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2005 International CESレポート 【サラウンド規格編】
Blu-ray/HD DVD時代のドルビー/DTSの新フォーマット


会期:1月6~9日(現地時間)

会場:Las Vegas Convention Center
    Las Vegas Hilton Hotel
    Alexis Park Hotel


 International CES 2005では、ブルーレイとHD DVDの次世代規格争いが大きなトピックとなった。あわせてDTSやDolbyもHD世代のパッケージメディアに向けたサラウンドフォーマットを発表している。今回は各サラウンドフォーマットの最新動向を紹介する。


■ DTS、デモディスクVolume9を配布

DTSブース内特設シアター

 DTSブースでは、今年も、DTSサラウンドを体感できる特設シアターブースを設置。

 整理券による指定人数制の形態を取っており、来場者全員に最新の映像クリップとDTSサラウンドトラックが楽しめるデモディスクがプレゼントされるとあって、人出が減リはじめた最終日の10日でも、人気スポットとなっていた。


デモで使われていたのはCrystalView製3管プロジェクタ「CV1 9" CRT PROJECTOR」。1,200ANSIルーメン、コントラスト比10,000:1。解像度は2,048×1,536ドットというモンスタースペック DTSデモディスクVolume9

    ●映像+DTSサウンドトラック
    01.HERO/BLUEROOM
    02.HERO/ARROWS
    03.MASTER AND COMMANDER:THE FAR SIDE OF THE WORLD
    04.THE LORD OF THE RINGS:THE RETURN OF THE KING(DTS:ES-6.1Discrete)
    05.I,ROBOT
    06.THE DAY AFTER TOMORROW
    07.KILL BILL VOLUME1
    08.KILL BILL VOLUME2
    09.GHOST IN THE SHELL2:INNOCENCE(DTS:ES-6.1Discrete)
    10.BLUE MAN GROUP(DTS:96/24)
    11.THE CRYSTAL METHOD/BORN TOO SLOW(DTS:ES-6.1Discrete)
    ●DTSサウンドトラックのみ
    12.SIMPLE MINDS/ALIVE AND KICKING(DTS:96/24)
    13.THE POLYPHONIC SPREE/HOLD ME NOW
    14.PORCUPINE TREE/SOUND OF MUZAK
    15.LTJ BUKEM/UNCONDITIONAL LOVE(QUINTET PLAYS RECONDIONED LOVE REMIX) (DTS:ES-6.1Discrete)
    16.SWEDISH RADIO/THE RUN

 なお、DTSのご協力により、このデモディスクを読者プレゼントとして5枚頂いた。こちらのページから応募して欲しい。



■ 来るべきHD DVDとBlu-ray時代に向けたDTSの取り組み

 DTSは次世代DVDといわれるHD DVDとBlu-ray Disc(以下BD)のHD映像コンテンツのサウンドトラックフォーマットとして2004年10月末に「DTS-HD」を発表した。今回、このDTS-HDについて、現在までに決まっている情報は、DTSのPR担当のPAUL WOOTEN氏に聞いた。

7.1ch分のスピーカーのレイアウト

 まず、DTS-HDは、2005年1月時点でHD DVDにおけるオプション扱い、BDではコンテンツメーカー側がドルビーデジタル系と同列に選択可能なフォーマットになったという。もちろんセルベースでのHD DVDソフトやBDソフトは、まだ登場前なので、将来的にどのフォーマットが多く採用されるかはわからない。

 DTS-HDは、今回、「DTS」に「HD」を付加し、新しいフォーマットのようにブランディングしているが、実は基本技術自体は'96年に開発された「DTS Coherent Acoustics」をほぼそのまま活用している。DTS-HDでは、オリジナルDTSがもともと持っていたロスレス(可逆)圧縮モードを活用して、7.1chサラウンドを実現するという。

 7.1chのDTS Coherent Acousticsロスレスモードは、技術として存在はしていたが、DVDメディアの容量や転送速度、DSP側の演算速度がボトルネックとなり、これまでほとんど実用化されていなかったとのこと。次世代DVDメディアの容量アップ、データ伝送レートの高速化、DSPチップの高性能化により、やっと日の目を見ることになったというわけだ。

