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レース映画の最高傑作!ブラピ「F1/エフワン」をアップル本社で見てきた

映画『F1(R)/エフワン』
(C)2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

6月27日に公開される映画『F1(R)/エフワン』。ブラッド・ピット主演のF1を描いた作品で、プロデューサーとしてF1ドライバーのルイス・ハミルトンが参加していることでも話題だ。

この作品、アップルの配信サービス「Apple TV+」のオリジナル作品として出資・制作されたもので、劇場公開後にApple TV+で配信予定もある。(Apple TV+でのタイトルは『F1 ザ・ムービー』)

劇場公開を間近に控えているこのタイミングで、アップルは同社の開発者会議「WWDC 2025」を開催中だ。そんなこともあってか、基調講演でも同社のティム・クックCEOとソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長のクレイグ・フェデリギが、F1をテーマにしたコントビデオに出演していたりもする。

アップルのエクゼクティブも『F1』推し

そんな中、開催2日目の全イベントが終了後、プレス関係者とWWDCに参加したデベロッパーの一部が参加しての試写会が、アップルの発表会でも使われることの多い「スティーブ・ジョブズ シアター」で行われた。

筆者も参加してきたので、その様子をお伝えしたい。

ただし、試写前後の会場内は撮影禁止。会場入り前の風景だけでご容赦を。

試写を控えたスティーブ・ジョブズ シアター

ジェリー・ブラッカイマーが語る制作秘話

試写の前には、アップルのサービス担当シニアバイスプレジデントのエディー・キューが登壇。本作のプロデューサーであるジェリー・ブラッカイマーを交えてのトークセッションが行なわれた。

ブラッカイマー氏は「ハリウッドは人間関係がすべて」と語る。

企画はブラッカイマーがプロデュースした『トップガン マーヴェリック』の監督であるジョセフ・コシンスキーに「F1の映画を撮りたい」という企画を持ち込んだところからスタートしている。

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そこに、同じく『トップガン マーヴェリック』で脚本を務めたアーレン・クルーガーが参加、主演としてブラッド・ピットが参加して、さらにはルイス・ハミルトンがプロデュースや監修を務める事になった。

ハミルトンはもともと『トップガン マーヴェリック』への出演を希望していたが、スケジュールの関係で断念。その時の関係から、『F1/エフワン』のプロデュースに参加した経緯がある。

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レースシーンで走るのは全て実車で、CGやVFXは使われていない。当時ハミルトンが所属していたメルセデスが、「ボディはF1だがエンジンはFIA F2(編注:F1の下に位置するカテゴリー)」という車両を実際に作り、そこに俳優陣が乗り込んで撮影する、というスタイルが採られた。

いわゆるオンボードカメラや特殊カメラでの撮影が多用されているが、詳しくは以下の記事をご参照いただきたい。

実はここで車両に搭載されたのは、iPhoneのカメラ技術を応用した特注のカメラだったという。

一方で、映画を作る上で1つの課題だったのは「F1を運営するFIAや各チームとの関係作りだった」という。

F1関係者との交渉は3年前からスタートしたが、「F1を悪く描く映画ではない」ことを説得するのに1年、F1に参戦している10チームと交渉するのに「さらに6カ月かかった」(ブラッカイマー)という。

実は当初、10チームの中でもレッドブル・レーシングは「あまり乗り気ではなかった」(ブラッカイマー)のだとか。理由は、撮影に使う車両が、当時ハミルトンが所属していたライバルチームであるメルセデス製だったことが関係していたようだ。

だが、最終的には全チーム・FIAの全面協力を得た。撮影チームは、F1における「11番目のチーム」のようにレースに帯同。ある時は「レッドブルとフェラーリの間にガレージがあった」(ブラッカイマー)くらいだとか。

結果的に、本作はF1をかなり忠実に描くことに成功している。F1レーサー達も満足している様子は、以下の記事からも伝わってくる。

「F1のもつコアな魅力」をハリウッドの気軽さで

では実際どんな作品だったのか? ネタバレしないよう配慮しつつ、内容と感想を述べていきたい。

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本作の主人公で、ブラッド・ピット演じるソニーは元F1レーサー。すでにF1の世界からは遠のいている存在だが、最下位に甘んじるF1チームへと復帰する事になる。まだ若いが才能あるジョシュア(ダムソン・イドリス)とともにチームを立て直していく……という粗筋なのだが、正直これでは魅力の数%も伝わってこない。

F1は過酷なレースだ。高速で体に負担もかかり、高度な運転技術を求められるのはもちろんだが、タイヤの性能を最大限に引き出すタイヤマネジメントやピットインするタイミングなど、多数の戦術と駆け引きが求められる。

過去、映画の中のF1は「抜くか抜かれるか」にシンプル化して描かれることが多かったが、本作は、F1が持つ多層的な戦術・駆け引きを生かし、ドライビングテクニックと戦術が組み合わせられた「最先端のモータースポーツらしさ」も巧みに脚本の中で生かし、リアルな描写を実現している。

もちろん100%リアルなだけではないが、これはなにかと問われれば「F1である」と断言できるくらい、F1の魅力をストレートに再現できている。

その上で、気軽にすっきりと楽しめる、ブラッカイマー・プロデュース作品の特徴をしっかりと備えており、『トップガン マーヴェリック』を思わせる爽快感・人間関係もたっぷり描かれる。

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そんな「ハリウッドなF1」が素晴らしい完成度で描かれるのが本作の価値と言っていい。F1やモータースポーツを「それっぽい描写」にとどめず、映画としての面白さを損なわない作品になっているので、見応えも十分だ。

そしてなにより、忘れてはならない本作の魅力は「没入感」。実際に撮影することにこだわって作られたレースシーンは、絵も音も迫力満点である。IMAXシアターでの鑑賞が向いている。

2D上映に加えて、日本語吹替版、IMAX、4D、Dolby Cinema、ScreenXのラージフォーマットでの同時上映も予定されている
(C)2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. IMAX(R) is a registered trademark of IMAX Corporation. Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories

劇場で見られるのはもうちょっと先だが、iPhoneで見られる「ハプティックトレーラー」も公開になった。エンジンの振動やタイヤが縁石を捉える感覚などが、映像と同期した形で楽しめる。

アプリは不要。iOS18.4以降を搭載したiPhoneならば、以下のQRコードからアクセスし、体験可能だ。

ハプティックトレイラーはApple TVアプリからも視聴可能
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このQRコードからのアクセスでもいい
西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
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