今年のElectric Zooma!も、恒例となったCESレポートで幕を開ける。近年のラスベガスには珍しく、外を歩くとぞくりとする底冷えのする寒さではあるが、今年もCESではメーカー間の熱いプレゼンテーション合戦が繰り広げられている。
会期前日のPressDayは、毎年ソニーのプレスカンファレンスが最後のトリを飾るのが恒例である。今年のソニーブースはいつもの黒ではなく、白を基調とした明るい開放的なブース設計となった。メインステージには日本のCEATECでお目見えした横20mを超える巨大3Dディスプレイが設置され、プロモーションやプレゼンテーション映像を上映して観客の度肝を抜いた。明日以降の一般公開でも活用されることだろう。
さて、今回のソニーも新製品が目白押しなのだが、やはりカムコーダのラインナップが気になるところだ。というのも、日本の春モデルが一足早くこのCESで発表されるからである。ただし米国向けのほうがラインナップが多いので、日本での発売がないモデルも含まれることをあらかじめお断わりしておく。
では順に新しいラインナップをチェックしていこう。
■欧米で好調なBloggie
昨年も早々に日本で発売されたが、今ひとつパッとしなかったのがBloggieである。一般的なカムコーダとは違う廉価なMP4ムービーカメラのラインナップであるが、欧米ではこの手のカメラの人気が高い。
新Bloggieも、すでに一部のモデルは米国で昨年10月発売済みだが、日本での発売は見送られている。「Bloggie Touch」というニックネームで呼ばれている「MHS-TS20/10」は、高い質感で他社とは一線を画す製品だ。1920×1080/30pによるMP4動画撮影と12.8Mピクセルの静止画撮影が可能で、TS20が8GBメモリ内蔵、TS10が4GBメモリ内蔵モデルとなっている。
すでに米国では発売済みの「Bloggie Touch」 | カラーバリエーションは4色03 |
こっ、これは! |
そして今年の新Bloggieの目玉は、3D撮影が可能な「Bloggie 3D」こと「MHS-FS3」だ。すでにプレスカンファレンズ前からバスターミナル前の垂れ幕でネタバレするというハプニングはあったものの、インパクトは十分である。
ボディに2つのレンズとセンサを内蔵し、1920×1080/30pのサイドバイサイド方式で3D動画を撮影できる。静止画は5Mピクセルで、2Dでの動画撮影時には720/60pでの撮影も可能。背面には2.4インチのグラスレス3Dディスプレイを備え、HDMI出力も可能。レンズ脇にはLEDライトも見える。
注目のBloggie 3D | 操作系はかなりシンプル |
上部にステレオマイク、スピーカー、電源スイッチ、カメラ切り替えスイッチがある |
あいにく展示機は最終ファームではないということでテスト撮影はできなかった。5Mピクセルセンサーからの映像をプロセッサに入れる手前でサイドバイサイド映像を作って処理をするという簡易的な設計ではあるが、サンプル映像を見る限りかなり高画質の3D映像が撮影できるようだ。ただし光軸は平行で固定なので、3D撮影での最短距離は2m程度を見ておいた方がいいという。
レンズは光学ズームは備えておらず、4倍のデジタルズームのみ。しかしパンフォーカスではなくAFが付いているため、2Dでは手前10cm程度までフォーカスが合う。8GBのメモリを内蔵し、約4時間のHD撮影が可能。今年4月の発売予定で、価格は250ドル。おそらくこのクオリティのクラスでは、最安の3Dカムコーダになるだろう。
レンズ側にもディスプレイがある「Bloggie Duo」 |
同じく新型の「Bloggie Duo」ことHMS-FS2は、レンズ側にもディスプレイが付いたデュアルディスプレイモデル。この手のカメラでは自分撮りのニーズも高いわけだが、その際にアングルを確認できるというメリットがある。
