ表示できる「再生メニュー」
視聴中の番組から、似たような番組にアプローチするという流れ

 再生に関しては、スマートフォンとの連携も見どころの一つだ。専用アプリ「Panasonic Media Access」を使うと、手元で録画番組や放送番組が見られるだけでなく、番組を選んで上にスワイプすると、その番組がレコーダ側で再生される。すなわち、テレビ画面でその番組の再生が始まるわけだ。言ってみれば手元で見るか、テレビで見るかをアクションの違いで切り替えているに過ぎないわけだが、この「スワイプ&シェア」は直感的でなかなか面白い。

スマートフォンとの連携は、「スワイプ&シェア」がポイント
見たい番組を上にスワイプすると、レコーダで再生が始まる
その後はスマホが再生コントローラになる

 Media Accessでは、番組表も見ることができる。そこから録画予約もできるので、ベーシックな使い方だけならリモコンを手に取らなくても、操作はできる。またこの番組表は、チャンネル録画してあれば過去の番組表も遡って見られる。このため、真ん中あたりに1週間戻る、進むのインターフェースがオーバーレイするのだが、正直これは鬱陶しい。番組表をドラッグすると一時的には消えるのだが、もうちょっとやりようがなかったのかなと思う。

番組表も見られるが、中段のインターフェースが邪魔
録画予約も可能

総論

 レコーダのレビューとしては久々ということになるが、相変わらずパナソニックは攻めの姿勢で挑んでいて安心できる。全録機では東芝が価格競争を仕掛けたようなところもあったが、今回のBRG2010ではそこをうまくかわして、独自のポジションを築いた格好だ。

 その一方で、ホームネットワークの中に位置し、いつでもすぐ電源が入る機器として、レコーダがメディアサーバー的な位置付けになるという方向性が示されたのは結構前のことになるが、案外ニーズが掘り起こせずに苦労しているようだ。実際本機でも、NASとして利用できたり、ハイレゾ音源の再生ができる機能も備えているが、テレビ視聴は案外本体の占有時間が長いので、ファミリーユースではなかなかハイレゾを再生させてくれないんじゃないかという懸念もある。

 ただ、パナソニックが力を入れている4Kカメラ(パナソニック製)の動画を取り込んで、Blu-rayやSeeQVault対応HDDにバックアップする機能も備えるあたりは、PCレスで最先端の映像や音楽を楽しみたいというニーズにも応えようとしている。わりとこう、“パナソニックで揃えるといいことある感”がはっきり強まっており、その点はさすが総合家電メーカーとして生き残ってきた強みであろう。

 JEITAによる今年の国内出荷実績を見ると、レコーダ市場は7月に唯一前年比越えしただけで、トータルでは前年比9割ぐらいに落ち着きそうである。来年は4Kの「Ultra HD Blu-ray」対応製品で山が来るかどうかというところだが、4K放送が本格化するまでは大きな山はきそうにない。逆に言えば、今からしばらくは安定期に入るので、買い時ではある。

 6チューナは多すぎるということであれば、その下の「DMR-BRZ1010」がトリプルチューナで狙い目だ。これが実売6万円強で買えるのだが、あと1万5,000円出せば6チューナの本機が買えるわけで、悩みどころである。

 そろそろ年末~お正月特番もターゲットに入ってくる昨今、レコーダの買い替えを考えている方にはなかなかいい感じのところを突いてきた製品だと思うのだが、いかがだろうか。

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パナソニック
DIGA
DMR-BRG2010

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。