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【11月30日】 【11月29日】 【11月28日】 |
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■ 小音量でサラウンド環境を実現?
International CES 2004の会期中に発表されたNIROの新シリーズ「NIRO1.1 REFERENCE」と「NIRO1.1 MovieMouse」の発売が、6月に延期された。その理由を中道仁郎社長は「より完成度を高めるため」としているが、消費者としてはやはり、一度発表になったものはスケジュール通りに発売して欲しいところ。何か問題があったのかと、余計な勘繰りをしてしまう。発表では「デジタル音声入力の追加など、仕様を強化するため」となっており、どうやらレシーバー部が強化されるようだ。 それはともかく、NIRO1.1 MovieMouseのスピーカー部分をNIRO 1.1およびNIRO1.1 PROのオプションとして発売する「MovieMouseスピーカー」がリリースされた。取り扱いはサイトでの直販のみで、直販価格は19,800円。NIRO1.1 STD/PROのスピーカーと取り替えて使用する。 MovieMouseのコンセプトは、スピーカーを手元に近づけることで、「小さな音量や自由なスタイルで5.1ch再生を楽しめる」というもの。単純にいえば、NIRO1.1 STD/PROの前方スピーカーを小型化し、長いケーブルで手元に引き寄せられるようにした製品といえる。家電店で見かける「コード付きテレビスピーカー」のサラウンド版のようなものだ。
製品化のきっかけは、アンケート結果から判明したNIRO1.1 STD/PRO利用者の使用環境だという。中でも「夜遅くに視聴している」、「周囲への音漏れが気になり、音量を上げられない」という声が多いそうだ。そこで、NIRO1.1 STD/PROの技術を応用し、小音量でサラウンド感を失わない方法をMovieMouseで実現したという。 大抵のAVアンプや5.1chシステムにはダイナミックレンジ圧縮機能が付いているものの、DTSには適用できなかったり、音の切れが失われるなどの弊害も大きい。そもそも、レンジが狭まれば、その分臨場感は失われる。サラウンドヘッドフォンを使うという手もあるが、音質を損なうことなく頭内定位の問題を完全に解消するのは難しい。とかく音漏れについては、悩みを抱えている読者も多いだろう。もしMovieMouseの売り文句がが本当なら、ストレスのない大音量環境を手軽に実現できることになる。 ■ 本体色が急遽シルバーに変更
MovieMouseとリスナーの距離は推奨で1mほどで、リスナーの斜め下方向に設置する。説明書には0.5m、または1.5~2mの例が記されていた。利用シーンとしては、ディスプレイとリスナーの間のテーブル、机、床、膝などの上に置くことを想定しているようだ。 搭載するスピーカーユニットは4cm径のフルレンジスピーカー5個で、それぞれがセンター、フロントL/R、リアL/Rの5chに対応。ユニットの数こそNIRO1.1 PROと同じだが、真上、または斜め上を向いて取り付けられているが特徴だ。 もちろん、各チャンネルが単にディスクリートで出力されているわけではなく、NIRO1.1 STD/PROと同じく、レシーバ側でDSPによる独自の処理を行なっている。なお、サブウーファはNIRO1.1 STD/PROのものをそのまま利用する。 エンクロージャはプラスチック製。がっしりとしており、表面処理が美しく、高級感もある。なお、製品発表時の塗装は、NIRO1.1 STD/PROのサブウーファと同じイメージのダークグリーンだったが、製品版ではシルバーになっている。なぜ変更したのかについては、「もっとライトなイメージにしたかった」、「ダークグリーンだと指紋が目立つ」との理由からだという。 レシーバとの接続は、MovieMouseに直付けのケーブル(7m)で行なう。また、MovieMouseに付属する専用延長ケーブル(1m)も利用できる。延長ケーブルをレシーバにセットし、レシーバ前方に延長ケーブルのコネクタをまわしておけば、標準スピーカーとMovieMouseの付け替えが容易になるというアイデアだ。