スペック的にはBloggie 3Dを単眼にしたような感じで、内蔵メモリは4GB、カラーバリエーションはバイオレット、グリーン、ピンク、ホワイトの4色。今年3月発売予定で、価格は170ドル。
シンプルなエントリーモデル、MHS-FS1 |
エントリーモデルとなるMHS-FS1は、レンズとセンサーは上位モデルと同じのシンプルなモデル。内蔵メモリは4GBで、カラーはホワイトとブラック。こちらも3月発売で、価格は150ドルとなっている。
もう一つ、今回のFSシリーズ共通のアクセサリとして、新設計の360度撮影レンズも登場する。前回のレンズと違い、今回は前向き固定のレンズを光学的に90度折り曲げて撮影するスタイルとなった。FSシリーズ全モデルに合わせられるよう、厚み方向が洗濯バサミみたいな構造で挟み込むようになっており、各モデルの厚みの違いを吸収できるようになっている。
このレンズは各ラインナップに対してそれぞれ20ドルアップの、キット販売となるようだ。
新設計の360度レンズ | 厚み方向が可変できる |
■ハンディカムの新ラインナップが2つ登場
昨年11月に日本で開催された放送機材展Inter BEEで、ソニーもパナソニックに続いて2in1レンズの3D撮影用カムコーダを参考出展したのも記憶に新しいところだが、業務用機よりも先にコンシューマ機のほうで先に2in1レンズのカムコーダが出そうだ。
「HDR-TD10」は、2つのGレンズと2つのExmor Rセンサーを搭載した、二眼の3Dカムコーダ。1920×1080/60iのフルHD解像度で3Dの撮影が可能だという。2Dでは60pと24pの撮影もできる。
光学ズームは3D時が10倍で、ズームと連動した光軸補正も自動で行なう。これにより、3Dで破綻しない最短撮影距離を、80cmにまで縮めている。また3D撮影時にも手ぶれ補正のアクティブモードが使える。2Dでのズーム倍率は12倍。ボディに「×17」と書いてあるのは、デジタルエクステンダーと組み合わせた場合の倍率である。
液晶モニタは3.5インチで、グラスレス3Dパネルを採用している。内蔵メモリは64GB。また5.1ch収録可能な内蔵マイクを備えており、久々のサラウンド収録復活である。
二眼3Dハンディカム、HDR-TD10 | 液晶モニタはグラスレスで3D表示可能 |
てっぺんの平たさが若干デザイン的に気になるところだが、世界初のハンディな二眼3Dカムコーダは、業界に相当なインパクトをもたらすことだろう。4月発売予定で、価格は1,500ドルと、予想よりもかなり安い。
液晶裏側のプロジェクタから映像を投影できる。写真はHDR-PJ50V |
一方3Dではないが、新しいPJシリーズも面白い。液晶モニタの裏側にプロジェクタを内蔵したモデルだ。過去にはNikonがプロジェクタ内蔵のコンパクトデジカメを出したことがあるが、カムコーダとしては筆者が記憶する限り、初めてだろう。プロジェクタを内蔵した割には液晶部分の厚みがあまりないのは、下からプロジェクションしたものを90度曲げて前方に照射しているからだという。
液晶モニタとプロジェクタは排他仕様となっており、両方同時には使用できない。これまで再生やメニュー操作はタッチスクリーンで行なっていたが、プロジェクションしている時はズームレバーでメニュー移動、Photoボタンで決定となる。また付属リモコンでの操作も可能。
液晶モニタの裏側にプロジェクタを搭載。写真はHDR-PJ10 |
プロジェクタの解像度は640×360ピクセルで、最大で60インチ、約3m程度の距離まで投影可能だという。投影解像度はそれほど高くないが、1m程度の距離でプロジェクションしてもかなりぎっしり感を感じる。
これまで撮影した画像は、テレビに映して見るというのが基本とされていたが、案外カメラの液晶画面でみんなが見始めてしまい、成り行き上いまさらテレビに繋ぎ直せずそのまま小さな画面を肩寄せ合って見るような羽目になることが多かった。これからは撮影した映像のシェアという意味で、ファイルやネット経由ではなく、空間というか空中でシェアするという考え方が生まれるだろう。
