“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”
第531回:いよいよ登場、ソニー流Android「Sony Tablet」
~AndroidでAV機能はどこまでやれるか!?~
■センセーショナルなデビュー?
左がSシリーズ、右がPシリーズ |
「VAIO Tablet」でも「BRAVIA Tablet」でもなく、大胆に社名を製品名として取り入れた「Sony Tablet」。最初の発表は4月26日で、当時はS1とS2という名前で紹介されたが、翌日にPSNとQriocityから大規模情報漏洩の可能性が発表されたことで、世間の注目が全部そちらに吸い取られてしまうという、不運なスタートを切ったマシンである。
Androidタブレットと言えば、携帯キャリア経由でサムスン、富士通などが参入、家電メーカーからはシャープ、東芝、パナソニックが、PCメーカーからはレノボ、NEC、ASUSらが参入しており、ネットブック以来の戦国時代を迎えようとしている。ここにソニーも参戦するわけで、同じOSを搭載しながらもどのように差別化していくかという点で、早くもPCと同じような構図が生まれつつあるのかもしれない。
さて、ソニーのタブレットは、9.4インチ平形のSシリーズが9月17日より発売、折りたたみ型のPシリーズが10月~11月となっている。今回は試作機のSシリーズとPシリーズをお借りしている。ここではより最終モデルに近いSシリーズを中心に見ていく。
すでにハードウェアとしてはPC Watchに詳しいレビューが上がっている。もちろんソニーが出すからには、AV機能をどのようにAndroid OS上で実現しているのかがポイントとなる。本レビューではそのあたりを中心に検証してみよう。
■性格の違う2モデル
SシリーズとPシリーズの違いだが、もちろん画面サイズが違う、折りたたみなのが違うといったところは見ただけでわかる。それ以上に性格がかなり違うことを把握しておく必要があるだろう。
まずラインナップだが、Sシリーズにはストレージ容量16GBと32GBのWi-Fi(無線LAN)モデル、16GBの3G+Wi-Fiモデルがある。一方PシリーズにはWi-Fiのみのモデルはなく、3G+Wi-Fiで4GBストレージと2GBのmicroSDが付属する。Sシリーズは家庭や室内で、Pシリーズはモバイルで使うもの、という明確な違いを持たせているようだ。
シリーズ名 | 通信機能 | 画面 | 内蔵メモリ | Android OS | 型番 | 店頭予想価格 | 発売時期 |
S | 無線LAN | 9.4型 | 16GB | 3.1 | SGPT111JP/S | 45,000円前後 | 9月17日 |
32GB | SGPT112JP/S | 53,000円前後 | 9月17日 | ||||
無線LAN+3G | 16GB | 3.2 | SGPT113JP/S | - | 10月~11月 | ||
P | 5.5型×2 | 4GB (2GB microSD付) | 3.2 | SGPT211JP/S | - | 10月~11月 |
9.4インチの平形、Sシリーズ | モバイルを意識したPシリーズ |
Sシリーズは数あるスレート型端末の中にあって、横から見るとくさび形をしているのが特徴である。本を折り返したような形になっており、厚みのあるほうに重心を置くことで、持ち運ぶときに軽く感じるようにしたという。
本を折り返したようなデザインがポイント | 右側には電源とボリューム |
左側はイヤホン、USB端子とSDカードスロット | 充電は底部の平形コネクタで行なう |
しかし室内で使うことを前提とした場合に、それほど持ち運び時に軽く感じることが重要だろうか。それよりも手に持って使っている時に軽く感じる方がメリットがある。
片側が分厚い。縦には持ちやすいが、横向きでは逆に重たく感じるのが気になる |
この形状の場合、縦では持ちやすいが、横向きに使う場合は重心があるほうが上になる。Android OSの場合、戻る、ホームなどのボタンが下にある関係で、どうしても本体の下をホールドすることになる。そうなると重心があるほうが上になるので、普通に視聴などするときに逆に重たくなる点が気になった。なお、分厚い側を下に持っても、Android OS側で、その向きに画面が回転しないように制限されている。
机に平置きしたときには、多少こちら側に傾斜が付くことになるが、そのままで視聴できるほどには起き上がっていないので、傾斜が付いているメリットはあまりない。他社がフラットで薄型の端末を出してくる中で、最薄部で10.1mm、最厚部で20.6mmというイレギュラーな形が本当にユーザーのために必要なのかという疑問が残る。
■ソニーオリジナルアプリをプリインストール
ではいよいよAV機能についてだが、アプリ一覧を見ると、紫のグラデーションをベースにしたシンプルなアイコンのアプリが沢山見える。これがソニーのタブレットにのみインストールされているオリジナルのアプリで、ここが他社との差別化、ということになる。
