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7月11日、AppleからiPhone 3G(アイフォーン)が発売された。初代iPhoneは通信方式が日本で利用されていない「GSM」ということもあり、国内発売されなかったが、3G対応でめでたく日本でも発売されることとなった。 1,500人が列を成した基幹店「ソフトバンク表参道」における販売セレモニーなど、大きな盛り上がりを見せるiPhoneだが、AVプレーヤーとしての基本的な機能はiPod touchを踏襲している。ここでは、iPod touchとの違いやiPhoneソフトウェア 2.0の特徴、アプリケーションの追加による新しい可能性を検証した。 ■ iPod touchとの比較。ボリュームスイッチの追加が嬉しい パッケージは、iPod touchなどとあまり大きな違いはなく、コンパクトなもの。Dockケーブルや、マイク内蔵のステレオヘッドフォン、USB電源アダプタ、SIMイジェクト用のピン、クリーニングクロスなどが付属する。
本体のデザインイメージは、iPod touchを継承している。一見して区別がつくような違いはないが、厚みはiPod touchの8mmに対して、iPhone 3Gでは12.3mmとかなり厚くなっている。ただし、iPhone 3Gは裏面が曲線的なため、手に持ってみるとしっくり来る。このあたりは「電話」として使う際の操作感を考慮しているのかもしれない。 ディスプレイは3.5インチで、解像度は480×320ドット。初代iPhoneやiPod touchと共通だ。タッチパネルのインターフェイスもiPod touchと同様。タップやドラック、2本指で、写真などを拡大/縮小する「ピンチ」などの操作が行なえる。 対応音楽形式は、AAC、MP3、Audible、Apple Lossless、AIFF、WAV。動画形式はMPEG-4 AVC/H.264のBaseline ProfileとMPEG-4 Simple ProfileとこのあたりもiPod touchユーザーから考えると大きな変更点はない。 ただし、内部的には通信モジュールが3G対応となったほか、GPS(A-GPS)を内蔵。これによりGPSを利用するアプリケーションなどの登場が期待される。加速度計も内蔵しており、ゲームなどのアプリケーションで本体を傾けたり、振ったりするコントロールが可能だ。また、iPod touchとの違いでは、通信機能やGPSのほか、200万画素デジタルカメラの搭載していることも重要なポイントだろう。 後述するが、ソフトウェアも初代iPhone/iPod touchから大幅に強化された「iPhoneソフトウェア 2.0」となり、新しいGPSなどの活用に加え、サードパーティアプリケーションの追加などが可能となっている。
使う前の注意点だが、ユーザーがSIMカードを挿入する場合、イジェクト用のピンを上部の小さな穴に差し込むとSIMカード用のガイドが飛び出て来る。ここにカードを入れ、本体に戻すと完了となるのだが、誤ってSIMカードだけを中に落としてしまうと簡単には出てこないそうだ。
修理扱いになってしまう場合もあるとのことなので、挿入時は本体を仰向けに寝かせた状態で、横にスライドさせるように慎重にカードを入れるようにしよう。
また、付属のイヤフォンも機能強化されている。イヤフォン自体は従来と同様のタイプだが、コードの途中にマイクを備えており、イヤフォンを装着してiPhoneを取り出さなくても通話ができるようになっている。マイク部は全体がスイッチのようになっており、押し込むと通話/終話が可能。音楽再生中に着信があると音楽がフェードアウトし、通話が終わると再び再生される。音楽鑑賞と電話のシームレスな移行が好印象だ。なお、音楽再生時にこのスイッチをダブルクリックすると曲送りが可能。ただし、曲戻し機能や早送り/巻き戻し機能などは無いようだ。
■ ミュージックやビデオアイコンが「iPod」へ統合
メインメニューに配置されたアイコンの種類は異なるものの、基本的な操作方法はtouchと同じだ。YouTubeや設定メニュー、計算機、カレンダー、時計など、touchとアイコンデザインも変わらない機能も継承されており、touchを使ったことのあるユーザーなら違和感無く操作できるだろう。 しかし、機能が同じにも関わらず名称が変わっている機能がある。音楽再生を行なう「ミュージック」アイコンが、「iPod」になっているのだ。クリックすると表示される画面は「ミュージック」とほぼ同じなのだが、touchに慣れていると「ミュージックはどこに行ったの?」と迷ってしまうので注意が必要。