 第1世代のDTS-HDでは7.1chを基本とするものの、DTS Coherent Acoustics自体は2,048チャンネルまでサポートできる設計であるため、かって初代DTSが5.1chが6.1chに拡張されたように、DTS-HDもチャンネル数の拡張はあるかもしれない、とのこと。7.1chの内訳は、6.1chのリアセンターをデュアル化する。


取材協力して頂いたDTSのPR担当のPAUL WOOTEN氏。彼の尽力により、同社プレゼント用のデモディスクを用意していただいた

 気になる互換性だが、DTS-HDのストリームには現行DTSのストリームが含まれるため、現行のDTS対応のAVデコーダアンプで再生は可能。いうまでもないだろうが、7.1chのロスレスDTS-HDモードの再生には、対応AVデコーダアンプが必要になる。

 DTSでは2005年12月までに、各社からDTS-HD対応デコーダアンプが登場すると予測。HD DVDやBDのROMタイトルも2005年第4四半期のリリースが予定されているので、その頃にはAVアンプ側の対応も進むということだろう。ともあれ、ハードウェアがあるのにソフトウェアがないという事態だけは避けたいところだ。


□関連記事
【2004年10月28日】DTS、BD/HD DVD向けのオーディオコーデック「DTS-HD」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041028/dts.htm


■ DolbyはDolby Digital Plusのデモを実演
  ~Dolby Digital Plusの仕様は?

Dolbyブース

 一方、Dolbyブースでは、特設シアターにて、1080pのHD映像(ハイビジョン)と、次世代DVD向けフォーマットであるDolby Digital Plusのサラウンドサウンドがいち早く楽しめるデモを公開した。

 Dolby Digital Plus(以下DD+)とはなにか、これについて、DolbyのPRマネージャ、Adam J.Anderson氏に説明して頂いた。

 DD+は、HD DVDに正式採用が決まったサウンドトラックフォーマットで、現行DVDに引き続き、HD DVDでもスタンダードとなる。これに対し、BDでは、2005年1月時点においては、DD+が採用されるかどうかは決まっておらず、現在、BDで採用が確定しているのは現行のドルビーデジタルのサポートまでだという。

Dolbyブース内で行われたDolbyDigitalPlusデモ。次世代DVDによる映像とオーディオをバーチャルに楽しめるのはこのブースだけ、ということで注目度は高かった。ちなみに、再生に用いられた機材はHD DVDやBDの試作プレイヤーではなくPC Dolby Digital Plusのロゴ

 サポートされるチャンネル数はこちらもやはり7.1chが基本となり、6.1chの後方センターをデュアル化したイメージになる。ただし、DD+には、5.1chのソリューションも設定され、この場合はスピーカのレイアウトは現行Dolby Digitalと全く同じになる。なお、これはチャンネル構成が5.1chなだけで、音質はDD+クオリティということだ。

 Anderson氏は「7.1chを基本とする方針だが、もしかすると、ローエンド向けのAVアンプ製品の中には、5.1ch分しかサポートしない製品も出てくるかもしれない」と予測する。

特設シアター内で公開されたDolby Digital Plus、5.1chソリューションのデモ こちらはDolby Digital Plus、7.1chソリューションのデモ

 DD+は、フォーマット的には最大13.1chまでをサポートできるような設計になっており、時代が一層の多チャンネル化を求めてきた場合にはこの範囲で対応可能としている。

 ビットレートは最大6Mbpsまで。現行ドルビーデジタルが640kbpsまでだったことを考えると10倍に拡張されたことになる。圧縮方式は現行Dolby Digitalをエンハンスした、同系のロッシー(非可逆)圧縮だが、アルゴリズムの改良とビットレート上限の拡大により、クオリティは各段に向上しているという。

HD映像+5.1chのMLP可逆圧縮方式オーディオのデモ。DD+でのロスレスはMLPを活用

 それではDolby系ではロスレスのソリューションはないのかというと、そういうわけでもない。高音質が要求されるソフトには、DVD-Audioのロスレス圧縮で採用されたMLP(Meridian Lossless Packing)方式の活用で対応する。MLPの仕様は従来通りでサラウンドサウンドは24bit/96kHzで、ステレオサウンドは24bit/192kHzでの対応になる。

 現行ドルビーデジタルとの互換性についてだが、これは完全下位互換がサポートされる。DD+ストリームには、従来の640kbps以下のドルビーデジタルストリームが織り込まれており、現行のAVデコーダアンプでは、これが有効ストリームとして再生される。


取材協力頂いたDolbyのPRマネージャ、Adam J.Anderson氏

 ところで、DTS HDにしろDD+にしろ、次世代DVD向けサウンドトラックのオーディオストリームはどのように伝送するのだろうか?

