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現地時間の7日から開幕するCES。その開催に先立ち、主催のCEA(全米家電協会)のゲイリー・シャピロ(Gary Shapiro)会長兼CEOが、日本プレス向けのグループインタビューに答えた。 -今回の開催規模をどう考えるか。
適切なものだと思う。昨年、家電のプロフェッショナル向けにフォーカスする目的から、観光客などの来場を廃したのだが、その目的は成功した。今年も、来場者は昨年同様の14万人前後と見積もっている。これ以上の来場者があると、ホテルや交通など、ロジスティクスの面で問題が大きい。今後もこの規模を維持する見通しだ。
出展社も同様だ。2,700社あまりと、昨年とほぼ同じ規模となっている。ただし、日本からの出展社は、昨年に比べ10%増加した。日本からの注目が集まっていることに、非常に感謝している。 -今回で、おそらくビル・ゲイツ氏の基調講演が最後となる。後継は決まっているか?
腹案はあるが、まだ公開できるレベルにはない。業界に大きな影響力を持つ人物をアテンドしたいと考えている。
ただひとつだけ言えるのは、基調講演の席は来年も5つであり、そのうち一つは日本企業からの人物になる。 -今年のCESでは、2日目の基調講演に、ゼネラル・モータースのリック・ワグナーCEOが登場する。自動車メーカーのトップが登場する意味合いはなにか? アメリカでは、ホームエレクトロニクスの次の波として、自動車が注目されている。エンターテインメントはもちろん、カーナビや通信など、範囲は広い。アメリカは日本に比べカーナビの普及が遅れているが、2007年第4四半期には、最も多く売り上げた家電製品となっている。家電業界にとって、自動車業界とのコンバージェンスは、より重要なものになるだろう。 -昨日、Warner Bros.が、ハイデフ・コンテンツをBlu-rayのみに供給する、という発表を行なったが、どう見ているか?
なんにしろ、CESの直前に大きな発表が行われ、注目が集まるのはありがたいことだ(笑)。HD DVDとBlu-rayの競争は非常に苛烈だ。たくさんの企業がBlu-rayを支持しているのに対し、HD DVDは東芝1社。双方の陣営とも、すばらしい製品を作り、すばらしいコンテンツが登場しているが、多くの消費者はどちらを買うべきか困惑している。
先週我々は、全米の家庭の半分がHDTVを持っている、との統計結果を発表したのだが、次世代DVDはこの市場が持つポテンシャルほど売れていない。今回の発表により、消費者は次世代DVD製品を購入するようになるだろう。
率直に言って、来年、2009年のCESでは、次世代DVD戦争は注目に値しない「過去のもの」となっているのではないだろうか。 -シャピロ氏は、Blu-rayとHD DVDのどちらを持っているのか。 Blu-rayだ。ただし、選んだのはワイフであり、選択の理由は彼女に聞かないとわからない。自分で選ぶなら……両方、ということにしておく(笑)。
-今回のCESは環境対策に力を入れている、とのことだが?
そうだ。今回より、二酸化炭素排出量削減に配慮し、様々な形で環境対策を強化している。イベントとしての取り組みでは世界最大ではないだろうか。
例えば、会場で使うカーペットをリサイクル素材で作られたものに換え、コップも生分解性のものにした。みなさんが使うプレスキットも、再生紙と大豆インクを使い、紙の量も少なくなるよう配慮している。
こういった配慮は、今後継続的に強化していきたいと考えている。残念ながら今回は、すべてのカーペットをリサイクル素材にすることはできず、Las Vegas Convention CenterのCentral Hallのもののみがリサイクル・カーペットだ。しかし、来年以降はもっと広げられるよう努力する。
また、さらに広い視点で考えると、「家電の普及」は環境にプラスだ。自動車で映画館や学校に移動するよりも、自宅でHDTVを使って映画を見たり、ネットを介して学習したりする方が、エネルギーを消費しないからだ。 -サブプライム問題などもあり、景気の減退が懸念されるが、家電業界にはどのような影響があると見ているか? '08年に関する予測は、次の月曜日、正式に発表することとなっている。一般的に、大きな経済問題が起こると家電の売り上げは下がると考えられるが、現状では、家電の売り上げは堅調に推移するだろうと見ている。なぜなら、現在はすばらしい製品がいくつも登場し、価格下落も早い。消費者の多くは、資産を家電に使いたい、と考えているようだ。 -アメリカのHDTVの販売状況はどうか? 非常に好調だ。プラズマも液晶も売れているが、日本でもそうであるように、液晶の勢いが強い。トータルでの売り上げは変化しておらず、販売数量は減少気味だが、より大型で価格の高いものにシフトしている。 -中国製の低価格製品の勢いが強いようだが?
個々の企業や製品についてはよくわからない。とはいえ、中国企業がよくやっているのは間違いない。ただし、率直にいえば、中国企業は現在「遵法意識」を学んでいる最中、といえそうだ。リサイクルや環境対策をせねばならない。また製品に関していえば、クローズドキャプション(字幕)機能やペアレンタル・コントロールといった、子供やハンディキャップのある人々への配慮がまだまだ足りない。
日本企業は、「ブランド価値」を大切にするという観点から、これらの事象への配慮が行き届いている。中国企業は、そういった姿勢を学ぶ必要がある。
■ CES Unvailedも開催
5日夕方には、2008年CES、最初の公式イベントとなる「CES Unvailed」が開かれた。これは、CES開催前にいくつかの企業の発表製品が見られるプレス向けイベント。大規模なブースを持たない中小の企業が参加し、製品をプレスにアピールする場として活用されている。ただし、発売/発表済みの製品が多く、この場で新たに発表される製品は少ないのが常で、その点は今年も変わらなかった。 例外は米Logitech(ロジクール)だ。5日発表した新しいユニバーサルリモコン「Harmony One」や、リビング/ホームシアター向け小型Bluetoohキーボード「diNovo Mini」などを展示、注目を集めていた。
目玉は、ホームネットワークに接続し、インターネットラジオなどを聴くことができる「Squeezebox Duet」。iPodを思わせるホイールと液晶を内蔵したリモコンを使って、手元で液晶画面を見ながら音楽を楽しめるのが特徴だ。米国での販売価格はリモコン・本体(レシーバ)のセットで399ドル。ただし、日本国内での発売は未定だ。
□International CESのホームページ
(2008年1月6日) [Reported by 西田宗千佳]
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