ついに発売された新型PS3。その新機能を検証
-HDオーディオ/HDMI CEC対応でAV機能は完成型へ
いよいよ9月3日に発売された、ソニー・コンピュータエンタテインメントの「PlayStation 3」(CECH-2000A/以下、新型PS3)。追加された新機能の大半は、1日に公開されたシステムソフトウェア 3.00により従来モデルでも実現されているが、新型のみ備えているのが、ドルビーTrueHDやDTS-HD Master AudioといったHDオーディオのビットストリーム出力と、HDMI CECのブラビアリンク機能だ。
これまで、動作音/消費電力をチェックしたほか、システムソフトウェア3.0の新機能をレポートしてきたが、今回は新型のみが対応している2つの新機能について、設定や使い勝手などを紹介する。
■ まずは小さくなったパッケージをチェック
機能の前に、以前の動作音/消費電力チェック時の記事で触れられなかった、本体のパッケージを見ていこう。
新型PS3が小型/軽量化した事と合わせ、パッケージも従来モデルから小型化。デザインも白を基調としたものに変わったほか、新しい「PS3」ロゴマークが前面に押し出されている。
パッケージは白を基調としたものに変更された | 側面にはPS2互換がない事が注意書きで記されている | 2代目(CECHH00シリーズの40GB HDDモデル)のパッケージ(奥)と比較すると、幅が小さくなっているのがわかる |
同梱品一覧 |
また、以前の記事では機材の関係で計測できなかった、ゲームプレイ時の消費電力も、新型のみだが計測してみた。ゲームソフトは「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」のデモバージョン。第1ステージでプレイ中の消費電力だ。メニュー選択時などは81W程度で推移し、ゲームプレイ時は平均90W程度、最高でも101Wという数値になった。
新型 (CECH-2000A) | 2代目 (CECHH00) | 初代 (CECHA00) | |
消費電力 (XMB表示時) | 約76W | 約106~110W | 約140~154W |
消費電力 (BDビデオ再生時) | 約83W | 約118~119W | 約168~169W |
消費電力 (ゲームプレイ時) | 約81~101W | - | - |
■ 開封後はファームウェアの更新を
オンキヨーの7.1ch対応AVアンプ「TX-SA707」 |
組み合わせるAVアンプとして、オンキヨーの7.1ch対応「TX-SA707」(8月8日発売/136,500円)を用意。ファームアップをする前に、同アンプとHDMI接続し、PS3の音声出力設定メニューで自動設定を行なってみた。すると、出力可能なフォーマット一覧に「ドルビーTrueHD」や「DTS-HD Master Audio」、「ドルビーデジタルプラス」などが表示された。
初回出荷のシステムソフトウェアは2.85 | 新型PS3で、AVアンプ「TX-SA707」とHDMI接続。対応音声を自動認識させたところ | 初代のPS3で同じアンプに接続したところ。新型で表示されているドルビーTrueHDやDTS-HD Master Audioなどの表示が無い |
さらに、本体設定メニューを見ると、「ディスク自動起動」と「DivX VOD登録コード」の間に「HDMI機器制御」というHDMI CEC用の設定項目が確認できた。これを「入」にすることで、ブラビアリンク対応となる。このように、新型PS3のみの新機能は、システムソフトウェア「3.0」以前の状態で既に実現されていた。
初代PS3(ファームウェア3.0)の設定画面 | 新型PS3(ファームウェア2.85)の設定画面。既にHDMI機器制御メニューが表示されている | HDMI制御機器メニューを「入」にすると表示されるメッセージ |
■ ビットストリーム出力をテスト
あらためて、新型PS3も最新ファーム3.0へとアップデート。ドルビーTrueHDやDTS-HD Master Audioのビットストリーム出力をテストしてみる。
テストと言っても、これらの音声を収録したBDビデオを再生し、音声をドルビーTrueHD/DTS-HD Master Audioに切り替えるだけだ。だが、ここで1つ、注意しなければならないポイントがある。前述のHDMI音声設定で、ドルビーTrueHD/DTS-HD Master Audioのデコードが可能なAVアンプが接続されていても、PS3側が標準の状態で“リニアPCM変換して出力する”という設定になっているのだ。
この状態では、接続したAVアンプ側には「リニアPCMマルチチャンネル信号」と表示されるだけで、ビットストリームで出力できていない。PS3側の情報表示画面右上に「DTS-HD MA」や「Dolby TrueHD」というアイコンが表示されるが、その横に「5.1ch」などと数字でチャンネル数が表示されている場合はリニアPCMに変換されてしまっている。
PS3のオーバーレイ情報表示画面、右上。DTS-HD MA 5.1chと書かれているが、リニアPCM変換で出力されている | AVアンプ側のディスプレイ。PCMで入力されていることがわかる |