外形寸法は281×189×63mm(幅×奥行き×高さ)。底面積はB5ノートパソコンより若干小さい程度で、それなりに場所をとる。しかもなるべく真正面に設置したいので、机上に置いて「仕事をしながら」という利用法は少々難しいかもしれない。また、ボリュームなど基本操作がMovieMouseでできれば良かったと思う。 重量は0.8kg。持ち運ぶのに苦労はない。ケーブルのシースが柔軟なため、取り回しも楽だ。くつろぐときはテーブルの上、勉強のときは机の上といった具合に、頻繁な移動にも対応できるだろう。とりあえず今回は、リクライニングチェアのすぐ前に家具調コタツを置き、その上にMovieMouseを設置してみた。 ■ しっかりとサラウンド感を再現、音質も予想以上の品質
サラウンド収録のDVDビデオを再生して気付いたのは、実際の音はすぐ近くから出ているはずなのに、画面の方向、つまり前方からからセンターチャンネルの音が聴こえること。左右の音も大きく広がる。 左右の移動音も鋭く、斜め前方の定位もそれなりに感じられ、ステレオイメージはしっかり再現されている。付属の標準スピーカーに比べると音場の濃密さは劣るものの、手元に置いた1個のスピーカーが鳴っているとは思えないほどの臨場感が得られている。また、椅子の中で大きく姿勢を変えても、臨場感にそれほど変化がない。スイートスポットはかなり広いようだ。 音質は中高音が滑らかで、比較的解像度の高い印象。セリフもクリアだ。音質的には下手な5.1chシステムよりも上質に感じた。サブウーファとMovieMouseとのつながりも目だって不自然ではない。スイープ信号を再生すると、再生帯域にいくつか谷があるようだが、実際の視聴ではそれほど気にならなかった。 ただし標準スピーカーに比べると音の密度が低く、全体的に軽い印象を受ける。比較的きれいな音だが、標準スピーカーの代わりになるものではないと判断したい。基本的には標準スピーカーを使用し、夜間などにMovieMouseに付け替えるという利用法が一番しっくりくるだろう。すでにNIRO1.1 STD/PROを所有し、隣室への音漏れを気にしているなら、導入を一考する価値はある。 さらに聴き込んでいると、ソースによっては音が手前で鳴っている印象を受けることもあった。具体的には、アタックの強い音が手元で聴こえる。特に、画面を見る必要のない音楽CDでは、その傾向が顕著に感じられる。メデスキー・マーティン&ウッドなら、ドラムがMovieMouseから、オルガンが2mほど前方、ブラスが3mほど前方といった印象。画面がないことで、より音の位置に対して敏感になるのだろうか。この辺りの感覚は、個人差が出る部分だと思う。 普段聴いている程度の音量にして隣の部屋に行くと、確かにいつもより音漏れが少ないことを確認した。もっとも、MovieMouseにより中高音のレベルが下げられたとしても、サブウーファが担当する低域はそのままだ。説明書では、MovieMouse使用時の設定として「高域を+5dBに」すると同時に「サブウーファレベルを-5dBにする」ことを薦めている。階下への振動などが気になっているなら、低域にはこれまで通り気を使った方が良いだろう。 ■ 上級機「TWO6.1-C」も直販を開始
今回は、Web直販を開始したばかりの上級機「TWO6.1-C」も試してみた。2003年5月に店頭で販売を開始した製品で、前後2つのスピーカーで5.1chや6.1chを再生するというシステム「TWO6.1」のコンパクトモデルだ。技術的には、その後発売されたNIRO1.1 STD/PROの前身にあたる。 特徴は、センター、フロントL/R、リアセンター、リアL/Rの計6chを、フロントとリアの2つのスピーカーから出力すること。それぞれのスピーカーに3つのユニットが組み込まれており、丁度、フロントスピーカーだけのNIRO1.1 STDに、リアスピーカーを追加した構成に似ている。そのため、TWO6.1-Cは、後方の音場もきちんと再現したいという人に向けたものだ。 