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対応携帯電話だけで、累計2,000万台以上の出荷を記録。2005年の放送開始以来、着実に普及が進むワンセグ放送対応端末。しかし、携帯電話、ポータブルオーディオ、DVDプレーヤー、パソコン、カーナビなどひと通りの携帯機器にいきわたった感もあり、新鮮味は感じなく なりつつある。 そうした中、ソニーがワンセグの新しい提案として4月に発売するのが「XDV-D500」と「XDV-G200」の2製品だ。XDV-D500は、愛称「BRAVIAワンセグ」として高画質を謳うポータブルテレビ。一方の「XDV-G200」は“名刺ラジオ”の進化系としてワンセグに対応したという製品だ。 それぞれに異なるアプローチで、ユニークな用途提案をしている。今回、BRAVIAワンセグを中心に、ソニーの新しい「ワンセグ」を体験してみた。
■ 小型ポータブルテレビ「XDV-D500」
録画機能を備えたポータブルワンセグテレビで、ソニー製3.0型/432×240ドットワイド液晶ディスプレイを搭載する。ポータブルテレビとしての機能/画質などの性能を追及し、愛称は「BRAVIAワンセグ」。 液晶右脇にはジョグレバーを装備。レバー上部には[オプション]ボタン、下部には[戻る]ボタンを備えている。上面にはファンクションボタンや録画用スライドボタンなどを備えており、これらのボタン/レバーで基本操作を行なう。 左側面にはホイップアンテナとヘッドフォン出力(平型コネクタ)を装備する。ホイップアンテナは引き出して利用、また、平型コネクタに接続して利用するヘッドフォンアンテナも付属する。出力80mW×2chのステレオスピーカーも内蔵している。外形寸法は59.3×98×14.3mm(縦×横×厚み)、重量は約107g。 充電クレードルが付属。同クレードルには、アンテナ入力(F型コネクタ)も備えており、アンテナケーブルを接続して、卓上テレビ的に利用できる。
・操作性 見た目はピアノフィニッシュで高級感があるが、手に持つと思いのほか軽く、重量は約107g。仕上げも非常に丁寧なのだが、付属のキャリングケースに入れると、懐かしの“ポケベル”に見えてしまう。
電源は本体右側面のボタンでON/OFFが可能。基本操作は上面のファンクションボタンとボリュームボタン、液晶右脇のオプションボタン、ジョグレバー、ホームボタンを利用する。 上面のファンクションボタンで、ワンセグ/録画番組再生/FMラジオ/AMラジオの切替を行なう。また、ホームボタンを2秒間長押しすると、メインメニューが起動。各種モードをジョグレバーの上下で選択し、レバー押し込みで決定できるほか、設定なども行なえる。 今回は、XDV-D500のメイン機能といえるワンセグと、録画番組再生を中心に使用してみた。
電源を投入して、ファンクションボタンでワンセグを選択すれば、受信画面が現れる。ワンセグのチャンネル設定は、オートスキャンと地域設定が用意されている。基本的には地域設定で問題なく設定できるだろう。なお、「プリセットリスト」では3つまでのプリセットが登録できる。 アンテナは、ホイップアンテナのほか、ヘッドフォンアダプタアンテナも装備。ヘッドフォン利用時にはヘッドフォンアダプタが利用できるが、併用時にはホイップアンテナが優先される。どちらもあまり感度は変わらないように感じたが、電車などでの取り回しはヘッドフォンアダプタのほうがよい。
感度はまずまず。ヘッドフォンアダプタとホイップアンテナの双方を切り替えながら、電車内でテストしてみたが、多くのワンセグ対応機器が途切れがちな京王線内でも、数駅を除いて比較的安定して番組を視聴できた。しかし、常に安定して視聴できるとまではいかない。 とはいえ、移動時の受信安定性はかなり高いほうだと感じた。一方、他のワンセグ機器は比較的安定している、千代田区の編集部内で、途切れがちになることがあった。 チャンネル切り替えは液晶右脇のジョグレバーで行なう。基本的に順送りでのチャンネル変更となるが、出画までの時間はかかるものの、順送りにチャンネルを切り替えていく分にはレバー操作1回ごとにすぐに反応してくれるので使い勝手はいい。チャンネル切り替えから出画までの時間は、受信環境に依存するが、安定した受信環境であれば、4秒弱~5秒程度だった。
