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松下、第3四半期は過去最高の売上高に
-プラズマテレビの販売金額は2倍


川上徹也取締役専務

2月2日発表


 松下電器産業株式会社は2日、2005年度第3四半期の連結決算を発表した。売上高は、前年同期比4%増の2兆3,984億円、営業利益は47%増の1,294億円、税引前利益は52%増の1,261億円、当期純利益は39%増の493億円の増収増益となった。第3四半期としては過去最高の売上高を達成したという。

 国内の売上高は1%減の1兆1,816円だったが、海外は10%増の1兆2,168億円と2桁増となっている。海外では米州で16%増という高い成長を達成したほか、アジアで11%増、中国で15%増となっている。欧州は前年並み。

 ただし、前年割れとなった国内でも、市販商品の販売実績は、軒並み前年実績を上回っており、パナソニック商品の販売実績は前年同期比9%増、ナショナル商品は5%増、ナショナル小物商品は1%増となっている。

第3四半期の連結業績 国内市販商品の販売実績

 川上徹也取締役は、「すべてのテレビCMをFF式石油温風機の回収のお願いへと差し替えたこともあり、他の製品の販売への影響が心配された。実際、12月1日から7日までは前年同期比88%と落ち込んだ。しかし、12月8日から19日までは104%、20日から31日は118%となった。マーケティング本部の努力をはじめ、延べ13万人の社員が各家庭を回って対応してきた。全国の系列販売店、量販店も、『よし松下を支えてやろう』と必死になって回収に奔走してくれた。そのパワーや気持ちが消費者にも通じたのではないか。もちろん、V商品を中心とした良い商品を市場投入できたこともプラス要素といえる」とした。

 川上取締役専務は、このコメントの途中、系列販売店や量販店の支援に触れたところで、感極まったのか、5秒以上に渡って言葉を発せなかった。今回の四半期決算で、回収問題を抱えながらも好調な業績を達成できたのは、販売店の絶大な協力があったことに尽きるという、強い想いが感じられた。

 なお、FF式石油温風機問題の影響についても説明し、テレビ、新聞などでの告知、全世帯に対する告知ハガキなどの「宣伝・告知費用」に130億円、要望に応じた製品引き取りや無料点検修理などの「回収費用」に60億円、約6万店舗に対する社員の巡回などの「巡回・対策費用」で50億円の、合計240億円の影響があったという。

会見中、感極まって下を向いたまま言葉を発せなくなった川上専務 FF式石油温風器問題の影響

 松下電器によると、年末には1万8,200本のテレビCMを差し替え、3億3,000万枚のチラシを配布。そして、1月27日から2月15日にかけて、5,687万世帯にハガキを送付するという。

 「最後の1台まで回収する覚悟で、徹底的にやっていく。これだけの多額の回収のための費用を一気に投下することはないが、これが終わりではなく、何年かかっても回収できるまで、継続的にやっていく」としている。


■ AVCネットワークは好調を維持

 セグメント別では、AVCネットワークの売上高が前年同期比8%増の1兆1,255億円、営業利益は126%増の581億円。営業利益率は5.2%となり、第2四半期に続き、5%台の営業利益率を維持した。

 プラズマテレビ、デジタルカメラ、カーエレクトロニクス、ノートパソコンの貢献が大きく、一方でビデオ、CRTがマイナス要素となった。

 プラズマテレビは、全世界の販売金額が、前年同期の779億円から、今四半期では1,483億円と約2倍に増加。川上取締役専務は、「米国を中心に大画面テレビはプラズマという認識が定着している。CESの会場で展示した103インチのプラズマテレビも予想以上の反響となっている。松下電器は、薄型テレビのリーダーとして世界中の顧客に選ばれたと確信した」と強気の姿勢を見せた。

AVCネットワークの業績 プラズマテレビの世界販売状況

 また、プラズマテレビの一貫生産の強みにも改めて言及。「一貫生産によって基幹部品による差別化が図りやすいこと、基幹部品の内製化による付加価値創出が可能なこと、キーとなる技術のブラックボックス化が可能なこと、品質や歩留まりに対する向上に取り組みやすいこと、そして、PSI(プロダクション・セールス・インベントリ)のコントロールによる垂直立ち上げの実現などのメリットがある。旺盛な需要に対応できる生産体制も整えており、プラズマテレビ市場において、グローバルで40%のシェア確保に取り組んでいく」とした。

 また、デジタルカメラでは、国内でのFX9の好調ぶりに触れ、「8月の発売以来、好調に推移しており、12月は機種別販売シェアで1位になっている」とした。

 AVCネットワークの主要ドメインごとの業績では、プラズマテレビ、デジタルカメラなどを担当するパナソニックAVCネットワークス社が売上高が前年同期比22%増の4,529億円、営業利益が128%増の229億円。FAXなどを取り扱うパナソニック・コミュニケーションズは売上高が6%増の1,231億円、営業利益が22%増の61億円。携帯電話事業を担当するパナソニックモバイルコミュニケーションズが売上高で6%増の1,317億円、営業損失では前年から41億円回復のマイナス23億円の赤字となった。


