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5日午前に開催されたHD DVDの基調講演に続き、Blu-ray Discを推進する各社がCEATEC会場にて基調講演を行なった。各社の代表がBlu-ray Disc戦略や新製品について解説したほか、デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏を司会に迎え、パネルディスカッションが行なわれた。 ■ BDをサポートする各社が戦略を説明
Blu-ray Disc Association(BDA)の代表として登壇した松下電器産業 蓄積デバイス事業戦略室の小塚雅之室長は、プレゼンテーションの前に、午前の東芝DM社藤井社長のHD DVD基調講演における“BDがDVDフォーラムを外れたところで次世代ディスクを開発したことが混乱の原因”コメントに反論。「(BDAの前身となるBlu-ray Disc Foundationの設立は)2002年の2月にわれわれは記者発表を行なった。DVDフォーラムで(青色レーザーを利用したディスクを検討する)WG-11が作られたのはその後。ご確認していただきたいと思います」と訴えた。 続いて、Blu-rayの規格化について、「基本的にほぼすべての規格が完成している」とし、有機色素材料を使ったBD-Rメディア(LTH)の物理規格を策定したことや、DVDにBDAV形式でHD解像度で記録する新規格「AVCREC」を紹介した。BD-Rについては、有機色素系のLTHは2倍速、無機系材料を使ったHTLについては4倍速まで規格化が行なわれている。
また、GfKのデータでは、欧州でBDビデオソフトの売上シェアがハイビジョンディスク全体の7割を超えていることや、ディズニーやフォックスと協力して、年末に向けてプロモーションに取り組むなどのマーケティング施策を紹介。ビデオカメラ、プレーヤー、レコーダなど関連機器の拡大に言及し、「今年は安心してBDを買ってほしい」とアピールした。
シャープ AVシステム事業本部 副本部長 兼 BD事業化推進センター所長の小田守氏は、同社の新Blu-rayレコーダについて紹介。デジタルレコーダが普及したが、「VHSを置き換えられていない」ことを問題として開発した「BD-AV10/AV1」について解説し、VHS的な操作/使いやすさを目指した開発思想を紹介。「2011年にビデオをすべてBDに置き換えていく」と訴えた。 日立製作所 デジタルコンシューマ事業部 担当部長の島上和人氏は、同社のBlu-rayビデオカメラ「Wooo DZ-BD7H/BD70」について説明。Blu-rayを「ハイビジョン本命メディア」と位置づけ、ハイビジョンで1時間以上のディスク記録が可能とアピールした。 ソニー VAIOブルーレイプロジェクト プログラムマネージャーの安彦剛志氏は、「“今日の午前中に多くの人がパソコンでHDを見る”という話を聞いたのですが、残念ながら私たちの耳にはまだそうした声が届いていません。なので、なぜ、われわれにBDが必要なのか、ということを説明させてください」切り出し、その用途を「ハイディフィニションで撮影した映像。一生に一度の思い出を、HDにして残すため」と訴えた。 安彦氏は、BDライティングソフト「Click to DVD」などで簡単にBDを作成できることなどを紹介し、今後は20万円以下のVAIOでもBD対応モデルを増やしていく方針を説明。また、“パソコンならでは”のアイデアも温めていると示唆。詳細は「企業秘密」とのことだが、Blu-rayのネットワーク機能「BD Live」の活用を予定しているという。
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 ウォルト ディズニー スタジオ ホーム エンターテイメント マーケティング エグゼクティブディレクターの高橋雅美氏は、Blu-rayで実現できるボーナスコンテンツに特に着目しており、フォーマットの拡大への期待を語った。 また各社の対応プレーヤーが増えたことから、「フォーマット戦争が実質的に終了している。安心してわれわれのBlu-rayを買っていただける条件ができつつある」とコメント。大人から子供まで楽しめる“ファミリーエンターテインメント”に注力したソフト展開を図るという。 なお、“パイレーツ・オブ・カリビアン”シリーズの導入以降、タイトル販売は伸びてるが、「すべてが手放しで伸びているとはいえない」という。「売れているタイトルと売れないタイトルに2極化してきており、そういう意味ではまだ市場は本格化していない。要因の1つはフォーマット戦争だが、なにか、たががが外れるように伸びていく瞬間がある。年末に向けて期待している」と語った。 松下電器の小塚氏は、BDAではなく松下電器の代表として、新ブルーレイDIGAを紹介。フルHD/MPEG-4 AVC圧縮録画機能を「フルハイビジョン4倍録画」やBD-JAVAによるゲーム機能などを紹介。「Blu-rayをリードしていると思っている」とコメントした。 ■ ダビング10は「ダメが10倍になっただけ」