また、順送りでなく、任意のチャンネルをダイレクトに選局したい場合は、ジョグレバーを押しこむと[プリセットリスト]として利用中のチャンネル設定が現れるので、ここで任意のチャンネルを選択して切り替えられる。 視聴/操作系はシンプル。ボリュームは上部の専用ボタン、チャンネル切り替えもジョグレバーを用いるが、番組表の確認や録画予約、画質設定などはジョグレバー上の[オプション]ボタンから行なう。 ワンセグ視聴中にオプションボタンを押すと、[番組表]、[録画メニュー]、[字幕表示]、[画面モード]、[画面の明るさ]、[画質モード]、[音質モード]、[二重音声]、[その他の設定]の各項目を選択できる。任意の項目をジョグレバーで選択し、レバーを押し込むと決定動作となる。上の階層に戻る場合は、レバー下の[戻る]ボタンを利用する ・画質 画面モードは、フル画面表示の[フル]と、ワンセグ放送の解像度で表示する[ノーマル]、さらに[消画]が用意される。基本的にはフルで問題ないが、字幕を画面にかぶることなく表示したい場合などは、ノーマルもいいだろう。 ユニークなのは「消画」だ。つまり、ワンセグ映像を消して、テレビ音声のみを楽しむモードだ。アナログラジオでも、TV音声を受信できる製品があったが、これらについても2011年にアナログテレビ放送が終了すればば使えなくなる。これのデジタル放送版代替機能ともいえる機能だ。スポーツ中継などは十分楽しめるし、バラエティ番組でもそれなりに番組の内容は把握できる。また、満員電車でテレビを出して楽しむのははばかられる場合など、活用シーンは広がりそうだ。
XDV-D500の特徴ともいえるのが、BRAVIAの名を冠した「画質」。高画質エンジンとして、「モバイルブラビアエンジン」を内蔵し、コントラストの改善や、輪郭強調、彩度拡張などの高画質化が行なわれており、視野角は160度以上、コントラスト比500:1以上を実現。色再現性は74%以上で、高い反射特性を備え、屋外でも最低限の視認性を保持するという。 実際に、3.8型/16:9のワイド画面でみるテレビ映像は、一見してにわかにはワンセグ放送とは思えないほどのクオリティを感じさせてくれる。特に自然な発色が印象深く感じる。例えば、ニュース番組で天気予報を全画面で表示したときのような均一な画面のときには、発色が鮮やかで精細感がある画が楽しめ、一見してワンセグと分からない程だ。
しかし、天気予報中に天気図などにズームしたり、滑らかにパンしたりといったときには、カクカクとフレームが落ちているように見えてしまい気になる。ワンセグ放送のフレームレートが15fpsのため、動きのある番組だとやはり“ワンセグらしさ”というか、ワンセグの限界を感じさせることもある。 画質モードはノーマル/シャープ/ダイナミックの3種類を用意。一番バランスがいいのはノーマルだ。シャープは、一目でわかるほど輪郭が際立つが、動きのある番組だと、逆にフレーム間の引っかかりが気になってしまう。ダイナミックは輝度が高く、派手な絵作りになるが、少々やりすぎにも感じる。例えば大相撲を見ると力士の肌のピンクが強く、土俵の土の色も黄色がかって印象が崩れてしまう。基本ノーマルで活用したい。 ・録画
