“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

 

第429回:全部入りのもういっこ上、ソニー「BDZ-EX200」

~ “思い出もBDに”の新展開も ~



■ シンプルラインナップに回帰

BDレコーダとプレーヤーのラインナップ
 ソニーのBlu-rayと言えば、従来はメインの用途にフォーカスしたラインナップで機能訴求を行なってきた。すなわち番組持ちだしならAシリーズ、ハイビジョンカメラ取り込みならLシリーズ、スタンダードなTシリーズ、全部入りのXシリーズ、といった具合である。

 しかし、この秋から展開される新ラインナップでは、HDD容量違い、チューナ数などの違いはあれど、基本的に全部入りのXシリーズを引き継ぐRXシリーズがデフォルトとなった。そしてそれらの上位モデルとして、新たにEXシリーズ「BDZ-EX200」が登場した。11月上旬の発売で、店頭予想価格は28万円前後となっている。


BDZ-EX200

 結構先のお目見えではあるが、この記事が掲載される頃、すなわち9月9日から、東京高輪でソニー ディーラーコンベンションが開催されている。この秋発売のレコーダも、全種類実機が展示されているはずである。あいにく招待者のみしか入れないが、AV Watchでもイベントの模様がレビューされることだろう。

 今回はそれに先駆けて、最上位モデルである「BDZ-EX200」(以下EX200)をお借りすることができた。他の機種には乗っていない、専用の高画質技術「CREAS 2 plus」が搭載され、アニメ・CGに強いという。

 では今年の新作全体の機能もチェックしつつ、EX200の実力をテストしてみよう。


■ ボディはXシリーズを継承

ボディデザインは以前のXシリーズを踏襲

 まずデザインだが、新RXシリーズとEXシリーズではまったく違うデザインとなっている。RXはデザインを新たに起こしたようだが、EXシリーズは、昨年の「BDZ-X100」と見分けが付かない。X100が手元にないので厳密な比較はできないのだが、写真で比較する限り、同一筐体ではないかと思われる。

 特徴的な厚さ4mmのアルミ天板もそのままだが、カラーがシルバーからブラックへ変更になっている。正面のアクリルパネル部を除けば、かなり黒々としたカラーリングだ。

 正面にはカメラからの取り込みやおでかけ転送ボタンなどがないが、機能的には入っている。メニュー操作でそれらの機能を使うわけである。ファミリーで使うというよりも、自分専用として使うこだわりの高画質マシンという位置づけになるだろう。

 背面もX100と同様で、HDMI出力が2系統ある点も同じだ。ただしこのEX200では、各出力を映像だけ、音声だけに振り分けることができる。例えばHDMI対応AVアンプにオーディオラインとして接続する場合、映像信号も一緒に乗ってくると音質が悪化するという問題があった。これを解決するための機能である。

ボタン類は基本的なものだけで、フロントパネルはシンプル2系統のHDMI出力から、映像・音声を別々に出力可能

 本体設定メニューで「HDMI AV独立ピュア出力」を「使用する」に設定した後、本体フロントパネルのHDMI出力切換ボタンで「AVピュア」に切り替えると、HDMI1が映像のみ、HDMI2が音声のみにアサインされる。

 リモコンに関しては、メニューの見直しを図ったために、若干変わっている。もっとも目に付くボタンとして、らくらくスタートと、x-みどころマガジンのボタンが新設された。x-みどころマガジンに関しては昨年から搭載されているので、ここでは割愛する。

 新メニューの「らくらくスタート」は、初めてソニーのBlu-rayを使う人に向けた、ガイダンス的な役割のメニューだ。従来メインメニューと言えばいきなりXMB(クロスメディアバー)が出てきたものだが、さすがにこれだけ多機能になってくると、簡単な機能ほど探しにくいというデメリットが出てくる。これをカバーするためのメニューである。

「らくらくスタート」と「x-みどころマガジン」ボタンを新設よく使う機能をまとめた「らくらくスタート」メニュー

 日常的なテレビ視聴・録画だけでなく、各種ダビングにもフォーカスした。番組のBD書き出しもここから可能だが、VHSなどのアナログ録画機器からの録画も、ここからできるようになっている。結線の仕方から画面に表示されるので、いちいちマニュアルを開かなくていいというメリットがある。