“ハイビジョンラバー”と語るデジタル・メディア評論家の麻倉怜士氏は、Blu-rayではなく、地上デジタル放送のコピーワンス運用見直しについて説明した。 麻倉氏は「DVDにムーブしたらHDDに戻せない」などの“使いにくさ”について不満を語った。さらに、ハイビジョン番組をSD解像度に落としてDVD-Rにムーブすると、元のHD番組が削除されるが、「この文明社会、ハイビジョン社会にこんなことがあっていいのでしょうか?」と訴えた。 こうしたコピーワンスの使いにくさに触れたあと、ダビング9回+1回のムーブが可能な新ルールとして検討されている「ダビング10」について言及。「ダビング10はコピーワンスが10回になっただけ。ダメが10倍になっただけ」と述べ、“録画したディスクからのコピーができない(孫コピー不可)”、“録画したディスクの編集ができない”など7つの不満をあげて説明した。 その上で、あるべきコピー環境として、「光メディアから光メディアにコンテンツ継承できる」、「HDDにコンテンツ継承できる」、「ダビング3回、コピー3回など9回でも複数世代までコピー可能な運用」の3点の実現をあげ、「デジタル放送録画の熱血ユーザーが納得するデジタルコピーシステムを作ってほしい」と訴えた。
■ パラマウントもHD DVDコンボも「影響なし」 パネルディスカッションでは、Blu-ray戦略について、各社の代表が意見を交わした。 シャープの小田氏は、「ハイビジョンの素晴らしい作品、映像、音声をそのまま忠実に録画/再生する。それがレコーダの基本だと考えている。DVDでは画質が劣化してしまい、そこが大きな不満だった。すべての問題を解決できるフォーマットはBlu-rayしかない。放送は一期一会で、それを“そのままとる”をしっかりやっていく」と同社のレコーダのコンセプトを説明。 一方、AVCRECによる圧縮/録画機能をDIGAに搭載した松下の小塚氏は、「我々の目標は明快。VHSの3倍モードのように、長時間は消費者にわかりやすい提案だと思う。AVCの演算量は膨大だが、新しいUniphierができて、薄型の筺体に納められるようになった。苦手な映像であれば、確かに画質が劣化しますが、そうでないものもあります。そこでお客さんに選択肢を与えるというのが重要と考えている」とした。 シャープ小田氏は、「長時間記録という機能はもちろん重要。しかし、今回のものづくりでは複雑な操作の上にさらにH.264で長時間というのは避け、使いやすさにこだわった」とコメントした。 日立の島上氏は、BD対応の最初の製品としてビデオカメラを開発した理由について、「まず自社の一番得意なところからということで開発した」とし、レコーダの投入については「検討はしている」と言及。 なお、SamsungやLG電子などが開発している、HD DVDとBlu-ray Discのハイブリッドプレーヤーについて、松下電器 小塚氏は「日本メーカーが先行している中で、販売店の棚を取るための差別化として考えているのかもしれない。ただし、技術的にコストがかかるし、結局高価になる。影響はないと考えている」とした。 さらに、パラマウントのHD DVDへの独占供給の影響については、「幸いなことにパラマウントさんもあまり売れたソフトがなかったということで、影響はないと思っています。ただし、今回の経験で陣営内は引き締まりました。もうちょっと積極的にプロモーションをかけていこうと。そういった意味では良かったのかもしれません」と語った。 □CEATEC JAPAN 2007のホームページ ( 2007年10月5日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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