録画機能も充実している。上部のスライドスイッチで、視聴中のチャンネルをすぐに録画可能。これが一番基本的な録画方法だが、そのほかにもオプションメニュー内に多彩な録画機能を備えている。 オプションからメニューを立ち上げると番組表の項目が現れる。これを選択すると、視聴中のチャンネルの番組表が表示される。ここで任意の番組を選択し、ジョグレバーを押し込むと番組説明画面に移行。録画予約を選択すると、日時や開始/終了時刻の選択画面が表示され、ここで確定を押すと録画予約登録される。日時を変更して、毎週/毎回予約などの設定も可能だ。 なお、EPG録画時に番組情報の更新を検出して、ドラマの最終回などの延長時にも自動的に追尾して録画する自動延長対応機能も備えている。
また、オプションの[録画メニュー]からは[今すぐ録画予約開始]と、[日時指定予約]、[番組表から予約]、[予約リスト]の各項目を選択できる。[番組表から予約]を選択した場合はプリセットリストから任意のチャンネルを選択して、番組表を探すことができる。[今すぐ録画予約開始]は上部のスライドスイッチと同様の視聴中のチャンネル録画、日時指定予約はいわゆるタイマー予約といえる。基本的な録画機能は網羅しており、使い勝手もよい。シンプルなジョグレバーの操作性もとても良い。 ただし、ワンセグの常とは言え、モバイル機器だけにいつでも安定した受信環境を得られるとは限らない。たとえば毎日予約番組の録画時間に地下鉄に乗っている、ということもありうる。移動中に録画が重なると、せっかく予約した番組がきちんととれていないという場合もある。 なお、XDV-D500ではアンテナ入力付きの充電クレードルが同梱される。家庭内での利用時には、アンテナ線を接続してクレードル背面でアンテナ利用を[入]に設定、あとはXDV-D500を置いておけば少なくとも番組の取り逃しということはないはずだ。深夜番組などを取りためて、通勤中に見るなどの使い方であれば充電も録画もできるので、取り逃しなどの問題はなさそうだ。 また、普段は卓上のテレビとして利用して、長時間の移動時にXDV-D500を持ち運ぶなど、このクレードルを活かした利用方法なども考えておきたい。
録画した番組はファンクションボタンから[ワンセグビデオ]を呼び出して、視聴可能となる。機能的にはシンプルで、画質設定や画面設定は視聴時と共通だ。 さらに、ジョグレバーを1回上に倒すと1.3倍速の音声付早見再生に、さらにレバーを上に倒すことで、3段階の早送りが可能となる。同様にレバーを下に倒せば3段階の早戻しとなる。画面下に操作方法のナビゲーションが出ることもあり、なかなか使いやすい。 またワンセグビデオのメニュー内でオプションボタンを押して、頭出し再生やタイトル消去なども選択できる。
・AM/FMラジオも搭載
ボリュームやチャンネルなどの切り替え方法はワンセグと共通だ。操作体系に慣れてしまえば問題なく操作ができるだろう。 また、スピーカーを内蔵しており、背面のスイッチでヘッドフォン/スピーカーを切り替えられる。サイズの割にスピーカーの音質も良く、卓上テレビ/ラジオとしても不満なく活用できる。 ヘッドフォン接続時の連続駆動時間は、ワンセグ視聴時で約8時間、FMラジオ聴取時が約27時間、AMラジオ聴取時で約34時間。
■ 名刺ラジオ型「XDV-G200」 “名刺ラジオ”型ワンセグとして、同日に発売される「XDV-G200」も試用してみた。
「BRAVIAワンセグ(XDV-D500)」がポータブルテレビ進化形と考えると、このXDV-G200は、名刺ラジオの機能拡張としてのワンセグ対応という趣だ。つまり、“テレビも見られるAM/FMラジオ”といえる。縦長のデザインから見てもその違いは顕著に感じ取れるだろう。 2.0型/320×240ドットの液晶ディスプレイを搭載。ワンセグだけでなく、AM/FMチューナを内蔵し、名刺ラジオ風の縦長のボディデザインを採用する。外形寸法は92×58×14mm(縦×横×厚み)、重量は87g。 機能的には非常にシンプルで、右側面のTV/FM/AMボタンで、各放送を切り替えて視聴できる。ワンセグ放送の録画には対応せず、視聴のみというシンプルなもの。このあたりの割り切りも、ターゲット層の違いを感じさせる。