 またヘルプに関しても、かなり充実した記述になっている。長年使っていると、たまにしか使わない機能のためにマニュアルを引っ張り出すのが面倒になってくるものである。本体内にマニュアルが格納されているのは、3年~5年先に便利だと感じる機能だろう。

VHSダビングの配線まで示したダビングウィザードヘルプ画面もかなり充実している

■ 高画質化への機能強化

 Blu-rayレコーダは多機能化したが故に、同時操作できない、あるいは機能が偏っているなどの部分が目立つようになってきた。ダブルチューナ機では、片方が圧縮記録できないという制限は、エンコーダの搭載数の都合があり、多くの機器でまだ健在である。ソニーのBlu-rayも例外ではないが、番組の分割ポイントを自動で指定してくる「おまかせチャプター」が、録画2でも使えるようになった。以前は録画1だけだったので、この点では機能的に均等になったわけである。

 また以前は録画ラインのデフォルトが録画1であったため、録画1で録画中は、本体を通してテレビ視聴しているときに、チャンネルを切り替えることができなかった。しかし今回は設定で、デフォルトの録画ラインを録画2に設定できるようになった。ただし録画2では、上記のように圧縮記録に対応しないほか、おでかけ転送用の同時エンコードも行なわないため、使い方で頭を悩ませる点はあまり変わっていない。

 録画品質に関しては、今回から低ビットレートのLSRとLRモードでも1,920×1,080ドットで録画できるようになった。ただ地デジの場合は送出時点で1,440×1,080ドットなので、その場合は従来通り1,440記録となる。またビットレートもそれぞれ1Mbpsずつ下がり、さらに長時間録画ができるようになった。

 また録画時には、EPG情報に含まれるジャンル情報から、特にアニメ、スポーツを抽出し、専用の最適アルゴリズムでエンコードするようになった。以前から映画に関しては各社ともEPG情報と連動して専用アルゴリズムを装備するようになってきているが、アニメに特化したというのは珍しい。

接続モニタのタイプごとにプリセットを装備

 再生系の機能としては、HDMI出力に関して、接続されたモニタのタイプに応じたプリセットを装備した。映像表示中に「オプション」ボタンを押して、画質設定から選択する。

 メーカーやモデルごとといった細かい設定はできないが、液晶モニターの明るい場所、暗い場所、プロジェクタ、有機EL、プラズマから選択できる。これは既存パラメータをそれぞれのモニタに向いた値にセットするというもので、それ以上細かく設定したい人は、自分で設定をいじることができる。

 さて、ここまではこの秋モデル全体のリニューアルポイントだが、EX200特有の機能として「CREAS 2 plus」がある。これはCREAS 2の機能に加えて、縦・横・斜め方向に効くスムージング機能、アニメ・CGリマスター機能、クロマアップサンプリングフィルタの3つから成っている。

EX200にのみ搭載される「アニメ・CGリマスター」

 中でも特に効果が顕著なのは、「アニメ・CGリマスター」であろう。従来低ビットレートでアニメを録画すると、輪郭線が平坦な塗り部分にはみ出して汚くなってしまう場合がある。CREAS 2 plusのアニメ・CGリマスターは、こういった部分を検出して綺麗にしてくれる。

 具体的なアルゴリズムは非公開だが、綺麗な塗りの部分をコピーして、汚れた部分に対してペーストしていくような機能だそうである。これは再生時のリアルタイム処理なので、昔録ったアニメにも効果があるという。試しに圧縮記録でいくつかのアニメ番組を見てみたが、全体的にS/Nのよいすっきりした映像となる。輪郭線がはっきりするという効果もあり、人によっては輪郭線の堅さが気になるかもしれないが、そのあたりはエンハンス設定で調整できるだろう。

 従来アニメファンというのは、画質よりもタイトルのコンプリートのほうを重要視するというのが定説であったが、昨今のBlu-rayタイトルの売り上げから見ても、高画質ということに対してお金を払う層であることが認識されつつある。日本が誇るジャンルであるアニメにフォーカスしたレコーダが出るのは、むしろ自然な流れであろう。