さらに今回発表のほとんどのモデルの共通仕様として、液晶下にステレオスピーカーを搭載している。またBloggieのように、グリップベルトの付け根からUSB端子が生えており、ファイル転送やUSB充電にも対応しているのが特徴だ。型番にVが付いているものは、GPS搭載という意味である。
液晶下にステレオスピーカーも内蔵 | グリップベルトの付け根からUSB端子が |
PJシリーズは3モデルで、最上位のHDR-PJ50Vは、プロジェクタ搭載の220GB HDD内蔵モデル。日本ではHDDモデルはほぼ終了でメモリ内蔵型に完全移行した格好だが、海外ではまだHDDモデルの人気も高い。光学12倍のGレンズを搭載し、撮像素子は7MピクセルのExmor R。今年4月発売予定で、価格は1,000ドル。
HDR-PJ30Vは、32GB内蔵メモリのプロジェクタ搭載モデル。撮像素子、光学特性などはPJ50Vと同じだが、こちらは3月発売予定で、価格は950ドルとなっている。
HDR-PJ10は、プロジェクタ搭載のエントリーモデルで、光学30倍ズームレンズに、撮像素子は3MピクセルのExmor Rを組み合わせたモデル。内蔵メモリは16GBで、3月発売予定の700ドル。
■従来モデルのリニューアルも強力
日本ではCXシリーズが好調だが、これの後継モデルのなかなか強力なラインナップだ。HDR-CX700Vは、光学10倍のGレンズ、12MピクセルのExmor Rを搭載した新フラッグシップ。
特徴的なレンズフード、HDR-CX700V | ビューファインダも搭載 |
イメージャーを従来の4:3から16:9に変更。そのため動画撮影時の有効画素数が上がり、よりしゃっきりした絵作りになるという。また独自規格の1080/60p撮影モードを搭載したほか、24pでの撮影も可能。さらに専用のシネマトーンガンマ/カラープリセットを搭載している。ビットレートは60p撮影時で28Mbps。
内蔵メモリは96GBで、3インチの液晶とビューファインダを搭載、レンズフードも標準で付属する。発売予定は3月で、価格は1300ドル。
HDR-CX560Vは、基本アーキテクチャはCX700を継承し、ビューファインダを省略したモデル。また内蔵メモリは64GBとなっている。こちらも3月発売予定で、価格は1,100ドル。
ビューファインダはないが基本部分はCX700と同じ、HDR-CX560V | ビューファインダがないぶん、背面はいくぶんすっきりした印象 |
HDR-CX360Vは、7Mピクセルの撮像素子で、光学12倍のGレンズ搭載モデル。内蔵メモリは32GBで、3月発売予定の800ドル。
HDR-CX160は、3Mピクセルの撮像素子に光学30倍ズームレンズを組み合わせたモデル。内蔵メモリは16GBで、3月発売予定の500ドル。
従来のCXシリーズらしいコンパクトモデル、HDR-CX360V | 内蔵メモリ有りのエントリーモデル、HDR-CX160 |
HDR-CX130は、CX160と同仕様で内蔵メモリがないタイプ。MS PRO DuoかSDカードに撮影する。こちらも3月発売予定で、価格は450ドル。
HDR-XR160は、基本仕様はCX160と同じで、160GBのHDD搭載モデル。こちらは4月発売予定で600ドルとなっている。
内蔵メモリなしのシンプルモデル、HDR-CX130 | HDD搭載モデル、HDR-XR160 |
写真左からDCR-XS85、XS65、XS45 |
続いてSDモデルだ。DCR-XS85は、16GBメモリ内蔵の光学60倍ズームレンズ搭載モデル。2月発売予定で280ドル。
DCR-XS65はXS85と同仕様で内蔵メモリ4GBのモデル。2月発売予定で250ドル。DCR-XS45も同仕様で、内蔵メモリなしモデル。これも2月発売予定で230ドル。
本日はカムコーダ関係だけでいっぱいいっぱいになってしまったが、明日以降また気になる製品をピックアップしていく。今後のCESレポートにご期待いただきたい。