操作体系もユニークで、液晶上のメニュー操作や各種設定には前面に備えるジョグレバーを利用するが、通常時には周囲のボタンのみで基本操作ができるように設計されている。 本体上面にはかんたん選局ボタンを装備。[1/7]、[2/8]、[3/9]、[4/10]、[5/11]、[6/12]の6つのボタンを備えており、ここで放送局の選局が行なえる。例えば東京でのワンセグ視聴時だと、[1/7]を1回押すと1チャンネルのNHKに、もう一度押すと7チャンネルのテレビ東京に切り替わる。 ワンセグのチャンネル切り替えに、ボタンが用意されているというのも珍しいが、このあたりは名刺ラジオのインターフェイスをそのまま踏襲したからこその操作感といえる。個人的には名刺ラジオを使った経験がほとんどないので、最初は戸惑ったが、画面を邪魔せず変更できるので、慣れてくるとなかなか使いやすい。ただし、ボタンの間隔が狭いので、目で確認しながらでないと押し間違えることが多かった。
液晶ディスプレイのアスペクト比が4:3かつ2型と小さいため、映像の迫力という点ではBRAVIAワンセグに見劣りするが、画面が小さいこともあり、画質的な不満はない。アンテナはヘッドフォンアンテナのみだが、京王線や千代田区の編集部で利用した限りでは、感度もBRAVIAワンセグとさほど変わらなかった。 BRAVIAワンセグと同様に、映像をオフにし、ワンセグ音声のみを楽しめる「消画機能」も搭載している。テレビ音をラジオ的に楽しむという使い方を、2011年以降も利用可能とするという点ではなかなか面白い提案だと思う。BRAVIAワンセグよりは、XDV-G200のほうが使い道がある機能といえる。 FM/AM利用時には、高域のノイズを低減する「ノイズカット」機能も利用できる。効果は確かに感じられ、特に不安定な受信環境では重宝する機能だ。XDV-G200ではこれに専用のボタンが割り当てられており、すぐに使えるようになっている。このあたりもBRAVIAワンセグとのコンセプトの違いを感じさせてくれる。 スピーカーとヘッドフォンの切換えボタンも左側面に備えている。ヘッドフォン利用時の連続駆動時間は、ワンセグ視聴時で約8時間、FMラジオが約18時間、AMラジオが約22時間。
■ 新しいワンセグの形 いずれも「ワンセグ」をいかに生かすかということをうまく考えた製品だ。 XDV-D500は、ポータブルテレビとしてワンセグを最大限に生かすことを考えた製品。画質面でもBRAVIAブランドを冠しただけあり、確かにこだわりを感じさせる鮮やかな発色を体験できる。もっともそれゆえにワンセグの限界を感じてしまうのも事実だ。 また、ワンセグ視聴においては、PSPとワンセグの組み合わせや携帯電話のワンセグ機能などの競合製品も多い。そうした中であえてポータブルテレビとしてシンプルな使い勝手を追求した点が、BRAVIAワンセグのユニークな点といえるだろう。また、クレードルを同梱したことで、卓上テレビ的な使い方ができる点も重要だ。高画質なポータブルテレビを求める人にとっては、魅力的な選択肢だ。 ワンセグの裾野を広げるという点では、XDV-G200のほうが面白い製品かもしれない。携帯電話にも、パソコンにも、カーナビにもワンセグが入っているという人も少なくない。しかし、XDV-G200がターゲットとする層は、“ワンセグ”と聞くだけで敬遠してしまう人も多いだろう。 その点、XDV-G200は、ワンセグという新しいサービスを過度に意識させることなく、スムーズに従来機器からの移行を促せる製品に仕上がっている。機能の割には若干高価とも感じるが、この操作体系が必要な人にとっては非常に魅力的な製品となるだろう。 □ソニーのホームページ (2008年3月18日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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