■ 思い出をBlu-rayに

 テレビ番組の録画や再生という機能からは若干外れるが、個人的に興味があるのが、「思い出ディスクダビング」機能である。これはデジカメ写真やハイビジョンカメラの動画をBDに書き込む機能だが、専用メニュー作成アプリを新搭載した。ハイビジョン動画をBlu-rayに、というのはレコーダでは以前からある流れだが、写真をどうにかしたいという手段は、いくつあってもありすぎることはない。

 私事で恐縮だが、筆者が初めてデジカメを購入したのは'99年頃のことだった。それ以来、長女の成長記録は一切がデジタル化しており、続いて生まれた次女などはもう最初からデジタル記録オンリーである。

 これらの家族写真は、以前はCD-RやDVD-Rに保存していたが、時期ごとにメディアが分かれてしまうので、一覧性が悪い。従って現在は、保存という意味では逆行しているのだが、全部HDDにコピーし直して、PC2台、NAS2台の計4台にミラーリングしている。

 ただこれらを視聴するのは、アプリケーション依存となってしまうため、妻や子供が自身で自由に写真を楽しむことができていない。また、光メディアにもバックアップしたいところだが、現在家族写真は合計20GBにもなっており、一括バックアップができない状況だ。

 こういうのを解決するのが、「思い出ディスクダビング」である。レコーダにこれまで撮影した写真を取り込み、Blu-rayを作成すると、撮影日時で分類し、カレンダービューを作成してくれる。Blu-rayには、もちろんファイルサイズにもよるが、約6,000枚の写真が収録できるという。

新設された「思い出ディスクダビング」機能作成されたカレンダービュー。追記もできる

 一番ネックとなるのは、おそらくレコーダへの写真転送だ。取り込みはUSB端子にカードリーダやデジカメを繋いだり、CD/DVD-Rからの転送となる。以前撮影した写真を取り込んでみたが、CD-Rフルに記録した写真をレコーダに転送するのに、1枚につき30分ぐらいかかった。

大量の写真を保存すると、かなり時間がかかる

 デジカメ写真はおそらく大量に存在すると思うので、これらを全部取り込むのは、相当時間がかかる作業となるだろう。筆者のようにNASやHDDに大量にアーカイブがある場合は、取り込むだけで大変な作業になりそうだ。

 試しにCD-R 2枚分の写真で思い出ディスクを作成してみたところ、データ量は大したことないが制作には2時間以上かかった。おそらく大量の写真インデックスデータを用いたオーサリングに時間が取られているのだと思うが、もう少し時間短縮できないだろうか。


■ 総論

 Blu-rayレコーダの時代が来る来ると言われつつも、実際にはレコーダという事業から多くのメーカーが撤退し、製品リリースのタイミングも年に1回となった。そもそもレコーダ全盛期の勢いが異常だったのかもしれないが、機能的にもかなりこなれてきており、これ以上の劇的な変化はあまり望めないのかもしれない。

 ただMPEG-2による放送を圧縮記録というソリューションがある以上、エンコード技術と映像プロセッシング技術でカバーできる範囲は広い。特に今回、アニメの画質に改めてメスを入れた点は、新しい方向性でもあり、訴求ポイントとしても高いのではないかと思われる。

 またその一方でIFA2009のレポートでは、ソニー、パナソニックともにBlu-rayを3D化する計画を発表しており、そちら方向の伸びしろもありそうだ。そうなるといよいよレコーダというのはテレビ録画機能もOne of them化して、次第に日本独自のメディアボックスとなっていくのかもしれない。

 あとはおそらく、ユーザーがどのようなワークフローで動いていくのか、いや逆にレコーダによってどのようなワークフローというか新生活体験を提案してくれるのか、といったことが、重要になってくるのだと思われる。将来の3Dも楽しみではあるが、地味ながら「思い出ディスクダビング」といった機能は、デジカメの画像管理をノンPCでどこまでやれるのか、しかも見栄えよく、という点へのトライアルとして、今後も注目していきたい機能である。

 Blu-rayレコーダは、「高画質」にいくらまでなら出せるのか、そしてどういう人たちがそれを出せるのか、というところが、この危機的経済状況下のもと、急速に臨界点へと近づきつつある。この秋、各社の新モデルで各社の思惑が垣間見られることになるのかもしれない。

(2009年 9月 9日)

= 小寺信良 = テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]