まずは内蔵カメラから見ていこう。リアは有効画素数511万画素の“Exmor for mobile” CMOSセンサー搭載のHDカメラとなっている。フロントの方は主にビデオチャット用として、30万画素の普通のCMOSカメラだ。
リアもフロントも撮影機能としては、静止画、動画に切り替えることができる。静止画には顔認識機能はないが、マクロへの切り替え機能があり、近接撮影も可能だ。シーンモードも風景やポートレートなど5つのモードを備えている。
シンプルなアイコンのソニーオリジナルアプリが並ぶ。紫のグラデーションデザインがそれだ | フロントにもカメラを備えている |
リアカメラ撮影解像度 | ||||
静止画 | 動画 | |||
モード名 | 解像度 | モード名 | 解像度 | ビットレート |
5M | 2,592×1,944ドット | High | 1,280×720/30fps | 約6Mbps |
3.6M | 2,048×1,536ドット | Low | 640×480/30fps | 約2Mbps |
2M | 1,632×1,224ドット | YouTube | 1,280×720/30fps | 約6Mbps |
VGA | 640×480ドット |
動画撮影では、画質設定がHigh、Low、YouTubeの3段階がある。HighとYouTubeの動画スペックが同じになっているのが妙だが、これは最終的には変更される可能性もある。また低速度撮影機能もあり、インターバル撮影も可能となっている。
動画・静止画が撮影可能なカメラアプリ | 動画にはインターバル撮影機能もある |
ローリングシャッター歪みはそれなりにあり、このあたりはいくらExmorとはいえどもモバイル用ということであろう。普通に撮影してもGOP単位で画質劣化が感じられる。製品版では改善されることを期待したい。
【動画サンプル】 high.mp4(13.1MB) | 【動画サンプル】 roll.mp4(12.8MB) |
Highモードで撮影した動画。GOP単位での画質劣化が見られる | ローリングシャッター歪みもあるが、モバイル機器としては標準的 |
動画編集アプリは特に搭載されていない。Android 3.x向けにAndroidの純正動画編集アプリ「Movie Studio」も発表されているが、現時点では本機にはプリインストールされていなかった。
次に音楽再生だが、オリジナルの「ミュージックプレーヤー」では、転送したアルバムジャケットを床にばらまいたような表示がユニークだ。これは指で場所を移動できるほか、タップで再生が始まる。せっかく場所移動できるのであれば、ジャケットを集めるとプレイリストが作れるとか、何か意味のある作業に繋がるとより良かっただろう。
「ミュージックプレーヤー」ではジャケットの扱いがユニーク | 12音解析でムードごとに曲を分類する「SensMe Channel」 |
またウォークマン等でおなじみの、12音解析によるムード別のセレクション「SensMe Channel」も利用可能だ。ウォークマンの場合はPCアプリで解析を行なうが、Sony Tabletでは本体側で解析させることもできる。ただプロセッサの性能がPCに比べると低いため、曲数にもよるが解析させると数時間~十数時間は覚悟が必要である。
音質補正技術も搭載 |
再生設定としては、以前からスマートフォンには搭載していた「xLOUD」を搭載した。これは小型スピーカーでも音割れせずに音量を大きく聞かせられる技術だ。もう一つの「Clear Phase」はDSPによる信号処理でスピーカーの音響特性を補正し、ノイズも補正するという技術だそうで、聞いた限りでは高域寄りに特性を変えて、ボーカル帯域が聞こえやすくなった。
両方をONにすると、小型スピーカーながらそこそこの音量で音楽を鳴らすことができる。低域が不足するのはさすがに仕方がないところだが、聴き疲れしない音である。このあたりが、ステレオスピーカーを搭載するSシリーズのメリットになるだろう。
■充実のリモート機能
ここまではローカルで楽しむためのアプリで、ある意味どのタブレットでも同じような機能がある。しかしソニーならではの外部機器連携機能もいろいろ揃っている。
Wi-FiでソニーのAV機器をコントロールする「Media Remote」 |
まずはリモコンである。「Media Remote」は、すでにiOSとAndroid向けに無償公開されているアプリで、Wi-Fiを使ってソニーのAV機器をリモート操作できる。動作検証用として今回はBRAVIA「KDL-32EX420」をお借りしているが、Sシリーズではうまく機器登録できなかった。他のAndroid端末では問題なくコントロールできているので、これも開発機だからだろう。
もう一つ、Sシリーズにはユニークなリモコン機能が組み込まれている。「リモコン」というシンプルなアプリで、これを使うとSシリーズ上部にある赤外線モジュールを使って、赤外線でのリモコン操作ができる。