 現在は、同軸デジタルや光デジタルでDVDプレーヤーとAVアンプを接続している人がほとんどだろう。しかし、現行DTSやドルビーデジタルでは、数百kbpsだったオーディオストリーム伝送レートは、DTS-HD、DD+では数Mbpsと10倍近く高速化されるため、現行のデジタルケーブルでは心許なくなる。また、著作権保護の観点からも現行の方式を使い続けるのは限界がある。

 これについては、次世代のオーディオストリーム伝送ケーブルとしてはHDMI(High Definition Multimedia Interface)を標準とする動きになっているという。なお、HDMIは、映像と音声の双方を著作権保護機能付きでデジタル伝送する仕組みだ。オーディオのみを伝送したいという用途には、IEEE 1394を推すメーカーもあるかもしれない、とのこと。



■ その他、Dolbyブースに展示されていた注目アイテム

ミニデコーダボックスはドルビーデジタルのほか、プロロジックII、ドルビーヘッドフォンのデコードに対応する

 Dolbyのブース内には、今年もドルビーデジタル関連製品の新作が数多く展示されていた。その中でも興味深いものをピックアップして紹介したいと思う。

 「Thrustmaster T510」は、バーチャルサラウンドを実現するヘッドフォンだが、ユニークなのは、ドルビーデジタルのデコーダとバーチャルサラウンドプロセッサをマッチ箱程度のユニットに凝縮してしまっている点だ。さらに、DVDプレイヤーやPS2やXboxなどの光デジタル出力端子と直結して使用できる。

 ヘッドフォンに内蔵されたドライバユニットは左右1基ずつで、バーチャルサラウンドはHRTF(Head-Related Transfer Function;頭部伝達関数)ベースの技術によって実現される。

 イギリスでは近日中に発売、北米は春頃、価格は150ドル前後。日本での発売は未定となっている。

 三菱電機「WD-62825」は120GBハードディスク搭載のビデオレコーダを内蔵した単板式DLPリアプロTVだが、そのビデオレコーディングの際のサウンドトラック記録にドルビーデジタル方式を採用しているのが特徴。現在は2chステレオだが、次世代機では5.1ch記録対応が予定されている。

Dolbyによれば、DCR-DVD403が世界初のDolbyDigitalCreatorチップ搭載のビデオカメラになるという 画面サイズは62V型、パネル解像度は1,280×720ドット。録画解像度はSD解像度限定。価格は499ドル

DualDiscは北米では2004年末よりリリースが開始されている

 「Dual-Disc」はDVDオーディオとCDを融合する新メディア。1枚の12cmディスクメディアの片面にCDオーディオ、裏面にはDVDオーディオを記録し、フリッパブル(裏返しても再生可能な)を実現している。

 レコード会社としては、いまいち踏み切れなかったDVDオーディオへの本格参入を手助け、アーティストとしてはアイディア次第でそれぞれのメディアの特性を活かしたユニークなコンテンツを入れられるようになり、表現の幅が広がる。ユーザーの立場としては、家にいるときは自慢のサラウンドシステムでDVDオーディオトラックを高音質に楽しみ、車のカーステレオやポータブルプレイヤーではCDトラックを楽しむといった活用が可能になる。

 5.1 Entertainment/Silverline Recordsは2004年12月、ドルビーヘッドフォンエンコードしたトラックを収録したDualDiscの販売方針を発表。これを受けてDolbyブースでのプロモーションを行なっていた。


□関連記事
【2004年8月26日】片面CD/片面DVDの両面ディスク“DualDisc”発表
-Waner Musicや、Sony BMG、Universalなどが導入へ
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040826/dualdisc.htm

ロゴマーク。PCやその関連製品にはそのグレードに応じてこのロゴステッカーが貼られる

 DolbyとIntelが推奨するPCにおけるサウンドクオリティの認証プログラムについても解説されている

 プログラムは、そのPCがサポートするDolbyのオーディオテクノロジーの種類や品質に応じて「Dolby Master Studio」、「Dolby Home Theater」、「Dolby Sound Room」のロゴがその製品に与えられる。サポートターゲットとなるDolbyテクノロジーはDolby Headphone、Dolby Virtual Speaker、Dolby Digital Live、Dolby Pro LogicIIxなど。

