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年末向けDVD/HDDレコーダのキーワードはVHS機能?
-松下の新「DIGA」に見る2005年年末商戦事情



 年末商戦向けのDVD/HDDレコーダが、主要各社から相次いで発表され始めた。いよいよ今年も、DVD/HDDレコーダを巡る、熱い年末商戦の火蓋が切って落とされたというわけだ。

 今回発表されたこれらの各社新製品を見ると、実は、共通したひとつのキーワードがある。それは、「使いやすさ」の追求である。

 リモコンのボタンを大きくし、ボタンの数を減らすことで、操作を簡単にしたり、DVD/HDDレコーダの設置や設定、利用方法が難しいという声に対応して、設置および設定方法をガイドする機能を搭載したり、音声でナビゲートしたりといったように、各社の強化ポイントは、使いやすさに焦点を絞ったものが目白押しだ。

DIGA付属のリモコン
 例えば、松下電器のDIGAでは、春に投入した前モデルから、いわば録画を主体としている機器であるにも関わらず、「録画ボタン」そのものを、リモコンの表面からなくしている。

 「操作方法を検証してみると、EPGの画面から、予約録画するという使い方が一般的。むしろ、リモコンの録画ボタンを利用する方がイレギュラーとなっている。そのため、録画ボタンを思い切って取り外した」(松下電器)というのだ。

 もちろん、リモコンの蓋を開ければ、録画ボタンは用意されている。ただ、このレイアウトを採用しても、従来製品で問題にならなかったため、今回の新製品でも、同様に録画ボタンをリモコン表面から排除。こうした工夫の結果、他社の従来製品のリモコンが、50~70個近いボタンであるに対して、松下電器は28個のボタンに数を減らして見せた。

 「ボタンを減らすことによって、使いたい操作にたどり着きやすくできる」(松下電器)というわけだ。もちろん、同社だけではない。各社ともリモコンのボタンの数を大幅に減らす努力を開始している。



■ 多機能化から使いやすさの追求へとシフト

DIGA新シリーズの発表会でも、“使いやすさ”と“わかりやすさ”をメインにしたプレゼンテーションが行なわれた
 こうした使いやすさの追求を各社が前面に打ち出してきた背景には、DVD/HDDレコーダの世帯普及率が30%に到達しようとしており、いよいよ一般層へと広がりを見せていることがあげられる。

 これまでの各社に共通したDVD/HDDレコーダへの取り組みは、マニア層やハイエンド層などを中心にして、機能強化を最重点課題としてきた。マニア受けする機能の搭載など、より多くの機能を搭載した「多機能化」がそのまま売れ行きに直結したからだ。

 だが、世帯普及率が3割を突破し、多機能化の製品戦略だけでは、これからの需要層には対応できなくなってきた。

 「機能強化の追求によって、製品の完成度を高めてきたが、それが、DVD/HDDレコーダを初めて利用するというユーザーにとっては逆に使いにくいものになっていた反省がある。HDDに録画したものをDVDにどうやって保存するのか、あるいは録画した映像をどうやって消去するのか、といった基本操作に関しての質問が増えたことからも、利用層が変化してきたことがわかる。この年末商戦向けの製品からは、わかりやすいという点に主眼をおいた製品企画を重視する必要があった」(松下電器)というわけだ。

 もちろん多機能化は推進されている。だが、それはあまりアピールされていない。むしろ各社が共通的に訴えているのが、使いやすさなのである。



■ VHS機能搭載モデルを主軸に置く主要各社

 もうひとつ見逃せない動きが、VHS機能を搭載した3 in 1あるいは4 in 1と呼ばれる製品を、各社が主力に据えた点だ。

 DVD/HDDレコーダとともにVHS機能を搭載することで、膨大な資産となっているVHSテープを、DVD/HDDレコーダでも閲覧可能にしたり、あるいはVHSテープの資産をDVDに移行させたりといった使い方ができるようになる。

