Sony Tablet向けにも始まった「Video Unlimited」を体験

-タブレット画面を活かして検索/購入から再生まで完結


Sony TabletのPシリーズ(左)とSシリーズ(右)

 9月17日より順次発売されているSony TabletのPシリーズ/Sシリーズ。10月28日からは3G搭載のPシリーズも発売(20日よりソニーストアで予約開始)され、発表されたラインナップが出揃うことになる。Sony Tabletの特徴は、独特な本体デザインと、「サクサク・エクスペリエンス」による軽快な動作など。そして、ビデオ配信サービスの「Video Unlimited」に対応している。

 Video Unlimitedは、既報の通りネットワークサービスであるQriocityの再編により、「Video On Demand powered by Qriocity」から改称されたもの。既に液晶テレビBRAVIAやBlu-rayプレーヤー、PS3/PSP、Xperia、PC向けにサービスが始まっているが、新たにSony Tabletでも利用できるようになった。

 Sony Tabletの発売時点(9月20日~)では5タイトルのみの「プレオープン」状態だったが、10月13日より正式にタブレット向け配信がスタート。タブレット単体でストアにアクセスして、購入、ダウンロードして楽しむまで完結できることを訴求していくという。そこで、テレビ向けサービスとの違いなどについてレポートしたい。



■ ダウンロードしながら「今すぐ再生」が可能

タブレット向けVideo Unlimitedのトップ画面

 タブレット向けの販売方法はダウンロードのみとなり、画質はSD(480i)。テレビなどではストリーミング配信で、SD/HDが選べるが、タブレットの場合は購入時のダウンロード時間や、動画再生能力などから、SDのみになっているという。

 購入はテレビなどと同様にセル/レンタルが選択可能。レンタルは視聴期限が48~72時間(タイトルにより異なる)となっており、終了後はファイルとしては残るものの、再生するとエラー表示になる。再生期間が終了したファイルを自動で削除する機能は備えていない。

 料金はタイトルや新作/旧作などによって異なるが、レンタルの最多価格帯が200~600円、セルは2,000円前後。決済はクレジットカード、Edy、プレイステーションネットワークカード/チケットで行なえる。購入前にプレビュー再生することも可能で、プレビューはミニスクリーン/フルスクリーンから選べる。

 28日より発売されるPシリーズの3Gモデルの場合、無線LANが無い場所でもコンテンツの検索や購入までは可能。ただし、ダウンロードは無線LAN接続された状態でのみ行なえる。これは1作品の容量が大きいためだという。

ログイン画面コンテンツを選択ウォレットから購入したところ
タブレット本体で新規にクレジットカードを登録することも可能
ダウンロード時は無線LANに接続するよう要求される有効期限も案内されるダウンロード中でも「再生」ボタンで観られる

 購入したコンテンツは一旦「ダウンロードリスト」にまとめられ、複数を選択しておいてまとめて後でダウンロードすることが可能。ダウンロードリストに入れるまでの操作は3Gでも行なえるので、仕事帰りの電車のなかでコンテンツを選んで、家に着いたらダウンロードする、といった利用も可能だ。ダウンロードが終わる前に再生を開始できる「今すぐ再生」機能も搭載。ストリーミングサービスのように購入後すぐ再生できるのはうれしい。

 コンテンツは50社/500作品以上を販売。映画は「ガリバー旅行記(吹替版)」、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 1」、「ツーリスト」、「エクスペンダブルズ」など、ドラマは「スーパーナチュラル」全シーズン、「Fringe」1~3シーズン、「仁 -JIN- 完結編」など、アニメは「もしドラ」、「けいおん!!」、「機動戦士ガンダムUC」、「逆境無頼カイジ 破戒録篇」、「トワノクオン」などをラインナップしている。



■ コンテンツを探しやすいUI。「Throw」には未対応

作品選択時のPシリーズ(左)とSシリーズ(右)の画面の違い

 作品の検索方法は、PCで購入する場合などと同様に、「特集&オススメ」、「新着&もうすぐ終了」というカテゴリのほか、作品ジャンルで「洋画・海外ドラマ」、「邦画・海外ドラマ」、「アニメ」、「エンタメ・特撮」から探せる。テキストでのタイトル検索も可能。「80s」、「90s」といった年代別や、スタジオ別といった作品の検索も可能となっている。この辺りはPCのMedia Goを利用した場合と同様の使い勝手だが、特定のタイトルを探しているとき以外でも、自分の好みの作品を探しやすいと感じた。


