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2011年以降のBSデジタル参入事業者は、2009年7月を目処に決定
-新たに7周波数が利用可能になるも、3周波数に問題


左から2番目が総務省大臣官房の久保田誠之審議官。「ブロードバンドの普及に伴い、デジタル放送でもネットと連携したサービスが増えている。衛星放送でも、視聴者利益とともに、衛星放送ビジネスや情報通信ビジネスの創造も合わせて考えていきたい」と述べた
8月28日開催


 総務省は28日、2011年以降に開始される予定の、新たなBSデジタル放送に関しての説明会を実施。今後利用可能になる周波数の最新情報や、新放送で実際に放送を行なう事業者を認定するまでのスケジュールなどを明らかにした。

 BSデジタル放送は、1/3/13/15chの4周波数を使って、2000年の12月にNHKのBS1/2やBS-hi、BS日本、BS朝日など、10チャンネルでスタートした。その後、NHKのアナログハイビジョン放送が2007年9月に終了したことで、1周波数(9ch)に空きができた。そこで、同年の12月から「BS11(イレブン)デジタル」と、「TwellV(トゥエルビ)」の2番組が追加。さらに、スター・チャンネルのハイビジョン化も実現された。そのため、現在では1/3/13/15/9chの5周波数を使い、12番組の放送が行なわれている。

 それとは別に、2007年7月の電波監理審議会答申を受け、2011年以降、現在アナログ放送を行なっているアナログWOWOW(5ch)やNHK BS1(7ch)、BS2(11ch)が終了することが決定。使っている3周波数を、BSデジタルに使用することが決められた。さらに、国際調整手続きの結果、BS放送用周波数として日本は新たに4周波数(17/19/21/23ch)の割り当てを取得。前述の3周波数と合わせ、2011年以降は7つの周波数がBSデジタル用に利用できるようになる。

灰色の部分が、新たに利用できるようになる周波数

 ただし、7周波数全てが2011年以降すぐに利用できるわけではない。17chは、地上デジタル放送移行に伴う、難視聴地域対策のために、地上デジタル放送の衛星再送信に使われる予定で、2008年からの5年間はBSデジタルでは使用できない。また、21/23chに関しては、携帯電話の基地局と、電波が干渉してしまう問題が見つかった。現在、協議連絡会を設けて対策が検討されている段階だが、要対策エリアは全国で400~500カ所と推計されており、対策を講じるにしても、利用できるようになるまでには時間がかかると見られており、同周波数に関しては放送事業者の認定申請の受付をしばらく行なわない可能性もあるという。

 そのため、2011年以降すぐに利用できるのは5/7/11/19chの4周波数と見込まれている。こうした状況を踏まえつつ、放送番組の編集主体である委託放送事業者(実際に放送を行なう事業社)からの認定受付を2009年4月から実施する予定で、同年7月頃に委託放送業務の認定が行なわれる予定。それに先駆けて、2008年8月28日から9月30日まで、参入希望調査が実施されることが明らかになった。

 これは、認定の申請受付を開始する前に実施するアンケートのようなもので、どのような会社が、どのような放送方式や番組内容での参入を希望しているかを大まかに把握するためのもの。28日に行なわれた説明会では、認定に至るまでの基本的方針に加え、その調査項目の詳細も解説された。


■ 総務省の基本方針

 現在、BSデジタルだけでなく、110度CSデジタルも受信できる共用アンテナや、チューナでも地上/BS/100度CSデジタルの3波に対応したチューナの普及が急速に拡大している。そのことから、総務省では制度上、今回のBSデジタル放送普及政策に、110度CSデジタルの普及政策も盛り込み、「東経110度衛星デジタル放送(仮称)」として統合。普及政策そのものも1本化することを明らかにした。