 現在、レコーダを所有するユーザーの約8割がVHS。DVD/HDDレコーダユーザーは、まだ約2割に過ぎない。つまり、VHSレコーダの所有者を、いかにDVD/HDDレコーダに移行させるかが、これからのポイントなのである。その点では、VHS機能の搭載は、まさに的を射た製品企画だといえる。

 実際、店頭でもVHS機能搭載のDVD/HDDレコーダは人気を博している。8月中のデータを見ても、売れ筋上位10製品のうち、5製品がVHS機能搭載製品だという結果も出ている。

11月10日発売の松下「DMR-EX200V」 8月発売のビクター「DR-MX50」
7月発売のソニー「RDR-VH93」 6月発売のパイオニア「DVR-RT7H」

 松下電器でも、7月の実績で、DVD/HDDレコーダにVHS機能を搭載した製品の出荷比率は32%。HDDを搭載していないDVDレコーダとVHSの組み合わせの製品が15%を占めており、これをあわせると、すでに47%がVHS搭載モデルという状況。通年でも41%がVHS搭載機という実績だ。

 同社関係者によると、当初は、VHS搭載機の比率は25%程度と予測していたという。VHS機能搭載機は、各社の思惑を上回る形で売れているのだ。そして、これからターゲットとなる需要層を考えると、この傾向にはますます拍車がかかることになるだろう。

DMR-EX200Vは、デジタルチューナモデルで初めてVHSを搭載
 同社がDIGAの新製品のひとつとして、デジタルチューナ内蔵のハイビジョンDIGA「DMR-EX200V」を投入。そこに、VHS機能を搭載したのも、こうしたターゲット層を狙ったもの。

 VHSテープでデジタルハイビジョン映像を録画することはできないという点では、搭載した意味はまったく不明だ。しかし、VHSユーザーを取り込むためのマーケティング的な意味合いが大きいという点では、魅力的な機能だといえるのである。

 だが、「VHSの操作を加えることで、操作が繁雑になる可能性が高い。簡単な操作性を追求する一方で、3つのメディアをいかにシームレスにつなぐかが鍵になる」(大手メーカー)というように、メーカー各社は、多機能化と簡単操作という矛盾する新たな課題にも直面することになっている。



■ 販売店が歓迎するVHS機能の搭載

 実は、VHS機能の搭載には、VHSユーザーの移行促進という、新たなターゲット層開拓に伴って浮上した、販売店側の強い要望がある。

 店頭では、DVD/HDDレコーダの販売の際に、必ずといっていいほど、「VHSで録画してあるものをなんとかしたいのだが」という声が顧客側から出る。その要求を解決する製品として、VHS機能搭載モデルが必要なのだ。

 「これさえあれば、VHSのテープも再生でき、DVDへも移行することができる」と説明すれば、多くの顧客が納得する。とくに、DVDへと簡単にメディアが変換できるという使い方は購入理由としてはかなり上位にあがっている。

 実際には、VHSテープを数本ダビングしただけで、あまりにも時間がかかってしまうことにしびれを切らして、投げ出してしまうユーザーが多いのだが、それでも購入理由としては根強い。購入理由と、実際の用途とがかけ離れた例のひとつとはいえる。

 また、単価アップを狙いたい販売店にとっては、VHS機能は大きな切り札。この製品を勧めることで、1万5000円から2万円程度の単価上昇が見込めるからだ。VHSビデオデッキ単体が1万円前後で購入できる状況を考えると、VHS機能搭載のDVD/HDDレコーダを勧めた方が販売店にもメリットがあるというわけだ。

 既存のVHSユーザーに対して、DVD/HDDレコーダの購入を促進させるキーワードとしては絶大であり、しかも、販売店の利益が大きいという3 in 1あるいは4 in 1のDVD/HDDレコーダは、販売店にとっても極めて魅力的な製品だといえるのだ。


□松下電器のホームページ
http://panasonic.co.jp/
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(2005年9月2日)

[Reported by 大河原克行]


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