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ビクター、薄型リアプロテレビを実現する新光学エンジン
-60型で27cm。「壁掛けリアプロ」も可能に


9月28日発表


 日本ビクター株式会社は28日、リアプロジェクションテレビの薄型化を実現する「スリムファンクション光学エンジン」を開発したと発表した。同技術を用いたD-ILAリアプロテレビの試作機を10月3日から7日まで幕張メッセで開催される「CEATEC JAPAN 2006」に出展する。

 プラズマや液晶テレビに比べ、リアプロテレビでは投写レンズを用いた光学エンジンを内蔵するため、薄型化が難しく、設置スペース面での課題を残していた。新方式の導入により、大幅な薄型化を実現可能で、同方式を用いた製品を2007年の早期に発売する予定という。

新光学エンジン採用58V型(左)と、従来の56V型(右) 厚みは新エンジン搭載モデルが27cm、従来モデルが47cm スリムファンクション光学エンジン

凹面ミラーの採用により、画面下部の小型化と厚みの低減を実現した

 「スリムファンクション光学エンジン」では、投射レンズ部に従来の屈折型レンズに加え、凹面ミラーを組み合わせ、投射画角を従来比約1.5倍となる約138度まで拡大した。投射画角の拡大により、テレビ内の投射距離を約4割短縮し、リアプロテレビの薄型化が可能という。

 従来の薄型化技術では短光路/広角化や、レンズのオフセット化、凸面ミラーを用いた方式などが提案されていた。しかし、短光路化では光学エンジンがキャビネットにぶつかるため大幅な薄型化は難しく、オフセット方式ではレンズの歪曲収差や色収差の増大、レンズの大型化などのデメリットがあるため、薄型化はやコストダウンが難しかったという。

 さらに、凸面ミラーを用いた投射光学系でも、光学エンジンコア部や照明光学部が光軸よりも下側に配置されるため、画面下部サイズが大型化してしまうなどの問題があった。


従来の薄型化技術(短光路化)の問題点 従来の薄型化技術(オフセット方式)の問題点 従来の薄型化技術(オフセット方式/凸面ミラー)の問題点

 しかし、同社が開発した凹面ミラー方式では、画面下部サイズと光学コアの小型化が図れるという。

新方式の導入で高コントラスト化を達成

 通常のリアプロテレビでは、投射レンズからの光を直接背面ミラーにあて、その反射光をスクリーンに写して映像表示が行なう。スリムファンクション光学エンジンでは、投射レンズからの光を光学エンジン内の凹面ミラーを介して背面ミラーに当てて、その反射光をスクリーンに表示する。

 凹面ミラー用の非球面レンズが追加で必要となるため、「部品でいえばこの部分がコストアップ要因となる(技術開発本部 中垣新太郎DPユニット長)」という。ただし、背面ミラーを従来比で約4分の1まで小型化できるほか、レンズの小型化が見込めるなどの、新方式によるコストダウン要因もあり、特殊なスクリーンが不要で凹型ミラーも射出成形法で製造できるため、「最終製品で考えると最低限のコストアップで抑えられる」という。

 また、凹面ミラーを用いた光学系では、スクリーンに到達する前に一旦光を集光するため、光射出部を小型化できる。そのため、画面側から光学エンジンに入る光を遮断でき、コントラストの向上も図れるという。

 新方式の導入によるデメリットとしては、画質への影響の可能性が挙げられる。「一般的にそのまま投射した方が、光学系としての画質は良い。ミラーが増えることで、解像度感が落ちたり、周辺フォーカスが甘くなる可能性はある。しかし、試作機でも画面の隅々まで高解像度を得られており、従来と遜色ない品質を確保している(中垣DPユニット長)」としている。

 また、側面放熱機構を導入し、壁に寄せての設置や、壁掛け設置なども可能。スリムファンクション光学エンジンの導入により、「60V型クラスで奥行き約27cmのテーブルトップデザイン薄型プロジェクションテレビを実現する」としている。

エンジン内部の撮影は不可だったが、凹面レンズにより投射光を集めて、小さな穴から射出するため迷光を抑えて、コントラスト向上が可能という 凹面ミラーのコストアップ要因はあるが、スクリーンなどは従来製品と同等品が利用できるためコストアップを最小限に抑えられる 壁掛けモデルのモックアップ


■ “壁ピタ”を訴求。「MDは新しいディスプレイ」

山口南海夫 専務取締役

 日本ビクター 専務取締役 技術開発本部 山口南海夫本部長は、新技術の概要と同社のD-ILA製品展開について解説した。

 ビクターでは、50インチ以上のテレビにおいてD-ILAを使ったリアプロジェクションテレビ(MD方式プロジェクションテレビ)製品展開しているが、北米での好調な販売実績を例にあげ、「“MDテレビは将来的に縮小する”という一部アナリストの発表もあったが、実際はその逆。2006年にも順調に増えている。2005年には北米で年間300万台を超えており、特に50型以上の大型モデルは堅調」として、「プロジェクションテレビには将来性がある」とアピールした。

 しかし、プラズマや液晶テレビと比較した際に「奥行きが長い」という欠点を指摘されていた。新スリムファンクション光学エンジンで、この問題を払拭し、「2007年のなるべく早い段階に製品を発売したい」と、早期の市場投入を明言した。

 なお、投入予定のラインナップやサイズは現時点では決まっていないが、「技術的には現在展開中の50型から70型以上まで、どのサイズでも導入可能。実際に商品開発も進めている(技術開発本部 中垣新太郎DPユニット長)」という。

 市場展開については、「日本の昨年のプロジェクションテレビ実績は2万台で、普及には時間がかかると考えている。アメリカが一番大きな市場のため、まずは米国市場を目指し、製品企画を進める」としている。

他方式と比較して、「奥行き」に問題 2007年に新方式を採用した製品を投入

 技術開発本部 中垣新太郎DPユニット長は、従来技術との比較で、新方式のメリットを解説。特に背面のフラット化や、側面吸排気設計などで、壁掛けや壁詰めの設置が可能な「壁ピタ設計」をアピールし、「いままでに無い新しいディスプレイとして訴えていきたい」という。

 なお、同社では“リアプロ”という表現は行なわず、「MDプロジェクションテレビ」、「MDテレビ」といった名称で、プロジェクションテレビの訴求を図っていく方針。

「壁ピタ」設置をアピール 薄型の専用スタンドを利用した設置イメージ
IFAで発表した110型リアプロテレビも日本初披露 奥行きもかなり長い

□ビクターのホームページ
http://www.victor.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.victor.co.jp/press/2006/slimfunction.html
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060920/mddp.htm
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060903/ifa04.htm

( 2006年9月28日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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