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松下電器産業株式会社は、2006年度連結決算を発表。そのなかで、今年7月に稼働を予定していた尼崎のプラズマ第4工場の稼働を、1カ月前倒しする計画を明らかにした。 同社・大坪文雄社長は、「先頃発表したプラズマテレビの新製品が高い評価を得ている。2006年度はプラズマテレビで350万台、液晶テレビで240万台を出荷したが、2007年度はプラズマテレビで500万台以上、液晶テレビで400万台以上、あわせて900万台以上の出荷を目指す」とした。 また、「先日訪問したドバイでは、この地域だけで、103インチのプラズマテレビが180台も売れている。2007年度は、ドバイで500台の販売を目指すなど、世界的に需要が旺盛だ。世界規模で予想以上に大型化が進んでおり、商品はタイトな状況が続いている。こうしたプラズマテレビに対する需要を受けて、7月に予定していた尼崎のプラズマ第4工場の稼働を、1カ月前倒しし、翌々月から稼働することにした」と語った。
同社では、2007年度には、37インチ以上の薄型テレビ市場において、全世界25%のシェアを獲得することを目指している。 また、有機ELに関しては、「東芝も、ソニーも、大画面の有機ELテレビを投入することは明言していない。当面の間、プラズマで事業は十分やっていける」とした。 ■ 2006年度業績も好調。5期連続増収増益を達成
一方、同社が発表した2006年度連結決算によると、売上高は、前年比2%増の9兆1,082億円、営業利益は11%増の4,595億円、税引前利益は18%増の4,391億円、当期純利益は41%増の2,172億円となり、「5期連続の増収増益を達成。躍進21計画の最終年度の目標として掲げた、営業利益率5%、連結CCMで0以上を達成した」(大坪社長)とした。 売上高は過去最高、営業利益率5%達成は'91年以来15年ぶり、当期純利益の2,000億円突破は'90年以来16年ぶりの水準となった。
セグメント別に見ると、AVCネットワークは売上高が前年比2%増の4兆472億円、営業利益が15%増の2,196億円。アプライアンスの売上高が5%増の1兆3,034億円、営業利益が8%増の835億円。デバイスの売上高が1%増の1兆3,777億円、営業利益が23%増の999億円。
電工・パナホームは売上高が6%増の1兆8,587億円、営業利益が9%増の789億円、日本ビクターは売上高が8%減の6,466億円、営業損益はマイナス57億円の赤字。その他事業の売上高が13%増の1兆4,840億円、営業利益が3%減の605億円となった。 地域別にみると、日本および米州地域の売上高は前年並みとになったものの、デジタル家電に加えて、白物家電、デバイスが好調な中国が22%増、携帯電話事業の縮小、デバイスの減少が見られたアジアが3%の減少。フランス、ドイツでの事業が立ち上がってきた欧州は9%増となった。
主要ドメイン別では、パナソニックAVCネットワーク社が、初めて営業利益率で5%に到達。パナソニックエレクトロニックデバイス社は、原材料の価格上昇があったものの、販売増加およびコストダウン効果で営業利益率を7.7%にまで引き上げた。 棚卸資産は、9,494億円と前年に比べて約340億円増加しているが、在庫日数は37日のまま。「プラズマテレビの在庫が昨年は5万台となり逼迫していたが、今年度はこれが25万台まで拡大。適正な量を確保している」(川上徹也副社長)とした。
主要製品の売上高は、プラスマテレビが30%増の5,478億円、液晶テレビが25%増の2,203億円。デジタルカメラが55%増の2,007億円、DVDレコーダが4%増の1,135億円、音響機器が22%減の1,505億円、情報機器が7%増の1兆4,151億円、移動体通信は28%減の2,972億円、ビデオは26%減の1,225億円となった。また、エアコンは9%増の2,499億円、冷蔵庫は1%増の1,010億円となった。
「デジカメは、2006年度にグローバルシェア10%を目標としていたが、19カ国で2桁の占有率を確保し、なかには3割を獲得した市場もある」(大坪社長)とした。 なお、日本ビクターに関しては、「個別の商品では競合する部分はないが、事業領域では競合している。当社としては、日本ビクターの自主経営を見守っており、あらゆることを検討している」(大坪社長)と、これまでの発言を繰り返すに留まった。 ■ 2007年度は営業利益5,000億目指す。「モノづくり」プロセスを革新 一方、2007年度の業績見通しについては、売上高が2%増の9兆2,500億円、営業利益が9%増の5,000億円、税引前利益が5%増の4,600億円、当期純利益は15%増の2,500億円を掲げた。 「売上高、当期純利益は過去最高を更新。営業利益は1985年以来の水準となる。営業利益率は5.6%に達する」(川上副社長)とした。 セグメント別では、AVCネットワークは売上高が前年比3%増の4兆1,800億円、営業利益が14%増の2,500億円。営業利益率は6.0%に達する。また、アプライアンスの売上高が1%増の1兆2,600億円、営業利益が3%増の860億円。デバイスの売上高が1%増の1兆3,900億円、営業利益が5%増の1,050億円。 電工・パナホームは売上高が前年並みの1兆8,600億円、営業利益が6%増の840億円、日本ビクターおよびその他事業の売上高は1%増の2兆1,500億円、営業利益は15%増の63億円としている。 設備投資は、前年比12%増の4,700億円を見込み、そのうち、プラズマ関連は49%増の1,199億円に増加させる。
「2007年度は、GP3計画の初年度として、成長を牽引するV商品と、これを核にした海外増販によって、着実に増収増益を継続する」(大坪社長)とし、強い商品づくりでは、商品企画力の向上、ブラックボックス技術の再強化、価格戦略を支えるコスト力、デザイン力の強化によって、商品力の再強化に取り組んでいくほか、V商品で約2兆円の売り上げを目指す。
また、海外増販では、2桁成長への挑戦を掲げ、プラズマテレビ、液晶テレビ、デジタルカメラ、HDムービー、Blu-rayをデジタル重点5商品として拡販。これに加えて、白物家電をはじめとするアプライアンスでの海外展開の強化、欧米の有力販売店との戦略的パートナーシップの強化、エマージング市場においては先端商品や中核製品で富裕層をターゲットとする施策を展開するという。 V商品における海外比率を47%に引き上げるほか、海外事業全体では約半分となる4兆6,200億円とする。現地通貨ベースでは9%増の目標。決算ベースでは3%増となる。 また、4月から「モノづくり」プロセス全体を革新するために、モノづくりイノベーション本部を設置。マニュファクチャリング部会、Vプロダクト部会、グローバルマーケティング部会、マネジメント部会をそれぞれ設置して、開発から販売サービスに至るまでのすべての組織がモノづくりに帰結する体制を強化するという。 「各部会では、ベストプラクティスの構築を目指し、これをドメインへ横展開し、濃い平準化を進める。これにより、収益を伴った着実な成長につなげたい」(大坪社長)とした。
なお、今回の決算発表会見は、6月に退任予定となっている川上副社長にとって、最後の会見となった。 7年間に渡り、中村改革の決算報告を続けてきた観点から川上副社長は、「家電流通制度の改革から始まり、松下興産の問題、ナショナルリースの売却、年金制度の改革など、財務面からの構造改革を進めてきた。年金では1兆円の不足があったが、現時点では1,000億円のプラスとなるところにまで回復した。財務面からみて、1兆円のコストがかかったのではないか。いまからが、大坪社長を中心に前に出る時だ」などとした。 □松下電器産業のホームページ ( 2007年4月27日 ) [Reported by 大河原克行]
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