また、touchでは画面下部によく使う機能としてピックアップ表示されていた「ビデオ」が消えている。同機能は前述の「iPod」の中に組み込まれており、「iPod」メニュー画面の下部に、新たに「ビデオ」というアイコンが表示されている。このため、touchの「ミュージック」画面にあった「アルバム」アイコンが「その他」に追いやられており、デフォルト状態では楽曲選択方法が「プレイリスト」、「アーティスト」、「楽曲一覧」のみになっている。 もっとも、アイコン配置は「その他」メニューから変更できるので、touchと同じ配列にすることも可能。「ビデオ」をどの程度活用しているかによって配置を使いやすくカスタマイズしたい。
また、iPhone 3Gでの最大の変化は、ハードウェアというよりは“アプリケーションの開放”にあるとも言える。それを示すのが、メインメニューに表示されたアプリケーションダウンロード用の「App Store」ボタン。これと同様の機能はiPhone 3Gの発売と合わせてアップデートされた「iTunes 7.7」のiTunes Store上にも登場しており、iPhoneとiTuneのどちらからでも、無償/有償の多様なアプリケーションを購入できるようになっている。 なお、初代iPhoneとiPod touchでも、Phoneソフトウェア 2.0にアップデートすることで、App Storeのアプリケーションに対応可能となる。ただし、iPod touchについてはアップデートは有償となる。
■ Remote機能を試す では、新たに追加されたアプリケーションサービスの「App Store」を使いがてら、「Remote」アプリをインストールしてみよう。「App Store」にアクセスすると、「おすすめ」や「ジャンル」、「トップ25」、「検索」など、アプリを探すためのメニューが用意されている。発売当初「Remote」は「おすすめ」に登録されているので、すぐに見つけられるだろう。アプリケーションの一覧画面では、ユーザーレビューの件数や、評価の☆マーク、アプリの価格などが表示されている。項目をクリックするとアプリの詳細説明が表示され、価格の部分をクリックすると、インストールボタンが現れる。インストールが完了すると、新しいアプリのアイコンがメインメニューに表示されるという流れだ。
「Remoteアプリケーション」はAppleが標準機能として提供しているので、iPhone/touchの無線LAN機能を使って、ワイヤレスでPCにインストールされたiTunesやApple TVの再生制御を行なうというものだ。 Remote起動後に「設定」画面に移動し、「ライブラリの追加」を行なう。これをクリックすると、同一LAN内のPCにインストールされ、起動した状態のiTunesが検出される。同時に、iTunes側でもiPhoneがアクセスして来ていることを示すアイコンが表示される。iTunesのライブラリを、iPhoneから制御するためには「パスコード」での認証が必要。「ライブラリを追加」をiPhoneから選ぶと、iPhoneの画面にランダムの4桁の数字が表示される。iTunes側のiPhone画面(デバイス画面)を表示すると、空欄の4桁のマスが表示されており、ここにiPhoneに表示されている数字を入力。認証が行なわれるという仕組みだ。
認証が完了すると、iPhoneの画面に「iPod」機能と同様のメニューが表示され、iTunesのライブラリをそのまま遠隔操作できる。ライブラリ情報はiTunesのものを参照しているため、iPhoneに入っていない楽曲なども表示される。それらをクリックすると、iTunesをインストールしたPCから音が流れる。再生/停止だけでなく、音量調整も可能。アルバムアートワークもしっかりと表示される。ただし、あくまでリモコンとして機能しているため、iPhoneからiTunesの音声を出力することはできない。 また、前述のように本体左脇のボリュームボタンは、通話/音楽再生の音量を調整できるが、リモート接続時はタッチスクリーンからのボリューム指定のみが、PCのiTunesに反映される。ハードウェアのボリュームを操作しても、iPhoneの着信音量が変化するのみだ。つまり、リモート操作時は表示画面こそ音楽再生(iPod機能)の画面と同じだが、iPhone自体は音楽を再生しているモードではなく、単なる着信待機状態という扱いなのだ。
