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社団法人日本レコード協会(RIAJ)は19日、アジアにおける2006年6月までの邦楽ライセンス実績など、アジア市場への取り組みと現状についての報告会を実施。ライセンスされたタイトル数や出荷数量は減少したものの、2005年1月1日より施行された、著作権法改正による還流防止措置が一定の効果を上げているとの見解を示した。 2005年度にアジア地域で新規にライセンスされたパッケージ音楽向けのタイトル数は641で、前年比で91%減少。また、国や地域での重複分も合算すると1,079タイトルで、前年比86%のマイナスとなっている。なお、2006年の1~4月(集計中の1社を除く)では244タイトルとなり、前年同期比では118%増加。重複分を含めると379タイトルで、同124%となっている。 2005年度の減少の理由についてRIAJの田辺攻専務理事が説明。「国際レコード産業連盟(IFPI)で発表されたように、日本を除くアジアのパッケージ音楽市場が14%減少していることや、中国や韓国で顕著に見られるインターネット上での楽曲配信の伸び、韓国における2004年の「第4次文化開放」により、日本のCDやテープなどの販売が2004年で大きく伸長したことによる反動、中国における2005年5月の反日活動」などを挙げた。
還流防止措置は、中国や韓国、台湾、香港などにおける日本の音楽の需要の高まりを受けて、原盤をライセンスして発売している日本人アーティストのCDが日本に逆輸入され、国内盤の同タイトルよりも安価で販売される、「還流CD」を規制するために制定されたもの。運用基準では、パッケージや本体に日本国外頒布専用である旨の記載などが必須となる。なお、還流防止対象タイトルの申請受理件数は6月16日時点で165タイトル。 各国/地域にライセンスされたタイトルを出荷した量で見ると、2005年度は、中国を除く各地域で数量が減少しており、田辺氏は還流防止措置の効果も1つの要因であるとの見方を示した。2003年のRIAJ調査では、アジア各国/地域で生産されたCDの約18%が日本に逆輸出されていたという。
また、中国におけるスムーズなライセンス展開の妨げとなっていた権利認証制度の改正を中国の国家版権局 版権保護センターに働きかけてきたという取り組みについても紹介。権利認証制度は、海賊版対策として、ライセンサーが正当な権利者であるということを第三者が認証する制度で、新たにRIAJが認証機関として認められた。 従来はライセンサーがライセンシーを通じて版権保護センターに申請、香港にあるIFPI地域事務所や北京代表部で照会された後に認証が与えられていた。さらに、IFPIでは証明できない場合、RIAJへの照会手続きが必要な場合もあり、認証までに時間がかかっていたという。 新しい申請方法では、ライセンサーがRIAJに申請した認証書をライセンシーを通じて版権保護センターに提出することで認証が行なわれるようになった。RIAJは、2005年より国家版権局の訪問などを通じて日本レコード業界におけるRIAJの代表性や信頼性を主張してきたが、制度開始から11年目で初めて認証機関の変更が承認された。
中国における日本アーティストへの関心の高まりについて、5月に行なわれた第2回中国国際オーディオ・ビデオ・インターネット総合配給展におけるRIAJブースを通じて紹介。10台用意された邦楽の試聴機に順番待ちの列ができたほか、放映されていたプロモーションビデオにも高い関心が寄せられていたという。 さらに、2006年に上海で行なわれたライブ「JAPAN NIGHT 2006」では、上妻宏光や小島麻由美、中孝介、ティンク ティンクが出演し、会場収容数の500名に達する入場者を集めたという。 そのほか、インターネット上の音楽配信に関しては、香港の調査会社、シノベートが3月に行なったアンケート結果を紹介。中国、韓国、香港、台湾の、大都市周辺に住む15~64歳の男女1,250人を対象にした電話アンケートで、インターネットから音楽をダウンロードするユーザーが全体の39%。25歳未満では67%に上った。 また、25歳未満の音楽接触行動の中でも多いのがコンピュータでの音楽再生で82%、MP3プレーヤーでの再生は75%、インターネットからの音楽ダウンロードは67%となっている。一方、音楽ダウンロードへの支払いを行なっているというユーザーは全体の27%で、25歳未満では25%。この結果についてRIAJでは、違法なP2P利用などが横行しているためではないかと見ている。 ■ SME、エイベックスもアジア進出に新施策 ライセンサー各社の取り組み事例として、主席した株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント国際グループ インターナショナルマーケティング次長の田中章氏と、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社の飯島正人氏がこれまでと今後の展開を説明。
ソニー・ミュージックエンタテインメントの田中氏は、'97年2月より同社がパフィーや平井堅、ケミストリー、中島美嘉などのアジア市場における印税収入増を目指してきたことを紹介。台湾、韓国、香港、中国の14億人という市場規模と、デジタル配信ビジネスに関する期待が高い一方で、海賊盤率の高さと、法整備の問題による著作権法侵害に不安感を持っていたという。 同社の海賊版への対抗策としては、2005年6月にリリースしたL'Arc-en-Cielのアルバム「AWAKE」において、日中同時発売や、サイトやファンイベントなどを通じた正規版購入の啓蒙の実施を挙げた。中国では発売前に歌詞などの検閲が必要だが、マスタリング前の音源を先に検閲に送るなどの工夫により、日中同時発売を実現したという。
さらに、価格を26元(約380円/6月19日現在)と低価格化し、10元前後といわれる海賊版に近づけた。その結果、ライセンス先の推定では海賊版が30%減少したとしている。 また、パッケージ以外でも、ツアーで得られる物販収入などのビジネスにも可能性があると述べたほか、パソコンや携帯電話向けの配信事業も積極的に行なうべきだと提案した。
エイベックスの飯島氏はアジア市場について「将来的にはアジアだけでかなりの市場が見込めることを視野に入れ、積極的に展開する」とし、「韓国のエスエム・エンタテインメントとのアライアンスによりBoAのプロモーションに成功した。韓国においては、今後は同社との協業で配信ビジネス中心に移行し、CDリリースはプロモーションとしてアイコン的に展開する」と述べた。 同社は、香港にあるエイベックスアジアホールディングスにおいて、映画や映像を中心としたビジネスを行なうほか、中国への進出も計画中。松浦勝人社長が直接北京に赴き、中国やアジア全域でのヒットを狙った音楽制作を行なっているという。 □RIAJのホームページ ( 2006年6月19日 ) [AV Watch編集部/nakaba-a@impress.co.jp]
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