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DVDフォーラムは27日、次世代DVD規格「HD DVD」の最新動向を紹介するフォーラムメンバーや関連業界向けの展示会「HD DVD JAPAN 2005」を開催した。 ■ HD DVD関連の規格化作業が進む 会場では、HD DVDの最新動向のプレゼンテーションが行なわれた。従来から強調されている現行DVDディスク製造設備との継続性や、共通部品化、インタラクティブ機能などについて説明されたほか、HD DVD-ROM Ver.1.1で8cmのHD DVD-ROMも規格化されたという。なお、HD DVD-R/RWの2層規格についてはまだ策定していない。 また、現行DVDと同じ物理フォーマット(DVD9)を用いながら、HD DVD-ROMと同様のUDF 2.5ファイルシステムと、AACSによる著作権保護機能を採用し、アプリケーションフォーマットとしてHD DVD-Videoを採用したHD収録のDVDディスク(3X DVD-ROM)も用意される。MPEG-4 AVC(H.264)などの圧縮フォーマットを利用すれば、2層のDVD-ROMでも約2時間のHD映像を収録可能という。
2層両面60GBディスクや、1層HD DVD/1層DVDの2層ハイブリッドディスクなども紹介された。なお、THOMSONがDVDフォーラムに提案していた、H.264/MPEG-4 AVCコーデック用のフィルム・グレイン技術は、4月にLetter Voting(Steering Committeeメンバーによるメールでの投票)により、アプリケーションフォーマット「HD DVD-Video」規格の必須技術として採用され、HD DVD-ROMプレーヤーでの実装が義務づけられる。
現行のDVDでは、ビデオ用のアプリケーションフォーマットと、オーディオディスク用のDVD-Audioが用意されているが、HD DVDではビデオ規格に全て統合される。HD DVD-Videoでは、必須オーディオコーデックとして、ロスレスはリニアPCMとMLP(2ch)、圧縮コーデックとしてドルビーデジタル/ドルビーデジタル+、DTS-HD、MPEGオーディオが定義されている。 既にHD DVDのディスク規格はVer.1.0が発行されており、7月にはファイルフォーマットやアプリケーションフォーマットのVer.1.0を策定予定。 ■ HD DVDドライブの年内発売に目処 東芝、三洋、NECなどのHD DVD推進各社では対応プレーヤーやドライブを参考出展。しかし、東芝、三洋ともCESやCeBITでの展示内容から大きなアップデートは無く、東芝はインタラクティブメニューやネット連携機能などのHD DVD-Videoの新機能をデモ、三洋はHD DVD-ROMの再生デモなどを実施した。
NECもハードウェア的にはCeBITから大きな変化はないものの、量産試作機での映像再生デモを行なっている。7月からはISVなど関連メーカーや、PCメーカー、周辺機器メーカーへのサンプル出荷も予定しており、今秋から遅くても年内には対応製品の発売が見込まれる。HD DVD-R/RWの記録型ドライブについても年内の出荷予定。 なお、今回のデモでは、USB 2.0の外付け型ドライブからHD映像を読み出していたが、製品化時には著作権保護機能のないUSBから、HD DVD-ROMの映画コンテンツなどを出力できなくなる見込み。NECでは内蔵型を中心にビジネス展開する予定だが、外付け型ではコンテンツ保護機能を持ったi.LINKが有力になる可能性もあり、HD DVDと著作権保護機能であるAACSにより、PCの周辺機器の分野にも大きな変化が起きそうだ。
■ HDMI非対応テレビでもHD出力の可能性が また、HD DVDおよびBlu-ray DiscのROM規格、つまり次世代のHDパッケージビデオソフトでは、HDCPを利用したHDMIなど、著作権保護機能を有したデジタル出力以外の出力が禁じられる可能性がある。 Blu-ray/HD DVDで採用されている著作権保護規格である「AACS」での検討が進んでいるが、映画スタジオなどのコンテンツフォルダの意向から、コンポーネントビデオなどのアナログ出力についてはHD解像度での出力禁止を検討、アナログ出力する場合は480pなどSD解像度に落とすなどの提案がされているという。なお、4月に公開されたAACSのドラフトではこの問題について特に言及されていない。 