 Dolby Master Studioは最大7.1ch再生までをサポートしたハイエンドシステム、Dolby Home Theaterはホームシアター用途に必要十分なクオリティを満たすシステム、Dolby Sound Roomは2chステレオスピーカやヘッドフォンでバーチャルサラウンドが楽しめるカジュアルクラスのシステムに相当する。

 この仕組みにより、ユーザは自分の用途や求めるクオリティに応じて柔軟でわかりやすい製品選択が出来るようになる。THXが行なっている「THX Multimedia」ロゴ認証のDolby版だ。

ブースに展示されていたのはDolby Master Studioのオレンジ色のロゴが貼り付けられていたZT labs製「Q-Media PC」 ロゴマーク。PCやその関連製品にはそのグレードに応じてこのロゴステッカーが貼られる


■ THXはTHX Select2システムを展示

THXブース

 THXブースでは、新たに発表されたTHX Selcet2の詳細を伝える内容でブースを展開した。

 THXはサウンド再生システムやサウンド制作現場のクオリティ認証を行なう企業だが、既存のサラウンドフォーマットを独自の技術で拡張再生する仕組みも提供している。

 その代表格がTHX Ultra2とTHX Selectなのだが、今回、このTHX SelectがTHX Selcet2へとアップデートされた。

 2年前より提供されているハイエンドシステム向けのTHX Ultra2は3,000ft3(約85m3/約20畳程度)をターゲットにした規格だが、THX Select2は先代のTHX Selectと同様に2,000ft3(約57m3/約15畳程度)の広さをターゲットにしている。どちらが良い、悪いという概念はなく、部屋の広さにマッチしたものを選べばよいことになっている。

 THX Selectに対して、THX Select2の一番大きな違いは、「THX Games Mode」というゲーム向けの音場プログラムが追加されたという点。昨年のInternational CESではTHX Ultra2に「THX Games Mode」が追加されたことを報じたが、今年はTHX Selectに「THX Games Mode」が追加されたというわけだ。

 なお、THX担当者によれば、今のところ、次世代DVDのサウンドトラックに関しての関連技術の発表はないとのこと。

 なお、THX Ultra2とTHX Select2の仕様の違いを以下にまとめたので参考にして欲しい。

ブース内には、THX Select2にいち早く対応するパイオニアのAVデコーダアンプ「VSX-1015TX」を展示。価格は650ドル、発売時期は2005年4月頃を予定。なお、これ以外にも、この春には他社からも続々とTHX Select2対応の製品が出てくるという

THX Ultra2THX Select2
チャンネル負荷容量3.2Ωフロント4Ω/
サラウンド8Ω
連続テスト可能チャンネル同時に1、4、5ch1chのみ
バーストテスト5ch全ch
(ただしより高いインピーダンスで、
なおかつより低い電圧で)
ピーク電流18Aフロント12.5A/
サラウンド6.2A
対象とするスペース3,000ft3
(約85m3/約20畳程度)
2,000ft3
(約57m3/約15畳程度)
テクノロジーTimbre Match
Adaptive Decorrelation
Adaptive Speaker Array(ASA)
Boundary Gain Control(BGC)-
モード THX Cinema
THX Surround EX
THX Ultra2 Cinema-
THX Muisc Mode
THX Game Mode
増幅可能チャンネル数7.1ch7.1/6.1/5.1ch
サブウーファ領域20Hzまで35Hzまで

□2005 International CESのホームページ
http://www.cesweb.org/
□関連記事
【2005 International CES レポートリンク集】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/link/ces2005.htm

(2005年1月14日)

[Reported by トライゼット西川善司]


= 西川善司 =  遊びに行った先の友人宅のテレビですら調整し始めるほどの真性の大画面マニア。映画DVDのタイトル所持数は500を超えるほどの映画マニアでもある。現在愛用のプロジェクタはビクターDLA-G10と東芝TDP-MT8J。夢は三板式DLPの導入。
 本誌ではInternational CES 2004をレポート。渡米のたびに米国盤DVDを大量に買い込むことが習慣化している。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。

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