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NHK、H.264でのスーパーハイビジョン実験装置を開発
-立体テレビなど新技術を技研公開で展示


H.264圧縮装置

5月16日発表


 日本放送協会(NHK)は16日、5月24日から開催する技研公開を前に、H.264/MPEG-4 AVCを採用したスーパーハイビジョンの実験装置など、4つの新技術の開発を発表した。いずれも、技研公開で一般展示される。



■ H.264/MPEG-4 AVCスーパーハイビジョン符号化実験装置

 富士通研究所と共同で、H.264/MPEG-4 AVC(Main Profile)を用いたスーパーハイビジョン符号化実験装置の開発に世界で初めて成功。スーパーハイビジョンはハイビジョンの16倍に当たるという高精細映像システムで、ビットレートは約24Gbps。これまでMPEG-2で圧縮しており、IP回線を用いて東京~大阪間の伝送も行なわれていた。

スーパーハイビジョン(2006年技研公開でのデモ)

 今回のH.264方式での符号化は、スーパーハイビジョンの画面を16分割。それぞれをHDTV用符号化ユニットで圧縮し、16台のユニットを同期して信号を処理するように制御する。MPEG-2の場合よりも少ない200Mbps以下を実現。100~400Mbpsに対応できる。

 各符号化ユニットは、信号処理プログラムの書換えが可能なデバイスで構成され、ユニットごとの情報量の割り当て制御など、処理方法の変更に対応。今後開発される画質改善技術なども容易に適用できるとしている。

 新開発の装置を利用することで、符号化実験がリアルタイムで行なえるため、高圧縮/高画質化の研究を加速させ、家庭へのスーパーハイビジョン放送実現に向けて、衛星やIP経由などでの伝送実験も可能になるという。



■ スーパーハイビジョンを用いた立体テレビ

 微小レンズを配列したレンズ板を使って撮影・表示することで、自然な立体映像を実現するという「インテグラル立体テレビ」にスーパーハイビジョンの映像技術を用いることにより、立体像が見える範囲(視域)を約2倍に拡大。ビクターとの協力で実現している。

 同方式の立体テレビでは、これまで走査線2,000本級の映像を用いていたが、一人程度しか立体映像を見られなかった。視域を広げるためにレンズの焦点距離を短くし、広範囲に立体像を再生できるように改善。レンズから離れた像がぼやけるのを補うため、スーパーハイビジョン技術の導入により、大幅に画素数を強化した。

 通常のスーパーハイビジョンと同様に2台のプロジェクタ映像を合成する方法を立体映像に応用すると、投射歪みなどで映像の位置がずれた場合に立体像の歪みや視域低下につながる問題があった。新開発のシステムでは、2つの投射光をハーフミラーで合成することで光軸を正確に一致させ、さらに歪みやずれを映像信号処理で補正する。

 これらの技術により、視域を約2倍に拡大し、複数の人が目を上下左右に動かしても立体像が見られるという。今後は立体表示レンズ板を構成する微小レンズの数を増加するなどの研究を進め、立体映像の解像度向上を進めるとしている。



■ 多視点映像システム「ぐるっとビジョン」

 複数のハイビジョンカメラを切替表示することで、立体感のあるダイナミックな映像を短時間に生成するというシステム「ぐるっとビジョン」を開発。

 12台のハイビジョンカメラとPCを用いて複数映像を順次切り替える方法で、仮想的に全カメラが被写体上の1点を向くような映像処理によって、カメラが回り込むような滑らかな映像生成を実現したという。PCのGPUをフル活用することで、映像処理の高速化を図った。

 複数のカメラ映像を用いることで、映像の中の動いている部分のみを安定的に抽出可能。連続する複数フレームにおける動き部分を各カメラ映像に合成、映像を切り替えることで、被写体の動きを3次元的な軌跡として様々なアングルから見られる。

 スポーツなどでの利用が想定され、処理時間が短いことで生中継にも対応するという。技研公開での一般展示のほか、6月に行なわれるNHK杯の体操の番組でも使用される予定。



■ フレキシブルディスプレイ用スピーカー

 フォスター電機との協力で、画面が曲げられるフレキシブルディスプレイ用のスピーカーを開発。丸めて持ち運べる「未来のテレビ」の実現に貢献するとしている。薄さや軽さ、柔軟性を考慮し、ポリフッ化ビニリデンを用いたものと動電形アクチュエータを用いたものの2種類を試作した。

 スピーカーに用いると低音の再生が不足するというポリフッ化ビニリデンフィルムは、ディスプレイの全面に貼り付けて振動させて音量を拡大し、中域を補正する信号処理回路を加えたことで、音質を改善。

 動電形アクチュエータ型は、小型化してディスプレイ側面に装着。両側面のアクチュエータを連動させ、画面に平行な方向に振動させることで、ディスプレイから効率よく音が再生できるという。今後は素材や構造などの検討を進め、再生帯域の拡大や、ディスプレイ部との一体化を進めるとしている。

□NHKのホームページ
http://www.nhk.or.jp/
□2007年技研公開のページ
http://www.nhk.or.jp/strl/open2007/index.html
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( 2007年5月17日 )

[AV Watch編集部/nakaba-a@impress.co.jp]


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