 これにより、1事業者が持てる放送局の上限が増える。まず、前提として「限りある電波資源を、できるだけ多くの事業者に対して確保する」という趣旨の「マスメディア集中排除原則」という規律が存在しており、それに伴って1事業者が放送で利用できる中継器(トランスポンダ)の上限が決められている。具体的には、BSデジタルでは1/2中継器、110度CSデジタルでは4中継器と決められており、トランスポンダ1本の伝送容量は48スロットであるため、BSデジタルでは1事業者が24スロットを使用可能。この容量では、ハイビジョン放送を1番組行なえる。

 しかし、地上波と比べ、BSデジタルの周波数資源の希少性が低くなっていることや、利用できる周波数が110度CS並に増えていることから、BSデジタル/110度CSデジタルの両方を「東経110度衛星デジタル放送(仮称)」とまとめて定義し、使用可能中継器の上限を4つで統一することを決定。110度CSデジタルは従来と同じだが、BSデジタルは1/2中継器から、4中継器と、1放送事業者がより多くのチャンネルで放送ができることになった。ただし、地上放送と兼営している事業者では、1/2中継器の上限から変更は無い。

 また、各放送の立ち位置も変化する。これまでのBSデジタルは「高精細な放送を中心に、高画質/高音質化や、多様化/高度化する放送需要に応えるための放送」と定義。110度CSデジタルでは、「既存の画質/音質クオリティを維持しながら高画質化やサービスの高機能化を目指すもの」とされていたが、その垣根を無くし、「東経110度衛星デジタル放送(仮称)」全体の目標として「高精細度テレビジョン放送を中心としつつ、デジタル化技術を活用した高画質化を目指す」と規定。110度CSデジタルにおいても、視聴者や事業者からハイビジョン化へのニーズが高まっていることを受けた決定で、この結果、既存のBSや110度CSの放送番組の画質を向上するために、周波数を割り当てることについても「特に排除しない」という方針が固められた。

基本方針のポイント。BSデジタルでも4中継器が利用できるようになる 、既存のBSや110度CSの放送番組の画質を向上するために、周波数を割り当てることについても「特に排除しない」という方針が固められた

 現在の衛星放送ではショッピングチャンネルなどが増加しているが、放送番組の多様性を確保する観点から、内容についても方針が定められている。無料放送のうち、放送時間全体における対価を得て行なう広告放送(具体的には、いわゆるタイム広告、スポット広告及び、一部のショッピング番組)が、放送時間全体に占める割合が一定を上回る申請について「周波事情を勘案して可能な場合に限り、周波数を割り当てることとする」と規定。広告放送が周波数の割り当てを受けることが原則として厳しくなる方針になっている。

 また、ラジオ放送やデータ放送に関しては、BSデジタルでラジオ放送の撤退が相次ぎ、データ放送も継続して行なっている事業者が少ないことなどから、「ブロードバンドやワンセグなど、新しい他のメディアによってニーズが満たされている状況」と分析。さらに、NHKが開発を進めているスーパーハイビジョンなど、将来の放送技術のための、実験での利用については「現時点ではまだ視聴者ニーズを十分に把握するに至っていない」とし、どちらも周波数を得るのは難しくなりそうだ。

 8月28日から9月30日まで受け付ける参入希望調査では、こうした状況を踏まえ、使用した周波数や、中継器のスロット数、放送内容、放送が有料か無料かなどの記載が求められている。希望する周波数では、BSデジタルだけでなく、110度CSデジタルの事業者がBSデジタルに移行することを見越し、空きが出ると思われる110度CSデジタルの周波数も指定が可能。

 また、放送の解像度についても、1,920×1,080ドットか、1,440×1,080ドットかを事業者が選べるようになっており、放送方式についても従来と同じではなく、情報通信審議会答申で示された新技術を盛り込むものも選択できる。調査の内容は総務省が取りまとめ、公開も検討されているが、調査に参加しない事業者でも、2009年4月から予定されている委託放送業務の認定受付はできるという。

□総務省のホームページ
http://www.soumu.go.jp/
□新たなBSデジタル放送に係る参入希望調査の実施
http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/080828_5.html
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(2008年8月28日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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