■ 日本ビクターの特化企業への加速が課題に

 白物家電のアプライアンスは、売上高が4%減の3,295億円、営業利益が13%増の244億円。

 売上高の減少は松下電工への事業移管の影響によるもので、実質的にはプラス成長と説明。「エアコンは、電工とのコラボ商品で20%のシェアを獲得。トップとなった」としたほか、電子レンジ、洗濯機が利益に貢献したという。

 デバイスは、売上高が前年並みの3,568億円、営業利益が187%増の260億円。外部向けの半導体の販売が落ち込んだことで、売上高は減少したものの、松下グループ内での活用が増加しているという。

 なお、電工・パナホームは、売上高が11%増の4,351億円、営業利益は14%増の231億円。日本ビクターは、売上高が前年並みの2,141億円、営業利益は81%減の13億円となった。

アプライアンスは売上高4%減 デバイスは売上高が前年並み、営業利益が187%増 電工・パナホーム

日本ビクターは営業利益が81%減

 「日本ビクターは、DVDや液晶テレビの開発の遅れなどで、150億円近くのロスを出している。今後はニッチに特化した、オンリーワン型の製品を創出できる企業への展開を、親会社として期待している」とした。



■ 15年ぶりの営業利益水準に上方修正

 また、同社では、2005年度通期の見通しを上方修正した。

 売上高は、1,200億円増の8兆8,400億円に修正。内訳は、国内の売上高は当初計画通りだが、海外の売上高が1,200億円上方修正された。営業利益は700億円増の4,000億円、税引前利益は100億円増の3,000億円、当期純利益は200億円増の1,300億円。営業利益率は4.5%となる。

 4,000億円の営業利益は、1990年以来、15年ぶりの水準だという。

 「アナログからデジタルへの移行が進展するなか、CRT、オーディオ、ビデオでは約2,000億円の減少要素となるが、デジタルではプラズマテレビを中心に約3,000億円のプラスを見込む。これによって、前年比1,264億円のプラスが見込める」と説明。さらに、「合理化効果が価格低下をカバーしたほか、原材料費の増加も当初は400億円の影響を想定していたものが、300億円の影響で留まるなどの要素が上方修正につながった」としている。

通期の連結業績見通しを上方修正 セグメント別の見通し 営業利益の推移

 なお、同社では、構造改革特別費用を、当初350億円としていたものを、持分法対象を含めて650億円へと増加した。AVCネットワークおよびアプライアンスでは、海外携帯電話事業、海外CRT事業で260億円、デバイスでは、半導体分野で約230億円、その他領域で日本ビクター、松下電工、パナホームで160億円を計上した。

ユニバーサル関連の出資についても触れ、「映画業界の関係を維持すること、DVDなどのフォーマットの確立での協力体制、著作権保護技術の開発などで出資関係を維持したほうがいいと判断していたが、今回、所期の目的を達成したと判断し、出資関係を終了することにした。連結決算への影響は100億円程度になる」とコメント


■ 中村改革に総決算に向けラストスパート

 今回の決算は、中村改革の総決算が間近に控えていることを予感させる内容になったといっていい。

御成門のパナソニック1号館1階に展示された103インチのプラズマテレビ

 上方修正による通期見通しでは、営業利益率を4.5%とし、中村改革のゴールとして位置づけている来年度5%の営業利益率達成を射程距離に捉えている。

 また、2001年には49日、1兆476億円あった在庫が、現在は6,800億円の水準にまで削減。松下電工、パナホーム分を追加しても、35日、8,500億円の水準にまで引き下げている。

 さらに、1兆4,000億円にのぼるネット資金、1兆2,000億円規模の総資産の圧縮、2003年3月末には約1兆円あった年金債務積立不足が、この3月には解消する見込みであるなど、中村邦夫社長が徹底して取り組んできた財務体質の改善が予定通りに進んでいることが示された。

 川上取締役専務は、「まだ海外での収益が十分でないことや、米国の経済動向、中国市場への取り組み、為替の動き、原材料費の動きなど、松下電器を取り巻く懸念材料はいくらでもある。これらのマネジメントリスクを最小限にする取り組みを継続的に行わなくてはならない。また、携帯電話、電池も赤字脱却の目処がついたにすぎず、まだまだ成長に向けた改革が必要だ。これで経営がよくなったと思ったら、そこで駄目になる。常に改革を進め、チャレンジャーとして取り組む」と手綱を締める。

 だが、中村改革の総仕上げに向けたラストスパートが始まったのは間違いないといえそうだ。


□松下電器のホームページ
http://panasonic.co.jp/
□2005年度 第3四半期 連結決算概要
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn060202-1/jn060202-1.html?ref=news
□通期業績予想の修正
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn060202-1/jn060202-1.html?ref=news
□関連記事
【2005年10月28日】松下、第2四半期はAVC/家電が過去最高の利益率
-中村社長「‘08年には、1インチ5,000円のPDPを」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051028/pana2.htm
【7月28日】松下電器、第1四半期決算は好調な滑り出し
-PDPは年間210万台超へ上方修正
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050728/pana.htm

(2006年2月2日)

[Reported by 大河原克行]


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