また、ドルビーデジタルEX、DTS-ESといった6.1chフォーマットの出力を標準でサポートするのもうれしい点。6.1ch、あるいは7.1ch分のリアルスピーカーを用意するのは、価格や設置の面で敷居が高いが、これなら気軽に導入できそうだ。 ただし、DVDプレーヤー、デジタルアンプ、AM/FMチューナを一体化したNIRO1.1 STD/PROに対し、TWO6.1-Cにはアナログアンプ採用の6.1ch AVアンプとしての機能しかない。すでにDVDプレーヤーなど、各種機材を揃えている人向けの製品となる。価格も207,900円と、NIRO1.1 STD/PROに比べると高価だ。 アンプの出力は30W×6ch。ユニット構成は、フロントが3.5インチミッドウーファと1インチツイータの2ウェイ構成を3ch分、リアが3インチフルレンジユニットを3ch分を搭載する。サブウーファは、パッシブ式だったNIRO1.1 STD/PROと異なり、出力150Wのアクティブ式。サブウーファの搭載ユニットは、密閉式の8インチ径と、パッシブラジエータ式の8インチ径×2個の計3個となっている。
今回はデノンのユニバーサルプレーヤー「DVD-A11」をつないで視聴してみた。サラウンドの包囲感は、やはりNIRO1.1 STD/PROを上回っている。後方から前方にかけて抜ける音や、後方を移動する音も再現しており、特にドルビーデジタルEXやDTS-ESの臨場感が上質で、多チャンネルフォーマットの効果をしっかりと確認できた。NIRO1.1 STD/PROと同じく、スイートスポットも広い。サブウーファからのLEFも比較的鋭い。本格的なリアルスピーカーでのシステムに比べると、もう少し定位感や音圧が欲しくなるが、これだけの音質と手軽さを両立させた点で評価できる。 音楽CDの音も高品質。ライドシンバルやドラムのアタックがきれいに決まり、ピアノの和音も微妙な指のズレまで感じられるほど。ブラッシュも埋もれず、余韻も長い。ただし、全体的にはしっとり系の音で、響きを引き出している印象だ。個人的には中高域のもう少しハリや明るさがあれば好みだと感じた。 機能は比較的シンプルで、ドルビーデジタル、DTS、DTS-ES、AAC、PCMを判別し、2.1ch、5.1ch、6.1chでそれぞれ自動的に出力する。ただし、ドルビーデジタルEXだけは手動で設定しないと5.1chで再生されてしまう。また、2chにはドルビープロロジック II(シネマ/ミュージック)、あるいはNeo:6(シネマ/ミュージック)を適用することができる。
入力はS映像/コンポジット×4(うち前面1)、光デジタル音声×2(うち前面1)、同軸デジタル音声×3、アナログ2ch音声×4(うち前面1)。出力は、S映像/コンポジット×2、同軸デジタル×1、アナログ2ch音声×1、ヘッドフォン×1(前面)、サブウーファプリアウト×1となっている。 外形寸法は、アンプ部が430×371×92mm(幅×奥行き×高さ)、フロントスピーカーが360×195×156mm(同)、リアスピーカーが280×142×130mm(同)、サブウーファが325×325×311mm(同)。重量はそれぞれ8.3kg、4.1kg、2.2kg、12.7kgとなっている。 後方にスピーカーをずらりと並べることなく、ドルビーデジタルEXとDTS-ESをそのまま再生できるのはうれしい限りだ。また、高価なだけあって、NIRO1.1 STD/PROより音質やサラウンドの再現力は高い。ただし、せっかく6.1ch分のスピーカーがあるのにドルビーデジタルIIxに対応していないなど、AVアンプとしての設計の古さは否めない。 とはいえ、設置面から6.1/7.1chをあきらめている人や、NIRO1.1 STD/PROでは臨場感に不安のある方なら、導入を検討してみるのも良いだろう。
□niro1.comのホームページ
(2004年4月28日) [AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]
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