ただし、国内メーカーを含む各テレビメーカーでは、未だにHDMIを搭載していないテレビが現行機種として発売されており、例えば液晶テレビでは20型以下の小型のものではほとんどHDMIを備えていない。また、大型液晶/PDPなどでも廉価モデルではHDMI非搭載モデルも少なくない。 そのため、旧式のテレビのみならず、最新のテレビでもHD DVD/Blu-rayでのHD映像を視聴できない可能性があるため、各テレビメーカーなどが反発、妥協案を模索しているという。その点で有力視されているのが、アナログ出力の可否を認識するフラグを策定し、コンテンツフォルダ側でそのHD出力の可否やレベルを設定するというもの。 HD DVDの市場立ち上げ時にはアナログ出力を許可し、対応テレビやHD DVDの普及を待って、順次デジタルインターフェイスに移行。最終的にアナログ出力を禁止し、デジタル出力に統一するのが狙いだが、もちろん、コンテンツフォルダがフラグの有無を決定するため、当初から全てのディスクがアナログ出力不可になる可能性もある。 しかし、コンテンツフォルダによってタイトルの出力可/不可が異なると、コンテンツフォルダ間での競合や、クレーム対応などを嫌い、結果的に各社がアナログ出力を許可する可能性も高いと見込んでいるようだ。 なお、AACSは、4月にドラフト版のVer.0.9が公開された後、6月にファイナルが策定される予定だったが、8月頃に延期された模様。 ■ FGTもHD DVDプレーヤーでの実装が必須に THOMSONは、HD DVD-VideoのH.264/MPEG-4 AVCコーデック用のフィルムグレイン技術(FGT)のデモを行なった。
フィルム・グレインは、映画などのフィルムソースの映像特有の粒子状のノイズ。H.264/MPEG-4 AVCでは低ビットレートでのエンコード時に、このフィルムグレインをノイズとして検出し、取り除いてしまうことから、映画スタジオを中心に改善が要求されていた。 FGTは、ソースとなるデータから フィルムグレイン量を推測して付加する技術。DVDフォーラムの2月のSteering Commitieeでは承認されなかったものの、4月の投票では多数決で採用が決定されたという。FGTはSMPTEの標準規格として承認され、DVDフォーラム側でそれを参照するという形になる。 フィルムグレインのON/OFFは、コンテンツフォルダがエンコード時に選択する。例えばビデオ撮影のHD DVD-ROMなどではOFF。フィルム撮影の場合は、フィルムの特性にあったグレインをエンコード情報に加え、SEI messageとして付加。プレーヤーに転送することで、プレーヤーのデコーダでグレイン情報を認識し、H.264の映像ストリームの上に、ノイズフィルタ的に適用される。
そのため、HD DVDプレーヤーやパソコン用のHD DVD再生ソフトではFGT用のSEI messageのデコード機能が必須となる。民生用HD DVDプレーヤーではLSIに同機能を内蔵して、対応する予定。 グレイン情報は同社のグループ企業であるTECHNICOLORが持つフィルムのアーカイブからデータベース化されており、「現存するほぼ全てのフィルムに対応する」という。グレインの情報量は最大でGOPあたり50~60byte。なお、コンテンツフォルダの意図を忠実に再現するため、プレーヤー側でFGTのON/OFF切り替えを行なうことは禁じられているという。 ■ 各ソフトメーカーがHD DVD対応プレーヤーを出品
インタービデオや、サイバーリンク、Nero、Sonicなどの各ソフトメーカーはHD DVD対応のPC用プレーヤーソフトのデモを行なった。 各社ともH.264/MPEG-4 AVCのデコーダは既に製品化済みだが、今後はHD対応やデコーダの最適化、画質の向上などを目指して、改善を進めるという。いずれも年内のHD DVDドライブの発売にあわせた製品投入を予定している。 インタービデオは、Pentium DなどのデュアルコアCPUへの最適化などをアドバンテージとして挙げ、最速での市場投入を目指すという。また、Neroはデコーダの改良のほか、定評あるH.264のエンコーダの画質の向上などに注力しながら、製品開発を進めていく予定。 FGTについては、現在のところ対応している製品は無いが、各社とも今後の実装を目指していくという。
■ その他
□DVD Forumのホームページ(英文) (2005年6月27日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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