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購入した動画の再生画面

 作品を選ぶと、画面の右側に関連する他の作品を「おすすめ」として表示。同じ出演者または監督による他の作品を検索できる。購入後の画面でも、購入したコンテンツの下に関連作品が表示される。おすすめ作品の表示はPCでMedia Goを使っている場合と少し異なり、「どのキャストが共通なのか」という情報まで表示されているのは親切だ。なお、購入した作品のレーティング(星5つで評価)もタブレット上で行なえる。

 タイトル数は、ドラマの複数エピソードを合わせると4,000~5,000以上とのことだが、コンテンツ数そのものよりも、劇場公開やBD/DVD発売のタイミングに合わせた配信開始や、“ここだけで観られる”といった作品の提供を重視するという。様々な動画配信サービスが存在するなか、コンテンツの量は似通ってくる傾向があるので、今後もタブレットならではのインターフェイスを活かしたコンテンツの探しやすさや、新たな作品との出会いを提供する方向に注力して欲しいと感じる。

 

購入した動画のプロパティ画面
 ダウンロード購入したコンテンツは、Android標準の「ビデオプレーヤー」アプリのファイルとして扱われ、同アプリでの再生となる。Video Unlimitedで購入したファイルのサムネイルの横には、再生期限がある動画であることを示すアイコンが付く。通常のビデオファイル再生時と同様に、Sシリーズ/Pシリーズで再生画面は若干異なり、Pシリーズは下画面が操作系の表示となる。なお、Sony Tabletの特徴であるDLNA連携の「Throw」はDRM付きコンテンツは対応していないため、テレビなどに再生動画を“飛ばす”ことはできない。DRMへの対応は検討中だという。

 

Pシリーズは、下の画面が操作ボタンの表示となるダウンロード購入した作品(一番左)にはアイコンがビデオプレーヤー以外に、Favorite画面からも再生できる


■ 購入後も、他の機器へムーブ可能。機器間の連携は改善に期待

PCソフトのMedia Go

 セルで購入したコンテンツはPCソフトの「Media Go」を使ってPC側にコピー/再生可能。レンタルしたコンテンツはPC転送時に「ムーブ」扱いとなり、タブレットからは消去される。PSP/Xperiaなど他の端末で観たい場合は、いったんPCにコピー/ムーブした後、PSPなどへ転送するという流れとなる。Media Go経由でPS3に転送/再生することも可能。ただし、タブレットで購入したコンテンツはSDのため、PS3からテレビの大画面で再生する用途には適さないだろう。

 なお、パソコンのVideo UnlimitedでHD画質で購入したコンテンツを、タブレットにMedia Go経由で転送することは可能。ただし、再生がスムーズに行なえない可能性があり、同社は推奨していない。

 

Media GoにSony Tabletを接続したところタブレットで購入したコンテンツが表示された
パソコンへ書き出し、再びタブレットに書き戻せる

 

 注意したいのは、テレビ向けストリーミングサービスとはコンテンツの扱いが別となるため、テレビで購入したコンテンツをタブレットを使って外出先で観たい場合にも、再度購入が必要となること。テレビ向け/タブレット向けは画質は異なるが、同じ作品なのだから1度の購入で観られるようにしてほしい。例えばHuluは、テレビで購入した作品を途中まで観て、続きをタブレットで観るということを実現している。Huluは全てストリーミングなのでVideo Unlimitedと事情は違うが、「端末を問わずコンテンツそのものを観たい」という欲求にシンプルに応えられるよう、今後の改善に期待したいところだ。

 Video Unlimitedのタブレットへの対応は、単に対応機種が拡大しただけでなく、検索/プレビューなどの画面や、3G通信と無線LANの使い分けなど、タブレットの利便性を活かしたサービスとしての完成度は高い。複数の端末で観たい場合にPCを介して転送するのは煩しくもあるが、「一度ダウンロードしたら終わり」とならないための救済策として納得できる。

 ダウンロードは無線LAN環境下でしか行なえないので、現状では外出先でダウンロードするには公衆無線LANや、テザリング対応スマートフォン/モバイルルータの利用などが想定される。Sony TabletはドコモのLTE通信「Xi」には対応していないが、スマートフォン/タブレットの一部新モデルはLTEやWiMAX対応が始まっている。回線状況が良くなって外出先でもダウンロードしやすくなれば、タブレットの機動性をさらに活かせるだろう。

 常にネット接続できるテレビとは異なり、モバイル向けのVideo Unlimitedは現状、再生が途切れないことを重視してダウンロード販売に絞っているとのこと。今後、通信回線環境の改善に合わせて、ダウンロード/ストリーミングの区別なく、外出先でもより高画質で観られるようになることにも期待したい。



(2011年 10月 20日)

[AV Watch編集部 中林暁]