さっそくテレビを登録してみよう。今回は同じソニー製のテレビなので、プリセットから選んでいくだけで簡単に登録できた。他社製品も多くのプリセットが仕込まれているので、ほとんどは「かんたん登録」で事足りるだろう。Wi-Fiでコントロールできる点でMedia Remoteの方が場所を選ばないが、「リモコン」は赤外線を照射するため、ネット非対応の他社製品にもある程度対応できるところがポイントである。
数ステップで登録できる「リモコン」アプリ | かなりのメーカーに対応 | テレビの赤外線リモコンとして使用できる |
プリセットのリモコンは、2パターンにわかれている。一つは「ジェスチャー」で、画面全体を使って十字方向に機能を割り付けるというもの。もう一つはフルリモコンで、通常のリモコンで可能な操作のほとんどにアクセスできる。
十字方向だけのシンプル操作「ジェスチャー」 | フル機能が使える「フルリモコン」 |
おなじみの学習リモコン機能も搭載 |
ビデオプレーヤーからテレビに向かってコンテンツを“Throw”できる |
プリセットにない機器は、自分でリモコンを学習させることができる。学習リモコンへの記録の仕方と同じで、各ボタンに一つ一つ機能を覚えさせていくことができる。どんなものでも記録できるのかと思ってコロナのエアコンのリモコンで試してみたが、うまく学習できなかった。他のAV機器は学習できたのだが、温度設定などもやりとりするエアコンは難しいようだ。
さてもう一つ面白い機能は、タブレットで再生中のコンテンツをテレビ側に投げることができる“Throw”機能である。本機にプリインストールの「ビデオプレーヤー」が“Throw”に対応しており、ネットワーク上の表示機器(レンダラー)に向かってコンテンツ画面を指で“投げる”ことができる。投げると、その表示機器で再生が始まるという仕組みだ。これはDLNAを使って実現している機能だという。映像だけでなく、音楽再生時も「ミュージックプレイヤー」から投げることができる。
指でコンテンツを“Throw”しているところ |
■楽しみが広がるネットワークコンテンツ
ソニーが他社と大きく違う点は、自社で数多くのネットワークサービスを有している点だ。これらもSony Tabletがその入り口となる。現時点ではまだ製品がリリースされていないためにオンラインサービスも動いていないが、簡単にラインナップだけ御紹介しておこう。
ビデオ配信サービスとしては、「Video Unlimited」がある。現在キュリオシティ ビデオオンデマンドという名称でサービスしているものが、今後この名前に変わるということだそうである。
新Readerアプリもまもなく登場 |
電子書籍Reader Storeも、このタブレットでサポートする。発売されている電子書籍端末の「Reader」はWi-Fiをサポートしていなかったため、いったんPCで電子書籍を購入したあと、ハードウェアに転送していた。タブレットでは当然Wi-Fiも搭載しているため、ダイレクトにストアから購入できるようになるようだ。
ゲームは「みんなのGOLF2」と「ピンボールヒーローズ」の2本がプリインストールされているが、PlayStation Storeにも、このタブレットからアクセスできるようになり、ゲームの購入も可能になる。Androidに移植された初代PS用のゲームも楽しめるようだ。
「Select App」は、Androidマーケットにあるアプリからソニーがレコメンドするサービス。ドコモ端末における「ドコモマーケット」のようなものなのかもしれない。そのほか地図サービスの「PetaMap」、ライフログの「Life-X」、写真・動画共有に「Personal Space」もサービスインを予定している。
■総論
ユニークな形状が注目を集めているSony Tablet。買うならどっちのモデルか悩むところではあるが、最大の差別化はハードウェアというよりも、独自アプリのユニークさになるだろう。PCのVAIOもその傾向が強かったが、PCの場合はビジネス向けの側面も強いことから、エンタテイメント色が強いアプリケーションのプリインストールが敬遠されることもあった。
しかしタブレットの場合、サイズが小さければビジネス向け、あるいはクリエイティブの用途は次第に低くなり、ビューワー、ブラウザ的傾向が強くなる。様々なメディアやコンテンツにアクセスするためのマルチ端末、ということになれば、AV機能に強いソニーにはかなり有利だろう。
AV機器との組み合わせでは、やはりソニー製品を持っていないと面白くない部分も多分にあるが、多彩なネットワークサービスに対応できることで、時には電子書籍端末、時にはVOD端末、時にはゲーム端末と、サービスの入り口としての役割を果たすことになる。
ただ現時点でソニーがやっているネットワークサービスはあまりにも広範囲で、継ぎ足し継ぎ足しの箱根の温泉旅館みたいなことになっており、筆者にはどこに登録したのか今となってはさっぱりわからなくなっている。この端末をきっかけにしてもうちょっといろんなサービスを整理統合して、オトナが落ち着いて楽しめるネットサービスが展開されることを期待したい。