動画再生も同様に行なえ、再生位置のスキップなども可能。若干時間がかかるが、動画のサムネイル画面もiPhone側に伝達される。その名の通り、iPhoneがPCのリモコンになったような使い心地で、非常に面白い。例えばiPhoneを聴きながら帰宅後、PCのiTunesが起動していれば、そのまま手元の操作だけでPCから音楽/映像を再生できる。操作方法もiPhoneのローカルファイルと変わらないため、iPhoneの容量が増加したようなイメージで使えるだろう。
App Storeではほかにも、「ボンバーマン」や「Super Monkey Ball」といったゲームなどを有償で配信しているほか、天気やファイナンス、ニュース情報、「NAVITIME」や「駅探エクスプレス」などの電車乗り換え検索用アプリなど、多彩なアプリケーションが用意されている。 今のところAV系のものはあまり多くないが、今後iPhone 3Gの高速通信を使った様々なサービスの充実に期待したいところだ。また、3Gに対応したことで、無線LANだけでなく、携帯通信網を使って、Webブラウズだけでなく動画のストリーミング視聴も可能になったことも大きな魅力と言える。従来からYouTubeの一部コンテンツをiPhone/iPod touchから視聴可能となっていたが、iPhone 3Gの国内発売にあわせて、国内のコンテンツホルダも対応を進めている。Yahoo!がYahoo!動画をiPhone対応するなど、変化の兆しが見えている。 ■ touch譲りの素直な音質 気になるのが音質だ。国内発売されていないが、初代iPhoneではヘッドフォンジャックが独自の形状だったため、利用できるイヤフォンが限定されていたという。その点、iPhone 3Gでは、標準的なステレオミニジャックに変更され、一般的なイヤフォンが利用可能となっている。ユーザーに選択の幅が与えられている点は、うれしい機能強化といえるだろう。なお、前述の通り付属のイヤフォンはiPodシリーズでお馴染みのインナーイヤータイプだが、ケーブルの途中にスイッチを兼ねたマイクを備えているのが最大の違いだ。 iPod touchの再生音は、iPodシリーズの中でも極めてフラットで優秀なものだったが、iPhone 3Gの再生音も、印象はtouchから変わらず、ニュートラルだ。同じ楽曲を3G/touchで再生してイヤフォンを差し替えながら試聴したが、再生音に大きな違いは感じられない。若干3Gの方が低音がタイトになり、音場の奥行きが浅いようにも感じられるが、封を開けたばかりの3Gとtouchでは使用時間にも大きな差があるので、これがモデルによる違いなのかは不明だ。アンプの出力もほぼ同じで、touchユーザーであれば音質への違和感は無いと言えるだろう。
むしろ大きな違いを感じるのは、イヤフォン端子が上部に移動したことなど、構造的な部分。内蔵のスピーカーは下部に用意されており、一見としてステレオに見えるが、左側がモノラルスピーカー、右がマイクとなっている。スピーカーの音質は見た目通り、低音がほとんど無い、スカスカした乾いた音で、音楽鑑賞というよりも“内容確認”のレベルだ。しかし、ビデオを多人数で観賞する場合などでは重宝するシーンもあるだろう。 iPhone 3GのAV的な変更点やアプリ追加の特徴などを検証したが、今後はAV機能のアプリ充実も予想されるほか、周辺機器市場が大きいApple製品なので、iPhone 3Gの新機能を活かした様々なサードパーティ製ハードウェアも登場するだろう。短時間でも“可能性の片鱗”は感じ取れる。携帯電話+音楽プレーヤーという域を超えた新時代のポータブルデバイスとして、今後どのように変化していくかが楽しみだ。 □アップルのホームページ ( 2008年7月11日 ) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp/usuda@impress.co.jp]
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