そこでは、PS3のオンスクリーンメニューの「映像音声設定」から、「音声出力フォーマット」覧に移動し、「Linear PCM」から「ビットストリーム」へ変更する。すると、PS3側のオーバーレイ情報表示欄が「DTS-HD MA Multi ch」や「Dolby TrueHD Multi ch」と、“Multi ch”という文字表示に変わる。
この状態でAVアンプ側でチェックすると、ドルビーTrueHDやDTS-HD Master Audioを受信している事が表示され、ビットストリーム出力が確認できた。
オンスクリーンメニューから映像音声設定を選択。音声出力フォーマットをビットストリームに切り替える | ビットストリームに切り替えると、表示が“Multi ch”に変わる | |
ドルビーTrueHDの場合の表示 | AVアンプ側でデコードしていることがAVアンプのディスプレイ表示でわかる |
■ 使えるブラビアリンク機能
次にHDMI CEC機能をチェックした。接続先として、ソニーの液晶テレビ「BRAVIA」の40型「KDL-40F5」を用意した。
HDMI接続した状態で、テレビに付属の卓上電波リモコンから「リンクメニュー」を押すと、接続されたHDMI CEC対応機器が表示される。ここからPS3を選択すると、卓上リモコンでPS3のXMB(クロスメディアバー)が操作できるようになった。PS3が電源OFFの状態では、前述の操作を行なうと、PS3の電源がONになる。また、テレビの電源をOFFにすると、連動してPS3の電源もOFFになる。さらに、テレビ表示中にPS3の電源をONにすると、テレビの外部入力表示が、自動的にPS3を接続したHDMIへ切り替わる。
可能な操作は十字キーによる移動と、決定ボタン、戻るボタンで、XMBメニューから機能を選び、決定するといった基本操作は十分可能。戻るボタンはキャンセル機能や終了操作も担当しており、BDビデオ再生中に押すと、再生を終了してXMBメニューに戻るかどうかを聞く画面になる。また、映像再生中に十字キーの左右を押せば、早送り/巻き戻しが可能だ。
HDMI連携機器の覧に、PS3が表示される | 卓上リモコンからPS3のXMBメニューが操作できる | 卓上リモコンのボタン配置 |
なお、BDビデオ再生中にリモコンの「リンクメニュー」を再び押すと、BDビデオのトップメニューが表示された。また、リモコンの「オプション」を押すと、テレビ側の設定メニューが画面右側に表示される。この中から「接続機器操作」を選ぶと、中に「メニュー」、「オプション」、「リスト表示」の3項目がある。
「メニュー」は前述の「リンクメニュー」ボタンと同じ動きで、BDビデオ再生時にはトップメニューが表示される。「オプション」を選ぶと、映像再生中のオンスクリーンメニューが表示される。PS3のリモコンで言うところの「△」ボタンと同じ機能で、XMBメニュー画面でも「△」ボタンを押した時と同じ動作をする。
オプションボタンから、テレビ側の設定メニューを表示したところ | 設定メニューの中の「接続機器操作」に「メニュー」、「オプション」、「リスト表示」とある | オプションを選択すると、PS3のオンスクリーンメニューが表示された |
オンスクリーンメニュー内の移動や決定も可能であるため、細かな画質の設定や、ポップアップメニューなども、ここから選択できる。複雑な操作には若干工程が必要だが、基本操作はPS3のリモコンを一切使わずできて便利だ。
例えば「テレビを見終えたので、PS3を起動。入力表示をPS3が接続されたHDMI 1 に切り替え、XMBメニューからPlayStation Storeにアクセスし、新コンテンツをチェック。HDD内の写真や動画を再生させた後、挿入されているBDビデオを選んで再生。再生終了後にテレビと一緒にPS3の電源を切る」といった一連の操作も、テレビのリモコンで行なえる。「使いたいのにコントローラーが見あたらない」、「AV機能をメインに使っているので複雑な操作はほとんどしない」という場面が多い人には、便利に使える機能になりそうだ。
新型PS3は、ビットストリーム出力やHDMI CEC機能に対応したことで、本格的な最新AVアンプと組み合わせても“もったいなくない”、BDプレーヤーとしてより魅力的なモデルに進化した。ビットストリーム出力がPS3に対するアドバンテージだった単体BDプレーヤーにとっては、強力なライバルの登場とも言える。
動作音や消費電力の低減は本格的なオーディオ/シアタールームでも恩恵が大きく、さらにDTCP-IPに対応したことで、離れた場所にあるBDレコーダなどから、ネットワーク経由でデジタル放送の録画番組をシアタールームで楽しむといった使い方も可能になる。BDプレーヤーを越えたマルチなAVプレーヤーとして非常に強力かつ、隙の無い製品であり、これが29,980円で販売される事はAVやBD業界にとって大きなインパクトのある“事件”と言っても過言ではないだろう。
(2009年 9月 3日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]